コロナ時代のPRイベントの新様式。オンラインイベント実施時に押さえたいポイントと事例5選

1都3県に再び緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルス収束の目処が立たない中での年明けとなった2021年。昨年の1年間で、経済活動の中でも様々な“新たな様式”が定着しましたが、オフラインからオンラインへの移行を余儀なくされたもののひとつである「PRイベント」は、今後どのように開催されることが望ましいのでしょうか。

本記事では、テレビディレクターの経験を持ち、芸能動画メディア立ち上げの先駆者である『フィールドキャスター』編集長・田中政和さんに話を伺いながら、オンラインでPRイベントを開催する際に押さえたいポイントについて探っていきます。

新型コロナ流行によりPRイベントはどのように変化したのか

コロナ禍でのPRイベント実施状況

新型コロナウイルス(以下新型コロナ)の流行が一気に拡大した2020年3月~5月ごろは、多くのPRイベントが軒並み中止になりました。6月ごろからは、徐々にデジタルへの対応が進み、オンライン上でイベントを開催する企業が増え始めます。この頃は、すべてのメディアがオンライン上での取材を行っていました。

その後、7月~8月にかけて感染対策を徹底した上で、オフラインイベントも開催する企業も増加。人数制限として、多くの場合で「テレビメディア」のみがイベント会場で取材できるような形式が取られ、他にもパーテーションの設置や、受付時に直接書類や名刺の受け渡しをしないなどの対策が行われました。

9月以降は、ほとんどのPRイベントが再びオフラインで開催されるようになりましたが、オンラインでもイベントの様子が同時配信されるなど、企業ごとに様々な工夫が見られています。

PRイベントに対するメディア側のテンション

企業側としては、感染リスクを最大限に抑えられる方式を採択したいところですが、実際に取材を行うメディア側は、PRイベントの開催状況についてどのように考えているのでしょうか。テレビディレクターの経験を持ち、動画ニュースメディア『フィールドキャスター』の代表を務める田中政和編集長に話を伺ったところ、「弊社としては、オフラインでの取材を希望します。」との回答が返ってきました。

「理由としては、これまで可能だったことが不可能になっているためです。オフラインイベントでは、イベント中にビデオカメラで撮影しつつ、スマホで動画を撮影して第一報としてTwitterに掲載したり、取材後に最寄りのインターネットカフェに行って、他のメディアよりも早く動画ニュースを掲載したりということが出来ていましたが、オンラインではこれが難しくなります。」(田中編集長)

オンラインPRイベントならではの効果

このように、オンラインイベントの場合は企業からの素材提供を待たなければならないため、第一報の速度がオフラインの時よりも遅くなってしまいます。また、単独取材やオリジナル素材の入手が難しいことから、オンラインよりもオフラインイベントの開催を望むメディアが多いと考えることができます。

一方で、オンラインイベントならではのメリットもあります。これまでのPRイベントは、メディアに向けて行われるものや、インフルエンサーのような一部ゲストを招いたものなど、限定的に公開されるものがほとんどでした。しかし、オンライン開催によって一般視聴のハードルが下がり、いままでメディアやインフルエンサーを介して届けていた情報を、よりダイレクトに一般生活者に届けることが可能になりました。実際に、イベント中にファンと交流するような演出が増えており、PRイベントを通じて生活者との距離を縮める企業も多くなってきています。

これについて、田中編集長も下記のようにコメントしています。

「PRイベントの新たな形として、“二部構成のオンラインイベント”が増えたと感じています。例えば、一部はメディアを対象にZOOMを使って配信され、二部は一般ユーザーを対象にインスタライブで配信されるなど、プラットフォームを変えて広くリーチすることを目指したイベントも出てきました。さらに、タレントがいるイベント会場と製品の生産工場をZOOMの中継で繋いで見せるなど、オンライン視聴でも臨場感を持たせる工夫がされるようになってきた点は、大きく変化した部分だと思います。」(田中編集長)

また、オンラインでの実施により、“どれだけ視聴されているか”を計測することも容易になりました。参加者の温度感やリアクションを可視化できることも、オンライン開催のメリットのひとつと言えるでしょう。

オンラインPRイベント開催時に押さえたいポイント

それでは、オンラインでPRイベントを実施する際には、具体的にどのような点に気を付けたら良いのでしょうか。「オフィシャル素材の提供」「個別/囲み取材への対応」「配信環境の確認/取材申請のオンライン化」の3つの観点から、オンラインイベント開催時のポイントについてご紹介します。

