“自治体らしくない”動画で広告賞受賞!『東京2023加賀』流・反響を呼ぶご当地動画のヒント

認知度向上や観光促進、地域経済の活性化などを目的に、多くの自治体はシティプロモーションに力を入れています。さまざまなプロモーション手法があるなかでも、特に「自治体のプロモーション動画」は、ご当地グルメや観光地といった地域ならではの特色・暮らしを、ビジュアルで視聴者に訴求できる方法です。しかし、単に動画を制作して発信しただけでは、十分な効果を得られません。動画の続きを見たくなるような創意工夫がなければ、数ある動画コンテンツの中に埋もれてしまうでしょう。

こうしたなか、石川県加賀市が取り組んだ新幹線誘致プロジェクト『東京2023加賀』のご当地プロモーション動画は、数々の広告賞を受賞するなど大きな反響を呼んでいます。“地域らしさ”を盛り込みつつ、自虐的な描写や加賀市役所・市民を巻き込んだ共創型でプロジェクトを進めた背景について、加賀市産業振興部 政策官の宮永正人さんにお話を伺いました。

新幹線延線×シティプロモーション!「加賀市新幹線対策室」に迫る

“見せたい動画”よりも“拡散したくなる動画”をつくる

ーまずは、新幹線誘致プロジェクト『東京2023加賀』の概要について教えてください。

本プロジェクトは、2023年に控えた金沢・敦賀間の北陸新幹線延伸に伴い、停車駅候補に挙がっていた「加賀温泉駅」に新幹線を誘致するため、2017年8月に発足しました。以来、北陸新幹線開業に向けて、市役所の職員や地域の住民が一丸となり、加賀市の魅力を発信することで、話題喚起につながる取り組みをおこなってきました。

ープロジェクトの一環として、立ち上げ時に公開した動画コンテンツ「加賀市新幹線対策室」は、大きな話題を呼びました。

動画を公開したのは、新幹線開業に向けての機運醸成を目的にしていた一方で、加賀市という地域のことを知ってもらう、シティプロモーションとしても捉えていましたね。「加賀市は面白い試みをしている」と興味を持ってもらいたかったんですよ。実は、2014年度に北陸新幹線が開業した頃にも、首都圏から観光客をたくさん迎えるために、加賀市が誇る温泉郷の魅力や観光案内の動画を制作していました。しかし、市長から「もっと話題になるような面白い動画を作ってほしい」と言われ、今までのような「見せたい動画」ではなく、「拡散したくなる動画」を作ることが求められたんです。

地域・世の中の関心が高い「北陸新幹線の延伸」へ動画の方向性をシフト

ー実際のプロモーション動画はドラマ仕立てになっており、新幹線誘致に向けて奮闘する様子や、自虐的な表現を盛り込むなど、随所に工夫を凝らしていましたね。

観光特化のものでなくても構わないと市長から言われていたこともあり、視野を広げて動画の文脈を考えていました。そのなかで、地域の興味や世の中の関心事が高いテーマは「北陸新幹線の延伸」だと気づいたんです。そこから、新幹線に注目をあてた切り口でコンテンツを考えるようになり、プロジェクトを推進する電通さんと協力しながら、「加賀市新幹線対策室」のプロモーション動画を制作していきました。

話題性に富んだ面白い動画作りに取り組んでいったのですが、いざ公開してみると、予想以上の反響がありまして。当初は、単発の企画として動画を制作したものの、長期的なプロジェクトとして新幹線の延伸開業まで取り組んだ方が、シティプロモーションとしても大きな成果を挙げられる。そう思うようになり、「加賀市新幹線対策室 Season2」、「加賀市新幹線対策室 Season3」といったように連続ドラマ形式で動画を公開していきました。

市民巻き込み型のプロジェクトで重視した連続性と話題性

加賀市のあらゆる「コト」をコンテンツ化し、シリーズを通して話題性と新鮮味を担保

ー官民一体でプロジェクトを進めてきたとのことですが、具体的には加賀市民の皆さんとどのような連携をされていたのでしょうか?

