飲食店従事者にとって、「インスタ映え」はもはや無視できないワードのひとつです。ただこの「インスタ映え」をどう取り入れていいのかわからない、という方は多いのではないでしょうか。
今回はお客さんがインスタに投稿したくなる飲食店の「インスタ映え」について、最近流行りのハッシュタグや事例などを交えながら、PR視点で考察していきます。
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お客さんがインスタに投稿する動機とは?
そもそもなぜお客さんは、写真を撮って、インスタグラムというアプリに写真を加工して投稿するのでしょうか?「インスタ映え」を設計する前に、この「なぜ」をきちんと理解することが大切です。
インスタを投稿する理由=思い出を切り取って残したいから
お客さんは写真を撮ることによって、“思い出を切り取っている”ということを忘れてはいけません。とあるグループインタビューで、「インスタで大切なのは陶酔感だ」と話している大学生がいました。まさにその通りであり、彼らはおしゃれをして出かけたレストランや、カフェでの体験を写真や動画に収め、それをインスタに投稿することで、他人に自慢できる、つまり”陶酔”できる思い出を切り取っているのです。
上記を踏まえた上で、「インスタ映え」を設計するために一番大切なのは、お店に来てくれたお客さんに、楽しい気持ちを持ち帰ってもらうことです。事前にテーブル予約をしておくと、「○○様、本日はご来店ありがとうございます」という手書きのカードが置いてあることがありますが、このような心遣いこそが、「インスタ映え」を考える上で重要なたった1つのルールです。
見栄えだけの「インスタ映え」は時代遅れ
一番の落とし穴は、“見た目だけの「インスタ映え」メニュー”を作ることです。
もはや見栄えの良さだけでは「インスタ映え」とは言えない
たしかに既存のメニューの盛り付け方にアレンジを加えてみたり、お皿をお洒落なものに替えてみたり…といった工夫は「インスタ映え」を意識する上で非常に大切です。ちょっとした工夫ひとつでも料理の見栄えは大きく変わり、写真を撮ってもらえる確度も上がります。
しかし情報があふれ返っているこのご時世、お客さんは“かわいいもの”“おしゃれなもの”に目が肥えています。さらに今までは、多くの人が自分をより良く見せようとする投稿を目指していましたが、最近では「インスタ映え」をあからさまに狙っている人たちは「インスタ蝿」と呼ばれるなど、煙たがられる傾向も出てきました。
また「インスタ映え」の流行以降、見栄えのいいアイスクリームの写真だけ撮って、肝心のアイスは食べずに捨てる人が続出するなど、「インスタ映え」に潜む問題がニュースでも取り上げられるようになり、「インスタ映え」への生活者の捉え方も徐々に変化してきました。お客さんにインスタで投稿してもらうためには、見栄えだけでなくお客さんの体験そのものを作ることを意識しましょう。
「インスタ映え」の極意は大きく2つ
それではお客さんが思い出として切り取りたくなる体験を提供するために、飲食店は具体的に何を意識すればいいのでしょうか?その答えは、“臨場感”と“温度感”です。
“臨場感”はインスタ映えのマスト要素
ひとつめは、「インスタ映え」要素として言わずと知れた“臨場感”です。ほかほか、ふわふわ、あつあつ、サクサク、とろ~り、じゅわ~、でかっ!、といった臨場感のある料理は、「ここでしかできない体験」「思い出として切り取りたい体験」「他人に自慢したい体験」として撮影され、インスタに投稿されやすいです。
最近流行りのチーズハットグやラクレットチーズ、またふわふわパンケーキなどがその好例です。その場での体験が、写真や動画を通して“伝わる”と感じられるものこそが、“シェアされる料理”だと言えます。
作り手の“温度感”がインスタ映えを促進させる
続いて“温度感”とは、「お客さんの期待を圧倒的に超えて、どのくらいサプライズを与えられるか」という、お店やシェフからお客さんに対する情熱の度合いです。たとえば、「これは絶対に食べて欲しい!」という看板メニューの製作秘話や、食材選びへの尋常でないこだわり、またお店のコンセプトが生まれた背景など、飲食店側の“温度感”を伝えることは、PRと同様に非常に重要です。
