自ら発信しないSNSプロモーション。ブランドらしさを押し出すバーガーキングのマーケティング戦略

リモートワークやテレワークが常態化したことにより、生活者を取り巻くライフスタイルは大きく変化しました。それに伴って消費者の志向も多様化し、従来のマーケティング施策や成果を出すための正攻法が通用しなくなったのも事実です。先行き不透明な状況が続く中、大手ハンバーガーチェーンブランドの「バーガーキング」は、積極的な出店攻勢やSNSを中心としたデジタルマーケティングを駆使することで、軒並み苦境に立たされる飲食業界の中でも健闘を見せています。

今回は、バーガーキングを運営する株式会社ビーケージャパンホールディングスでマーケティングディレクターを務める野村一裕さんに、度々話題を呼ぶSNSプロモーションの狙いと、その背景にある独自のマーケティング戦略について話を伺いました。

話題づくりに長けたSNS戦略を紐解く

限られた原資をデジタルマーケティングで最大限に活かす

バーガーキングは、SNSでの話題作りに長けているブランドとして知られています。人の心を掴む、ユニークかつウィットに富んだマーケティングは絶妙で、バーガーキングの認知度向上やファン作りにおいて大きなウェイトを占めるといっても過言ではありません。こうしたデジタルを使ったマーケティング施策は、バーガーキングにとってどのような位置づけになっているでしょうか。

「マーケティングに割ける潤沢な原資がない分、デジタル上での話題喚起や来店に繋がるようなプロモーションを意識している」と野村さんは話します。

「バーガーキングは全国に120店舗しかないハンバーガーブランドで、他社さんのような数千店舗を有する規模感ではありません。薄利多売で利益を上げていく飲食店の体質があるゆえ、大々的なATL(TV・ラジオ・新聞・雑誌)を使ったプロモーションはできないんです。そのため、デジタルマーケティングに比重を置いています。

プロモーションする上で意識しているのは、『ファンを増やす』『店舗への来店喚起』『ブランド認知拡大』の3つです。原資のある他社さんが行う『著名な有名人を起用し、マスメディアで発信するマーケティング』とは真逆の、『話題に上がるような仕掛けを作って、消費者起点で発信してもらう』ことを意識したマーケティング施策を行っていますね。」

ブランド自体はあえて発信せず、第三者に見つけてもらう

その中でも、特に大事にしているのは「バーガーキング自体は発信しない」ことだそう。あくまで消費者に「バーガーキングが面白いことをやっている」と見つけてもらい、自然にSNSや口コミで拡散させるために、知恵とアイデアを絞って“仕込み”を行っているのです。

野村さんは、バーガーキングならではのバズを生み出すマーケティングについて次のように語ります。

「実際にSNS上で大きな反響を呼んだ事例として有名なのは、秋葉原の店舗に掲示した『“縦読み”ポスター』と、下北沢店の新店舗を作る際の工事現場に『Twitterのやり取りをそのまま外壁に載せたプロモーション』です。Twitterをうまく連動させたプロモーション企画だったわけですが、前者はSNSでかなりの反響を得ただけでなく、ポスターについて芸能人がTVで言及するくらい、世間的に大きな話題となりました。

後者のTwitterのやり取りをそのまま晒したプロモーションも、『斬新で面白い』とSNSで大きなバズを生みましたが、どちらもユーザーのひとつのツイートから瞬く間に広まったことが起点になっています。つまり、バーガーキング自体からは一切発信していないんですよ。これがバーガーキングの狙いで、自然と興味関心を持ってもらい、バーガーキングのファンになってもらえるような働きかけを大事にしています。」

“バーガーキングらしさ”を常に考えたブランドコミュニケーション

マーケティングは緻密な企画や準備が欠かせない

バーガーキングの奇をてらったマーケティングは、Twitterユーザーの目に留まりやすく、思わず一緒に拡散したくなります。こういった“バーガーキングらしさ”溢れる印象的なプロモーションを実現するには、「緻密な企画や準備が欠かせない」と野村さんは言います。

「下北沢のマーケティング施策は、綿密に計画して実行したんですよ。まず下準備として、プロモーションの発端になった『バーガーキング下北沢店作ってくれや』とツイートしたユーザーの方に、あらかじめ『ツイートとアカウント名だけプロモーションに使用したい』とDMし、事前許可を得ました。そして次の段階で、バーガーキング公式アカウントからリツイートするわけですが、実はそのタイミングにちょっとした狙いがありまして…(笑)。

リツイートするタイミングと、工事現場の外壁にTwiiterのやりとりを貼り出す時間を合わせつつ、下北沢店の工事現場周辺を通りがかる人の多い時間帯を加味して、夕方の18時頃を狙ったんです。結果として、3時間後の21時を過ぎた時点では10万リツイート、最終的には32万リツイートくらいまで伸びましたね。」

