“等身大コミュニティ”で女性の人生に伴走。SHE株式会社が実践する多様なブランドアクション

生活者に商品やサービスを展開する企業・ブランドにとって、ファンになってもらうことは、重要な指標のひとつではないでしょうか。熱狂的なファンが多い企業の一つとして、ミレニアル世代向けのコミュニティブランドを運営する、SHE株式会社があります。今回は同社が、「SHEメイト」と呼ばれる会員に対して、どのような点に意識してコミュニケーションを行っているのか、ブランドコミュニケーションGMの上平田蓉子(かみひらた・ひろこ)さんにお聞きし、ファンが生まれる背景や関係値を築くポイントについて紐解いていきます。

人生に伴走するコミュニティ『SHElikes(シーライクス)

ーはじめに、上平田さんのご経歴・職歴について聞かせてください。

はい。大阪大学大学院で脳神経科学を専攻し、新卒で入社した博報堂では、データサイエンスの部署でマーケティング業に従事していました。具体的には、市場や生活者データに加えて、クライアント様の持つ調査データなど、あらゆるデータを投入した数理モデルを構築し、それによってクライアント様の売上の未来を予測し、経営層の方と予算配分を決めていく部分を担当していました。

その後独立し、もともと興味のあった教育系の分野で起業しようと考え、シリコンバレーに渡り起業準備を進めていました。しかし、現地の投資家や起業家、スタートアップ業界の方にお会いする中で、特に、アメリカで働く女性達がとても生き生きしていたことが印象的で、“26歳の今の自分が心からやりたいことは「アメリカで起業すること」ではない。同じようにキャリアにもがく日本の同世代の女性たちに役立つ何かをしたいのだと気付き、帰国しました。

引き続き、起業に向けて様々なビジネスコンペに出場する中で、当時SHEが他社と共催していたコンペで優勝できたことをきっかけに、SHEの方向性に共感し、まずは業務委託からジョインしました。

ーそうなのですね。SHEにジョインしてからは、どのような活動をされてきたのでしょうか?

半年後に社員になったのですが(当時の葛藤を書いたnoteはこちら)、ジョインしてからはなんでもやりました!法人営業からはじまり、既存会員さまと向き合ったコミュニティの熱狂醸成、イベント企画、それからマーケティングの部署では広報、PRを経て、現在は新規の受講生獲得のための、マーケティングとブランディングをメインに担当しています。

ーそれでは次に、SHEで提供している『SHElikesのサービスについて教えてください。

現在、SHEでは『SHElikes』『SHEbeauty(シービューティー)』『SHEmoney(シーマネー)3つのコミュニティブランドを運営しており、それぞれキャリア・美容・金融の領域を扱っています。『SHElikes』では、女性がパソコンひとつで、いつでもどこでも働けるITスキルを身に着けられるように、Webデザインやライティングなどをはじめとした26コース・87レッスンを提供しています。コース動画はすべてオンラインで公開しているのですが、コミュニティ自体はオンラインとオフラインのハイブリットで運営しています。やはり、オンラインの講座だけだと途中で挫折してしまったり、一緒に頑張る仲間が見つけづらいので、そこをコミュニティの力でカバーし、『もくもく会』と呼んでいる勉強会や、月1回のグループコーチング、また月10回以上のイベント開催などをしています。イベントでは、著名人やロールモデルとなるような方をお呼びして、その人たちがどのような人生を描いているかなどもお話いただいています。加えて、キャリアの話だけではなく、妊娠・出産や女性のライフイベントについての知識も提供するなど、女性の人生に伴走するブランドを目指しています。

また、コロナ禍で在宅勤務が増え、自己投資の時間を持てるようになったり、様々な企業が副業を解禁したことなどから、事業としては追い風を受けました。海外から受講されている方もいらっしゃいますし、最近だと、大学やサークル活動、アルバイトなどがストップしてしまった関係からか、学生のSHEメイトさんも増えてきています。

SHEが考える「企画の在り方」

PR企画は、組織の方向性を最もダイレクトに落とし込める場所

ー『SHElikes』を拝見していると、多くのPR企画を実施されていますが、上平田さんにとってPR企画とはなんでしょうか?

