ブランドマーケティングにおける”生活者接点”の重要性とは?マーケターのホンネから探るコミュニティ作りやリアル施策のポイント

SNS全盛期。リアルの場での体験を通して得られる「驚き」「感動」「悦び」といった感情は、言語化されてSNSであっという間に拡散されていく時代です。リアルな体験は点でしかないものの、SNSに投稿したハッシュタグや写真はその人の思い出としてアーカイブされ、さらにはひとつの情報として様々な人に影響を与えるようにもなるため、オフラインでの体験設計の価値が改めて見直されてきています。

企業のマーケティングにおいても、デジタルだけでなくオフラインでもタッチポイントを作り、ユーザーとのコミュニケーションを図ること。商品やサービスに愛着を持ってもらうこと。また、ファン化してブランドロイヤリティを高めること。…などのように、ユーザーである生活者視点から逆算して、ブランド自体を啓蒙する「ブランドマーケティング」が求められているのではないでしょうか。
先日5月15日に原宿subaCOにて行われた『マーケのホンネ vol.7 リアルなブランド体験の作り方〜SNS全盛の今だからこそ立ち返りたい生活者接点〜』では、ブランドマーケティングを実践している企業担当者が集まって、ライトニングトークやパネルディスカッションを行いました。

本記事ではイベントの様子をご紹介し、今求められるブランドマーケティングについて考察していきたいと思います。

コミュニティマーケティングで重視すべきなのは”売上直結”よりも独自の”KPI”

写真1:古川 央士氏

始めに登壇したのは、2011年株式会社リクルートに新卒入社後、新規事業を開発する組織「次世代事業開発室(旧Media Technology Lab)」で10件以上の新規事業統括を行い、現在は複数の企業・NPO・社団法人等でコミュニティ設計やプロジェクト推進を行う古川 央士氏。

コミュニティマーケティングに興味を持ったのは、新卒で入社したリクルートのスケジュール調整サービス「調整さん」のグロースハック施策で、オフラインのイベントを数多く手がけたことがきっかけだそうです。

Googleトレンドによると、最近イベントの検索キーワードが伸びてきており、企業のブランドマーケティングの一環として、イベントを軸にした「コミュニティ」を立ち上げるケースが増えてきているそう。それでは企業が「コミュニティ」を立ち上げるのに当たって、一体どのような目的やKPIを設定すれば良いのでしょうか?

企業が「コミュニティ」を立ち上げる目的とメリットとは?

まずはコミュニティマーケティング先進企業の事例から、企業がコミュニティを立ち上げる目的を見てみましょう。例えば、採用のタレントプール形成や、ブランドマーケティングの一環として行なっているメルカリの採用イベントは、リアルイベントの参考になるケースです。一方、無印良品のIDEAPARKや、AWSのユーザーコミュニティなどは、ユーザー同士のピアツーピア (P2P)のコミュニケーションが活発に行われており、企業側が介入しなくてもFAQの回答やサポートが行われる、自走型コミュニティの良い例になります。

次に、企業が「コミュニティ」を設置する際の注意点について、古川氏は「売上になるアップセルを狙うのではく、コミュニティ独自のKPIを決めた方が良い」と説明。コミュニティマーケティングは、直接的な効果や数値的な成果がすぐには表れにくいため、無理にアップセルを目標にしてしまうと、商品やサービスの売り込みが中心の説明会などのような「一方通行の価値提供」になってしまう恐れがあります。そのため目先の利益は得られなくとも、まずはユーザーとの関係性構築に注力して共通のビジョンを持つことで、「相互の価値提供」が生まれるようなコミュニティ醸成を目指すことが大切です。

あくまでブランドマーケティングの一環として、コミュニティにユーザーを巻き込み、時には登壇や運営に携わってもらう。そうすると、結果的にブランドロイヤリティが向上して、中長期的な売上に繋がる布石を打てるのが、コミュニティマーケティングの良いところなのではないでしょうか。

