昔話というのはなぜ生まれ、語り継がれるのか?大人になってから改めて読み解くと、Public Relationsが組み込まれていました。今回は、昔話の中でも王道中の王道である『桃太郎』からPRについて考察していきます。
CONTENTS
はじめに
今更おさらいする必要もないかもしれませんが、、、改めて桃太郎の物語を6行にまとめてみました。「そんなの知ってるからいいよ!」という方は次の章まで飛ばしてください!
桃太郎のおさらい
- おばあさんが川で桃を拾ってくる
- 桃がパカンと割れて男の子が出てきたので桃太郎と名付ける
- 桃太郎はぐんぐん成長し、鬼退治に行くと宣言
- イヌ、サル、キジにきびだんごを配って仲間にする
- 鬼ヶ島に着き、鬼を倒す
- 宝を持ち帰っておじいさんとおばあさんといつまでも幸せに暮らす
桃太郎の鬼退治プロジェクトは、メディアに取材されるか?
桃太郎が住んでいる村の記者は、鬼退治を取材して記事にするでしょうか?答えは、Yesです。なぜか?それは、「鬼の村荒らし」が村にとっての社会課題であり、村民全員の関心ゴトだったからです。村人全員にとって、鬼退治の結果が自分の人生を左右するため、桃太郎の鬼退治プロジェクトは“気になるニュース”でした。
「金儲けで鬼退治」ではメディアは取り上げない
メディアはプロモーションを嫌うと言われています。なぜプロモーションを嫌うのでしょうか?
それは、プロモーションは“企業の個人的なニュース”だからです。みんなにとっての“気になるニュース”になっていません。“気になるニュース”になっていないということは、視聴率やPV数の獲得が難しいため、メディアにとっても記事や番組にしづらいのです。
もしも桃太郎が、村も特に荒らされていないのに自社の売上を上げる「金儲け」のために鬼退治をしていたら、それは村人たちの人生を左右するトピックにはならないため、村の記者は鬼退治を取り上げなかったかもしれません。
- 「1企業のビジネス課題解決」→メディアは取り上げない
- 「1企業のビジネス課題解決」+「世の中全体の課題解決」→メディアが取り上げる
みんなの人生を左右する社会課題をプロモーションに絡めることによって、ただの企業のエゴではなく、大義名分を持った社会プロジェクトとして扱われるのです。
もしもPRマンが桃太郎だったら
さて、ここまで社会課題をプロモーションに絡めた方が良い理由を説明してきました。
ここからは、社会的な大義名分がある「桃太郎の鬼退治」をもっと取材されるトピックにするためには何ができるのか、細かなテクニックをお伝えします。
① 参加型の鬼退治で関係者を増やす
桃太郎は鬼退治に行くことを1人で決断し、1人で村を出発しました。ここに工夫の余地があります。「参加型の鬼退治」にすることです。具体的には投票機能付きのウェブサイトを立ち上げ、「武器は何を持っていった方がいい?」「仲間は誰にすべき?」「鬼に効く攻撃は?」など、桃太郎から村人へ様々な問いかけをします。鬼退治を強く望んでいる村人たちからアドバイスをもらいます。
すると、「桃太郎が持っていく武器に私の意見が採用された!」「ほんとにイヌを仲間にしてくれたんだ!アドバイスして良かった!」など、意見を採用された村人たちが鬼退治をより身近に感じるようになり、“みんなで鬼退治”という意識が強まります。みんなにとってより“気になるニュース”になるのです。
投票してくれた人にインセンティブとしてきびだんごを配布したり、鬼退治のエピソード講演会のチケットを配布することで、村人をさらに巻き込んでいくこともできるかもしれません。
② イヌ、サル、キジのSNSアカウントで村を超えたニュースに
桃太郎が仲間にしたイヌ、サル、キジ。この仲間たちのSNSアカウントを使い、鬼退治の様子をLIVE配信します。桃太郎が住んでいる村だけではなく、イヌ・サル・キジが住んでいる各村で家族や親戚、友人たちが注目するトピックにできます。村を超えたニュースづくりです。
③取材できるヒト/モノ/コト/バショをたくさん用意する
メディアは独自の切り口からニュースを作ることを望んでいます。同じようなニュースだと他のニュースサイトやTV番組に閲覧者/視聴者が流れてしまう可能性があるためです。なるべくいろんなメディアが違う切り口からニュースを作れるように、取材できるヒト/モノ/コト/バショを用意しておくことが重要です。桃太郎の鬼退治について整理すると、以下のようになります。
- ヒト
桃太郎、おじいさん、おばあさん、イヌ、サル、キジ、村長、被害者の村人たち - モノ
桃、武器、きびだんご、衣装、お宝、 - コト
桃を拾ったエピソード、鬼退治の道中のエピソード、鬼退治の戦略、鬼の村荒らしによる被害、桃太郎を支えた食事 - バショ
おじいさんおばあさんの家、鬼ヶ島、桃を拾った川、村の公民館
昔話はPublic Relationsの教科書
昔話では、物語の中に「社会課題」が設定されており、その課題を解決していくことでヒーローが信頼を築いていくものが多くあります。そこには、自分と周囲を信頼関係で結びつけるPublic Relationsの考え方がふんだんに盛り込まれています。ぜひ、懐かしい昔話を「自分が記者だったら…」とPRの観点からもう一度読み直してみてはいかがでしょうか?
丸メガネPRプランナー“のびた”(本名は飛田瞭)。ブランドと社会が手を握るための発想術「ストーリーテリング」を強みとするPR会社、マテリアルに入社。ブランドや企業がサステナブルな価値を発揮するための概念開発&コミュニケーション戦略立案を強みに企画職として従事。Twitterアカウント⇒@nobitobita
【WORKS】第2の婚姻届/高崎市ローカルグルメサイト『絶メシ』/#スニ活 他