オフィシャル素材の提供

オンライン開催の場合、スクリーンショットを許可する場合を除いて、メディアがオリジナル素材を入手することが困難です。そのため開催側としては、メディアに対してどのような素材の提供が可能かを事前に確認しておく必要があります。少しでも提供出来る素材の幅を広げることを意識しましょう。

また、イベント終了後はスピーディーなオフィシャル素材の提供が求められます。この格納が遅れることにより、露出数が減少してしまう恐れがあるため、イベント終了後にすぐに素材提供できるような体制を前もって整えておくことが大切です。

「イベントのオフィシャル動画素材をいただけるケースが増えていることはありがたく思っています。しかし、オフィシャルの素材をいただけるタイミングが少し遅いケースもあるように感じています。例えば、オフィシャル撮影のご担当者がイベント会場で不必要な部分をカットする編集をして、その場でオンラインストレージに動画をアップロードするなど、メディア側ですぐに編集できるような状態にしていただけると一層ありがたいです。」(田中編集長)

オンラインイベントでは、オフライン以上にオフィシャル素材の重要度が高くなることを留意しておかなければなりません。

個別/囲み取材への対応

オンライン開催の場合、「質疑応答」が制限されやすいこともメディアにとってのデメリットのひとつ。そのため、より多くのメディアを誘致するためには、オンラインでもなるべく個別取材や囲み取材の場を用意することが望ましいです。

「オンラインイベントを開催した後、ZOOMの“ブレイクアウトルーム”の機能を使用したイベントがあると参加したいと思います。ZOOMのブレイクアウトルームとは、ホストが参加者をグループ分けできる機能です。例えば①タレント個別取材用 ②社長インタビュー用 ③広報担当者と詳細なやり取り用 などと3つのグループにメディアを分けて、オンライン上でさらに充実した取材ができればありがたいです。」(田中編集長)

このように、オンライン開催で質疑応答を行う際には特殊なフローが必要となります。そのため、オンラインに不慣れな参加者がいることも想定して、取材要綱や取材手順をより詳細に記載することが大切です。

配信環境の確認/取材申請のオンライン化

通信エラーや映像・音声の乱れは、参加者側にとって大きなストレスとなってしまいます。配信環境の確認は、事前に念入りに行いましょう。スムーズな進行のためにも、司会者と運営側がデジタルに慣れていることが望ましいです。

また、イベントだけでなく取材申請もオンライン上で完結できるものは、メディアにとって都合が良いようです。

「取材申請について、FAXでの返送ではなくグーグルフォーム等で簡単に申請できる形だとありがたいです。媒体名や連絡先などを一度登録しておけば、同じことを繰り返し書かずに済むシステムを使っていただけると、なお助かります。

また、コロナ禍になってから、『イベント案内メール』などの後に確認電話が来ることが増えた気がします。「〇〇の案件について本日の朝10時にメールを差し上げたのですが、ご覧いただけましたでしょうか?」という確認の電話です。電話をいただくと作業がストップしてしまうため、例えばですがマーケティングオートメーションツールを活用して、案内メールが開封されていないメディアに対してだけ電話するなどの業務の効率化が図れると、企業とメディアの双方にとって良いのではないかと思います。」(田中編集長)

再び緊急事態宣言が発令されたことにより、在宅勤務のメディアも増えることが予測されます。そのため、イベントの案内方法や取材申請方法についても、これを機に見直してみると良いかもしれません。

オンラインならではのユニークなPRイベント

現在行われているPRイベントでは、オンラインの特性を活かして、企業ごとに様々な工夫が凝らされています。本記事ではその中から5つの事例をご紹介します。

飲料メーカー×オンラインでファンと乾杯するイベント

飲料メーカーでは、オンライン上でファンと乾杯するイベントが開催されています。

例えばアサヒビールの場合、「いいかも!オンライン飲み『ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR』」の第4回に、元乃木坂46の白石麻衣、霜降り明星、アサヒビールイメージガールの高田里穂が参加し、700名のファンとZOOM上で乾杯しました。

同様に、宝酒造主催の「オンラインレモンサワーフェスティバル2020」でも、EXILEのTAKAHIROとバイきんぐ小峠による乾杯イベントが行われました。

スポーツ関連×オンライン上で交流するイベント

オリンピックを始め、様々な大会が中止となり、昨年大きな打撃を受けたスポーツ業界。そんなスポーツ関係者を元気づけるようなユニークなPRイベントも、オンライン上で実施されました。

