なぜCRAZYのカルチャーは社内外に伝わりファンを呼ぶのか。肝は“常に感情をシェアし合う”仕組み

昨今、企業がパーパスを掲げ、自社の存在意義に紐づいたビジョンやミッションをもとに、あらゆる活動をおこなうことが主流となっています。その中で、課題のひとつとされるのが、「社内外に対するカルチャーの形成・浸透」です。企業の根幹となる考えをカルチャーとして形成することや、それを社員・社会へ浸透させていくことは、容易ではありません。

そんななか、社内外のコミュニケーション設計を綿密におこない、独自のカルチャーを築いているのが、株式会社CRAZYです。同社では、「インサイド・アウト」という考え方をベースにコミュニケーションをおこなうことで、社員自身の願いや情熱を中心に、あらゆる施策が推進されており、それをもとに形成された組織風土が、多くのファンを呼んでいます。今回は、同社の経営企画室 広報PRリーダー・浅田有貴さんにインタビューを実施。社員の願いや情熱から生まれる組織カルチャーや、それがもととなって生まれた熱量の高いファンコミュニティについてお話を伺いました。

独自のCRAZYカルチャーはどう生まれる?

あらゆる人の節目を祝う、「愛」を基軸とした事業展開

ーはじめに、CRAZYの事業内容について教えてください。

CRAZYは、『IWAI OMOTESANDO』を中心に、結婚式をはじめとした人生の節目を扱っている企業です。最近は、メインのウェディング事業に加え、『CRAZY CULTURE AGENCY』という法人向けの事業も展開しています。“人生の節目”は、必ずしも結婚だけに限りません。たとえば、入社式や周年パーティーなど、企業にも節目がありますよね。そういったあらゆる節目に関わりながら、人と人が繋がる機会を届けられるよう、ウェディング事業と法人イベントプロデュース事業を展開しています。

CRAZYのパーパス


ーそれらの事業とCRAZYが掲げているパーパスは、特に強く紐づいているように感じます。

CRAZYが現在掲げている「私たちは、人々が愛し合うための、機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消します。」というパーパスは、2020年に生まれました。もともとは「世界で最も人生を祝う企業」というビジョンを掲げていたのですが、当時の組織の状態とビジョンに若干の乖離が生じるようになっていたんですね。そこで、ビジョンという目標で繋がるのではなく、私たちが根源的に信じているものや在り方(存在意義)で繋がりを持つことのほうが、私たちらしいのではないかという結論になり、パーパスの策定に至りました。このパーパスの中には「愛」というワードが入っているのですが、これがCRAZYの根幹に根付いている大切な要素です。「人の幸せに必要なものは何だろう?」ということを常に考えて、ビジネス的な成長だけでなく、ひとりの人としての豊かさや成長も大切にする。そういった考え方が、CRAZYのあらゆるコト・モノに紐づいています。

CRAZYカルチャーの循環をつくる『カルチャータイム』

経営企画室 広報PRリーダー 浅田 有貴さん


ーパーパスがあらゆるコト・モノに紐づいているということですが、CRAZYとしての考え方が社員にとても強く根付いていると感じます。広報PRチームとして、インナー向けにコミュニケーションをとる際に意識されていることなどあるのでしょうか。

前提として、CRAZYとしての考えが社員に根付いているというよりは、社員一人ひとりの「こう在りたい」「これを成し遂げたい」という願いや情熱が、CRAZYという場を作っているという構図だと思っています。その上で、「インサイド・アウト」という考え方をベースにコミュニケーションを設計しています。「インサイド・アウト」とは、「自分自身の内にあるものと向き合うことから始める」という物事の考え方・捉え方を指します。パーパスに置き換えると、社会に対して愛を感じる機会を届けていくためには、まず自分自身を愛することや周りの家族・友人・社員との関係性を築くことが何よりも大切。私たちは、結婚式を通して結婚式を挙げるお二人やその家族・友人の人生に深く関わらせていただいています。日々、自分自身の人生や感情と向き合っていないと、お客さまの些細な感情の動きに気づけなかったり、人生に深く向き合うことができなかったりするんですよね。

とはいえ、自分自身の人生や感情と向き合うことは簡単ではないので、組織の仕組みとして『カルチャータイム』という時間を設けています。『カルチャータイム』では、毎週水曜日に2時間、月に1度は1日かけて全社員で集っており、CRAZYではなく自分を主語において、自分のいまの気持ちに向き合ったり、肩書きをはずして仲間と繋がり合ったりといった、人間的な成長の場としています。そのような時間をとることで、自分の本音に気づけたり、誰かと深く向き合うきっかけが生まれたりと、パーパスの体現に繋がる機会にもなるんです。

作り手の“人間らしい感情”がありのままに伝わるようコミュニケーションを設計

CRAZYの情報発信における2つのポイント

カルチャータイムの風景


ー『カルチャータイム』がCRAZYのあらゆる活動や考え方の肝になっていそうですね。社内外に向けた情報発信をおこなう際に意識されていることはありますか?