この“温度感”がなぜ重要なのかというと、お客さんは皆ひとりの「編集者」だからです。詳しくは後述しますが、メディアの編集者が企業のニュースリリースを見て情報を吸収し、その次に体験して記事化するのと同じように、お客さんは飲食店の店舗や料理を見て自身のSNSにアップします。ですから、ただ見栄えの良い料理が運ばれて来たときよりも、料理のこだわりや食べ方のポイントを口頭で説明されたり、メニューから食材などの情報を得たりすると、お客さんはより「SNSにアップしたい」と思ってくれるはずです。
インスタへの投稿を促すのもひとつのワザ
上記の“臨場感”と“温度感”を提供できたあとは、お店側からお客さんにインスタへの投稿を促すのもひとつの手です。たとえばお客さんに料理やドリンクを提供する際に、「スマホの準備はよろしいでしょうか?」と声をかけたり、ラクレットチーズを料理にかける際に「こちらの角度から撮られるのが最もキレイですよ」と動画撮影の角度まで教えてあげたりと、様々な促し方が考えられます。
お客さんは皆「編集者」だと思え
ここまではお客さんにインスタ投稿してもらうためのポイントをご紹介してきましたが、忘れてはならないのが、インスタグラムは編集の集大成であるということです。「私はピンクしか掲載しない」「料理は上からしか撮らない」「写真はすべて正方形で投稿する」…など、多かれ少なかれ、インスタグラムには投稿する人によってそれぞれの「自分ルール」が存在しています。
写真だけでなく「情報」にも映えが必要
ここで盲点になってしまいがちなのが、インスタは写真だけではなく文章も書けるということ。編集は写真だけでは完成しないため、お客さんが自分だけのオリジナルコンテンツとして“書きたくなる”情報を用意しておくこともポイントです。
最近では「#食レポグラム」「#食べある記」「#飯テロ」といった、食に関する投稿数も非常に多くなっており、食べログやRettyなどといった食に特化したアプリ以外の場面でも、生活者による積極的な情報発信が行われていることがわかります。そのため、例えば「普通は捨てられる規格外商品を使っているため安価で美味しい」や「作り手が丹精込めて作ったオーガニック食材」など、その情報が胸に刺さるものだったり、印象に残るものだったりすると、彼らのインスタグラムに取り上げてもらえる可能性も高くなります。
また「流行りのオーガニック食材をふんだんに使う」など、食の最新トレンドに乗ったメニューやコンセプトも、お客さんの“編集ごころ”をくすぐる要素のひとつになります。最新食トレンドに関する情報は、『2019年の食トレンドを制するには、ミレニアル世代を攻略せよ!今後の食ビジネスに欠かせない7つのキーワードとは』の記事をご覧ください。
理想はオリジナルのハッシュタグが普及すること
さらに上級編として、お店のコンセプトやメッセージに合わせたハッシュタグが考えられると良いです。メニューに投稿してもらいたい言葉をハッシュタグと一緒に書いておくことで、お客さんがインスタに投稿するキーワードを考える手間を省いてあげるだけでなく、インスタへの投稿を促すこともできます。
またSNSの特徴のひとつとして、ハッシュタグによって情報が集約化されるため、インスタのハッシュタグは生活者の検索ツールとしても機能します。そこから新たなお客さんの獲得にもつながりやすいため、ハッシュタグを想定したメニュー名を考えるなどして、そのお店オリジナルのハッシュタグを創出することができれば、あなたも立派なインスタマスターです。
<飲食店によって普及したハッシュタグ4選>
- マグロマート本店の「#マグロマート」
見てください…このボリューム感!!「うまいマグロを腹いっぱい食って帰ってください!」と言わんばかりですよね。 - タイ料理999の「#バケツパクチー」
事前予約必須の#パクチー鍋 も必見です。トレンド鍋2016にも選ばれています。 - 帝国ホテルの「#クレープシュゼット」
インスタグラムが流行る前から、このようなアクティビティを提供しているのは、帝国ホテルだからこそ。お時間とお金に余裕のある時はぜひ。 - Harold&Co.の「#foyt」
これはFinish On Your Tableの略です。テーブル一面をデコレーションするパフォーマンスに、写真撮影をせずにはいられません。
明日からマネできそうなものはありましたか?これからもどんどん大好きな食をテーマに、「明日からマネできるPR発想」をご紹介できればと思います。それでは次回もお楽しみに。
文=宮越雅裕・森奏子
人材会社、プロモーション企画会社を経て、2017年11月PR業界に参入。現在PR2年生。PR GENICを社内インフラとして活用し、絶賛PR勉強中。