広報×ライターのベストな付き合い方。歴25年のベテランライターが語る“取材獲得”への近道

プレスリリースを書いてメディアやライターにアプローチしても、なかなか取材の獲得や記事掲載といった結果につながらない。そのような悩みを抱える広報・PR担当者の方は多いのではないでしょうか。今回、日刊ゲンダイなどで、25年にわたって取材記事を執筆しているフリーライター・いからしひろきさんにインタビューを実施。ライターの傍らで、プレスリリースの添削やPR資料の作成サービスなども手がけ、自身も多くのプレスリリースを受け取っているといういからしさんに、プレスリリース作成の極意や、広報担当者とフリーライターとの付き合い方についてお話を伺いました。

フリーライター いからしひろき
1972年生まれ。映像の専門学校を卒業後、フリーで演劇の制作や俳優のマネージャーなどを経て、25歳のときに日刊ゲンダイにてライターデビュー。以来、25年にわたってフリーライターとして活動。新商品紹介や人物インタビューを得意とし、日刊ゲンダイ、サステナブルブランド・ジャパンなどで執筆中。ブックライティング、PR文書の作成・リライト・コンサルティング、YouTube用動画の企画・撮影・編集、ライブ配信なども行う。

歴25年で見えた広報×ライターの付き合い方

面白いネタが自然に集まる環境をつくる。ベテランフリーライターの仕事とは

―ライターとして25年のキャリアを持ついからしさんですが、現在はどのような仕事をされているのでしょうか?

今は、主に3つの軸で活動しています。1つは、私の主軸であるライティングです。日刊ゲンダイの連載枠「語り部の経営者たち」や「キニナル新商品」を担当しているほか、サステナブル・ブランド ジャパンでは、SDGsに関する企業の取り組みやイベントなどを取材しています。最近はそれに加え、オウンドメディアやブックライティングの仕事も増えてきました。特にブックライティングは、DXやライブコマースといった昨今話題のテーマを中心に、2022年6月時点ですでに4冊のご契約をいただいています。

2つ目は、割合としては少ないのですが、テレビ番組や映像コンテンツの構成作家としても活動しています。テレビの制作会社に勤めている友人から仕事をもらったり、先日は地方の博物館の展示映像に関するコンペでプレゼンし、提案が採用されて仕事につながったりもしました。そして、3つ目は動画制作です。日刊ゲンダイの「キニナル新商品」でYouTube用の動画を制作したりもしています。

―記事を書く際、取材先はどのように探しているのですか?

今は、企業の広報の方やPR会社の方からいただいた情報をもとに、取材先を選ぶことが多いですね。連載枠を持っていると、おもしろくて鮮度が高く、どこにも出ていないネタを安定して探し続けなければいけません。毎週多大な労力をかけてリサーチを行うのは、とてもリソースが足りませんから、企業広報やPR会社を頼らせていただき、おもしろいネタが自然と集まってくるようにしています。

広報とライターは「おもしろいコンテンツを生み出す仲間」

―いからしさんは、どのような広報担当者やPR会社とお付き合いされているのでしょう?

お付き合いの続く方は、私がどんな取材をしているのかをよく理解してくださって、自社の利益に関係なく、私が興味を持ちそうな話題を定期的に教えてくださる方が多いです。Facebookでつながって、Messengerで近況の連絡をしたり、最近書いた記事を読んでくださって「関連してこういうネタがありますよ」と情報をくださったり、とてもありがたいなと感じます。

広報の界隈ではこのような対応のことをよく「記者にお土産を渡し続ける」と言いますが、自社にネタがないときでも、他社情報も含めたさまざまな話題を提供してくれる方だと、やはり私たちライターも恩を感じます。いざ、その方の所属する会社から何か企画をいただいたときは、取材に発展することが多いと思いますね。

―企業の広報はフリーライターとどのように付き合っていけば良いと思いますか?

大前提として、広報とライターは「おもしろいコンテンツを生み出す仲間」だと考えれば良いのではないでしょうか。広報はおもしろい情報を提供する側で、ライターはそれを世の中に届ける側。メディアで生み出すコンテンツを軸に、つながっているんです。だからこそ、私が言うのも少しおこがましいですが、フリーライターと付き合う上では「いかに相手のことを考えられるか」が鍵だと思います。

たとえば、フリーライターは忙しくしている人が多いからこそ、電話連絡や直接訪問でのコミュニケーションは控え、SNSでこまめに連絡する。自分が分からないことを質問されても、むげに断るのではなく、そのライターの代わりに調べて分かったことを伝える。そういった細やかな配慮がとても重要です。

―相手に合わせて行動していくことが大切なのですね。

そうですね。もっと言えば、私たちに送付いただく資料の書き方や連絡方法も、改めて見直してみると良いと思います。なぜなら、やはり資料や連絡の内容で、広報の方の「プレスリリースや企画書への本気度」も見えてくるからです。

メールで、いち配信先としてビジネスライクに連絡をいただくプレスリリースは、営業メールと同じ感覚になってしまうので、正直に言うとあまり見ていません。ですが、Messengerで連絡をいただいた場合は、既読がつくため無視はできず、内容を確認してコミュニケーションをとっているうちに取材が決まっていることも多いです。

もし、全く知らないライターや記者とSNSでつながりたいのなら、なぜフォローしたのかをひとことダイレクトメールなどを使って連絡すると良いと思います。「こういう記事を読んで、自社でこのような商品を扱っているのでフォローしました」といったメッセージをいただければ、私の場合は喜んでフォローバックします。

プレスリリース=メディアへのラブレター。文章力よりも熱意で伝える

―先ほど「資料から広報担当者の本気度が伝わる」というお話もありましたが、熱意が伝わって読みたくなるプレスリリースとはどのようなものだと考えますか?