情報発信をする際に意識しているポイントは2つあります。まず1つ目が「企画の背景にある、作り手の想いをヒアリングする」こと。これは、発信前に必ずおこなっていて、「どうしてこの企画をやりたいと思っているのか」「どんな人に何を届け、何を感じてもらいたいのか」などをヒアリングします。その中で、私自身も「この企画に何を感じているのか、私は何を伝えたいのか」と、自分の感情と向き合いながら企画を自分ゴト化させていきます。2つ目に「社会に発信する前に、社内で扱う」ことを心掛けています。具体的には『カルチャータイム』などで、作り手の企画への想いや情熱を、社員に向けて話す機会を作っています。その中では、企画の意図や誰にどう届けたいのかも明確に伝え、社員一人ひとりの解像度をあげることを意識しています。

社内共有の様子

その際には、こちらから一方的に情報を伝えるだけではなく、その企画の発表を受けた社員にも、どう感じたのかという感情を出し合う場を設けています。たとえば、以前リリースしたCRAZYの採用ポリシーに関する記事。CRAZYでは、採用プロセスのなかに「人生における願いをきく」という場面があります。そこで、この記事を読んでもらったうえで、改めて「あなたが今もっている願いは?」という問いをもとに、感情をシェアする時間を設けました。このアクションは、企画を通して社外の方だけでなく、メンバーにとっても新たな気づきや学びが生まれると良いなと思い、実施しました。社内でも、社外に対してのコミュニケーションと同じくらいメンバーの今の状態や感情を考えながら場づくりを行っています。

また、このように、社内への事前共有は欠かさずにおこなっているのですが、周年に関するリリースや新しい事業、組織としての方針を発表するリリースなど、情報の大きさによっては、リリースの前に家族や友人、日々応援してくださっている方、コミュニティメンバー、お客さまに伝えることもあります。

社員50人で月間200件のSNS投稿。UGCの共有であらゆる“次”に繋げる

実際に社内へUGCを共有する様子


ー企画への理解を深める・自分ゴト化するために、かなり綿密なコミュニケーションをとっているのですね。

そうなんです。また、リリース後は「UGCの共有」も欠かさずおこなっています。社会の声を知ることで、自分たちの考えが社会でどのように受け取られているのかを知ることが出来たり、それを自信に変えることが出来たり、次の企画や発想に繋がっていったりと、良い循環が生まれていると感じます。さらに、社員自身が自然とSNS上の声を見に行くようになり、投稿者とのコミュニケ―ションを図っている場面も頻繁に見受けられます。こうした小さなコミュニケーションの積み重ねが、社員同士や社会との繋がりの強化にも寄与していますね。

ー情報の届け先というと、メディアも大きな発信先になると思いますが、そこに対して何か意識されていることはあるのでしょうか。

ただ情報をお渡しするのではなく、取材していただく際には、月2回開催している『CRAZYのお昼ごはん』にご招待して、社員と繋がってもらう機会をつくったり、記事公開後には、記事を通していただいた社員やファンの方からの声をお礼とともにお送りしたりしています。広報としてメディアと関わると、やはり「人」というよりは「メディア」という括りで接してしまう部分がありますよね。ただ、記者の方も読者に対して「こんな情報を届けていきたい」という想いが一人ひとりにありますし、それをこちらも理解したうえで一緒に情報を作り上げていくことで、より良いものができるのではないかと考えています。そのため、取材前に必ずお話する機会を設けますし、ひとりの「人」として関わる・知るタイミングをつくるように意識していますね。結局、情報を作っているのは人ですし、届ける先も人。作り手の願いや情熱、葛藤など、人間らしい感情をありのままに感じられるコミュニケーションが心を動かすと思いますし、それを最大化させること・繋げる機会をつくることが私の最も重要な仕事だと考えています。