BtoB商材こそリアルイベントでタッチポイントを作るべき

写真2:井上 裕司氏

続いて登壇したのが、元お笑い芸人という異色の経歴を持つRepro株式会社の井上 裕司氏。井上氏はセミナーやユーザー会といった、リアルイベント施策を成功させるために理解しておきたい心構えについて解説しました。

まず自社のマーケティング活動を行う際、自社サービスへの理解の深さが肝になります。webとアプリのマーケティングプラットフォーム を提供するReproの場合、サービス内容を見込み客へ端的に説明することが難しい上に、年間契約であるため、Saas企業の中でも商品単価が高い部類に入るという前提条件がありました。

それではなぜReproがリアルイベントを行う必要があったかというと、BtoBビジネスではサービス導入の検討期間が長く、ナーチャリングが非常に重要になってくるため。リアルイベントの開催や展示会出展など、常に見込み客とのタッチポイントを作ることで、「Repro=アプリのグロースに関する相談ができる企業」という純粋想起を生み出すきっかけを与えることができます。

リアルイベントを活用した2ステップマーケティングの有用性

井上氏はこれまで50以上のイベント開催に携わり、述べ2500名ほどの参加者と接してきた感想として、「セミナー参加という、ハードルの低いところからの2ステップマーケティングが有用」という答えに辿り着いたそうです。リアルイベントを続けることで得られる成果として、以下の3点を述べました。

  1. 新規リード獲得や有望なリードの創出
  2. 既存顧客とのリレーション作り
  3. リード育成からの商談化

しかし、ただイベントを開催しようとするのではなく、ターゲットのセグメントを意識してイベントの内容を決めることが最も大切です。その上で、イベント運営に役立つツールを活用したり、集客や募集のプラットフォームを使ったりなどして、ユーザーに来てもらうための導線設計を抜かりなく行う必要があります。自社だけでやるのは限界があるので、自社と近しいターゲットを抱える企業との共催を、積極的に行うのも良いでしょう。

またリアルイベントを行う際は、はじめから完璧を求めすぎる必要はありません。開催するたびに振り返りを怠らず、PDCAサイクルを回しながら改善していき、中長期的な視点で効果測定をしていくと、イベント開催のモチベーションが保てると井上氏はアドバイスしました。

超成熟市場では「情緒性」に優れたものがブランド認知に繋がりやすい

写真3:長谷部 祐樹氏

3人目は、キャンペーン企画やPR会社でのコミュニケーション戦略の企画から立案を経験し、現在は事業開発を担当する株式会社スペースマーケットの長谷部 祐樹氏。

長谷部氏いわく、SNS台頭による情報のハイレゾ化(情報過多)が進んだことによって、企業の広告や自分に関係のない情報は生活者にミュートされてしまうため、既存のマスマーケティングだけではブランド価値が伝わりにくくなっていると言います。これに加えて、あらゆるものがコモディティ化し、市場が超成熟してしまっている現代では、凝った創意工夫がなければブランド認知を獲得することも難しいです。

そこで重要になってくるのが、本質的な価値が伝わる体験、つまりリアル体験を提供する「ブランドマーケティング」。企業側は、施策を通して人と人との間に入り込み、商品やサービスが持つ本質的な価値を生活者に伝えることで、感動・体験・口コミといった行動変容を起こさせることが大切になります。

またデジタルでもリアルでも、ユーザーがブランドを思い浮かべながら言語化するシチュエーションを創出することが、ブランドマーケティングのキーになると加えた長谷部氏。そのためには、プロダクトは単に機能性だけでなく、情緒的な価値も持っているものを生み出していかなければなりません。

インフルエンサーをファン化させるブランド体験

写真4:堀 夢菜氏

最後は、会社のPRからマーケティング、クライアントのブランドマネジメントに従事している株式会社GENEROSITYの堀 夢菜氏。

アパレルのハイブランド企業から、消費財を提供する大手企業、地方創世の案件などまで幅広いクライアントを担当してきた中で、インフルエンサーとうまく付き合い、インフルエンサーにもブランドのファンになってもらうことが、ブランドマーケティングの真骨頂だと解説しました。

