私たちの生活に様々な影響をもたらした新型コロナウイルス。若者世代である女子大生も例外ではなく、大きなライフスタイルの変化を余儀なくされました。その結果から、若年女性向け商材やサービスを扱っている企業では、「これまで通りの企画が通用しない」「売り方を見直さなければならない」などと、壁にぶつかっているところも多いのではないでしょうか。
以前にも増して若者世代のリアルな声が必要な今、実際に女子大生の間でどのような生活の変化が起こり、どのようなトレンドが生まれたのかを知ることは、今後マーケティング活動を行っていく上で非常に重要です。
今回は、各大学のミスキャンパスが集まり、社会課題に取り組むプロジェクトチーム「キャンパスラボ」が行った調査内容をもとに、女子大生のリアルなインサイトを紐解いていきましょう。
CONTENTS
女子大生はコロナ期間をどう過ごしていたのか?
コロナ禍で変化する女子大生の生活
気軽に外出ができなくなったことで、彼女たちの生活は大きく変わりました。ここでは3つの変化について、キャンパスラボの調査結果をもとに紹介していきます。
①大学での授業がオンラインに
1つめの変化は、「大学での授業の受け方」です。外出ができず、大学にも行けなくなったため、オンライン授業が主流となりました。家で授業を受けられるということで、コロナ前よりも楽になったのでは?と思われがちですが、実際のところはそうでもないよう。出欠確認の代わりとして、毎日期限が短い課題や、大量のレポートを出されるなど、マイナスなことも多いそうです。また教授によって、使われるツールが違ったり、課題の提出方法の説明がきちんと行われていなかったりと、大学側のサポートの手薄さに不満を嘆く声が目立ちました。
②「リモートバイト」という新ジャンルの出現
2つめの変化は「アルバイトの仕方」です。今までアルバイトといえば、リアルでお客さんを接客するものが主流でしたが、コロナ禍で「テレワークバイト」という新ジャンルが出現しました。テレワークバイトとは、家の中でできる、問い合わせ対応や採点業務などの事務的な作業を指します。
また、本来は就職を意識して行う職業体験である「長期インターンシップ」が、家にいながらできるアルバイトとして注目を浴びています。「社会経験ができればという想いで始めたものの、単純な作業を任せられることが多く、お金をもらえるのでバイトとして続けている」という声が挙がっており、インターンの定義がこれから変わっていく可能性があります。
③就職活動もオンラインが当たり前
3つめの変化は、「就職活動のやり方」です。就職活動においても、オンラインが主流となっています。「家で面接を行うので、緊張せずに自分らしさを出すことができる」、「説明会や面接など、様々な場所に行かなくても良いので、交通費がかからなくてありがたい」などといった意見からも分かるように、コロナ前の就職活動と比べると、オンラインでの説明会や面接は、メリットとなる要素が多そうです。また、普段からオンラインでの繋がりに慣れているため、就職活動もやりやすいといった声が目立ちました。
コロナ禍で生まれた新たな女子大生トレンド
女子大生の生活が変わったことによって、「オンライン飲み会」「にんじんチャレンジ*」「おうちカフェ」「新たなハッシュタグ」「自宅トレーニング」など、新たに生まれたトレンドがたくさんあります。
これらはなぜコロナ禍に流行ったのでしょうか?それは、コロナ禍で起こった生活の変化により、女子大生のインサイトも変化したためだと考えられます。例えば、大学に行けなくなったことで、友達とコミュニケーションを取れないもどかしさが生まれ、「オンライン飲み会」や「にんじんチャレンジ」などのコンテンツが盛り上がりを見せました。「リアルで会えなくても、友達との繋がりを保ちたい。」そんなインサイトから、このトレンドは生まれたのです。
