クレンジングバーム『DUO』はなぜ売れるのか?デジタルとアナログを併用したヒットの裏側とは

コロナ禍をきっかけに、盛り上がりを見せる、ネット通販市場。ECショップの開設や、デジタルマーケティングへの着手など、デジタル領域に注力する企業も急増しました。それは、これまでインフォマーシャルが主戦場だった化粧品メーカーも例外ではありません。

一方で、10年以上前の創業時から、デジタルマーケティングに積極的に取り組んできた化粧品メーカーが、プレミアアンチエイジングです。同社は、クレンジングバーム『DUO(デュオ)』や、オールインワンスキンケア『CANADEL(カナデル)』などのスキンケア商品を販売しており、アンチエイジング領域のリーディングカンパニーとして知られています。

同社は、なぜ早くからデジタルマーケティングに取り組んできたのでしょうか。デジタルマーケティングを軸とした戦略について、ダイレクトマーケティング本部 本部長 上村敬吾さん、ダイレクトマーケティング本部 マーケティング3部 山中実佳さんにお聞きしました。

化粧品メーカーが実践するデジタルマーケティング

化粧品はサブスクリプションサービスに近い

プレミアアンチエイジングさんは、クレンジングバーム『DUO』、オールインワンスキンケア『CANADEL』、敏感肌用コスメブランド『sitrana(シトラナ)』、オーガニックスキンケア『immuno(イミュノ)』という、4つの化粧品ブランドを展開されています。これらの化粧品ブランドを販売するにあたり、なぜいち早くデジタルに着目し、デジタルマーケティングに注力されてきたのでしょうか。

上村:弊社が創業した2009年は、まだD2Cという言葉すらなく、化粧品の販売は通販媒体が中心でした。しかし、世の中に目を向けてみれば、スマートフォンが普及し、デジタルへの本格的なシフトが進んでいた時期でもありました。生活者が日常で目にするものが、新聞などのアナログ媒体からスマートフォンに変わる過渡期だったのです。そういった市場動向を見ていれば、デジタルに注力するのは当然の選択だったといえます。

たしかに、オンラインショッピングなどは、当時から成長著しい市場でした。一方で、当時は「ネット通販に向かない商品もある」と言われていたと思いますが、化粧品に関してはどう捉えていましたか?

上村:化粧品は、デジタルでの販売に向いている商品だと思います。たとえば、アパレル系の商材の場合、生活者が同じものを繰り返し買うことって少ないですよね。また、衣料品は流行り廃りや趣味嗜好の違いもあり、LTV(顧客生涯価値)が計算しにくい商材でもあります。

一方で、化粧品は消耗品なので、継続して購入していただけますし、生活に必要なものなので、需要がなくなりません。女性の美に対する意識は一生続きますから、LTVも計算しやすいというメリットがあります。サブスクリプションに近いと言えるかもしれません。

―2020年からのコロナ禍で、化粧品業界のDXも急激に進み、多くのブランドがECに取り組むようになりました。生活者の意識の変化などは感じていますか?

上村:弊社でいえば、デパートやドラッグストアなど、実店舗でのリテールは影響を受けましたが、デジタルはやや追い風といったところでしょうか。スマートフォンでの購買行動は増えたと思います。

デジタル上で顧客一人ひとりに合わせた接客を行う

それでは、具体的にどのようなデジタルマーケティングに取り組まれていますか。

上村:基本的には、一通り行っていると思います。デジタル広告やメールマガジン、ウェブ接客ツールやチャットボットも取り入れています。

山中:ウェブ接客ツールは、私が運用を担当しています。『DUO』『CANADEL』『sitrana』『immuno』すべてのブランドで『Flipdesk(フリップデスク)』というツールを導入し、お客さま一人ひとりに合わせた接客をおこなっています。

ウェブにおける一人ひとりに合わせた接客とは、どのようなものでしょうか?

山中:たとえば、初めてウェブサイトを訪問したお客さまには、「初回限定キャンペーンのお知らせ」を出したいですよね。一方で、常連のお客さまに、初回限定キャンペーンをお知らせしても、対象外なので意味がありませんし、不快に思われるかもしれません。ウェブ接客ツールは、お客さまの情報をもとに、どんなバナーを表示するかを設定できるので、お客さま一人ひとりに合わせた接客が、ウェブ上でも可能になるんです。

たしかに、実店舗でもお客さまごとにご案内の内容を変えるのは当然ですよね。

山中:そうですね。加えて、チャットボットも効果的な接客ツールだと感じています。弊社では、『Cross Talk(クロストーク)』というチャットボットを導入していますが、お客さまに向けて簡単な質問を投げかけ、回答いただくことで、そのお客様にぴったりの商品をご提案できるのです。自分自身にどの商品が合っているかわからないお客さまのサポートをすることで、スムーズに購買の後押しができます。

デジタル広告のメリットは結果がわかりやすく、修正がきく“運用型”であること

デジタル広告の戦略についても教えてください。

上村:美容事業会社でいうと、弊社は広告出稿量がトップクラスです。なので、他社との差別化戦略というよりも、正攻法かつ物量で勝負するという戦略ですね。

折り込みチラシや交通広告などのアナログ広告と比べて、デジタル広告のメリットはどこにあるのでしょうか。

上村:なんといっても結果がわかりやすいところですね。たとえば、テレビは“予約型”の広告手法です。何曜日の何時に出稿するかを決めて、広告費は先に支払います。結果は、蓋を開けてみなければわかりません。高い広告費をかけても効果が全く見えない、ということもあります。

