“アレンジの余白”がZ世代マーケティングを成功に導く。若者の消費行動を決める4つのポイント

様々な制限が続く昨今、トレンドを生み出すaround20(15~24歳)の若者はこの現状をどのように感じ、対応しているのか、若者のリアルを知ることはマーケティングを行う上で重要な手掛かりとなります。
今回は、2018年より毎月200人のaround20に直接ヒアリングを行っている、SHIBUYA109 lab.所長・長田麻衣さんにインタビューを実施。around20の2021年トレンドと消費行動の変化を中心に、若者のリアルや、企業が若者にアプローチする際に押さえるべきポイントについてお伺いしました。

around20攻略のポイントは“失敗したくない消費”と“社会課題意識”

自分に合うものを選びたい「パーソナライズ志向」が2021年のトレンド

ーはじめに、前年度と比較したaround202021年のトレンドについて教えてください。

引き続きコロナで在宅期間が続いているため、突出して変化した部分はあまりないですが、新しく出てきたのは“パーソナライズ”という視点です。骨格診断やパーソナルカラー診断をもとに、洋服やコスメなどの身に着けるものを中心として、「ちゃんと自分に合うものを選びたい」という考え方をする子が増えてきています。

毎月行っているトレンドレポートでも、昨年に引き続きスキンケアなどが注目されている中で、オーガニックコスメやナチュラルコスメに関心が高まっているという結果が出ています。商品の素材などにもより注目して、自分に合ったものを選んでいるという傾向がみられますね。

ー昨年実施されていた、自粛期間を経てaround20の生活はどう変わる?のセミナーでもあった、「量より質」の傾向が続いているのでしょうか?

そうですね。まだ、外出の機会が増えているわけではないので、昨年から引き続き、何かをたくさん買うよりも、“質の高いちょっといいもの”を買う傾向は続いています。そこにプラスαで、「じゃあ、ちょっといいものを買うなら、より自分に合うものを探したいよね」というパーソナライズな側面が露出してきているんだと思います。

ーなるほど、消費の意思決定という面では、モノやサービスの質に加えて、いかに自分にフィットするかという点も重視されるようになったんですね。

そう感じます。パーソナライズ志向は、「失敗したくない」という消費の価値観から来ていると考えられるので、失敗しないために骨格診断やパーソナルカラー診断で自分の身体についてしっかりと知識を得てから、商品を選んでいくという流れがベースになっていますね。

また、もうひとつ傾向としてあるのが、サステナブルな視点です。少し前だと、サステナブルは“意識の高い人だけが関心を持つもの”という印象だったと思うのですが、今ではトレンドに敏感な子も、様々なカテゴリーでサステナブルの視点を持つようになっています。たとえば、「食」というカテゴリーひとつをとっても、「自分にも地球にも優しいものを選びたい」というように、社会問題を自分ゴト化して考えている子が増えているなと感じます。まだ、しっかりと消費に結びつくところまでアクションは起こせていませんが、その意識をもって商品を見ることがaround20の中では当たり前になってきていますね。

若者が知りたいのはアクションに至るまでの「ストーリー」

around20の中での「社会課題意識」というのは、どのようなタイミングで芽生えるのでしょうか?

純粋に、社会課題と絡めた商品やサービス、取り組みが世の中に増えているため、自然と課題意識が芽生えている部分もあると思いますが、そもそもaround20の世代は、社会課題について考えることが当たり前の時代に生まれてきているんですね。学校の授業などでも取り上げられていますし、接触する機会が昔よりも大幅に増えているんです。なので、意識の高低差はあるけれど、自分たちにとってそこまで遠い話ではなく、むしろ自分たちが主体となって解決していかなければいけないという思いや、自分たちの課題だという意識が既に根付いていますね。大人よりも、身近な課題として捉えられているように感じます。

ーいまのaround20世代にとっては、当たり前に存在する意識だと言えるんですね。しかし、中には課題意識は持っているけれど、実際に何をしたらよいかわからないと感じている若者もいるのではないでしょうか。

そうなんです。実際にどうアクションを起こしていいかわからない子はたくさんいるので、社会問題などの大きな課題に対するアクションの起こし方や、考える場を提供するような活動も行っています。今年の6月から三井物産アイ・ファッションさんと一緒に取り組んでいる『SHIBUYA109 lab. EYEZ』や、「Z世代の政治に関する意識調査」のトレンドレポートもその一環です。