私は、PR企画を「組織が目指したい方向性を一番ダイレクトに落とし込める場所」だと感じています。たとえば、スタートアップなので、会社の目指すビジョンはすごいスピードで更新されて深まっていきます。それをコミュニティ全員、さらには世の中に浸透させていくには、丁寧な伝達と時間が必要です。しかし、企画は切り出して行うことができるので、会社としてのスタンスや経営戦略を、ダイレクトかつ最もスピーディーにお伝えできると思うんです。さらには、企画で生活者の方の声を直接うかがえることで、「目指している方向性は、世の中が本当に求めていることなのか?」という仮説検証もできると思います。これからも、誠実な企画を通してステークホルダーとの信頼関係を構築し、事業資産、そして経営資産としていけるように、一つひとつ積み重ねていきたいと思います。

ーそのような企画をはじめとしたPR活動において、データサイエンティストのご経験が活かされているのでしょうか?

そうですね、前職から役立っていることは、あらゆるデータを最速で収集し、鳥の目(第三者目線)で把握する力と、実態をもとに、経営陣の視座で物事を考える力でしょうか。とくに毎日すごいスピードで事業が進化するので、役員陣が「今」頭のなかで考えていることを話してもらう時間を大切にしています。それを世の中に的確に伝達していくための方法を模索していますね。

ひとつ例を挙げると、インプットの部分にはなりますが、普段から、雑誌は週刊誌からビジネス・ファッション誌までジャンル問わず読んでいて、世の中が今どういうキーワードで動いてるか、気になるワードや文章はすべて専用のシートに書き写して全体の傾向をチェックしています。たとえば、今年の6月ぐらいだと、5社程の雑誌で同時に「しなやか」「軽やか」「持たない時代に必要なもの」「コロナを1年経験してわかった本当に大切なこと」「ジェンダーレス」「ボーダーレス」という言葉が急増していましたね。

また、雑誌だけでなく、サービスやプロダクトなど、あらゆる分野の「初めて」なコンテンツに毎日触れて、デコンストラクション(サービス背景、社会課題、キャスティングの理由等を逆算して考える)をしています。このようなデータ収集から、「では、自社ではどんな取り組みをしていくか?」という戦略を立てていきます。仕事を届けるべき相手は自分の周辺だけではないので、あらゆる環境の方たちの価値観や心理を少しでも想像できるように日々努めています。

世の中の情勢に着目して実施した『学生さいごの授業』

ー今年の3月に『学生さいごの授業』と題して、4月に新社会人を迎える大学4年生を対象に、キャリア、パートナーシップ、SDGs、リーダー、アイデア、経済というテーマに合わせたトークセッションイベントを、YouTube配信で開催されていましたよね。こちらも、先ほどお伺いした分析のもと、行われたイベントだったのでしょうか?

そうですね。まず、当時の自社の課題でいうと、日々の売上目標達成に向けて必死な毎日で、ブランドアクションまで手が回っていなかったところを開拓していきたいと考えました。創業4年目を迎え、上場を視野にいれていく今だからこそ、女性向けのキャリアスクールという浅い認知だけでなく、SHEの「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」というビジョンに対する、深いブランド共感を生むような場所作りを丁寧に取り掛かりはじめたかったのです。①目の前の新規獲得や売上を伸ばしていくことと同時に並行して、②SHEが世の中に対して信頼感を醸成する機会創出、という短期施策と中長期施策の両輪を目指そう!そんな想いからブランドアクション実行を決めました。

次に、「いつどんなこと実施するか?」という観点を、先述した事例研究などから派生させて考えました。その中で、今年の3月に卒業を迎える大学生の皆さんが、一生に一度の卒業式を本来の形で執り行えない現状に目を向けました。大学生活の締めくくりであり、同時に社会人への扉である「卒業」を、これまでになく地続きで迎える新社会人に向けて、私たちSHEが門出のお祝いとしてお贈りできることは何か? その答えとして、誰も教えてくれない6つのリアル(キャリア、パートナーシップ、SDGs、リーダー、アイデア、経済)について、リクルートやNewsPicksさんなど、それぞれのプロフェッショナルである企業様とコラボして、お届けする機会を設けたいと考えました。

またSHEは、数年後に上場を目指す理由の一つとして、「義務教育をアップデートする」という目標を掲げています。まだ直接的に義務教育へのアプローチには至らないけれど、アップデートしたい”という組織のビジョンを絡めた企画=「学生に向けて企業として何かしらのアクションを起こす」ことはできる。『学生さいごの授業』にはそのような趣旨が含まれています。

ー世の中の情勢と会社のビジョンをリンクさせた、SHEにとって重要なイベントだったのですね。どれくらいの準備期間だったのでしょうか?

