PRネタに困ったらこれ!調査PRの考え方とリリースのつくり方

プレスリリースを用いてメディアへ自社のニュースを発信する際に、「新商品・サービスや面白いキャンペーンがない」「ニュースになるような社内動向もない」とPRのネタに困ったことはないでしょうか。そんな悩みを解決する方法の1つとなるのが、生活者へのアンケート調査結果を活用した「調査PR」です。

しかし実際に行われている調査PRは、商品に無理やり繋げた恣意的な調査や、商品情報が盛大に盛り込まれたもの、またバイアスがかかったデータ分析、調査結果としての精度が低いものが多いため、調査リリースの本来の目的や効果を再認識する必要があります。本記事では、メディアに求められている調査PRすなわち調査リリースの考え方とつくり方について紹介します。

ターゲット設定と心構え

マーケティングやPR担当者の立場からすると、どんなに面白い調査結果が出ても、商品・サービスのターゲット層に情報が届いていなければ、PR効果があったとは言い難いです。そうならないためにも、はじめに明確なターゲット設定を行ないます。

またメディアの立場から見ると、商品に無理やり繋げた恣意的な調査や、バイアスがかかったデータ分析が見え隠れする内容では、箸にも棒にもかからないため、このトンマナのバランスを考慮して戦略的に考えることが大切です。調査リリースを実施する上では、「世の中に有益なデータを提供することが目的で、メディア掲載に合わせて、商品も紹介してもらえたらラッキー」「商品をストレートに訴求するものではなく、マーケティング効果に即時反映はない」が、「メディアリレーションの構築や信頼感の醸成に絶大な効果を発揮する」と心構えましょう。

アンケート調査対象者の設定

フォーマットとしては、「A.ターゲット型」「B.逆ターゲット型」「C.全方位型」「D.オピニオン型」が挙げられます。

  • Aターゲット型:上記①と同様で、同じ立場から“共感”や“気づき”を生み出す(例:主婦向け商品→主婦)
  • B逆ターゲット型:逆のターゲット(立場)から“新たな気づき”を与える(例:主婦向け商品→旦那)
  • C全方位型:AとBを網羅し、多角的な情報設計を狙い、“共感”や“気づき”を探る
  • Dオピニオン型:商品・サービスに関連するオピニオンに特化させ、“プロが選ぶ○○”といった箔をつける

図1:4つの調査対象ターゲット型

上記を踏まえて、詳細に「アンケート調査対象者」の設定を行ないます。

  • サンプル数:1クラスターあたりの回答数を設定します。 ※「母集団の人数」と「正確性」で判断します。
  • 割り付け:性別/年齢/出身地・現所在地(単位:エリア/都道府県/市区町村)などにサンプルを振り分けます。
  • 特殊条件(スクリーニング):未婚・既婚/年収/役職等の設定をする場合に設定します。

「サンプル数」が多いほど“許容誤差”が小さく、“信頼レベル”の高い「高精度な調査」ができます。

一般的には、「許容誤差は1~10%|信頼レベルは90~99%」の範囲で設定されます。統計学上“母集団の人数(ユーザー規模)”が1,000人以上の場合、「370~390人」にアンケートを行なうことで母集団の人数に関わらず、「±5%の誤差範囲内&95%の信頼レベル」で調査を行なうことができます。また、“信頼レベル(どのくらいの確率で許容誤差内になるか)”を90%以上にするには「271人以上(95%:384人|99%:664人)」が必要です。

上記をまとめると、「精度を求めるなら、400人以上」「許容値でミニマム(基準)なら、100人以上」「ざっくり市場を知りたくてスピード重視なら、50人以上」ということになります。※母集団の人数「100万人」として参考指標を提示します。

図2.タイプ別サンプル数早見表

 

アンケート調査結果(仮説)の設定

単なる調査結果では、メディアの触手は動きません。そこで、導き出す調査結果を「方向性」と「ニュース性」の双方向から仮説立てます。これが調査PRにおける“コア”となります。ここでの「方向性」とは、導き出したい結果によって情報の受け取り手をどんな気持ちしたいかを定めることです。「うん、そうそう(共感)」や「マジか!(驚き)」、「え、そうなの?(気づき)」、「いや、でもさ…(問題提起)」など情報を受け取った際のリアクションをイメージしてください。

