食トレンドを制するには、ミレニアル世代を攻略せよ!今後の食ビジネスに欠かせない7つのキーワードとは|日経クロストレンドEXPO2018レポート②

先日11月28日~29日の2日間、東京国際フォーラムにて行われた日経BP社主催「日経クロストレンド EXPO 2018」。展示会レポート第1弾『2018年大ヒット商品を生んだ担当者に共通する、商品に込めたある「狙い」とは?』に続いて、第2弾となる本記事では、2日目に行われたセミナー「食のトレンド2019 ~食ビジネスの次の一手 最新事情」の中から、米国ミレニアル世代が牽引する2019年の食のトレンドについてご紹介します。

2018年の食品業界に大きな影響を与えた「ミレニアル世代」の存在

当セミナーでモデレーターを務めたのは、一般社団法人日本スーパーフード協会代表理事の勝山亜唯美氏。日本スーパーフード協会は、スーパーフードを新しい食文化のひとつとして捉え、その正しい知識を普及・啓発する活動を通して、人々の健康と幸福を維持増進するライフスタイルを創造する団体です。

近年、食を取り巻くキーワードの1つである「スーパーフード」とは、栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品や、ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品のことを指します。(日本スーパーフード協会ホームページ参照)

当協会で代表理事を務める勝山氏によると、2018年の食品業界は「ミレニアル世代を知らずして語れない年」だったそうです。上の年代とは異なる消費活動や、仕事に対する考え方を持つミレニアル世代。食トレンドの中心も、この「ミレニアル世代」であり、他業界と同じく、モノ消費からコト消費・コトモノ消費・コトヒト消費が進んでいると考えられています。

今後の食ビジネスに欠かせない7つのキーワード

勝山氏は、ミレニアル世代が牽引する今後の食ビジネスで、意識をしなければならないキーワードは以下の7つだと述べています。

  1. Easy&Comfort(イージー&コンフォート)
  2. Clean Eating(クリーンイーティング)
  3. Eco Food(エコフード)
  4. Ethical(エシカル)
  5. Meal Replacement(ミールリプレイスメント)
  6. Customisation(カスタマイゼーション)
  7. Mindful Eat(マインドフルイート)

2018年のアメリカ食ビジネスの傾向分析をもとに、これらについて順に説明していきます。

1.Easy&Comfort(イージー&コンフォート)

ミレニアル世代は「手軽で快適であること」を重視すると、勝山氏は述べています。アメリカでは食費に占める外食費が、1970年の25.9%から2012年には43%と、大幅に増加しました。インターネットの普及とともに、家族で過ごす時間が長くなっており、家の中でより快適に過ごすための投資を行う傾向があるのだそうです。

代表的なサービスは、皆様もご存じの『UBER EATS』。このUBER EATSが多くの人々から支持されているポイントは、「手軽さ」だけではありません。UBER EATSで人気なのは、サラダボウルをはじめとした、野菜メインでたんぱく源豊富な、手軽に食べられるボウルスタイル(日本でいう丼)のもの。ファストフードに代表するジャンクフードと呼ばれるものは、「手軽さ」はあっても、「快適」であるとは言えないため、UBER EATSの流行には、人々の健康意識も関与していることがわかります。

2.Clean Eating(クリーンイーティング)

きれいなものを食べるという意味ですが、ここで言う「きれいなもの」とは、食べるものが清潔であるという意味だけではなく、多面的な清らかさを指しています。例えば、添加物が少ない、環境にやさしい、オーガニック食材を使用している、非遺伝子組み換え食品である…などが挙げられます。

ジャンクフードを好まないミレニアル世代は、オーガニック食品の最大の購買層であると勝山氏は述べています。実際にスーパーなどでもかなり広い売り場面積でオーガニック食品が販売され、ミレニアル世代が購入しているそうです。

3.Eco Food(エコフード)

こちらは環境を意識した食べ物を指します。昨今ではプラスティックが問題となっており、各企業が続々と脱プラスティック宣言をしています。これは「企業がエコに貢献しているか」を購買検討材料の1つに挙げている、ミレニアル世代の考え方によるものです。

この流れを受けて、最近エコパッケージ(リユース、リサイクルを意識したパッケージ)を推進する運動がアメリカでも話題になっており、最近ではスターバックスのプラスティックストロー廃止宣言や、ストローを必要としないカップ開発などが注目を集めました。