意見が二分されることで、よりブランド認知につながる

加えて、野村さんは「“賛成50%、反対50%”と意見が分散すれば、よりいろんな人にブランドを知ってもらいやすい」と説明します。

「コラボやタイアップ施策、芸能人を起用したインフルエンサーマーケティングなどを行えば、100%いい意見を醸成できます。もちろん広告やPRに使える資金があれば有効な手法ですが、バーガーキングが行うマーケティング施策では、むしろ意見が割れる方が、ブランド認知に寄与すると思っています。例えば秋葉原のポスターの内容は、人によって様々な見方や捉え方ができますので、いわば“賛否両論”という形でSNSから地上波まで派生し、多くの人に注目されるトピックになりました。モラルに反するような打ち出し方はよくありませんが、他社がやらないような“攻めのSNS戦略”で、ブランドの存在感を示せるよう取り組んでいますね。」

こうした印象に残るプロモーションやマーケティング施策を手がけるために、野村さん自身も、Twitterのエゴサーチは常に欠かさず行っているそう。

「Twitterで『バーガーキング』と入れてエゴサーチするのは、もうライフワークになっていますね(笑)。それくらい、ファンの方がバーガーキングに対してどう思っているのかを深く知りたいんです。ほぼ毎日バーガーキングに通うようなロイヤリティの高いユーザーはもちろん、批判的な意見をツイートしているユーザーにも目を向けています。“ポジネガ”問わず、バーガーキングに興味関心を持つユーザーの動向を掴み、よりよいブランドへと変わっていくためのヒントを得ようと、日々心がけていますね。」

それだけ“ブランド愛に溢れている”と言っても過言ではないかもしれません。

コロナ禍でも右肩上がり。バーガーキング流のブランド価値の高め方

成熟したハンバーガー業界の中で、ブランドの輪郭を見せる必要性

他方、グローバルで展開するバーガーキングの広告は、過激かつ野心的な印象を受けます。競合他社との“広告戦争”と言わんばかりのスタンスで、果敢に攻める姿勢を貫いている中、日本ならではのマーケティング戦略を立てる上で意識していることについて野村さんに伺うと、「点と点をつなげてアクションを考えている」とし、次のような回答が返ってきました。

「競合他社さんは全国に数千店舗を構えるのに比べ、バーガーキングはわずか120店舗しかありません。規模感が違いすぎるので、まずは大前提として、“店がある”ということを見せていく必要があるんです。アドバルーンを上げるというか、ブランドの輪郭をどう見せていくかが肝になってくるわけで、バーガーキングがどういうキャラクターであるかを知ってもらわなければならない。そのためには、いかに“バーガーキングらしさ”を表現できるかが重要になります。

破天荒なプロモーションやPR施策ばかりが目につきますが、日本では進出と撤退を繰り返してきた過去があるゆえ、成長過程をお客様と共有し、バーガーキングを認知してもらうことが大切なんです。成熟したハンバーガー業界の中で、第4のバーガーブランドを目指すために、ちょっと自虐的で、バーガーキングらしい機転をきかせたマーケティングを実施しています。」

マックの存在があるからこそ、バーガーキングらしさが支持される

バーガーキング不動の人気商品「ワッパー」

そんなバーガーキングにとって、最大のライバルと言えるのがマクドナルドでしょう。世界的にも「マック VS バーガーキング」の構図が有名ですが、「マクドナルドと比較してもらえることが、逆にバーガーキングのブランド価値を高めてくれる」と野村さんは言います。

「いまや国民食と言っていいほど、マクドナルドのハンバーガーはスタンダードになっています。だからこそ、『ビッグマック』と『ワッパー』を比較してもらえる(笑)。値段の違いはもちろん、ボリュームや味、そのほかクーポンの割引き率など、あらゆるものが比較対象になっているので、それだけでも相当のPR効果に繋がっていると考えています。人によっては、『バーガーキングを一度知ったら、もう戻れない』とブランドスイッチして下さる場合もありますしね。

バーガーキングの一番のウリは“直火焼きの100%ビーフ”で、他社さんにはない強みです。マーケティングや広告予算が限られていても、『プロダクト×競合』によってブランドバリューを高めていくことができます。さらに、そこに“ブランド愛”が加わることで、バーガーキングを愛してやまない熱狂的なファンが増え、ブランドを支えてくれるんですよ。」

出店攻勢をかけるのは“新生バーガーキング”を知ってもらうため

2021年3月には22年ぶりにロゴを刷新し、メニューのリニューアルを行ったバーガーキングですが、コロナ禍で軒並み飲食店が苦境に立たされている状況でも、既存店の売上は右肩上がりの成長を遂げているとのことです。最後に野村さんへ今後の展望についてお聞きしました。

「コロナ禍でも好調を維持できたのは、巣篭もり需要でデリバリーやテイクアウトのニーズが増加したことが大きいですね。実店舗よりも単価が高く、その分利益が上乗せされるので、好調の一因として挙げられます。また一方で、出店攻勢もかけていて、今年は年間30店~40店ペース、来年度は50店舗を視野に計画しています。ロゴを刷新したタイミングですので、“新生バーガーキング”をいろんな人に知ってもらうために、今後も出店は積極的に行っていきたいと思います。

また、少数精鋭のマーケティング部隊でやっている分、3週間単位でキャンペーンや施策のPDCAを回せるので、『バーガーキングらしいね』って言われるような話題づくりができるよう、今後もいろいろと模索しながら挑戦していきたいですね。」

バーガーキングの、今後の更なる飛躍が期待されます。

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