企業・商品の宣伝やブランドイメージの定着、認知獲得など、さまざまな効果をもたらすことが期待されるテレビCM。一度でもテレビCMへの出稿を検討したことがある方は、より効果を発揮できるように、その目的や内容について頭を悩ませた経験があるのではないでしょうか。
そんな中、ローカル局を中心に「オン、オン、オンオンオンオンデーズ…」というフレーズのCMで注目されているのが、OWNDAYS(オンデーズ)です。同社は、タレントではなく社員をCMに起用し、そのチャレンジングな姿勢で話題を呼んでいます。
今回は、OWNDAYSのPRマネージャー・重村真実さんと、CMに出演されている広報・遠藤有紗さんにインタビューを実施。社員のCM出演が決まった背景から、話題になったポイント、積極的に生活者とのコミュニケーションを図る狙いや効果についてお伺いし、OWNDAYSが挑む新しい広報のカタチについて紐解いていきます。
株式会社オンデーズ ブランディング部PR/企画グループ広報PRマネージャー 重村 真実 2017年新卒入社。海外店舗のマネジメント候補(ワールド社員)として採用される。海外インターン、秋葉原での店舗スタッフを経験したのち、当時明確な広報担当者がいないなかで、社内FAによる選考を経て現在の部署に異動し、広報責任者に就任。 |
株式会社オンデーズ ブランディング部 PR/企画グループ 広報PR担当 遠藤 有紗 アメリカの短期大学在籍中、ボストンキャリアフォーラムでオンデーズと出会い、2020年7月に新卒入社。池袋・川崎の店舗で3か月ほど店舗スタッフを務めたのち、社内FAによる選考を経て現在の部署に異動。 |
CONTENTS
前代未聞の「広報担当がCM出演」
インターン生の遠藤さんから感じた“新しい広報のカタチ”
ーはじめに、OWNDAYSの広報体制について教えてください。
重村:OWNDAYSの広報は、ブランディング部の中にあるチームのひとつで、店舗のポスターを作成する「デザインチーム」、店頭の映像を作成する「映像チーム」と並んで属しています。広報チームは、遠藤さんと私の2人で活動しています。
ー2人体制で幅広い取り組みをされていますよね。業務はどのように棲み分けしているのでしょうか。
重村:私が主にコーポレート広報を担っていて、遠藤さんがSNSでの情報発信などをメインに行っているのですが、この棲み分けにはちょっとした背景があります。遠藤さんがまだインターン生だった頃、OWNDAYSの商品のメディア掲載にあたり、眼鏡を着用している写真が必要になったんですね。そこで、着用モデルを遠藤さんに依頼したところ、サロンモデルの経験もあってか、自発的に色んなパターンの服を用意してくれたり、インターン生とは思えないポージングを見せてくれたりしたんです(笑)。その当時から、これまでとは異なるカタチの広報として活躍してくれるのではないかと期待はしていました。
そのような背景もあって、いまはSNSを中心に前に出るような活動をしてもらっています。あとは、パブリシティで商品や店舗を紹介する際などにも、表に立ってもらうのは遠藤さんですね。“OWNDAYSの顔”として、定着してきているなと感じています。
あえてローカル局に絞ったCM出稿
―遠藤さんが出演されているテレビCMが話題を呼んでいますが、そもそもどのようなきっかけでテレビCMを打ち始めたのでしょうか?
