メディアに好かれるPRマンの特徴とは?大学生情報メディアNo.1『マイナビ学生の窓口』編集長に訊く、メディアリレーションの極意

広報やPRの仕事をしていると、仕事の成果にも直接かかわってくるのが“メディアリレーション力”。身近なようで、なかなかその内部まで潜り込むことができないメディアは、いまどのようなことを意識してコンテンツを作り、PRマンに対してどのようなことを求めているのでしょうか?今回は、連載企画『メディアのホンネ』記念すべき第1弾として、大学生情報メディアで一番の人気を誇る『マイナビ学生の窓口』編集長・辻井孝太さんに突撃インタビューしてきました!(聞き手・森奏子)

大学生にキッカケを与えるメディア“マイナビ学生の窓口”

変革期の真っ只中にあるマイナビ学生の窓口

九段下にある眺めの良いオフィスです

—まず初めに、マイナビ学生の窓口について教えてください。

『マイナビ学生の窓口』は、大学4年間を充実させる情報を届ける、大学生向けの情報メディアです。「大学生にきっかけを届ける」というメッセージで、新生活で上手く友達ができるきっかけや、アルバイトを始めるきっかけなど、大学生の時にしかできないことを体験するきっかけを、我々のリソースや社会的立場を使って、我々にしか出来ない方法で届けることをモットーにしています。

ビジネス寄りの説明でいうと、マイナビ自体のファンを作ることもメディア運営の目的の1つで、検索流入を含めて、大学生の3人に1人が『学生の窓口』を閲覧してくれています。

プレスリリースは咀嚼の余地がなければ記事化しにくい

プレスリリースからの記事化は美味しくない

赤裸々に話して下さる辻井さん

―大学生の3人に1人がアクセスするメディアとなると、プレスリリースやタイアップ依頼も毎日たくさん届くと思います。辻井さんはプレスリリースはいつもチェックされてらっしゃるんですか?

ほとんど見ていないです。プレスリリースは受信フォルダで分けてるんですけど、未開封のものがたまってますね。一応1週間に1回は、ぱーっと件名だけ見てるんですよ。

―ということは、プレスリリースからの記事化や情報収集は行っていないのですか?

プレスリリースからの記事化は、現状ほぼないですね。プレスリリースのメールは基本的に見ていないです。今のメディア作りのフェーズにおいて、そのプレスリリースからネタを拾うことは、優先順位として非常に低いです。あとプレスリリースにあとから乗っても、一次情報を伝えるメディアとしては美味しくないかな、と思っているところは正直あります。

ーなぜ美味しくないと思うのですか?

咀嚼の余地がないものが多いからですね。プレスリリースって、企業が伝えたいことがいっぱい詰め込まれてるじゃないですか。その伝えたいことをそのまま記事にしても、読者は読んでくれないんですよね。でもそういうプレスリリースを見ると、「記事はこういう風に書いてください」って記事の書き方を限定されている感じがするんです…。タイアップ記事でそうならわかるけど、そうでない場合にも企業の文脈に乗りすぎて終わっちゃったりすると、プレスリリースからの記事化は美味しくないな~って。プレスリリース送って下さるなら、こちら都合で自由に書かせてもらえた方が書きやすいですし、記事化したいなって思います。

“仕事感”が前面に出るトークは気持ちが冷める

PRパーソンとは、「あの人に相談しよう」と思える関係性を築きたい

辻井さんはお話しするときに目をつぶるくせがあるようです

ープレスリリースがそのように受け取られていたとは驚きです。それではどのような広報担当者やPRマンだと、一緒に仕事したいと思いますか?

とくにPR会社さんは、仕事感のないトークができるといいなと思います。「うちのこれ面白いんですよ!!」っていうテンションで来てくれたらいいんですけど、プレスリリースの掲載数だったりとか、そこから実際にどれくらい購入に繋げられるかとか、KPIを達成するためには背に腹は代えられないところがあるじゃないですか。僕の性格もあるんですけど、それが前面に出てきたトークをされると、ちょっと今回ははむずかしいかな…ってなることが多くて。広報担当の方もPRの方も、普通に自社やクライアントさんの面白いところを面白く教えて下さったら、こちらも何かできないかなと考えたくなりますね。

あとは担当者の顔が見える方が楽だなって思います。「あの人に相談しよう」って思える関係性ができるといいなって。数打ちゃ当たるっていう時代でもないからこそ、「自社のここがいいです」っていうのを、自分の言葉で語ってもらえるとすごい嬉しいです。プレスリリースを打つこと自体に大きな価値があるわけではなくて、そこから何かにつなげることに価値があると思うので。そうでないと、メールもどんどん未読ボックスにたまっていってしまいます。

プレスリリースに頼らない編集長は、どうやって企画作りを行っているのか

学窓がインフルエンサーや著名人をつかわない理由

学窓編集部におじゃましました

―それではいつも辻井さんは何から情報収集して企画を作っているんですか?