一方で、デジタル広告は“運用型”です。運用しながら成果を見て、やり方を変えていくことができます。費用対効果が高いのはデジタル広告ですね。

認知度向上のキーポイントは、“音でのアプローチ”

“文字”と“音”が紐づいていなかった『DUO』

しかし、御社は3年前からタレントを起用して、テレビCMも出されています。マス広告を併用している意図について教えてください。

上村:テレビCMを打つ前、知り合いの複数の女性に、「DUOって知ってる?」とヒアリングを行ったことがありました。すると、初めは「知らない」と返ってくるのですが、スマホの広告を見せると、「見たことがある」と反応をもらえたのです。

つまり、「DUO」という文字はデジタル広告で目にしているけれど、「デュオ」という言葉を耳から聞いたことはないという状況が発生していました。

DUO」と「デュオ」が紐付いていなかったのですね。

上村:そうなんです。このままでは、『DUO』の認知度は頭打ちすると考えました。そして、会話の中に、『DUO』というブランド名が出てくるようになるためには、テレビCMで耳からの認知を高める必要があると思ったのです。そこで、日本で一番有名な“デュオ”であるKinKi Kidsを起用し、CMではとにかく「デュオ」と歌ってもらうようにしました。

―CMの効果はいかがでしたか。

上村:CMを始めてからの3年間で、『DUO』の認知度は33%から78%まで上昇しました。それまでは、知名度の高くないブランドだった『DUO』が、一気にトップクラスの知名度になったのは、テレビCMの成果だと言えます。

もちろん、デジタル広告も重要ですが、仮にデジタルだけでグロースさせようとしても、どこかで限界がきたと思います。例えるなら、ダイエットみたいなものですね。ダイエットも、最初は一気に体重が落ちますが、どこかで停滞しますよね。通販も同じで、50~100億円くらいの規模までは、デジタル施策だけでも成長できるのですが、そこから上の壁を超えるとなると、違う手法が必要になります。それが、私たちの場合は、テレビCMを打つことだったのだと思います。

“本物感”を伝えるためのキャスティングを意識


CANADEL』では米倉涼子さんを起用されていますが、その狙いについて教えてください。

上村:『CANADEL』は、オールインワンの化粧品ブランドです。オールインワンの商品はそれまで、「物足りない」「効果がない感じがする」など、ネガティブにとらえる人も少なくありませんでした。弊社以外の会社さんのブランドも、こだわっていいものを出されているのに、イメージがいまいちだったのです。

私はその理由を、消費者とのコミュニケーションにあるのではないかと考えました。それまでのオールインワン化粧品のPRは、インフォマーシャルや新聞広告などがメインで、ビフォー・アフターを見せる手法が一般的でした。言い方は悪いのですが、そういった方法は少し古い印象を受けます。メインの顧客層である30代・40代の人が、「自分のための商品ではない」と感じて離れてしまうのです。

逆にいえば、弊社としては、オールインワン化粧品市場は、ブルーオーシャンだと感じました。本物感をしっかりと伝えることで、オールインワン化粧品の魅力をわかってもらえると思ったのです。そこで起用したのが、紛れもなく“本物”である米倉涼子さんです。また、米倉さんは、オールインワン化粧品を使わなさそうなイメージがあると思います。そんな米倉さんを起用することによる、ギャップも狙いました。結果として、『CANADEL』の認知度は13%から33%まで向上し、売上にも好影響が出ています。

新規顧客からロイヤルカスタマーまでの一貫したコミュニケーションが重要

認知度の重要性がよくわかりました。ところで、商品認知の段階とCXメインの段階では、取り組むデジタルマーケティング施策も異なってくると思います。それぞれのポイントは、どこにあるでしょうか。

上村:認知度が上がるまでは、CXを気にしている余裕はなかなかないと思います。弊社もずっと認知度を重視してきたのですが、そのせいでCXが弱点になっていました。そこで、1年ほど前からCXにも取り組み始め、今は結果が出てきたところです。先ほどお話ししたウェブ接客ツールやチャットボットなどが、まさにCXに関する施策ですね。

大切なのは、「新規顧客をどのようにロイヤルカスタマーに育てるか」ということです。弊社は、もともと新規のコミュニケーションに長けており、PDCAをフル回転させて施策に取り組んでいます。一方で、CRM(顧客関係管理)は、どちらかといえば昔ながらのコミュニケーションになりがちでした。その結果、お客さまに対してのコミュニケーションに一貫性がなくなってしまうため、新規で入ってきたお客さまがロイヤルカスタマーになるまで、1つの流れでコミュニケーションする必要があると考えています。ブランドとして、統一されたトンマナで接していくことを意識して取り組んでいますね。

さいごに、今後の展望について教えてください。

上村:4つのブランドがそれぞれのカテゴリでNo.1をとることが目標です。一番になるために、どんなルートを登れば最短でたどり着けるか。よりデジタルマーケティングによる顧客分析が重要になっていくと思います。

また、弊社は化粧品メーカーになろうとしているわけではありません。目指すのは、アンチエイジング領域のリーディングカンパニーです。化粧品にこだわらず、多彩な展開をしていければと思います。

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