*…インスタストーリーでにんじんの絵を描いて、誰かにメンションを飛ばし、メンションされた人がまたにんじんの絵を描き、また他の人にメンションを渡していくというもの。
また「おうちカフェ」「新たなハッシュタグ」「自宅トレーニング」にも、同じようにコロナ禍で変化した女子大生のインサイトが関係しています。次の章からは、この3つを例に挙げ、コロナ禍で新たなトレンドが生まれた背景を探っていきましょう。
この章のまとめ ✓リモート就活は賛成、リモート授業は反対。同じリモートでも大きく異なる結果に ✓生活の変化に伴って、デジタルとリアルの両方で新たなトレンドが生まれた |
[Case1]コロナ禍で変化するSNS映え
ライフスタイルが変わり、女子大生のインサイトにも変化が起きたことで、コミュニケーションツールであるSNSの活用の仕方も、大きく発展しています。それでは実際に、どのようなインサイトが新たに生まれ、SNSの活用の仕方にどのような変化が起こったのか、具体的に見ていきましょう。
流行メニューの共通点は「日常の演出」
これまでの女子大生は、外でオシャレなスイーツを食べたり、友達とテーマパークに行ったり、そういったことをSNSに発信して、充実した生活をアピールしていました。しかし、コロナ禍でそれが不可能になり、周りの目を気にして気軽に外出できなくなった彼女たちに芽生えたのが、「家の中でも充実している自分を見せたい」というインサイトでした。ここで重要になってくるのが、あくまで”家の中にいる日常的な自分”を演出したいという部分です。見た人が、「自分も真似できるかも!」と、憧れを抱く“張り切りすぎていない日常”。それをどう演出するかが、コロナ禍コンテンツのカギとなりました。
そんなインサイトを持つ女子大生によって生まれたコロナ禍でのトレンドが、「おうちカフェ」です。あくまで“家の中にいる日常的な自分”を演出したい彼女たちにとって、外に出て材料を買い込まなくても簡単に作ることができ、なおかつ見た目が可愛いおうちカフェのメニューは、ピッタリのコンテンツだったのでしょう。また、おうちカフェで使うマグカップやお皿、背景となるインテリアなども、“日常的に素敵な自分”を演出するために、注目を浴びたものの1つと言えるでしょう。
SNS映えに必要な新要素は「ソーシャルグッドな自分」
これまでは、可愛くてオシャレな、いわゆる「インスタ映え」「フォト映え」なものを投稿するのが女子大生の主流でした。しかし、コロナ禍によってその考えは変わりつつあります。「コロナ禍で様々なニュースを見るようになり、社会情勢を意識するようになった」というインサイトが新たに生まれたのです。ここから分かるように、今女子大生の間でSNSは、「ただ可愛いだけでなく、ソーシャルグッドな自分を発信する場所」と位置づけられるようになりました。
しかし、いきなり社会情勢に対して、長い文章をつらつら書き連ねて投稿するのは、ハードルが高いうえに周りの目も気になります。「もっと気軽に発信したい!」そんな女子大生が好んで使ったのが、“ハッシュタグ”でした。「#おうち時間」「#StayHome」「#この自粛が終わったら」「#コロナに負けるな」などの新たなハッシュタグがコロナ禍で生まれ、積極的に使われるようになりました。またハッシュタグの他に、インスタグラムのストーリーズの機能である“スタンプ”で自粛を呼びかける人も。「おうち時間」「今日の感謝」「僕たちの健康を守ってくれてありがとう」など、可愛くて、かつ簡単に社会に対してメッセージを届けられるスタンプを使った投稿が目立ちました。
この章のまとめ ✓家でも素敵、でも張り切りすぎていない「日常演出」が人気に ✓可愛いくて、意識の高い子、「ソーシャル映え」が新常識に |
[Case2]意識はすでにアフターへ。女子大生は「先読み自分磨き」
先の見えない自粛生活の中で、女子大生たちはある目標を立てるようになりました。
「自粛明けにパワーアップした姿を見せて、周りに差をつけたい。」
