グレーな事故物件の実態を“見える化”する。メディアを有効活用する成仏不動産の事業成長戦略

成仏不動産という事業をご存じでしょうか?2019年より事業を開始した、“事故物件”を専門で売買している不動産会社で、創業から2年半で数多くのメディアに取り上げられてきました。事故物件という、一般的にはネガティブなイメージを持たれがちな商材ですが、メディアを活用することで、その事業は伸長し続けています。

今回は、成仏不動産を運営する株式会社MARKSの花原浩二代表に、ネガティブな商材を通じて行う、メディアや生活者へのコミュニケーションのポイントについてお伺いし、事業成長の裏側について迫りました。

事故物件を扱う根底は「世の中の困りごとを解決したい」という思い

事故物件の需要と供給をマッチングさせ、市場の流通を計る

ーはじめに、MARKS創業の背景について教えてください。

私が不動産業に興味を持ったきっかけとなったのは、「阪神淡路大震災」です。震災が起きた当時、ちょうど大学受験の時期と重なっており、被災した街で受験や大学生活を経験しました。その経験から、地震の怖さを知ったと同時に、「地震に負けない家づくり」をしたいと思うようになりました。

不動産業界に就職した後は多くの物件を販売しましたが、ある時、新卒時代に売った家がどんどん空き家になっていることに気が付いたんです。家を売ることで、空き家を作っている感覚になってしまったんですね。そこから、家づくりだけではなく、「今ある家を大切にすること」も大切なのではないか?と考えるようになり、株式会社MARKSを創業しました。

ーそこから、どのような背景で成仏不動産を設立することになったのでしょうか。

事故物件を所有している方から、たまたま相談を受けたことがきっかけでした。その方は、事故物件の買い取りに関してお困りになっていて、調べてみると似たような内容で悩んでいる方がかなり多くいることが分かりました。MARKS創業の背景として、「世の中の困りごとを解決したい」という想いがあったため、事故物件で困っている人を助けるために何かできないかと考えるようになったんです。

その時に、「事故物件って一般的にすごく嫌がられるものだけど、その所有者はどういう思いを持っているのだろう」「本当に、すべての人が嫌っているのだろうか?平気な人もいるのではないか」と思うようになりました。そして、双方をマッチングさせることで事故物件の市場が流通するのではないかと考え、立ち上げたのが、成仏不動産です。

取材や顧客の声から見えた、困りごとの本質

ーそれでは、2019年の事業開始から2年半ほどで、どのような取り組みをされてきたのでしょうか?

創業から試行錯誤をしつつ取り組んできているのですが、正直、メディアの方に育ててもらった事業だと思っています。これまで、取材を通じて数えきれないほどの質問をいただいたのですが、その都度、世の中の困りごとや本質の部分が明確になっていったんです。

当初、成仏不動産は事故物件情報のプラットフォームで、私たちはサイトの運営元という立ち位置でした。その中で、取材をご提案いただいた際に、ほとんどの事故物件オーナーさんから、取材NGというお返事をいただきました。「事故物件だということを知られたくない、隠したい」という思いを持つ方が多かったんです。実際に、自分の持つ物件が事故物件だということを広めるメリットが一つもなかったんですね。

加えて、たまに取材許可をいただく物件もあったのですが、実際に拝見してみると、薄暗かったり、汚れが目立つようなものがほとんどでした。私たちとしても、このような物件を取材されてしまうと、より事故物件へのイメージダウンになりかねないと思い、それならば、自分たちで物件を購入して修繕し、売りに出した方が良いなと感じるようになりました。ただ、修繕を行うと言っても、単なるリノベーションでは、それを行う意義やどう役に立つのかが見いだせません。なので、戦略的に安く見せたり、おしゃれにみせたり、お得に見せたりというような、事故物件への良いイメージが広がっていくようなバリューアップを図りました。

メディアと二人三脚で作り上げる成仏不動産のサービス

グレーだった内情をオープンにし、事故物件へのイメージアップを図る

ー事故物件のイメージアップを図る戦略として、具体的な取り組みを教えてください。

いわゆる事故物件のイメージの悪さは、メディアが作ったものだと思っています。たとえば、メディアで事故物件というと、心霊的な企画や映画、事故物件に住む芸人の方が怪談を語るなど、事故物件=幽霊の印象が強いですよね。しかし、このイメージをよくするのもメディアだと私は考えています。なので、メディア戦略は非常に大切にしていますし、メディアを通じてあえて事故物件をオープンに発信しています。

その根幹にあるのは、一見、事故物件には見えない、おしゃれな物件を流通させることで、事故物件の評価自体を上げていきたいという思いです。これまでは、事故物件の正当な評価を誰も分かっていなかったんですね。相場も明確ではないし、検索しても出てこないので、現場では事故物件の所有者になったオーナーさんだけではなく、その相談を受けている不動産屋も正当な判断ができていない状況が生まれていました。そんな手探りな状況を打破し、物件をできる限り高く買い取るための工夫をしようと、現在奮闘している最中です。