各トレンドレポートのテーマとして私たちが掲げているのは、「若者目線から見た世の中ってどうなっているんだろう」という部分で、今回政治を取り上げた理由も、「若者の選挙投票率が低いと言われているけど、その原因は何なのか」を可視化したかったからでした。実際に調査結果を見てみると、投票率が低いと言われていることを若者自身もちゃんと課題に感じていて、政治に対して関心が高まっていることがわかったのですが、一方で、政治や立候補者との日常的な接点が少ないことが、自分ゴト化できない要因になっているという事実もわかりました。

around20世代が知りたいのは、その立候補者が「なぜそのマニフェストを選んでいるのか」といった、マニフェスト発生までの背景やストーリーの部分なんです。たとえば、NiziUのヒットは、デビューまでのストーリーに人々が共感し、そこに価値があったからこそ生まれたものですよね。それと同じで、政治の世界でも“1人の政治家がどんな思いで国にアクションを起こしているのか”という部分を、プロセスとして、なおかつリアルタイムで見たいという意識が強いんです。なので、政治のテーマにおいては、若者に自分ゴト化してもらうためのコミュニケーションに取り組めるかどうかがポイントになるのではないかと感じています。

知りたい情報に合わせてSNSの“棲み分け”をする

ー現在のaround20世代は、情報収集にどのようなツールを使用しているのでしょうか。

知りたい情報によって様々なツールが使い分けられていますが、この1年で特に利用されているのはTikTokですね。外出が減り、直接トレンドと触れ合う機会も減少した中で、TikTokのタイムラインから流行りの音楽やコンテンツをチェックして、それを真似することでトレンドが生まれるという流れがずっと続いています。流行をチェックする場として、TikTokが定着したイメージですね。

新しいツールなどは特に出てきておらず、InstagramとTikTokはトレンドをチェックする場所、Twitterは私たちで言うYahoo!ニュースのような時事ネタや世の中の動きをチェックする場所、YouTubeはメイク動画などのHowtoを知る場所、という棲み分けがより顕著になってきています。

ー情報収集の際のツールの使い分けが明確になってきているんですね。

そうですね。さらに言うと、動画での情報収集がメインになってきています。最近驚いたのは、地図アプリとしてYouTubeを使っている人が増えているということです。たとえば、新横浜駅から横浜アリーナに向かう時に、私だとGoogleマップでルートを検索するのですが、around20世代はYouTubeで検索をして、動画と実際の道順を照らし合わせながら現地まで向かうそうなんです。情報を視覚的にインプットするということが、若者の中でメインになってきているんだなと感じましたね。

ーちなみに長田さんご自身は、around20への直接のヒアリング以外で、どのように若者に関する情報をキャッチアップされているのでしょうか?

やはりSNSが若者の生活の中心になっているので、基本的に私もSNSから情報をキャッチアップしています。その中で意識して行っているのは、「若者に趣味嗜好を合わせる」ということです。SNSを利用していると、自然と自分の閲覧しているものや、好みに合わせてカスタマイズされていきますよね。私も何も考えずにSNSを利用していると、10代の子がみているコンテンツが表示されなくなってしまうので、InstagramやTikTokでは強制的に自分のタイムラインがaround20の子達と同じになるように、話題になっている投稿をいいねしたり閲覧する情報の取捨選択をしています。

Z世代マーケティングのカギは、共創できる“アレンジの余白”を与えること

「若者が大切にするコミュニケーション」に企業は歩み寄るべし

ー今後、企業が若者とのコミュニケーションで意識すべきポイントなどはありますか?

やはり、SNSが若者のトレンドや消費の中心になっているので、そこに対して企業がもう少し危機感を持つ必要があると感じています。今までは、新しく商品を作った際に、「作りました、良かったら買ってください」という一方的な情報提供をしていたと思うのですが、散々言われている通り、それだけではもう響かなくなっています。加えて、このアプローチの仕方だと、商品やサービスのスペックで善し悪しが決まってしまうため、企業と若者の関係性が持続性のあるものまで昇華していかないんですね。そのため、コミュニケーションの仕方と商品の開発をもっと若者や生活者起点で考え、その世界に企業側から参加していくような気持ちで接することが大切だと思います。

たとえば、TikTokには若者の間で楽しまれているフォーマットがあるんですね。音楽だったり、ダンスだったり、エフェクトだったりと色々あるのですが、同じものをみんなが真似して楽しむことがトレンドに繋がっています。なので、そこに企業も参加し、同じ音楽を使って動画を撮ったり、若者が大切にしているコミュニケーションの仕方を理解して、まずは距離を縮めるという考え方を持つことも必要なのではないかと思います。その上で、商品開発を一緒に行うような共創ができると、より良いコミュニケーションに発展していくのではないでしょうか。

ーそういった若者と企業の共創やコミュニケーションにおいて、最近良いと感じた事例はありますか?