『学生さいごの授業』の時間割

そうですね。実は、実行メンバーは3人だけで、準備期間はわずか1ヶ月でした。(笑)スペシャルゲストの前田敦子さんの登壇が決定したのも、本番数日前だったのですが、決まるまでは本当に気が気でなかったです。しかし、絶対に意義のあるイベントだと感じていたので、毎日降ってくるどんな難題も(笑)根気強く全員で立ち向かうことができました。最高のチームです。

ーイベントを実施しての反響はどうでしたか?

まず、事前集客では、通常開催している定期イベントの7倍以上の約1,500人を達成し、当日のYouTubeリアルタイム総視聴者数は5,000にのぼりました。SNSでの反響も大きく、「#学生さいごの授業」では「私は3月16日が卒業式なので、本当に学生さいごの授業です!ゼミ仲間と教室で観ます!」「大人でも観て良かったと思う。こんなに長い時間夢中でお話を聞けたのは初めてです。生きる勇気をもらいました。」などというコメントをたくさんいただきました。最終的には、学生という枠を超えて幅広い年代の方々へ、SHEからのメッセージをしっかりお届けすることができ、とても幸せでしたね。

ーこのようなブランディングイベントは、定期的に行っていく予定なのでしょうか?

SHEの特徴かもしれませんが、何事も「毎年この時期はこれ」というルーティーンにはしない傾向があります。そうすると、「とりあえずX月がきたからやるか」という惰性が生まれて形骸化してしまうので、①組織として劇的に変化を遂げる流れと、②世の中の時流をどちらも鑑みて、その時々に最適で最良なアウトプット方法で、前例にとらわれずに新しいワクワクすることをどんどん仕掛けていきたいと考えています。アウトプットの形式はオンラインイベントであったり、はたまたオウンドメディアであったり、商品開発であったり、オフラインの体験会かもしれません。

直近だと、そごう・西武さんが手掛ける新しいカルチャーを吹き込んだ『CHOOSEBASE SHIBUYA』というOMOストアでSHElikes体験会を実施します。まだオープンしたばかりなのですが、今までにない購買体験と空間があって、とても面白い場所なんです!SHEとしては初のポップアップ出展なのですが、このように、その時々で新規層へのアプローチの仕方は変化していますね。『学生さいごの授業』を開催した時は、恐らくあのフェーズのSHEで、コロナ禍のあのご時世だったから、あのイベントが最高な形であっただけなのだと思います。 

誠実共に歩む姿勢がファン誕生につながる

SHEメイトの熱のあるリアルな発信が周囲に伝播する

※写真は緊急事態宣言前のものです。

Twitterなどを拝見していると、熱狂的なSHEファンの方が多いように感じたのですが、ファンを生み出すために意識して行っていることなどはあるのでしょうか?

「ファンを生み出す」という表現が、SHEっぽくないかも?と感じます。SHEメイトさんやSHEで働いているメンバーは、毎日、喜怒哀楽しながらもSHEのビジョンである「自分にしかない価値を発揮する」という部分にコミットしていて、自分のなりたい姿に向かって懸命にもがいている方が多いんです。そんなSHEメイトの皆さんが、SHEで学んだことを「#シーライクス」でTwitter上に毎日発信してくださっているのですが、その投稿から努力・葛藤の過程や夢を叶えた人たちがいるということが、リアルにわかるんですね。投稿数は月に4,000件にものぼります。