このいわゆる”マウント”心理により、自粛時間を活用して自分を磨く「先読み自分磨き」が始まったのです。ここからは「先読み自分磨き」の傾向をピックアップし、詳しく解説していきます。
女子大生が自分を磨く理由は「アフターコロナマウント」
上述の自粛期間特有のマウント心理は、ここでは「アフターコロナマウント」と名付けられています。アフターコロナマウントの中にも、外見、学力、スキルなど様々なジャンルが存在しますが、今回の調査で特に目立ったのは、「自粛明け、痩せて可愛くなって友達を抜け駆けしたい」「みんなコロナ太りしてそうだから、自分は痩せておけばマウントを取れそう」など、外見に関する声でした。
自粛中は、他者との繋がりを求める傾向が強かったことは事実ですが、一方で、他者に外見を磨く過程を見せたくないという意識も存在したのです。これは、結果が出なかった場合に備えての保険や、誰もが自宅で過ごさなければならない同じスタートラインから、どれだけ人と差をつけてゴールできるかという“競争意識”ゆえではないでしょうか。このことから、今後女子大生の心を掴むキーワードの1つは「こっそり」になるかもしれません。
また、自粛の日々の中で、何もせずに時間を過ごすことに焦りや後ろめたさを感じた人も多かったはずです。この、時間を有効活用しなければならないという焦りを、自分磨きに勤しむ「努力感」で抑えていたとも考えられます。こうした努力需要から、“時間をかけて取り組むスキンケアやダイエットに注目が集まる”という道筋ができました。
この努力需要は、昨今の「田中みな実買い」現象を説明するカギにもなります。「田中みな実買い」とは、フリーアナウンサーで女優の田中みな実さんを真似して、彼女の愛用する化粧品などを購入することです。この「田中みな実買い」は、ビューティープラットフォーム@cosmeが決定する2020年上半期美容トレンドキーワードにも選出されました。
多くの女優やモデルがSNSなどを通じて愛用品を紹介する中、なぜ田中みな実さんが女子のミューズに選ばれているのでしょうか。これを説明できるもののひとつが、「努力需要」です。
田中みな実さんといえば、可愛らしい容姿やキャラクターと共に、努力家としても有名です。特に美容に対してはストイックで、雑誌やテレビでは度々その姿が紹介されています。「田中みな実=努力の賜物」というイメージが、「彼女の愛用品を使うこと=努力、綺麗になれる、意識が高い(と認定される)」というイメージを想起させるのです。彼女の愛用品が高額であっても、そこには約束された努力感があるため、女子たちはモチベーションへの投資を惜しみません。
生活者のニーズで変化する自宅トレーニング動画
アフターコロナマウントの影響で、日に日に進化を遂げているものの1つに、自宅トレーニング動画があります。「自粛でジムや外でのトレーニングができない」「普段から運動はしないけれど自粛を機に運動を始めたい」「自粛期間を利用して効率よく痩せたい」、こうしたニーズに応える形で、YouTubeには様々な種類の自宅トレーニング動画がアップされました。
自粛前~自粛初期に特に流行ったのが、「ハンドクラップ(ハンズクラップ)」と「バニトレ」です。
どちらも韓国発のトレーニング動画で、短時間の運動で痩せることや、ノリの良い音楽に合わせて踊って痩せるという点がウリです。この2つの動画は、コロナ前からTwitterなどを中心に流行っていましたが、自粛中の努力需要に合わせて人気が加速しました。
各動画のコメント欄には、
「コロナで暇なので!!2週間ダイエットします!!」
「コロナで休校延長したので、これから毎日踊り続けようと思います。」
「約一ヶ月毎日続けて、体重が4キロくらい減りました!」
「これ2ヶ月弱毎日3回やって、3kg痩せました」
などの声が見られます。
一方で、このような不安の声も。
「走ったら家が揺れて怒られた」
「これ家の中でやってたら暴れんといてって言われた」
「アパートだとなかなかやりづらいかも」