メディアの方とのお昼ごはんの様子


ーこれらの情報発信の仕組みを通して、社員からはどのような声があがっているのでしょうか。

こちらから「CRAZYに関する投稿をお願いします!」などと呼びかけなくても、社員からCRAZYに関する投稿が自然に発生する状態になっています。社員50人に対して、社員による月間SNS投稿数は約200件。サービスだけではなく、コーポレートに関する内容も日常的に投稿されていますね。そのため、採用に対しては、広告費用などに予算をほとんどかけていなくて、社員のSNSを通じてCRAZYのことを知った人・イベントに参加した人からご応募いただくことが多いです。

社員数の倍のメンバーが集う熱狂的なコミュニティ『CRAZY PEEPS』

あらゆる肩書や役割は関係ない。一人の人としてのコミュニケーションを

『CRAZY PEEPS』のメンバー


ーそのようなSNSでの発信を通じて、CRAZYに対して日々ファンが増えていると思います。2021年からは『CRAZY PEEPS』というコミュニティを始められたそうですが、こちらはどのようなコミュニティなのでしょうか。

主に、CRAZYのパーパスに共感して、繋がりを持ちたいと感じてくださっている方が集うコミュニティです。そのため、参加にあたっての制限はまったくありません。よく「CRAZYで結婚式を挙げた人じゃないと入れないのではないか」と思われることがあるのですが、どなたでもご参加いただけます。発足のきっかけとしては、もともと「CRAZYの考え方や想いが好きだ」と言ってくれる方が多かったこと。ただ、そういった方々と接点を持つ機会がなかったため、それならコミュニティをつくって直接関わることのできるタイミングを増やしていこう!と『CRAZY PEEPS』を発足しました。宣伝活動をそこまでしているわけではないのですが、現在は社員の倍の数である約100名のメンバーが参加しています。

ー実際に、どのような活動をされているのでしょうか。

基本的にはLINEグループ上で日々コミュニケーションを取りつつ、先述した『CRAZYのお昼ごはん』に来ていただいたり、「ライフプレゼンテーション」という、入社3か月後のメンバーが全社員の前で自身の人生をプレゼンテーションする機会に参加いただいたりしています。また、毎月「ライフセッション」という自分の人生やパートナーシップに向き合える時間も設けています。すべての活動は自由参加なのですが、現在は80人のメンバーが参加中です。参加いただいたメンバーには、1泊2日の合宿(ライフセッションの延長のようなコンテンツ)もご案内していて、前回は20人ほどのメンバーが参加してくれました。商品に対してファンがついている企業さんとは違って「無形商材を売っているCRAZYから、応援してくださっているファンの皆さんに何を届けられるのか」という悩みはありましたが、「ライフセッション」や合宿を通じて、やっと方向性がまとまってきた感覚はありますね。

CRAZYの世界観を広げる仲間がプラス100人いる感覚

合宿での集合写真


ー『CRAZY PEEPS』のメンバーからは、どのような反響がありますか。

「素直な感情を出して、仲間と繋がる感覚を味わえた」という声や「自分自身がもっと好きになれた」という声が日々生まれています。CRAZYをより深く知ってくださることももちろん嬉しいですが、参加してくださっている皆さんの人生がより豊かになっていることが一番うれしいです。また、CRAZYに対して共感してくださる方が本当にたくさんいるんだなと感じます。先ほどお伝えしたように、私たちは「インサイド・アウト」の考え方をベースに、社員が中心となってCRAZYの世界観を作り、社会に広げていますが、その世界観を作る仲間がプラス100人いるような感覚ですね。

ーさいごに、これからどのような組織づくりをされていきたいか教えてください。

私たちが掲げている「愛」や「人とのつながり」というのは、誰しも人間だからこそ求めているものではないかと思っています。少しでも多くの方に愛を感じられるような機会や、大切な人へ想いを伝えられる勇気を届けるため、ブランド活動をおこなっています。その届け方としては、まず社員が自分の人生を愛すること、大切な人に向き合うことから始まり、その周りの人たちへ影響が連鎖していく。そうして、自然と社会に愛を感じる機会が広がっていくサイクルを作りたいと思います。CRAZYとしても、新規の店舗出店や結婚式後も人生をお祝いし続けられる場の提供など、事業拡大フェーズに向かっているので、どのような状況になったとしても、人として「愛」を大切にし続けられる組織づくりに力を入れていきたいです。

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