4.Ethical(エシカル)

ミレニアル世代は、食べるものにも倫理観を求めているようです。ミレニアル世代は社会貢献意識が高く、自分が社会貢献活動に参加している、もしくは参加している企業を応援する意識が高いです。この思想はまさに、食のコトヒト消費を象徴しているトレンドだと言えます。かごに囲われていない放牧された鶏など、食品加工の工程においても倫理観を求めるのも、ミレニアル世代の考え方の特徴です。

5.Meal Replacement(ミールリプレイスメント)

こちらは食事の代替品のことを指します。ミレニアル世代は、1日3食というスタイルに囚われず、食事を小分けする傾向が強いです。

例えば、たんぱく源を豊富に含むパワースナック。日本でもプロテインバーがコンビニなどで売られていますが、アメリカではもう1歩進んでおり、小分けに食べることができる、ジャーキーのようなお肉のバーが人気です。また、日本では当たり前に思うかもしれませんが、アメリカでは1食で食べきることができる、少量のミニミールも人気。

他にも、ミレニアル世代は効率を重視する傾向が強いため、飲料で食事の代替をする人が多く、プロテインドリンクやプロバイオティクスドリンク(ビフィズス菌を始め、菌が含まれた飲料)、スピルリナ、チャコール(炭)、またターメリックなどのスパイスが含まれる飲料も非常に人気なんだそうです。

本セミナーでパネラーとして登壇した、大塚食品株式会社新規事業企画部の一木伸悟氏が紹介していた、お肉の代替品『ZERO MEAT』(大豆を使ったベジミートで作ったハンバーグ)も、お肉を食べない、もしくは制限する「糖質制限ダイエット」の流行を受けて開発された商品でした。食肉は、地球人口の増加によるたんぱく源不足、ならびに食肉加工の段階で大量の水と穀物を必要とするなど、環境面での問題をはらんでおり、今後その問題を解決する食材として大豆が注目されています。日本市場でも代替肉の市場は年々成長しており、2022年には市場が254億円にまでのぼるとされています。

6.Customisation(カスタマイゼーション)

ピザの生地やトッピングが選べるなど、その人の好みに合わせたカスタマイズができるものが人気を集めています。スターバックスのコーヒーに関しても、そのカスタムパターンは実は87,000通りも存在します。

特にミレニアル世代が注目しているのは、たんぱく源。肉、魚、大豆、代替肉(最近はココナッツで出来ているヴィーガンミートも出てきているのだとか)を、その日の気分に合わせてチョイスができ、回転食(毎日違うものを食べる)ということを意識して、食を選んでいるそうです。

7.Mindful Eat(マインドフルイート)

ミレニアル世代は、食事を「摂取するもの」と捉えておらず、「自分が食べて気持ちがいいもの」を優先する傾向にあるそうです。これぞまさしく、『食のコト消費』と言えます。

ミレニアル世代は、心のこもった食体験や、心を伴うライフスタイルの充足を求めていると、勝山氏は述べました。日本で昨年流行語となった「インスタ映え」も、近年食ビジネスを考える上で外すことのできないキーワードの1つであり、手間がかかった手作り感のある可愛い食べ物は、SNSで感情的にシェアされます。

また外食だけにとどまらず、マインドフルイートの考え方は内食の分野でも取り入れられています。昨今日本でも流行りつつある、ミールキット販売。これは厳選材料とレシピがパッケージになって届き、レシピ通りに作れば本格的な料理が完成するもので、「使い勝手は簡単でお手軽でありつつ、丁寧さが伝わる」という点で、ミレニアル世代にとって好都合のサービスだったと言えます。

スーパーフードが流行した理由は「身体にいいから」だけではない

セミナーを終えて、昨今もてはやされているスーパーフードが流行した理由は、単に「健康にいいから」だけではないように感じられました。

スーパーフードはもともと、各国の伝統的な食生活に根付いた食材です。産業革命以降、食もオートメーション化され、大量生産大量消費の時代に移行しました。その中で失われてきたスーパーフードが、ミレニアル世代の考え方により見直され、そこに健康ブームも助長して、いま流行したのだと考えることができます。

これからの食のトレンドは、何も難しいことではなく、「地球に、人類に、より正直な商品・サービスである」ことが求められるのではないでしょうか。

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