プロジェクトを推進するにあたっては、観光地域づくり法人(DMO)の一般社団法人・加賀市観光交流機構に委託し、加賀市に関わるさまざまな人に参画してもらい、地域の魅力を伝えていこうと考えていました。プロモーション動画第1弾は、俳優の横田栄司さんに加賀停太郎役(室長)として出演いただきましたが、それ以外のエキストラ出演者は、加賀市民からオーディションで募ったんです。

ーあまり行政の施策の裏側を見られる機会はないですが、本動画では市民の皆さんを巻き込みながら、リアルな「新幹線停車駅に選ばれるための活動」自体をコンテンツの主軸におかれています。

新幹線の延伸開業までに地域を盛り上げていくことが、プロモーション動画の最終的なゴールだったため、さまざまな活動を取り上げながら、一定の連続性や一貫性を意識していました。ただ、都度テーマを変えていき、話題性や新鮮味を担保できるようにもしていましたね。

たとえば、第1弾は、金沢に嫉妬心を燃やし、自虐的な内容に仕上げつつ、第2弾はお隣の小松市に着目し、新幹線の停車駅に加賀市と小松市のどちらが選ばれるかというテーマを取り上げました。第3弾では、加賀市の特命大使に任命されているグッチ裕三さんに出演いただき、あえて加賀市の“ダメ出し”をしてもらい、第4弾は加賀出身で日本プロ野球創設の父・河野安通志氏の功績を称え、加賀にプロ野球チームをつくるという夢を語りました。第5弾は、加賀市が取り組む『e-加賀市民』や先進的なイノベーションへの取り組みを紹介し、第6弾で北陸新幹線の延伸開業の停車駅に選ばれたことに触れながらも、今後さらに頑張っていく決意を示した内容になっています。自治体PR施策としては、長期のプロジェクトだったわけですが、シーズンごとに関係各所で企画を擦り合わせながら足並みを揃え、進行していきました。

一貫して意識した“自治体らしくない”動画づくり

ー動画を作成するうえで、特に大切にされたポイントはどこでしょうか。

大切にしたかったのは、話題性を重視しながら、人に教えたくなるコンテンツをつくること。そして、それを果たすために根底においたのは、“自治体らしくない動画を作る”ということです。だからこそ、メッセージ性を意識したり、印象に残るような演出にしたりする必要があったわけですが、面白い動画を意識するあまり、「コンプライアンス的に大丈夫かどうか」と心配する場面も結構ありましたね。

私としては、観光のコンテンツも取り上げてほしかったのですが、金沢への嫉妬心をあらわにした描写が表立った内容になったときは、「クレームが来ないかな」と少し不安になりました。ただ、そこは電通さんを信頼していたのと、最初のとっかかりとして話題性を重視した方が拡散されやすいと考えました。やはり、動画は感動や笑いを取り入れることで流行ると思うんですよね。「加賀市新幹線対策室」の動画もその点を意識して、結果的に大きな反響を得られたのは、とても良かったと思っています。

累計100万ビュー超!広告賞受賞やメディア露出獲得のポイント

ー本プロジェクトの波及効果は何か感じられていますか?

動画をきっかけに、加賀市に興味を持ってくれた人は増えていると思います。動画に関して、少なくとも第5弾までで計100万ビューを超えていますし、他の自治体ではやっていないような面白いことを、 楽しく取り組んでいるのが伝わったのではないでしょうか。すべてありのままを伝えるというよりも、所々にフィクションも取り入れ、ドラマのようなストーリー仕立てにした点もポイントだったと思います。

たとえば、動画に出てくる「加賀市新幹線対策室」は、市役所内にある本当の部署なんです。ただ、本来は新幹線の駅の整備に関する業務をおこなう部署で、動画のような新幹線誘致のプロジェクトを担う役割は持っていません。動画コンテンツとして成立するように、うまくフィクションを交えながら仕上げたことで、ある種、自治体が作る動画としては“逸脱”した企画になりました。

だからこそ、多くの広告賞も受賞できましたし、メディア露出や動画の拡散に寄与できたと思っています。メディアアプローチに関しては、プロモーション動画の新作をお披露目するメディア発表会を毎回開催しており、記者クラブを通じて地元のメディアに周知していました。幸いにも、第1弾から県内のテレビ局や新聞社、地元紙含めて、ほとんどのメディアにお越しいただくなど、ニュース性のある取り組みとして注目いただけましたね。

ーさいごに、今後さらに加賀市を盛り上げていくためにどのような活動をされていくのか、展望についてお聞かせください。

加賀市の政策としては「消滅可能性都市からの脱却」を掲げています。具体的には、デジタルイノベーションや教育・子育ての充実など、 地域の大きな課題となっている人口減少を、あらゆる角度から対策できるような取り組みをおこなっていますね。新幹線の延伸開業によって、人が動けば情報も動くようになるので、それを契機にいかに地域を盛り上げられるかが重要になってくるでしょう。今後も、いろんな取り組みが加速していく加賀市について、“温泉観光都市”だけではない魅力や側面を面白く、楽しく伝えていきたいですね。

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