ーこれまでグレーになっていた部分をオープンにしていく動きを意識されているんですね。

そうですね。成仏不動産のサービスとして、特殊清掃やご供養も提供しているのですが、これもお客様の「清掃や供養がきちんとされているかわからない」という“見えない不安”の声が多く挙がっていたことから生まれたものなんです。先述した通り、メディアの方やお客様とやり取りをする中で、世の中の困りごとが見えてくるので、それを基にサービスなどをブラッシュアップしています。なので、私にとってメディアの方とのやりとりは、ある種「壁打ち」のようなものになっています。

メディアへのヒアリングを基に事業を生み出す

ーそれでは、メディアに取り上げてもらうために、どのようなコミュニケーションを意識されていますか。

どのような文脈の情報だと取り上げやすいのか、もっと言うと、どんなコンテンツだとメディア受けするのかを直接ヒアリングしています。たとえば、成仏不動産では買取と売却の双方を行っているのですが、買取をメインにして「事故物件の買取業者」と打ち出した時に、メディアの方にはその情報がどう映るのかを聞いたりしてます。このヒアリングを基に、実際にサービス化しようと考えているものもあります。

また、こうしたやり取りをしていく中で、メディアの方から「こんなジャンルで記事が作れないか?」と相談ベースのお話をいただいたりします。その際は、私の中でメディア映えしそうなお客様を選択し、その方への取材はどうですか?と持ち掛けたりしますね。

ーメディア戦略に重点を置いた事業展開をしているんですね。

そうですね、そこのアンテナは広く張っています。ここまでメディアを重視する理由は、メディアというのは世の中が何に興味を持っているのかを反映しているものだと思うからです。そのため、メディアが興味を持ってくれたということは、生活者の方々にも興味を持ってもらえるものだと考えています。逆に言えば、メディアに興味を持ってもらえないものは、市場に出しても受け入れてもらえないと言えます。

応対するメディアには一定の基準を設ける

ーメディアの方とかなり密にコミュニケーションを取られているとのことですが、情報提供の際などに意識されていることはありますか?

メディアの方は「どこが他と違うのか」という差別化の部分や、話を聞いた時に「映像として思い描けるか」という部分を重視しています。この要素がないと取り上げてもらうのはなかなか難しいため、そこをしっかり言語化して、かつ、わかりやすい説明を心掛けています。ただ、この説明というのは、お客様に対して行っているものと変わりはないんです。なので、メディアに対しても、お客様に対しても、成仏不動産としての思いをしっかり伝わるように意識していますね。

ーあわせて、メディア対応で意識されていることはあるのでしょうか。

一番心掛けているのは、当たり前のことですが、どのようなメディアにも丁寧に対応するということですね。レスポンスなど、必要最低限のマナーは意識しています。ただ、闇雲にお受けするのではなく、会社として一定の基準は決めておくべきだと思います。成仏不動産で決めているのは、事故物件に関して霊的な捉え方や、イメージダウンに繋がるような表現をする可能性があるメディアの対応はしないことですね。簡易的なもので良いので、指標となるものを作成し、社内で共有すると良いと思います。

多角的な視点から“好まれない家”への需要を喚起する

ー現在、事故物件を生まないための取り組みにも着手していると拝見しました。

そうなんです。事故物件を生まないために、家族間のコミュニケーションを活発化させるような取り組みができたらと考えています。世の中の役に立つために始めた成仏不動産ですが、人の死を待ち孤独死を喜ぶようなビジネスにはしたくなかったんです。そのような思いから、今後は事故物件を生まないような取り組みにも注力できればと思います。

ー今後、MARKSとしてどのようなことに挑戦していきたいと考えていますか。

事故物件のような「負動産」を「富動産」に変えるようなビジネスを行っていきたいです。たとえば、一般的に好まれない、「日当たりの悪い家」「1階の物件」「駐車場のない家」なども、違う視点から見れば昼夜逆転している人や車を持っていない人などに需要がある可能性がありますよね。反対に、車を持っている人からすると、「駅チカに住むことはデメリット」になるかもしれませんし、このワードだけでも、メディアに刺さる可能性が高いと私は感じます。このように、母数は少なくても、少しでも欲しい人がいればマーケットはできるため、そういった多面的なアプローチを行っていきたいです。

また、この2年半で様々なメディアに露出させていただいたのですが、どうしても私がメインでメディアの方とやり取りする機会が多くなってしまいました。ですので、今後はより社員が表に出ていけるような仕組みを作れたらと思います。社員がその露出を武器に戦うことができますし、何より社員が前面に出ている会社の方が面白いですよね。

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