大塚製薬のポカリスエットは、全国高等学校体育連盟主催「明日へのエールプロジェクト」への協賛として、『オンラインエール授業』を実施。インターハイ全30競技の高校生と指導者が、トップアスリートと“部活動のいまとこれから”を一緒に話し合うオンライン授業が行われました。

一方ニューバランスは、“今”を最大限に楽しむ新しいランニングのカタチとして、オンラインランニングイベント『10K CHARGE』を開催。これは、全国のランナーたちが各地で一斉に10キロを走り、東京のスタジオから全国のランナーとZOOM上でトークするというイベントです。全国のランナーは、それぞれのスマホを使ってイベントに参加し、専門家指導のもと準備運動からランニング後のケアまで全員一斉に行いました。

「昔、日本テレビで放送されていた『ズームイン!!朝!』のように全国の拠点中継みたいなものがほぼ無料で実現して、それが一般の人も手軽にできるってすごい時代だなと改めて思いました。このイベントは弊社が生配信と撮影業務を担当したのですが、出演者が多いので必死に「パネリストに昇格」「ビデオを許可」「ミュートを解除」などの操作をしていました(笑)※アーカイブ視聴可 https://twitter.com/NBRunning_JP/status/1320165754327580673」(田中編集長)

 

コスメブランド×インスタライブを活用したオンラインイベント

ブランドの世界観づくりが重視されるコスメブランドでは、各社でオリジナリティ溢れる工夫が見られました。

エイジングケアブランドのエリクシールは、新商品発売を記念して、インスタライブ「目指せ、自撮りマスターへの道」を実施。美容関連の発信を積極的に行うお笑い芸人のバービーと、印象評論家として活躍する重太みゆきが登場し、オンライン環境下にも効果的な「自撮りテクニック」について語られました。

ORICON NEWS
お笑い芸人のバービーさんと印象評論家の重太みゆきさんをお招きしたインスタLIVE...
https://www.oricon.co.jp/pressrelease/713660/
Release No.713660|重太さん直伝!目的別自撮りテクニックをご紹介! 13年連続スキンケア売上 N o.1※1 のエイジングケア※2 ブランド「エリクシール」は、8月21日(金)より新美容液「デザインタイム美容液」が発売したことを記...

ここで押さえておきたいポイントは、メディアに対して事前に商品を送付した上でイベントを実施することです。これまでイベント会場で手渡ししていたものを事前配布しておくことで、オンライン開催でも、イベント中に商品を手に取りながら見てもらうことが可能となります。

特性を活かして、効果の高いオンラインイベントを

未だ収束の目途が立たない新型コロナウイルス。生活様式だけでなく、企業活動においても柔軟に対応していかなければならない中で、これまでオフラインで行われていた「PRイベント」は特に“従来のやり方”と“新たな形式”の両方を上手く取り入れていかなければなりません。

オフラインで実施するか、もしくはオンラインで実施するか、その判断基準は企業によって様々ですが、これまでご紹介してきたように、オンラインイベントにはオフラインにはないメリットも複数あります。この変化をネガティブに捉えるのではなく、いかにオンラインならではの効果を活かしたイベントを企画できるか。そこに焦点を当て、目的に合わせて最適な手段を選択していくことが大切です。その選択の中で、もしオンラインイベントを実施することになった際に、記事内でご紹介したポイントが少しでもお役に立てれば幸いです。

 

◆PRに関するお悩み相談を受け付けています◆
日々のPRやコミュニケーション活動に関するお悩みがあれば、何でもご投稿ください。いただいたご相談内容は、記事コンテンツやセミナー、勉強会などを通じて回答いたします。

 

 

関連記事

  1. Twitter施策は“モーメント×トライブ”で作る。生活者の会話を生み…

  2. 買い物の新概念“応援購入”を生んだMakuakeが実践する 2軸の広報…

  3. インフルエンサーのD2Cブランドが強い理由。“自主発信”で勝ち抜くウェ…

  4. スタートアップはPRで差がつく。事業の急成長を支えたサイバーエージェン…

  5. ”脱自画自賛”から始める採用広報。企業ブランドを正しくデザインする「P…

  6. ”1億総メディア時代”の生活者を動かすコミュニケーションとは?SNS起…

  7. 非常時の今こそ見直したい、企業と社会を繋ぐコーポレートコミュニケーショ…

  8. 潜在需要喚起でフードテック産業を盛り上げる。リアル体験を生むFOOD …

新着記事 人気記事