あなたは「PR」と聞いて何を思い浮かべますか?「PR=宣伝」と思っている人は非常に多いですが、PRの本当の意味は実はもっと幅広く、またもっと身近なものなのです。本記事ではこれからPRについて学ぶ人に向けて、PRの概念と歴史から、混合されやすい宣伝や広報、また広告との違いまで、わかりやすくご説明していきます。
CONTENTS
PRの起源と概念
PRの起源は20世紀初頭までさかのぼります。真のPRを理解するためにも、まずはPRの歴史から簡単に紐解いていきましょう。
1. PRの略歴
PR(Pubulic Relations)は20世紀初めにアメリカで誕生し、企業や政治指導者が、公衆(Public)の理解や信頼を得るために発達したものと言われています。
PRが産声を上げた時代、それは企業が生活者の利益を無視して資本を集中させ、暴力的に富を築いていた時代でした。そんな時代に、企業と生活者の間にできた大きな溝を埋め、関係性を修復するツールとして現れたのが、PRです。
その後PRは、世界大恐慌が起こった1929年に、アメリカ国家を統治するものとして重要な役割を果たし、公民権運動が活発化した終戦後の1960年代には、政府や企業からの「一方的な説得コミュニケーション」から、企業や政府と生活者をつなぐ「双方向性コミュニケーション」へと変化。このようにして、PRは徐々に社会への大きな影響力を持つものとして成長していきました。
2.PRは双方向のコミュニケーション
PRは直訳すると「公衆との関係」になりますが、上記のようにPRの概念は時代とともに変化しています。今のアメリカの社会では、PRは「双方向のコミュニケーション」として定着し、政治や企業にとって非常に重要な役割を担うようになりました。
しかし日本の社会では、PRという言葉が一昔前の概念のまま使われているように感じる場面がしばしばあります。本来ならば、企業と生活者が双方向のコミュニケーションをとるための、全ての活動を「PR活動」と指すべきですが、生活者にとってPRは「宣伝活動」であり、企業の広報担当者にとってPRは「メディアに情報を取り上げてもらうための活動」と認識されています。これらも決して間違いではありませんが、真のPRとはもっと広義的で、もっと身近に存在するべき言葉なのです。
このようにPRの概念は、その曖昧さがゆえに、「宣伝」「広告」「広報」などの類似語と混合されやすくなっています。これら類似語との違いを理解することで、PRへの理解を深めていきましょう。
「宣伝」と「PR」の違い
冒頭でも述べたように、「宣伝=PR」と思っている人は非常に多いです。しかしこれは大きな間違いであり、両者は根本的に違った概念になります。
まず宣伝は、「宣伝する側が自ら意図する方向へ、多数の人を導くコミュニケーション」と定義されています。さらに宣伝は、英語で「プロパガンダ」と訳され、欧米では特定の主義や思想を政治的に宣伝するという意味合いが強くなっています。
一方PRは、「客観的な事実を中立的に伝えるコミュニケーション」と定義されています。つまり、宣伝する側の意図を押し付けて誘導する宣伝と、情報提供のみを行って内容の判断は受け手にゆだねるPRは、その意義に大きな隔たりがあります。

図1:宣伝とPRの違い
「広告」と「PR」の違い
最近は広告にも様々な種類が存在し、より生活者と距離の近いものになってきているため、これもまた概念が混同されることが多いです。しかし広告とPRにも、明確な違いがあります。
まず広告は、「広告主が自らの商品やサービスを利用してもらうための、一方向性の情報発信」であるのに対し、PRは「両者の理解を主眼とした双方向のコミュニケーション」です。広告は、商品を売るために広告主(=企業)にとって都合の良い表現を使うことが出来ますが、PRの場合、情報発信者・情報を伝えるメディア・情報を受け取る生活者という三者の仲立ちをしながら、情報をフェアに扱わなければなりません。そのため広告では、時には過激な表現や誇張表現が使われることがありますが、PRは真実に基づいた、誤認を生まない適切な表現のみが使われます。

図2:広告とPRの違い
「広報」と「PR」の違い
広報とは、メディアに情報を提供する活動のことを指します。新商品情報やイベント情報をメディアに送って取り上げてもらう際や、政府や行政機関が記者クラブに向けて情報発信を行う際に使われる言葉です。
情報を中立的に扱う点においてはPRと同じですが、広報は発信者の情報をメディアに伝えるだけの一方向性の情報発信なので、これもまた双方向のコミュニケーションを行うPRとは異なります。

図3:広報とPRの違い
広義のPRを理解した上でPR活動を
日本のPR活動は、これまでメディアに取り上げられることを目的に行われてきましたが、プレスリリースなどによる情報提供は、本来のPR活動の一部にすぎません。
繰り返しになりますが、PRとはもっと広義的な言葉です。生活者と広域なコミュニケーションを図り、企業と生活者が手を握ることが出来れば、そのPR活動には成果があったと言えます。企業の広報担当者に任命された人や、PR会社で働く人、またこれからPRの勉強をしていく人は、この点をしっかりと理解した上で、PR活動における戦略を考えていくことが大切です。
次の記事『広報PR活動の基礎|広報担当者の心構え』では、実際に広報PR担当に任命された時に知っておくべき知識や、心構えについて解説します。
※本記事は、朝日新聞出版社『PR GENIC -資産価値を高めるPRとは-(著:東義和)』をもとに執筆しております。