インフルエンサーの種類は、主に以下の4種類に分けられます。なお、芸能人やスポーツ選手、文化人は別の切り口で考えるそうです。

  1. トップインフルエンサー(フォロワー100万以上)
  2. ミドルインフルエンサー(フォロワー10万〜100万)
  3. マイクロインフルエンサー(フォロワー1万〜10万)
  4. ナノインフルエンサー(フォロワー1000人〜1万)

上記はインフルエンサーのフォロワー数や認知度で種類分けされていますが、定性的なインフルエンサーの考え方については、以下のように解説しました。

  1. トップインフルエンサー:知名度が高く、ブランディングされた人
  2. ミドルインフルエンサー:生活が想像できて、親近感の沸く人
  3. マイクロインフルエンサー:真似しようと思ったら真似できるような、生活を重ね合わせられる人

インフルエンサーは規模感よりも定性で選ぶ

ブランドへのロイヤリティ向上のために、ブランドマーケティング施策を行う際はインフルエンサーについて理解して、適材適所でキャスティングしたいところです。

定量よりも定性を大事にしている、あるアパレルのラグジュアリーブランドは、上位顧客(インフルエンサー)に対しては、イベントに来てもらうことで新商品の情報やブランド価値を認知してもらい、定性的なコメントで周囲に広めてもらうよう工夫しているそう。つまりこのアパレルのラグジュアリーブランドにとっては、ただお金を払ってSNSに投稿してもらうのではなく、インフルエンサー自身にブランドを愛してもらい、ファンになってもらうことがインフルエンサー起用のいちばんの目的になります。そのため、ただ新商品情報を提供するのではなく、リアルな場でのブランド体験が大事になってくるのです。

一方のイベントは単発的で、ワッと盛り上がっても一時的なものになってしまいがちであるため、イベント後のコミュニケーションが重要になります。イベントに関わったインフルエンサーへは、1 to 1で誕生日にギフトを贈るなどして、継続的にタッチポイントをつくっていくことも大切な要素の1つです。

ブランドの価値やブランドストーリーを知ってもらい、インフルエンサーをうまく巻き込むことができれば、インフルエンサーに以下のような行動変容が生まれます。

  • 商品をInstagramなどにポストしてもらえる
  • サービスを選んでもらえる
  • 知人におすすめしてもらえる

ブランドマーケティング施策を行う際、エンゲージメントやハッシュタグの数などの効果測定やモニタリングも大切ですが、インフルエンサー自身のブランドロイヤリティを高めることも心掛けたいところです。

体験ファーストで生活者との接点を作る

ブランドマーケティングでは、数値的分析やレポーティングといった定量分析だけでなく、リアルな体験の場でのブランド価値の訴求や、共感してもらうコンテンツ作りなどといった、定性の部分も非常に重要になります。なぜならば、口コミはリアルからしか生まれないからです。

そのため、”体験ファースト”で上流の企画部分から設計していき、生活者がSNSに投稿したくなるようなハッシュタグまで決めておくなど、リアルな場での体験からクチコミ形成させるまでの導線作りが大切です。さらにその体験の場から、ユーザー同士やブランド企業とのコミュニケーションが生まれるようになれば、ブランドロイヤリティの向上へ繋がる一手になるでしょう。

ただ認知度を上げるためにイベントをやるのではなく、イベント開催の目的をしっかりと置いておくことを忘れてはなりません。直接生活者と繋がるD2C(Direct to Consumer)ブランドや、UGC(User Generated Contents)を活用した企業ブランディング、またリアルイベントを通じて顧客や生活者との接点を作るファンベースの考え方が、より一層重要になってきていると言えるのではないでしょうか。

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