皆さんは、いま話題の雑貨店『AWESOME STORE(オーサムストア)』をご存じでしょうか?雑貨業界では珍しい“自社のオリジナル商品”を軸に年々成長を遂げているブランドで、昨年、渋谷に『AWESOME STORE TOKYO』を出店し、さらなる話題を呼んでいます。特に注目されているのは、店舗内に併設されている、ラジオブースを模した『ASスタジオ』という情報発信拠点です。
今回は、そのスタジオができた背景と活用方法に加え、ユニークな事業展開を続けるAWESOME STOREの広報活動についてインタビュー。オーサム株式会社 専務取締役 堀口周作さんと、企画開発部副部長 高橋猛志さんにお話を伺いました。
オーサム株式会社 専務取締役 堀口周作 2017年2月入社。AWESOME STOREの出店拡大や、カフェ事業の立上げに取り組む。店舗運営やEC事業なども統括しており、現在は更なるAWESOME STORE独自のOMO推進を含め、部署を横断した事業全体をリードしている。 |
オーサム株式会社 企画開発部 副部長 高橋猛志 2019年3月入社。広報担当としてAWESOME STOREの認知拡大に取り組む。現在は広報課、販売促進課、EC事業課をまとめた企画開発部にて、「遊び心」を提案する企業としての情報発信や企画考案に従事している。 |
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“遊び心”をエッセンスにオーサムらしさを表現する
―はじめに、AWESOME STORE(以下、オーサムストア)ブランド誕生の背景について教えてください。
堀口:オーサムストアのブランド自体は、8年ほど前に誕生しました。1号店は、2014年に開業した原宿表参道店で、現在、全国に62店舗を構えています。会社自体は、今年の2月でちょうど40周年を迎え、これまであった様々なブランドをオーサムストアに一本化しました。それにあわせて社名も変更しています。
これまで運営していた他のブランドとオーサムストアとの違いは、完全にオリジナルで商品を作って販売する、雑貨業界では数少ないSPA業態(製造小売業)を確立しているところです。近年、ファッション業界では、ファストファッションが台頭していますが、雑貨業界でもそういった業態を作っていきたいという思いがありました。そこから、プライベートブランド商品や自社オリジナル商品などを開発し、完全に自社100%で展開しているのがオーサムストアです。
―オーサムストアのコンセプトはどのようなものですか?
堀口:ベースに「シンプル&ナチュラル」を置きつつ、他社と違うエッセンスとして“遊び心”を加えるのが、オーサムストアのコンセプトです。手に取った時にクスッと笑えたり、他社の商品と比べた時に“オーサムらしい”と感じてもらえるようなデザインを心掛けて制作しています。
そもそも「オーサム」は、日本語でいう「すげぇ!」「かっけぇ!」のようなニュアンスの言葉です。それを私たちの中では“遊び心”と呼んでいて、くすぐられるような感覚を商品や店舗から感じてもらうために、デザインや会社の運営にもこのニュアンスを踏襲しています。
AWESOME STORE TOKYOから広がるスタッフやファンとの繋がり
AWESOME STOREの情報発信拠点『ASスタジオ』
―昨年、AWESOME STORE TOKYO(以下、TOKYO店)をオープンされました。こちらの店舗にはラジオブースのような『ASスタジオ』が設置されていますが、どのような背景で設けられたのでしょうか。
堀口:TOKYO店の開業自体は、2019年頃から決まっていました。当時、コロナ前だったこともあり、渋谷という場所でフラッグシップ店舗になるような構想をしていたので、どちらかというとステージなどを設けたオープンなスペースにする予定だったんです。現在のスタジオのような考えは全くありませんでした。
しかし、コロナの影響を受け、これから人を呼ぶこと自体が難しくなっていくと考えた時に、「オープンに想定していた空間を、あえて囲ってみるのはどうか?」と思ったんです。その頃、オーサムストアブランドとして、ECをしっかり売る舞台に変えていこうという方針が固まっていたので、人を誘致するスペースではなく、スタジオを設置して情報を発信する場に切り替えることにしました。その方が面白さもありますし、自分たちにとっても使いやすいのではないかと思ったんですね。
―コロナ禍の状況を受けて、オープンスペースからスタジオ形式に方向転換されたのですね。『ASスタジオ』は見た目にもかなりこだわられていそうです。
堀口:そうですね。基本的にどの店舗でも、内装や世界観にこだわっていますが、このスタジオはニューヨークの街中にあるラジオブースのようなイメージで作りました。スタジオにすると決めてからは、かなり速いペースで進行できましたね。
6つのコンテンツを配信するオウンドメディア『AWESOME CHANNEL』
―『ASスタジオ』を通じて、どのような取り組みをされているのでしょうか?
堀口:オーサムのオウンドメディアチャンネルとして『AWESOME CHANNEL(以下、オーサムチャンネル)』を運営し、6つのコンテンツを動画配信しています。共通して言えるのは、最終的にオーサムストアの商品が売れる仕組みになっているということです。たとえば「ENTERTAINMENT」のコンテンツでは、吉本芸人の方とコラボして新商品開発を行ったり、“無駄づくり発明家”の藤原麻里菜さんとコラボしてオーサムストアの商品を使った無駄づくり配信を行ったりと、他企業とのコラボレーションを積極的に取り入れつつ、商品のアピールにもつなげています。
―他企業とのコラボレーションがメインになってくるのでしょうか?
