情報発信だけのコンテンツ作りはもう終わり。人気メディアの編集長&編集部と考える、ハネる記事の4要素|第1回ジェニ会レポート

様々な情報があふれ続けている、メディア戦国時代。一方的な情報発信をするだけでは、本当に届けたい人に情報が届かない時代になってきました。そんな情報で溢れかえる社会において、影響力のある人気メディア編集長・編集部の人々はいま、どんなことを意識して企画・コンテンツ作りを行っているのでしょうか?

時代の最前線をひた走る人気メディアの人たちの考えを知ることで、「“話題になる企画づくり”のヒントが見つかるかもしれない」。…そんな考えのもと、PR会社が運営するメディア『PR GENIC』主催の、第1回ジェニ会を開催。本記事は2018年12月21日に行われた、“2018年に最もハネた記事”をおかずにお酒を飲むという、なんとも特殊なクリスマスパーティーの様子をお伝えしています。

【参加メディア】
小学館様/小学8年生様/新R25様/TABILABO様/マイナビ学生の窓口様/マイナビウーマン様/レッツエンジョイトーキョー様/他フリーの方々

メディアを横断する「ジェニ会」とは

広報やPR、またマーケティングの仕事に携わっていると、切っても切れない関係にあるのが「メディア」。企業と生活者の間にあり、いつの時代も生活者に対して影響力を持つメディアが、いまどんなことを意識して企画作りを行っているのか。これを知ることによって、“話題になる企画づくり”のヒントが見つかるかもしれない…というのが、PR会社が運営するメディア『PR GENIC』主催の、ジェニ会開催の一番の目的です。

記念すべき第1回目のテーマは、『“ハネるコンテンツ”のマッチングポイントとは?』。非常に有難いことに、第1回目から業界注目度ナンバー1を争うような、人気メディアの編集長&編集部の方々にお集まりいただきました。

「ハネる記事」には4つの共通点があった

各メディアのプレゼンと質疑応答を聞く中で、ターゲットも内容も全く異なる記事でありながら、“ハネた記事”に共通する4つのポイントが浮かび上がってきました。

図:話題になるコンテンツを構成する4つの要素

ポイント1:生活者の潜在的なギモンに答える企画

情報の洪水と言われる現代、情報発信のためだけのコンテンツは生活者に振り向いてもらえないどころか、気づいてすらもらえません。SNSでバズっているような記事を見ると、そのテーマは生活者が気になっているようなことや、生活者が聞きたくても聞けないようなこと、さらには答えが提示されず生活者の間でザワザワしているようなテーマであることが多いです。

「全記事に全力を注ぐ」新R25の企画作りの秘訣

企画作りの上で、生活者ニーズの洞察力に特に長けているのが『新R25』です。「捨て記事一切なし」と宣言し、自ら記事執筆にも取り組む熱血編集長・渡辺さんが紹介して下さった記事は、マネー賢者の収入や資産、そしてお金の価値観に突っ込んでいく人気シリーズ、「マネ凸」の『ホリエモンにお金について突っ込んだけど、何を聞いても価値観はひとつだった』

本記事は、ホリエモンこと堀江さんに、資産運用や株のことについて切り込んでインタビューしていくもの。渡辺編集長こだわりのインタビュー形式で、堀江さんの率直な受け答えが臨場感たっぷりに表現され、人気シリーズの中でも特にSNS上でのPVを獲得しています。「マネ凸」は、生活者の興味関心を引きやすい「ゴシップ性」と、シェアしたくなる「学び要素」の両軸を兼ね揃えており、見事に現状ヒット率は100%。誰もが気になる「お金事情」をテーマに設定することで、記事への入り口を大きく広げつつ、読んだ人には新たな発見や学びを与え、シェアを促すことに成功しています。

写真:新R25編集長・渡辺将基さん

また新R25のインタビュー記事の魅力は、何と言ってもその“読みやすさ”。「読んでいて一切ストレスを与えない記事」とSNSでも称賛されるほど、長さを感じさせないテンポの良さや画像の入れ方、言葉のチョイス、またコメントと上手くリンクした絶妙な写真使い…など、参考にしたいポイントがたくさんあります。渡辺編集長は、いつも2万字ほどの書き起こし文を5,000字までぐっとまとめて記事を執筆しているらしく、そのコツとして「助走をつけるような書き方はせず、本当に面白い部分や学びになる部分など“サビ”だけを詰める」と名言を吐き、オーディエンスを沸かせました。