重村:テレビCMを打ち始める前から、メディアで取り上げていただくことは多かったのですが、そのほとんどが、企業情報や「会社としての仕組み・ストーリーが面白い」といったもの。商品やブランドの認知度を考えると競合他社に比べてかなり低く、その点がOWNDAYSとしての課題でした。なので、認知獲得のためにテレビCMに踏み切ったというのが大きなきっかけです。
―ローカル局をメインにCMを出稿されていますが、これには理由があるのでしょうか。
重村:都心エリアの店舗数とCM出稿費を照らし合わせた時に、費用対効果が低いと感じたからです。放送エリア内の店舗比率が低いため、出稿費に見合った効果が得られそうな地域を厳選した結果、キー局ではなくローカル局でのCMがメインになっているという流れですね。遠藤さんが出演するCMは3本ありますが、1本目は九州・沖縄・北陸エリア限定でした。現在は、中部エリアと広島でも放送されています。
―遠藤さんがCMに起用されることになったきっかけについても知りたいです。
重村:第1弾のCMをつくることになり、ローカルタレントさんを起用したCM案など、色々とアイデアを練っていたのですが、「これだ!」という企画がなかなか思いつきませんでした。そんな時、代表から「ローカルタレントさんを起用するのではなく、表に立つことが得意な遠藤さんに出演してもらう方がいい効果が生まれるのではないか?」という意見をもらったんです。
たしかに、ローカルタレントさんだと、その地域でOWNDAYS以外のCMに出演される可能性も高いですよね。そのため、CMを打っても「OWNDAYS」という印象があまり残らないかもしれない。逆に、社員である遠藤さんが出演すれば、「この人は誰だろう?」と目に留まる可能性が上がりますし、CMやオンデーズに興味を持っていただけるポイントが増えます。遠藤さんからも「出演したい!」との返事をもらい、起用自体は割とスムーズに決まりました。実は、第1弾のCMはすべて内製で作っておりまして(笑)。その反響がよかったので、遠藤さんには引き続き出演してもらっています。
露出獲得に加え、TikTokで100万回再生を超える反響も
―実際に、生活者の方々からはどのような反響があったのでしょうか?
重村:CMとしての効果は一定数獲得できましたし、何より遠藤さんが出演したことによる反響が大きかったですね。当初の狙い通り、「あのCMに出演している女性は、タレントではなくOWNDAYS広報だった!」のような見出しの露出も多く獲得できました。
遠藤:出張でさまざまな地域を回っているのですが、熊本のとある温泉宿に宿泊した際、温泉に入っていると、小さなお子さんがCMのダンスを踊ってくれていて。実際に目に見える形で、生活者の方に届いていることを実感でき、とても嬉しかったですね。
また、企業用で運営している私の個人Twitterアカウントがあるのですが、CM放送を開始して短期間でフォロワーが1万人を超えるなど、数値的な反響もありましたね。特に、30~50代の男性層と、小さなお子さんを持つ主婦層のフォロワーの方が多いです。
重村:遠藤さんのアカウントに、お子さんが踊っている動画を付けてコメントしてくださる方も多いんですよね。その他にも、TikTokは100万回再生を突破するなど、企業のアカウントではなかなか出せないような成果も実感しています。もちろん、すべてがポジティブな意見ではないですが、OWNDAYSを覚えてもらうことができたという点では、テレビCM施策は成功したなと感じます。
―かなり狙い通りの反響を獲得することができたのですね。
重村:そうですね。パブリシティの露出で遠藤さんに出演してもらっているのも、「あのCMに出ていたのはこの人だったんだ!」と答え合わせになるような構成にしたかったからです。このような積み重ねが、狙い通りのリアクションを得ることができたひとつのポイントかなと思います。
カギは「身近な距離感」と「OWNDAYSの理念」
“素っぽさ”で親しみやすいキャラクターに
―ローカル番組での露出を多数拝見しましたが、ローカル局へCM出稿をされている関係からなのでしょうか。
重村:そうですね。基本的には出稿とセットで露出に繋がっているのですが、単純に枠をいただいているというよりは、ディレクターさんから「遠藤さんにこんなことをやってもらいたいのですが…」とご希望をいただくようなことも多いですね。もはや、ローカルタレントさんのような働きをしてくれています(笑)。
先ほど、CMの反響についても触れましたが、やはりCM出稿やテレビ露出をしている地方は、特に反響が大きくて。たとえば、タクシーの運転手さんからお声がけいただいたり、その地域に住んでいる友人から「毎日オンデーズのCM見てるよ」と連絡をもらったりしますね。
