【NewsPicks×SmartNews対談】経営の側で働く広報の“役割と責任”とは?

自分はどのようなキャリアを目指すのか、今のポジションからどのような選択肢が広がっているのか…。遷り変わりの激しい現代において、社会全体で働き方なども見直される中、キャリアについて悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回ご紹介するのは、広告会社のクリエイティブディレクターとスタートアップ経営者から、いち企業の広報へと転身を遂げられた、『NewsPicks』と『SmartNews』広報責任者のお二人のキャリアです。メディアリレーションズが難しい会社の広報として、これまでのどのような経験やスキルが活きているのか。株式会社ユーザベース 広報責任者 菅原弘暁さんとスマートニュース株式会社 広報責任者 原田朋さんの対談を実施し、お二人のキャリアから、社内での広報/PRの在り方までお伺いしていきます。

株式会社ユーザベース
Communications Team Leader 菅原 弘暁
2011年に大手総合PR会社オズマピーアールに入社し、外資メーカーや官公庁などの広報戦略の立案と実行業務に従事。2014年にPR Tableを共同創業して、企業のコーポレートブランディングを支援するSaaSプロダクト『talentbook』を立ち上げ、シリーズCまで事業と組織作りを牽引する。2018年には国内初となるPublic Relationsの大規模カンファレンスを主宰。2021年7月から現職。
スマートニュース株式会社 
エグゼクティブ・コミュニケーション&クリエイティブ・ディレクター 原田 朋
1996年博報堂でコピーライターとしてキャリアをスタート。クリエイティブディレクターとして統合マーケティングを率い、日本PRアワードグランプリやカンヌ広告祭PRライオンを受賞。2020年12月から現職。
インタビュアー:
株式会社マテリアル STC局 ゼネラルマネージャー 小林 秀行
臨海学校職員、司書、編集プロダクションを経てPR業界へ。2012年にPR会社マテリアル入社。PRプランナーとして数多くの市場を担当。2015年から TBWA HAKUHODO へと転籍し、クリエイティブセクションにて Head of PR を務めたのち、再びマテリアルへ。企画部門の統括として、ストーリーテリングセンターGM就任。

なぜ、広告代理店/経営者から企業の広報へ?

キャリアチェンジの背景を紐解く

左から、スマートニュース株式会社 原田 朋さん / 株式会社ユーザベース 菅原 弘暁さん

※撮影時のみ、マスクを外しております。

小林:はじめに、お二人のご経歴についてお聞かせください。

原田:私は新卒で博報堂に入社し、25年間、テレビCMや広告を中心としたプランニングやマーケティングを行ってきました。キャリアとしては、コピーライターから始まり、クリエイティブディレクターを経て統合プランニング局の局長代理を務めたのち、1年前にスマートニュースへ入社しました。現在は、広報責任者兼クリエイティブディレクターを担っています。個人的には、新卒時代のコピーライターの経験が、現在の広報活動の一環である、「言葉を書く」あるいは、「書く前のコンセプトを考える」という部分で、活かされていると思いますね。私の仕事の中心には、一貫して「ストーリーテリング」や「ナラティブ」といった考え方があるんだなと改めて感じています。

小林:どのような理由で博報堂からスマートニュースにキャリアチェンジされたのでしょうか。

原田:博報堂でキャリアを積む中で、事業会社、つまりクライアントサイドで働いてみたいと思っていたんです。博報堂のクリエイターのキャリアとして、①表現技術を突き詰めていく人/より広告表現やクリエイティブを高めていく人②よりクライアントの事業に対してコミットしていきたい人の2つの志向に分かれると思っているのですが、私は後者でした。世の中が、データやAIによってビジネスが駆動する、いわゆるDXの時代になる中で、一事業としてどのようにデータやAIが活かされているのか、その現場に入りたくなったんですね。むしろ、その現場を体験することによって初めて、この先のクリエイティブディレクターとしてのキャリアを考えられると思ったんです。

そこから、スマートニュースへのキャリアチェンジに至った理由としては、まず「AIを使っているテック企業に行きたい」と思ったことがひとつ。もうひとつは、新卒の就活をしている際に、ニュースや報道にも興味があったのを思い出したことですね。そう考える中で、現在のニュースを取り巻く環境のひとつである、情報の偏りやフィルターバブルなどの問題は、いま、取り組み甲斐のある分野だなと感じたんです。そのような経緯でスマートニュースへ行くことを決めました。