誰も聞かないけれど、誰もが気になっていたことを記事化したマイナビウーマン

続いて、誰もが気になる疑問をストレートにぶつけたインタビュー企画として話題を呼んだのは、マイナビウーマンの『加藤綾菜が結婚して「唯一後悔していること」』。加藤茶さんと45歳差結婚で世間をざわつかせながらも、誰も触れていなかった加藤綾菜さんご本人の本音を聞き出した、かなり攻めの企画です。

写真:マイナビウーマン・臼井大輔さん

「これまでは“異性からの見られ方”を意識した記事が主流でしたが、最近“ワガママな恋愛”を応援する方向にシフトチェンジしました」と話すのは、マイナビウーマンの臼井さん。そんなシフトチェンジ後に公開されたこの記事の最大のポイントは、誰もつっこめない領域に切り込んだ企画力だけでなく、“読後の納得感”がしっかり得られる点にあります。

誰もが気になっていた、また世間をざわつかせていた結婚に関する疑問をストレートにぶつけた企画は、一見すると「ゴシップネタ」のように思われます。しかし、あえてマイナスな表現を使用したタイトルとは裏腹に、記事内容は茶さんとの出会いから始まり、綾菜さんが本当に恋をしている様子や、結婚生活を心から楽しんでいる様子がわかるようなもの。記事への入り口を広げつつも、世間の疑問を解消して誰もが納得できる内容に仕上がっており、綾菜さんご本人によるInstagramでの投稿も相まって、多くの女性の共感と感動を呼びました。

ポイント2:一目で読みたくなるキービジュアルとコピー

PVを獲得するために、タイトルの付け方が重要な要素になってくることは周知の通りですが、膨大な情報で溢れる現代において、SNSのタイムラインで目立つキービジュアルと、読みたくなるようなタイトルをつけることの重要性は、さらに高まっています。

言葉のキャッチーさで話題喚起させたTABILABO

TABILABOの記事『わたしが飲み会で “えらい人” のとなりになったとき、あえて「なんもしなかった」理由』は、キービジュアルとタイトルのたったこれだけの情報量で、記事の中身が気になってしまう非常に良い例です。

このビジュアルとタイトルに惹きつけられてクリックすると、記事中に『サラダ取り分け禁止委員会』という言葉が登場します。この言葉自体が非常にキャッチーで興味深いですが、さらに読み進めていくと、この言葉には「取り分けるのが当たり前、それが “女子力”」「メディアがつくりあげ続けてる男性の女性に対する理想像」など、“LGBT問題”や“無意識のうちの男女差別”への問題提起が込められていることがわかります。言葉がキャッチーなだけでなく、この表現が使われている背景を記事内で明記しているため、女子高出身者を中心に多くの人々の共感を呼び、シェアを促すことに成功しました。

ポイント3:時節性を考慮したタイミング

情報発信には、タイミングの見定めが欠かせません。

写真:TABILABO・松本興人さん

TABILABOの松本さんは、プレゼンの中で「記事公開のタイミングは非常に重視している」と説明。その言葉の通り、雨が降ったらその日中に雨に関する記事をアップできる“スピード感”と“瞬発力”は、TABILABOの強みの一つです。これほどのスピード感をマネすることは容易ではありませんが、「雨」というワードや情報の需要が最も高まっている時に、雨に関する記事を提供することで、生活者と手を握ることができます。

また先程ご紹介した『わたしが飲み会で “えらい人” のとなりになったとき、あえて「なんもしなかった」理由』の記事が公開されたのも、LGBT問題をポジティブに扱ったドラマが大流行した直後。生活者のLGBTに対する関心が高まっているタイミングでの公開だったため、記事内容への共感度が高まりました。

ポイント4:人とメディアのキャラクターを活かすインタビュー

今回『今年最もハネた記事』として集まったものの大半が、「インタビュー記事」でした。それではインタビュー記事をいっぱい打てば良いのかと言うと、決してそうではありません。ここで大切なのは、“誰に何を言わせるか”というキャラクターを活かした取材と、そのメディアでインタビューを行うことの必要性です。