僕がよくするのは、「もしもテレ東のプロデューサーがマイナビで企画を作るとしたら何するかな」っていう考え方です。たとえばテレ東っぽさって何かというと、面白そうな人を街角で見つけるとか、終電を逃した人の家に行くとか、そういう大衆性とトリッキーさを番組にしているところ。昔のTVチャンピオンとか特に、素人にもちゃんとストーリーがあるっていうことを、しっかり演出していたじゃないですか。

僕の中にも、「インフルエンサーや著名人だけがストーリーを持ってるわけじゃない」っていうところがやりたいテーマとしてあるので、著名人にはあまり頼らず、ニュースターを引っ張ってくることを大切にしています。今ネットで視聴率がある世代よりも、大学生って若いじゃないですか。だから現役世代からそういう人を見つけていきたいです。

コンテンツ作りの肝は「マイナビいいことしてるじゃん」と思われる企画であること

―このメディアを通じて大学生にどう変わってほしいとか、そういった想いはありますか?

大学生っていろいろ面白いことできるんだなとか、それくらいのことを思ってくれれば嬉しいです。例えば学生お笑い芸人が参加するお笑い大会を、普通とはちょっと違う切り口でやってみたりして、「ここではこういう体験ができるんだ。面白いじゃん」と思ってもらったり。いろんなセグメントに対して、「ここちょっと面白かったな」って思ってもらえたら、正直なんでもいいです。それが押し付けがましくない、ファンになってもらう方法なのかなと思っています。

マイナビって生活者にとって“インフラ”でしかないので、現状だと「マイナビ大好き!」っていう人は多くはないのかなって思っていて、だからこそマイナビがやらなそうなことをちょっとずつしかけていきたいです。最近では、今の日本の就活を真正面からブッタ切ったよっぴーさんの記事(『#生き方コンパスVol.3:ヨッピー「今の就活はみんな頑張りすぎ。テキトーくらいで充分」』)が、「マイナビよく載せたな」って褒められました。

記事詳細はこちらをクリック!

この記事のように、マイナビだからこそ、就活に対する情報を良いことも悪いことも全部フラットに吐き出して伝えることによって、人格としてのマイナビを出していくことを大切にしています。それがウザくなく、親しみやすいキャラクターであることによって、2:6:2の6の学生、つまり「意識が高くない層の大学生」も読んでくれる記事を作れるのではないかなと。

学窓編集長・辻井さんの2019年の抱負は?

昨年末に東証で行われた「就活ホンネ会議」

―それでは最後に、辻井編集長の2019年の抱負をお願いします。

大学生にとって、なんか面白いことしようっていう時に、「マイナビの学生の窓口というメディアが面白そうなことやってるから一緒にやりたいな」って思い起こしてもらうスピードを上げていきたいです。一方的な情報発信ではなく、大学生と面白いことを一緒にしたいなって心から思っています。大学生にとっていちばん距離の近いメディアになりたいですね。

突撃インタビューを終えて

メディアの実態は聞いてみないとわからないことだらけ

広報担当者やPRマンにとって、プレスリリースを作成してメディアに送る作業は、大切な仕事内容の1つです。しかし相手のメディアの編集方針やポリシー、また普段どこから情報収集を行っているかを知らなければ、それに適した情報提供を行うことができず、最大の目的である記事掲載も難しくなってしまいます。

今回取材したマイナビ学生の窓口のように、そもそもプレスリリースからの情報収集を行っていないメディアにも、毎日多くのプレスリリースが届いていることを考えると、いま行っている作業が無駄に終わってしまう可能性も少なくありません。より多くのメディアに掲載してもらうことを意識するあまり、プレスリリースの使い道がメールの一斉送信で終わってしまっていませんか?「このメディアには取り上げられて欲しい!」「このメディアとこんな記事を作りたい!」と思うメディアへは、直接足を運んで編集者に会い、自分の言葉でお話しすることが、メディアリレーション構築へのいちばんの近道です。

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