そのような発信が伝播して、「私にもできるかも」「私もこんな生き方を手に入れたい」「夢についてこんなに話していい場所ってあるんだ」というマインドチェンジが起こり、熱狂的なファンの獲得に繋がっているのだと思います。私たちがファンを増やそうと過剰に働きかけているわけではなく、自らがそう在ろうとしてる方たちが、SHEについて発信してくださることが、ファンの増加に大いにつながっているんだと思います。私自身も、#シーライクス の投稿にとても励まされているので、毎日いいねを押しにいくのが日課です。

それとは別に、私が意識して取り組んでいるのは、「等身大でTwitterを発信すること」です。SHEのメンバーは全員そうですが、私自身も毎日多くの壁にぶつかっていますし、もがきながら乗り越えていて、その過程についてもかなり正直につぶやいています。SHEから発信される情報、特にTwitterというのは、泥臭くて、愚直な挑戦の軌跡のようなものです。だから、外からそれらのツイートを眺めるだけでも、生きる勇気が湧いてきたり、大人になってもこんなに熱狂して生きる人がいるんだなと、肌で感じていただけるのだと思います。

「球体型コミュニティ」がもたらすSHEメイトとのフラットな関係性

ー現SHEメイトの方々や、未来のSHEメイトの方々へのコミュニケーションで意識されていることはありますか?

SHEメイトさんへのコミュニケーションで、SHEとして意識していることは「球体型コミュニティ」です。私たちは、SHEメイトの方々との関係を「球体型コミュニティ」と呼んでいるのですが、そこには、スクールによくある講師と生徒のような関係性ではなく、どちらが上でどちらが下などと定義しない、フラットな関係でSHEを共創していきたいという思いが込められています。誰もがそれぞれ自分のなりたい姿を目指して邁進できる、そんなコミュニティ作りを心がけています。

また、私個人としては、たとえばイベントでお会いした際やTwitterで、キャリアなどについて相談を受けることが多くあるのですが、そういった相談に対して、毎回SHEを勧めるということはしていません。その人にとっての最適な選択が、SHEに通うことではないかもしれませんよね。なので、それを誠実に伝えるということを意識しています。

ただ、そういった姿勢を通じて、ありがたいことに私という人間や、SHEというブランドを信頼してくださる方が増え、ブランドのファンになっていただけるのだなと感じています。相談者だった方がSHEメイトさんになってくださる場合もあれば、他社の中の人としてSHEと仕事をしたいと言ってくださる場合、さらにはSHEのメンバーになってくださる場合もあるので、こういった小さな心がけの積み重ねが、未来のSHEメイトさんへのコミュニケーションに繋がっていると言えるかもしれません。私のなかでは、「自分と一緒に人生に熱狂してくれる人を増やしていきたい」という想いが最も強いです。

ー最後に、今後のSHEのビジョンや展望について教えてください。

今は、いわゆる女性向けのキャリアスクールというイメージが大きいと思いますが、これまでにお話したように、SHEの展望は単なるスキルを装着するスクールではなく、世の中の不均衡や情報格差を是正して、個人の生き方を変革する会社になっていきたいと思っています。

現時点での『SHElikes』『SHEbeauty』『SHEmoney』という3つの事業展開に加え、これからも、人が生きていく上で必要な知識や、不均衡が生じているレガシーな領域に、ブランドポートフォリオをどんどん展開し、本当の意味で「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中」を作っていきたいです。


\『CHOOSEBASE SHIBUYA』にSHElikes体験会出店!/

▼場所
 場所:西武渋谷店パーキング館 1F CHOOSEBASE SHIBUYA カフェラウンジスペース
 住所:東京都渋谷区宇田川町21-1

▼内容
※SHElikes未入会の方対象となります。
・SHElikesの概要説明
・過去の受講生のキャリア事例紹介
・実際のレッスン受講画面の体験
・キャリアやSHE活用法の相談
・その他にも質問などあればお気軽にご相談ください。

▼開催予定日
 平日(毎木曜日):
  17-20時
  10月7日、14日、21日、28日
 休日:
  15-18時
  10月9日(土)、16日(土)、24日(日)、31日(日)

⬛️ ご予約はこちらから
https://coubic.com/choosebase/724443

※事前予約枠以外にもお席はご用意しておりますが、ご予約いただきますと待ち時間少なく体験会にご参加いただけます。遠方よりお越しの方などご活用ください。

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