メディアに対する世間のイメージを逆手に取った、マイナビ学生の窓口

この2つのポイントを上手く抑えている記事が、マイナビ学生の窓口の連載企画「就活逆転メソッド」の、『“いま、いちばん大人に心配されているバンドマン”が伝えたい就活術「面接ではなぞかけがオススメ」』。“就活をちゃんとやってなさそうな人に、就活のコツを聞いてみる”という本企画で、タイムリーかつナードなトリプルファイヤー吉田さんに取材し、「ぱっと見くずっぽい発言も実は思慮深い」とSNSで話題になりました。

写真:マイナビ学生の窓口・辻井孝太さん

またマイナビ学生の窓口は、この企画で世間の“マイナビに対するイメージ”を逆手に取ることに成功しました。日本の就職活動を形成してきたような企業が、典型的な就職活動を批判し、就職後もすぐに会社を辞めてしまったバンドマンを取材したのは、生活者にとって“意外”なこと。「就活は、めちゃくちゃナメてましたね。」「グループディスカッションって、マジでムカつきますよね」など、吉田さんのパワーワードもところどころに散りばめられ、結果「え、マイナビが就活ディスって大丈夫?笑」「マイナビやるな」といったSNS上でのざわつきを起こして、話題化に成功しました。

この企画の成功を受けて、「『マイナビだけど、いいこと言ってるやん』感をひとつの編集指針に、次々と新たな企画づくりを行っている」と話す辻井編集長。革命児・辻井編集長が率いるマイナビ学生の窓口に、今後も目が離せません。

情報発信のためだけのコンテンツづくりはもう終わり

メディアという言葉は、「情報を伝える媒体」という意味を持ちます。しかしここにお集まりいただいたメディアの皆様は、WEBメディアが乱立して様々な情報で溢れかえる中で、「情報を伝える媒体」としてのメディアの枠を超え、生活者のハートを掴むため日々試行錯誤している方々ばかり。

いかにして生活者の知りたいこと・気になることを企画に落とし込み、読みたい欲を掻き立てるようなアウトプットに仕上げるか、また情報の需要が高まるタイミングを見定めるか。これらのポイントを考慮して作り上げられたコンテンツこそが、ここにいる皆様が生み出した『今年最もハネた記事』であり、生活者と手を握ることのできるコンテンツを作る上で欠かせない条件でした。

これは記事の企画に限らず、様々な企画や戦略を考える際に適応させることができます。例えば広告の企画やキャンペーンの企画、またイベントの企画…など、活用シーンは様々。生活者に情報を届けるメディアが、これだけ生活者のことを考えて記事を作成しているのですから、メディアに情報提供する者も常に生活者のことを意識しなければなりません。

さいごに

第1回ジェニ会で繰り広げられた討論をもとに、“ハネるコンテンツ”のポイントについてご紹介してきましたが、何よりも私が参加していて印象的だったのは、どのメディアも独自の工夫やこだわりを強く持ちつつも、常に変わり続けようとする前向きな姿勢を持っていることでした。

型にはまらず、常に進化し続ける意識。トレンドの移り変わりが速い業界だからこそ、読者に飽きられないように毎日試行錯誤している編集部員のパッションを目の当たりにし、今後もメディアの可能性は広がり続けることを確信しました。

次回参加者求ム!

“ハネるコンテンツ”について考えた第1回ジェニ会では、この記事内では紹介しきれない話や、公開できない情報など、媒体の垣根を越えて様々なノウハウを共有し合うことができました。

今後PR GENICでは、ジェニ会を不定期開催していきます。この記事を読んで次回参加したい!と思った方は、こちらのお問い合わせフォームよりご連絡下さいませ。皆でメディアの枠を越えて、生活者の心に届けるコンテンツを作っていきましょう!

あとがき~ご参加いただいたメディアの“ハネ記事”紹介~

★Special Thanks★

小学館(ハム太郎)/水野さん
小学8年生/小西さん
新R25/渡辺編集長、前田さん
TABILABO/松本さん
マイナビウーマン/臼井さん
マイナビ学生の窓口/辻井編集長、篠原さん、楓さん、豊川さん、伊藤さん
メンバーズ/森さん
楽天トラベル/大鐘さん
レッツエンジョイトーキョー/青木さん
元世界一即戦力な男/菊池良さん
どーも僕です。さん
ライター/半谷匠さん
ストーリーテラー/関航さん
プランナー/和田さん

#タイミングの話をしながらクリスマス後に公開するのもあれですが

文・主催=編集長のたまご 森奏子

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