遠藤:福岡の飲食店に行った際、お店を出たところでサインを求められたこともあります(笑)。いつも恐縮してしまいます…。
―SNSだけではなく、メディアの方や実際にお会いする生活者の方など、さまざまな人と関わりを持たれていると思いますが、“OWNDAYSの顔”として、コミュニケーションを取られる際に意識されているポイントなどはあるのでしょうか。
遠藤:正直、「絶対にこうしよう!」と決めていることはなくて、素の自分をそのまま出していると思います。ただ、冒頭でもお話した通り、以前は企業情報の露出が多かったため、私を通して会社自体だけではなく商品にも興味を持ってもらえるようになりたいと考えています。そのためにも、できるだけおもしろい人間でいたいなとは思いますね(笑)。また、SNSアカウントでは、新作の眼鏡を毎回かけて発信しているので、その写真を見た方が「買いたい」と感じてくれる、いわば「OWNDAYSへの入り口」のような存在になれるよう、情報発信の仕方なども日々模索しています。
―私もSNSを拝見しましたが、遠藤さんの“素っぽさ”がより親近感を与えていると感じました。遠藤さんは、「身近な距離感」をつくるのがお上手ですよね。
遠藤:どこまでいっても私はOWNDAYSの社員なので、コミュニケーションを取ってくださる方には真摯にお返ししていきたいですし、手の届きづらい人というよりは、民間のアイドルのような「もしかしたら会えそうな人」くらいのポジションではいたいですね(笑)。CM放送している地域の店舗にはよく行っているので、「いま店舗に行けば遠藤さんに眼鏡を選んでもらえるかも!」のように、関わりたい・接しやすそうという雰囲気をつくることは意識しています。
人でブランドが選ばれる“○○さんのOWNDAYS”を目指して
―他に類を見ない広報を体現する遠藤さんが目指す、理想の広報像について教えてください。
遠藤:OWNDAYSの店舗スタッフ向けの理念のひとつに、「“OWNDAYSの○○さん”ではなくて、“○○さんのオンデーズ”になろう」という考えがあります。これは、会社を通してスタッフが評価されるのではなく、あくまでひとりの人間としてお客様に評価していただき、「○○さんが好きだからOWNDAYSに行こう」というルートづくりをしていこうというもので、私も「遠藤さんのOWNDAYS」になることが目標です。なので、挑戦させてもらえる限り、私自身の露出を通して皆さんにOWNDAYSの魅力をお伝えできるような広報活動を続けていきたいです。また、テレビ出演の経験から、よりローカル地域の皆さんとコミュニケーションを図っていきたいと感じているので、ライブ配信などにも力を入れていきたいと考えています。
―遠藤さんとのタッチポイント(顧客接点)が増えることで、OWNDAYSに対する親近感もより生まれそうですね。
重村:眼鏡業界は視力などと関連していることから、「半医半商」と言われています。半分医療である以上、お客様から信頼感や相談のしやすさを感じてもらうことが重要です。受診の度に違う病院を転々とするよりも、「いつも診察してくれる医者の病院へ通いたい」と思う気持ちと同じで、眼鏡屋に行くときも、「いつも相談にのってくれる○○さんがいる、あのお店に行きたい」という心理が働くと思うんです。遠藤さんの活動も、「遠藤さんがオススメしているフレームだから間違いない!」と思ってもらえるようなものに昇華していきたいですね。
―さいごに、OWNDAYS広報として、今後の展望について教えてください。
重村:テレビCMや番組露出を通じて遠藤さんがつくったポジションは、他の広報の方との大きな差別化になっていると思うので、“企業の人が出ることによる信頼度”を落とさないよう、SNSを始めとするコミュニケーションには引き続き力をいれてもらいたいです。「オンデーズといえば、代表・田中修治の次に遠藤有紗」と連想されるような存在になってほしいですね。
また、OWNDAYSは「眼鏡屋のスターバックスになる」という目標を掲げています。これは、スターバックスさんが持つ「どの店舗に行っても同じ環境で同じサービスが受けられる安心感」をOWNDAYSでも提供したいという想いからきています。現在、OWNDAYSも世界13か国・地域に店舗があります。そのため、たとえ国を越えたとしても、「OWNDAYSに行けば安心して眼鏡を購入できる」というイメージを持っていただけるよう、グローバルブランドとしてブランディングの改正にも力を入れていきたいです。
1997年生まれの道産子。2020年に横浜国立大学を卒業し、株式会社マテリアルに新卒入社。新設のメディアリレーションチームに配属され、約1年間メディアの知識全般を深める。2021年6月より、『PR GENIC』の2代目編集長としてメディア運営を引き継ぎ、記事の執筆や編集業務に従事。新米編集長として、日々奮闘中。