また、「方向性」だけではメディアからすると紹介しにくいので、「ニュース性」も考慮しましょう。「時期・季節的に面白い(時節性)」や「新しい着眼点だ(新規性)」、「流行にそんな特性があったのか(流行性)」、「社会的に議論を起こせそうだ(社会性)」といった時事ネタや旬なトレンド性を意識することで、ニュース性を持たせることができるので、メディアも掲載を検討しやすくなります。

図3.アンケート調査結果(仮説)の設定要素

 

調査項目の設定

調査項目を熟考せず、「えいや!」で実施して、「さて、リリースをつくろう」では、「だから何?」に陥ってしまう可能性が高くなります。導き出したいのは、「こんな事実が明らかに!その理由は○○!」といった結果です。

上記で立てた仮説を基に、「設問数」と「回答形式」を見合わせて、逆算で調査項目を設計していきます。「設問数」については、極論、意外性を出せるのであれば1問でも問題ありません。また、サンプル数の補完を鑑みると、設問数が多過ぎては収集~分析までの時間がかかってしまい、折角のニュース性やタイミングを逃してしまう可能性があります。とはいえ、設問数100問で実施した場合に「○○に聞いた100のこと」といった、興味を引くワードを活用することもできます。

あれもこれも聞きたいと考えて、設問数が30問以上になった回答者のストレスにつながることもありますが、想定される回答の選択肢から選択してもらう(SA/MA)といった、「回答形式」で設問数を減らすことも可能です。この方法で集計すると、数字で示す「定量データ」が得られ、意見や感想などの感情的なデータとなる「定性データ」は自由回答(FA)で導き出すことができます。

  • 設問数:回答者ストレスを考えて10問程度が標準的
  • 回答形式:選択回答(SA)/複数回答(MA)/自由回答(FA)など

 

調査結果の整理

調査結果の全項目を提示するのではなく、いかに要点を伝えるかがポイントになります。折角の調査データだから全部を提示したいと思うところですが、メディアは限られた時間と記事スペースの中で情報を取捨選択しています。タイトル部分に最も引きのある調査結果(例:○○と感じる20代女性が△割)を記載し、要約の枠を設けることで、やぼったい調査リリースにはならずに済みます。

また、調査結果が「驚き」や「共感」につながる場合は良いのですが、「だから何?」に陥りそうな場合は、社会背景や時節を踏まえて考察することで、「気づき」につなげることもできます。そのため結果を悲観せず、諦めずに調査結果と向かい合いましょう。

図4:アンケート調査結果(仮説)の設定要素+5つの付加価値

 

付加価値のつけ方

調査結果だけに留まらず、さらに価値を加える方法についても紹介します。

新しく調査を始めた場合は、視認性を意識した「インフォグラフィック」を活用して、データを見るだけで理解できて面白がれるようにしたり、データを別のモノに置き換えてコミカルにしてデータに興味を持ってもらったり、オピニオンを起用することで第三者視点を取り入れ、信頼性を付与したりできます。また、市場全体を網羅したオリジナルランキングや、自社商品内ランキングといった独自性を持たせることも価値があります。さらに、経年変化をデータとして集積していく定点調査もじわじわと効果を発揮してきますので、参考にしてみてください。

図5:調査リリース構成イメージ

最後に、過去事例で戦略的に調査データを活用した事例を簡単に紹介します。

世界的なカミソリメーカーのジレットがインドを舞台に展開した調査を活用した「シェイブインディア」は、PRに留まらず、マーケティングも巻き込んだ事例として面白いです。「議論好き」で「髭があったほうがイケメン」という認識が根強いインド人の国民性を踏まえて、「髭は剃るべきか、剃らざるべきか」というたった1問の設問で議論を巻き起こしてムーブメント化しています。さらに素晴らしいのは、モテの観点から「女性視点」を提示したことで、「実は髭がない方が良い」と次々にカミングアウトし、男性たちの気持ちも揺らぎ始めます。この揺らぎに合わせて、同時に価格引き下げを実施、『史上最大のヒゲソリイベント』の開催(ギネス認定)も合わせ技で実施した結果、ジレットの商品トライアルは400%伸長、売上40%増大、シェアは25%向上という大成功につながっています。

狙いどころがピタッとはまることで、想像以上の話題を呼ぶ「調査PR」をはじめ、マーケティング施策も連動させることで、売上まで繋がる可能性を秘めている「戦略PR」にも是非チャレンジしてみましょう。

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