堀口:メインに置いているのは、自社の社員や店舗のスタッフが配信を行うことです。実際、店舗スタッフは「ストア配信」で自分のオススメ商品を紹介し、お客様からコメントをいただいてコミュニケーションを取っています。
また、本部からの発信力を持たせるために、本部のさまざまな部署メンバーをシャッフルしたチームを組んで企画を考えてもらい、月に2~3回程度のペースで配信しています。たとえば、ファッションがテーマであれば、ファッション雑貨を使ったスタイリングを実演したり、食がテーマであれば、オーサムストアにはお菓子やレトルトの商品が多いので、商品を使ったアレンジレシピを提案したり。このようにTOKYO店だけではなく、スタッフ自ら様々な場所よりオーサムチャンネルを介して情報発信してもらっています。それを、『ASスタジオ』を軸に展開しているという状況です。
スタッフの積極的な情報発信を促すベース作り
堀口:オーサムチャンネルをつくるにあたり苦労した点は、社内的にECへの理解を構築していかなければならなかったことです。これまで店舗スタッフの中には「ECは自分たちの店舗の競合」というイメージが植え付けられていました。そこで、このイメージを払拭するために、商品を自ら紹介し、間接売上として数値を可視化できる『AWESOME STYLING』を導入/展開しました。この取り組みのおかげで、ECのイメージを「自分たちの第2の店舗」へと変えることができ、ウェブやECへのアレルギー反応もなくなったため、オーサムチャンネルでの発信に協力的に取り組んでくれるようになりました。
―全国に62店舗もあると、特に地方の店舗などはコミュニケーションが難しいと思いますが、意識した点などはあるのでしょうか。
堀口:昨年の4月、愛媛のお店をオープンした際には、愛媛の店舗と『ASスタジオ』を繋いでインスタライブを行いましたね。また、デジタルサイネージも各店舗に順次導入しているので、オーサムチャンネルで生配信している画面やアーカイブ動画を流すなど、できる限りシームレスに展開できるよう働きかけています。
オーサムに興味を持ってもらうための魅せ方とは?
広報活動にも“遊び心”を組み込む
―オーサムチャンネルの実施で、社内外へのコミュニケーションは非常に重要視されているように感じましたが、広報活動全体では特にどのようなことを意識されていますか。
高橋:先ほど堀口からあったように、オーサムストアは“遊び心”をコンセプトにしている会社であり、お店なので、さまざまなところからそれを感じてもらえると思うんです。たとえば、店頭でいうと、商品やデザインの魅力をはじめ、「Awesome!」と思わず驚いてしまうような値段、店内の装飾など、いたるところに“遊び心”を組み込んだ仕掛け作りを心掛けています。“買ってもらおう”というよりは、“楽しんでもらおう”という感覚ですね。
なので、スタッフには「自分たちが楽しまなくちゃダメだよ」と伝えています。自分たちが楽しんで遊び心を見える化することが、そのままオーサムストアらしさにつながると思うんです。プレスリリースひとつをとっても、形式ばったものにならないように気を付けて、ウェブマガジンの特集テイストにしてみたり。個人的には、お客様よりもまず、メディアの人たちの中での認知度を上げて、逆に「オーサムストアを広めたい!」と思ってもらえるようなリリースの書き方などを意識しています。
―具体的な目標などは掲げていたのでしょうか?
高橋:はじめは、「プチプラ雑貨といえば?」と思い浮かべた時に、5番目くらいにオーサムストアが挙がるようにしようという目標を立てていました。地道な努力の甲斐もあってか、最近はランキング系の番組やビジネス番組にも取り上げていただけるなど、テレビ番組の露出にも繋がっていきました。
堀口:商品にまつわるリリース配信を、ECの特集にも紐づけて毎週継続して行っているため、オーサムストアと検索した時に、常に最新の情報を見つけられる状態にできていると思います。テレビに限らず、さまざまな媒体で紹介してもらえるように、常に新しい情報を供給する意識は持ち続けていきたいですね。
雑貨業界の底上げとコンテンツのクオリティ向上を目指す
―さいごに、事業面と生活者とのコミュニケーション面の2軸で、これからチャレンジしていきたいことについてお聞かせください。
堀口:事業面については、オーサムストアというブランド自体が、単なる出店舗拡大や売上増加をたどるのではなく、事業の拡大を視野に入れながら活動できたらと思っています。時代のニーズを捉えながら売るというところでは、いかようにもやり方があると思っているので、自分たちのブランド力を棄損しない形で表現していきたいです。加えて、雑貨業界自体が、業界としてまだまだ成り立っていないと感じているので、自分たちの活動を持って業界のベースの部分を作っていけたらと思います。
生活者とのコミュニケーション面では、情報発信はこの1年で全体的に浸透してきたので、質を求めにいきたいですね。ただ、よく言われる『量より質』という言葉は、ある程度の量を担保できるカルチャーがあることを前提として、はじめて質を求められるという意味だと思うので、これまで量を意識してやってきた部分は変えずに続けていきたいです。その上で、一つひとつのコンテンツのクオリティをあげていきたいと思っています。もしかしたら、発信している側と受け取る側に乖離があって、既存のコンテンツは飽きられているかもしれないし、もっと面白いものを求められているかもしれません。なので、コンテンツの質をあげていくというところは、より一層注力していきたいと思います。
1997年生まれの道産子。2020年に横浜国立大学を卒業し、株式会社マテリアルに新卒入社。新設のメディアリレーションチームに配属され、約1年間メディアの知識全般を深める。2021年6月より、『PR GENIC』の2代目編集長としてメディア運営を引き継ぎ、記事の執筆や編集業務に従事。新米編集長として、日々奮闘中。