ハーゲンダッツさんがやっていた、『デジタルハーゲンカップ』という取り組みは良いなと思いました。これは、自分で描いた絵や撮った写真をハーゲンダッツのパッケージにはめ込んで、世界に一つだけのオリジナルカップが作れますという画像生成コンテンツなのですが、ハーゲンダッツさんはブランドとしてしっかり確立されているので、生活者が手を加えられる余白やカスタマイズできる隙間がないのかなと、私自身感じていたんですね。

しかし、この取り組みでは、「商品を食べて一緒に楽しんでくれる人たち」とのコミュニケーションを生むために、生活者がアレンジできる余白を提供していて、実際に若者が自分で作ったパッケージをSNSに投稿する、拡散するという流れが生まれました。この“勝手に楽しめる余白”を提供できたのが、とてもいいポイントだなと思いましたね。

若者ファンとの共創が進むYouTube

ーなるほど、若者も実際に参加できる「アレンジの余白」というものが必要になってくるんですね。

最近だと、YouTuberの方が「自分たちの動画の好きなところをカットして、無断転載してください」という呼びかけをされていますね。これまでは、動画の終わりに「チャンネル登録とグッドボタンお願いします!」という呼びかけだったのが、「チャンネル登録とグッドボタン、無断転載お願いします!」に変化してきているんです。無断転載を促すと、自分のファンの子達がオススメするシーンを繋ぎ合わせた動画を作ってSNSで共有してくれるので、その友達伝えにどんどんYouTuberの良さが伝播していくんですね。そうすると自然と認知も上がりますし、ファンの子達が自分たちに向けてくれる熱量もどんどん増えていきます。

ハーゲンダッツの取り組みにも繋がりますが、生活者がアレンジできる余白があることで、「一緒に盛り上げている、共創している」という感覚を与えられるので、企業もそういった取り組みをできるかがカギになってくると思います。

ー従来のような、ただ参加型のキャンペーンを打つこととは違い、まずはブランドの方から歩み寄っていく姿勢や取り組みが求められているんですね。

そうですね。いまのaround20世代が10年後、20年後に大人になった時にも、こういった価値観や消費の仕方は残っていくと思うんです。そこを見据えて、若者との関係構築の仕方や、関係性を続けていくためのコミュニケーションについて、改めて考えていかなければならないタイミングだと思います。

様々な制限の中で最大限に楽しむパワーがトレンドを生み出す

2022年、アフターコロナに向けて若者のトレンドや消費行動はどのように変化していくと予想されますか?

この2年間を見ていると、若者は世の中の変化にポジティブに順応していくのがすごく上手だなと感じました。たとえば、コロナ禍になって「おうちカフェ」という家の中でお店で出てくるようなお菓子を手作りすることが流行りましたが、長い自粛期間の中で、お菓子だけではなく家の空間そのものをプロデュースする「進化系のおうちカフェ」が出てきたりしています。若者は、クリエイティブな発想で、制限された状況をポジティブに楽しんでいくことに長けているんです。なので、2022年やアフターコロナに向けて世の中の状況が変化すれば、そこに合わせて楽しみ方もどんどん変えていくんだろうなと思いますね。

ー確かに、制限がある中でいかに楽しめるかということへの熱量は、大人よりも格段に強いかもしれません。

そうですね。先日、ある高校生の方にインタビューをした際に、コロナ禍でオンライン授業が増え、プロジェクターを投影する関係で、黒板がホワイトボードに付け替えられている現状があることを知りました。これまでは、「黒板アート」と呼ばれる、黒板に絵を描いておしゃれな写真を撮影することが若者の中で流行していたのですが、それができなくなってしまったんです。ですが、その環境を利用して、いまはプロジェクターでおしゃれな画像を投影し、いわゆる「映え写真」を撮影するそうなんです。学校での楽しみ方も、環境に合わせてどんどん変化させていて、やはりこういった“楽しむことに対するパワーや熱量”が、若者からトレンドがどんどん生まれる所以なんだろうなと感じました。

ー最後に、長田さんの今後の展望をお聞かせください。

現在、SHIBUYA109 lab.としてはメンバーも増え、できることや幅もどんどん多くなってきています。ですので、around20世代のことを理解できないと悩んでいる企業の方々を手助けするタイミングをもっと増やしていきたいですね。先ほどもお話したように、企業と生活者の関係値が変化するとなると、マーケティングの仕方も変わってきます。その際に大切になるのは、自分たちが提供している商品と生活者の関係性だけではなく、「この人は、この商品以外に何が好きなんだろう」とターゲットのインサイトをより深掘りしていくことなんです。そういった新しいマーケティングのやり方や顧客との向き合い方という部分を、SHIBUYA109 lab.として様々な企業に提言・提供できるようにしていきたいと思います。

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