まずは大前提として、「メディアでそのまま使いたくなるようなキャッチーな見出し」をつくれているかという点と、「5W1Hなどの必要な情報」が網羅されているかという部分は押さえていただきたいです。見出しが目を引かないプレスリリースは、そもそも読まれない可能性がありますし、新商品のお知らせなのに価格が書いていないなど、要素に抜け漏れのあるプレスリリースはやはり信憑性に欠けると判断して記事化につながらないからです。

これらの基本ができた上で「熱意が伝わる」という部分についてお話すると、文章力は低くても構いませんから、「メディアやライターにとってメリットを感じられる情報」を載せたプレスリリースを書くことが大切だと思います。

―なるほど。その点について、もう少し詳しくお伺いできますか?

要するに、プレスリリースは“メディアへのラブレター”だと考えればいいのです。好きな人にラブレターを書く場合、いかに自分の見た目が良いか、お金を持っているかという自慢話はしませんよね。「あなたのこういうところが好きで、私と付き合うとこういう良いことがあると思う」と相手がメリットに感じられることを書くはずです。

ところが、いざ広報の現場になると“自慢話”に終始してしまうプレスリリースをよく見かけます。IT系の企業に多いのですが「当社の最先端の技術でイノベーションを起こす」とか「画期的なソリューションで~」といった、自社アピールの表現をたくさん並べてしまってはいないでしょうか。記者やライターにとって、プレスリリースは書かれている情報が「記事になるか」という点がすべてです。だからこそ、単に自社の情報を出すだけではなくて、メディアやライターのことをしっかり研究したり、自社の持つネタの背景まで深く調べたりしてからプレスリリースを書くことをおすすめします。

たとえば、キャラクターのノベルティグッズ販売のお知らせでも、そのキャラクターの誕生背景と現在の社会情勢を結びつけるだけで、メディアは企画が思い浮かびやすくなるんです。そのような形で連載枠に合う企画や、メディアの雰囲気に合致する情報を書いていただくプレスリリースは「この人、ちゃんと分かっているな」と広報の方の本気度を感じますね。

―メディア目線でプレスリリースを企画・執筆することが大切なのですね。

そうですね。プレスリリースを書く際は、アプローチしたいメディアをしっかり決めた方がいいと思います。その上で自分がその媒体の記者やライターだったとしたら、どんな記事を書くか、どんな企画を立てるかを考えてみる。それだけで書く内容が変わってくると思います。

さまざまなプレスリリース配信サービスの影響で、最近は消費者向けに書かれることが多いプレスリリースですが、もともとはメディア向けのクローズドな提案書でした。その背景を踏まえれば、メディアに取り上げてもらいたいなら、一番良いのはメディアごとにオーダーメイドのプレスリリースを書くことだと思います。すべてを書き分けられなくても、女性誌や男性誌などメディアの属性ごとに写真の使い方や載せる情報を少し変えてみる。よくある「本社、代表、以下当社」というようなプレスリリースの体裁はそこまで重要ではなくて、最も大切なのは伝える気持ちです。

自社の商品やサービスについて心から良いと思ったことを、載せてもらいたいメディアのメリットになるように自分の言葉で書く。それができていれば、たとえ文章が上手くなくても、広報未経験でも問題ありません。きっとメディアに伝わるプレスリリースになっているはずです。

心掛けるのはウェルビーイング視点の取材。広報担当者のサポート事業も構想中

―いからしさんが今後、取材したいと考えているテーマはありますか?

今は「働き方」や「教育」に強い関心を持っています。というのも、今の日本はポスト資本主義と言われる中で、経済や社会の仕組み、世の中の価値観が大きく変わっているからです。私自身はこれまで、記者として「どうすれば儲かるか」「どうすればカッコよく仕事ができるか」など、ある意味自分の利益のためだけに取材を続けてきました。でも、世の中が変動する中で、これからは「その人にとって本当に幸せか」といったウェルビーイングの視点から物事を見ることも大切なのだろうと思っています。

今後は、働き方も自ずと変わってくるでしょうし、個人が何を学ぶかということも重視されてくると思います。そうした意味でも、ワーケーションや社会人のリスキリング、子どもの教育などの社会的意義の大きな話題については、これからさらに注力していきたいです。

―ライター以外にも複数の軸で活動されているいからしさんですが、今後行っていきたい活動はありますか?

「社会人のリスキリング」の部分で、これまでの経験を活かした広報担当者のサポート事業を展開していきたいと思っています。仕事でお会いする広報担当の方を見ていると、未経験で広報に任命されて、右も左も分からずに苦労されている方がとても多いんです。一方で、広報の基本である「プレスリリースの書き方」などを良心的な価格できちんと学べる場所はあまりありません。

また、日本全体で社会人のリスキリングが求められる中で「プレスリリースを書くスキル」は、子育て中・介護中といった、働く時間に制約のある方などにも、新たな仕事を手に入れるチャンスになると思っています。私も50歳を目前に控え、そろそろ培ってきた知識やノウハウを少しでも社会に還元したい。そんな想いで事業を構想中です。

「広報」を軸に、個人には新たな仕事が生まれ、企業にとっては業績が上がるきっかけになり、私たちメディアにとってはおもしろいネタが増えて、世の中にさらにおもしろいコンテンツが増えていく。そんな社会の実現の一助になれたら嬉しいです。


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