「こういうときのマンション勢悲しいよな…」
ジャンプやステップが多いため、近隣への騒音や振動を気にする声が多く見受けられたのです。この流れを受けて広まったのが、ジャンプや激しいステップをしない「マンションOK」のトレーニング動画でした。さらに、家で1人でトレーニングをしている人向けに、動画内のテロップで励ましてくれる、バーチャルトレーナー系の動画も増えています。
運動時間の短さやノリの良さ、楽しさなどはそのままに、自粛中の状況に対応した新しい動画が次々とアップされていきました。
自宅トレーニング動画の例にみられるように、コロナ禍における消費者のニーズは、以前よりもさらに速いスピードで変化しています。そのニーズをキャッチして、素早く対応したコンテンツこそが、新たなトレンドとなっているのです。ニーズをいち早くキャッチするためには、リアルな声が溢れるSNSだけでなく、コメント欄にも注目してみることが重要です。
この章のまとめ ✓自粛明けを意識した「アフターコロナマウント」により、巣ごもり美容の人気が加速 ✓消費者のニーズに素早く対応した「自宅トレーニング動画」がトレンドに |
Withコロナの女子大生トレンドを作る2つのカギ
今回の調査レポートから、これからの女子大生トレンドには、大きく2つのポイントが必要であることがわかりました。それは、「ソーシャル×映え」と「圧倒的なスピード感」です。
「ソーシャル×映え」
時代はもはや、写真映えでもインスタ映えでもありません。今女子大生が発信したいのは「良い子な自分」です。可愛いだけが求められるフェーズは終わり、可愛さ+ソーシャルグッドを兼ね備えた「ソーシャル映え」が必要なのです。
ソーシャルグッドと言っても、社会性が強いものや主張が偏るものは、女子大生にはハードルが高すぎてしまいます。あくまで「気軽に」ソーシャル映えになる、スタンプやハッシュタグがトレンドを仕掛けるカギとなります。
「圧倒的なスピード感」
企業のマーケターにとって、日々ターゲットのニーズをキャッチし続けることは重要ですが、今必要とされるのは“コロナ禍で急速に変化するニーズのキャッチ”です。
自宅トレーニング動画の例にみられるように、流行りのコンテンツでも、状況の変化によってすぐにトレンドはシフトしてしまいます。つまり、流行りを押さえた商材を考案しても、世に出た頃にはすでに時代遅れ…ということにもなり得るのです。目まぐるしく変わるニーズをキャッチするためにも、SNSやコメント欄を上手く活用し、いち早く対応するスピード感が重要です。
このように、「変化」が切っても切り離せないコロナ禍のマーケティング活動では、生活者の視点に立ち、共に動きを作っていくことが求められています。例えば、女子大生の承認欲求を満たしながら、気軽に参加できるハッシュタグを使ったキャンペーンを打ち出したり、既存の商品にソーシャルグッドの視点を足してコミュニケーションしたりするなど、本記事のポイントをぜひ今後の施策にご活用ください。
文=甲斐萌華、鈴木志歩
◆キャンパスラボについて
各大学のミスキャンパスが集まり、社会課題に取り組むプロジェクトチーム。企業様や自治体様と共創し、商品開発やマーケティングからプロモーション企画まで一緒に実践するプロジェクトチームです。「ミスキャンのイメージを変えたい、ミスキャンの力で社会を変えたい」という熱い志を持った各大学のミスキャンパスが集結し、『ミスキャンが世の中を変える!』を胸に、お客様の課題に合わせ、プロジェクトメンバーとしてマーケティング~ムーブメントまで一貫してサポートします。これまでにも神奈川県様との未病の取り組みや風しん撲滅に向けた啓蒙活動をはじめ、国土交通省様、東京都下水道局様などの公共団体、その他にも電鉄会社様、百貨店様、食品系企業様、そして航空会社様など様々な自治体様や企業様と社会課題解決に向けたプロジェクトの実施をおこなっています。
http://www.campuslab.jp/