小林:それでは、菅原さんのご経歴についても教えてください。

菅原:私はPR会社に4年ほど在籍し、大手スポーツメーカーや官公庁、博報堂など広告代理店との業務を担当していました。途中からは博報堂に出向し、PR戦略局で危機管理広報なども学びました。ですが、ある時に代理店業務だけでは、十分な“当事者意識”を得られないなと感じるようになったんです。そこで、私も先ほど原田さんがおっしゃっていたところの、事業にコミットしたいタイプだと気づきました。私たちがやっているのは、パブリックリレーションズだと言いながら、メディア露出がゴールになってしまっている環境に、モヤモヤしていたんですね。

そこで、当事者意識を持つために自分で会社を作ろうと思い、共同創業者として立ち上げたのが、PR Tableです。PR Tableは、もともと趣味でやっていたブログの延長線で生まれた会社で、当初は「これがやりたい!」という具体的なアイデアはありませんでした。ただ、自分たちのプロダクトを持つこと、そしてそのプロダクトがあることで広報業務が大衆化できると良いなと思っていましたね。なので、どれくらいの規模の会社でも、誰であっても、同じプロダクトであれば同じ金額で提供できるようなものを作りたいという思いが根底にありました。

4年目には『PR3.0』というカンファレンスを開催しました。シリーズAの資金調達を完了したタイミングで、PRが投資に値する業界なのかを見極めるために、何かインパクトのある、ビジネスカンファレンスのようなことをやってほしいというお題があったんですね。その時に、PR業界のビジネスカンファレンスを見たことがないと思ったのと同時に、PR Table自体が、「これまでのPR会社がやってこなかったことにチャレンジしてくれそう」という期待を持たれたかったこともあり、挑戦することになりました。

結果として、多くの人から評価をいただくことができましたが、やっていること自体は、「膝を突き合わせて、もっとPRの話をしていこうよ」という思いでブログを書いていた頃と同じです。自社のことではなく、PRについて話せる場を設けられたのは、創業の頃からやりたかったことだと後から気づきましたね。

小林:そこから、どのような背景でユーザベースへキャリアチェンジされることになったのでしょうか。

菅原:PR Tableに6年務めた後、起業やフリーランスなどの道も考えましたが、ユーザベースの代表・稲垣に声をかけてもらい、ユーザベースと業務委託で関わることになりました。当初は、『NewsPicks Re:gion』という、NewsPicksの地域拡大プロジェクトの立ち上げをお手伝いをするという立ち位置でしたが、正式に入社したのち、上場企業で、PRの力で企業価値を高められるか挑戦してみたいと思い、ユーザベースグループの広報責任者を務める運びになりました。

キャリアチェンジ後に企業から期待される役割とは?

小林:お二人のジョインに対し、それぞれの会社からはどのような役割を期待をされていたのでしょうか。

原田:スマートニュースに限らず、ベンチャーには大成長/急成長しなければいけないという宿命がありますよね。会社の様々な機能を猛スピードでつくっていく中で、スマートニュースの社内では、企業広報についても組織的に取り組まなければならないという声があがっていたんです。弊社代表・鈴木の直下のPRグループを立ち上げるために、そのヘッドを探していた状況でした。そして、最終的に採用されたのは、PRパーソンとしてキャリアを積んできたわけではない私でした。私はもちろんワクワクしていましたが、大きな挑戦で緊張も感じました。

小林:スマートニュースがPRを重視するフェーズにあったんですね。

原田:そうですね。PRや企業広報は、企業にとって必要不可欠なものですし、話題や記事にしてもらうためには、今の社会や生活者の中でテーマになっていることと、どう接点を見出しながら“世の中と握手していくのか”を考えなければいけませんよね。これはスマートニュースに限った話ではないですが、ベンチャー企業をはじめ、今までなかったことをやろうとしている企業は、どうしても称賛だけではなく批判も受けやすい環境にあると思うんです。なので、世の中の様々な文脈を感じ取り、理解しながら、その文脈に合わせた形でどう握手していくのかを考えられる人材が、求められていたのではと感じますね。

小林:確かに、企業が大きく成長する上でも、「自分たちがどのような企業なのか」ということは明示しなければなりませんよね。

原田:そうですね。もちろん、生活者に向けたマーケティングも行っています。マーケティングでの目標が“ユーザーを増やすこと”だとすると、広報/PRの目標は、“社会から信頼を獲得すること”だと思いますね。

菅原:その考えには、私も共感しています。原田さんがスマートニュースにジョインするタイミングでお会いさせていただいたのですが、その時は、ちょうど「Black Lives Matter」などの社会問題が話題になっていた時期で、「これからのメディアがどのようなことをしていかなければならないのか」についてもお話しました。SmartNewsさんやNewsPicksのような、人に影響を与える事業が、これからどうあるべきか、また、そんな会社の広報は楽しそうですよねという会話もしましたね。

小林:菅原さんは、ユーザベースからどのような役割期待があったと思いますか?

菅原:SmartNewsさんも同じだと思うのですが、NewsPicksは他のメディアに取り上げられることがないんですね。そのため、メディアリレーションズは難しいですし、パブリシティを獲得することも容易ではありません。そのような状況だと、多くの人の目をひくアクションを増やさねばならず、自ずと自社主催のイベントや活動がベースになってきます。その時に、「どのようなメッセージを作るか」「どういった人たちを巻き込むか」という考え方が必要になるため、そこの期待はされていたのではないかと思います。

また、“外の視点”も求められていたと思いますね。ユーザベースもNewsPicksも、カルチャーがとても強烈で、求心力が高い一方で、価値観の同質性が高いと思われる側面もあります。会社のフェーズが変わっていく中で、徐々に社会とのズレも生まれてきているように感じていました。その間に入って、ズレを修正していくような取り組みは、期待されていると思います。

NewsPicks、スマートニュースにおける広報/PRの立ち位置とは?

小林:それぞれの会社の中で、広報/PRとはどのような立ち位置なのでしょうか。

原田:実は、現在スマートニュースでは、各プロジェクトに必ずPRグループのメンバーを1人アサインしています。それは、「これからこういった情報のニーズが高まるであろう」「このプロダクトはこの日に出さないと意味がないだろう」といった知見を、ひとつひとつのプロジェクトに落とし込むためです。PRにおいて、数ある重要事項の中で、“タイミング”もまた外せない項目ですよね。個人的に、このような体制を取れることは新しいなと感じています。

ただ、そもそも社内において、PRに対し期待されているものが大きかったのはあるかもしれません。社内では、先述したような体制を取る以前から、とある企業の「プロダクトを作る前に、まずプレスリリースを書く」という話がよく共有されていました。最初にプレスリリースを書くことで、世の中におけるそのプロダクトの意義やコンセプト、そしてなぜ今出すのか、という部分まで詳細に見えてくるんですよね。このような考えが事前に社内で浸透していたため、PRの重要性も理解してくれているように感じます。

小林:タイミングを読むためにあらゆる情報を集めて行う、“未来予測”のスキルはPRにおいて重要ですよね。スマートニュースさんのような組織体制と組み合わさることで、高い相乗効果が生まれそうです。

原田:そうですね。短期的な未来予測もあれば、中長期的な未来予測もあります。長期的なものでいうと、例えば「テック企業に対するメディア論調や生活者感情は、こうなっていくのではないか」「ソーシャルメディアの論調はこうなっていくんじゃないか」などと予測できますし、中期的だと、「来年これが起こりそう」、短期的だと、「このリリースは、直近であのイベントがあるからこの日に出さなければいけない」と考えることもできます。この感覚的なものは、PRパーソンであれば持ち合わせているべきですよね。

また、ニュースを届ける私たちの事業と、正しいタイミングで正しい情報発信を設計するPRは、相性が良いというのもあります。情報ニーズを読んで、そのニーズに応えるという行為自体が、PR発想に近いと思うんです。私はPR専門家ではまだ1年生ですが、私なりに1年やってきた中で、PRの重要性には改めて気づかされましたね。

小林:なるほど。NewsPicksさんにおけるPRの役割についても教えていただきたいです。

菅原:個人的にNewsPicksに対して、「『経済を、もっとおもしろく。』というタグラインを掲げ、社内では多様性を重視しているけれど、実際にはまだ“中央の人”しか経済情報を楽しめていないのでは」という感覚がありました。たとえば、ユーザベースグループの広報と並行して、『NewsPicks Re:gion』にも引き続き携わっているのですが、認知拡大をメインとした取り組みであるにも関わらず、そもそもNewsPicksでは地域に関する経済情報が少なく、事業としての地域へのコミットメントが不十分だったんです。そのような状況の中、地域のユーザーを増やしたいと言っても、地域に根を張るのは無理があると思いました。

そのため、「NewsPicksを利用してもらうためには、まず、僕らが地域を知る必要がありますよね」という考え方で活動をスタートしました。個人的にはこういった活動も「パブリック・リレーションズ」の一部だと思っています

小林:まだ“中央の人しか経済を楽しめていない”という現状は確かにありそうですね。一方的に自分たちのことを知ってもらおうとするのではなく、お互いのことを知り合おうとするのは、まさにパブリック・リレーションズの考え方だと感じます。

菅原:そうですね。私自身も、たまたま起業したからNewsPicksを利用していましたが、起業していなければ経済情報に興味を持てず、恐らく使っていなかったのではと思います。上場企業の社会的責任もある中で、地域や性別、バックボーンに関わらず、フェアに価値を享受できるようにしていくことが重要ではないかと思いますね。ここに対しての使命感はとても強く持っています。

 

≫後半『メディアリレーションズが難しいからこそ本質的なPRに迫ることができる』

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