広告代理店とPR会社にプロモーション業務を依頼すると、発注までの流れや仕事内容、またそれぞれの得意分野などに様々な相違点があります。本記事では、PR歴30年、日本PR協会教育委員会メンバー兼日本広報学会理事を務める田代順が、広告代理店とPR会社の違いについて図解を交えながら解説していきます。
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広告代理店とPR会社の違い
『PRとは?広報・宣伝・広告との違い』の記事で解説している通り、広告とは広告主(企業)が管理可能なメディアを通じて、広く社会にメッセージを伝えることであり、PRとは広報の主体(企業)がメディアを通じて、長い期間にわたり社会(Public)との良好な関係(relation)を築きあげることを意味します。言い換えれば、広告は「買い取ったメディアでメッセージを流すもの」であることに対し、PRは「報道(記者の取材)を通じて読者に記事を読んでもらうもの」です。
「広告」と「PR」にこれだけの違いがあるように、混合されてしまいがちな「広告代理店」と「PR会社」の仕事内容にも違いがあります。広告代理店とPR会社のわかりやすい違いとして挙げられるのが、メディアに情報提供する際のアプローチ先です。広告代理店では、各メディアの広告部にアプローチして広告枠を購入しますが、PR会社の場合は、各メディアの編集部にアプローチし、情報の記事化を依頼します。
それではPR会社と広告代理店に“ある商品”の発表と発売および販促を依頼した際の、それぞれの業務内容の違いを解説します。
業務依頼の流れ:家庭用台所洗剤Aの場合
広告代理店もしくはPR会社に『家庭用台所洗剤A』のプロモーションを業務依頼した場合、発注までの大まかな流れは以下のようになります。
- 発注主(クライアント)から広告代理店もしくはPR会社へ、依頼内容のオリエンテーション
- 数社による企画コンペ
- コンペを受けて、発注主が発注先を選定
この流れは広告代理店もPR会社も変わりはありませんが、専門分野や得意分野をもつ会社に絞って、企画コンペせずに発注する場合も多くあります。
業務内容とメディアアプローチ先の違い
続いて、広告代理店とPR会社の具体的な業務内容と、メディアプランの違いを比べてみましょう。
広告代理店とPR会社の業務内容を比較すると、上記のようになります。この図から見ても、広告代理店とPR会社ではメディアのアプローチ先が違うことがわかります。
また、これ以外の
- 女性誌、生活情報誌でのタイアップ記事
- ポスター、キャンペーングッズの作成
- 街頭キャンペーン
- 他ブランドとのタイアップ企画
などは、どちらに依頼しても実施可能である場合が多いです。
それぞれの得意分野
広告代理店とPR会社には、それぞれ得意不得意の業務分野があります。ここではそれぞれの得意分野についてご紹介します。
広告代理店の得意分野:瞬間風速を上げる情報発信
広告代理店は、マスメディアやOOHを使った、インパクトのある広告展開が得意です。短期間で認知度を上げたり、ブランドイメージを強く根付かせたりしたい場合に、マスメディアやOOHを使った広告展開が力を発揮します。インパクトを増大させて瞬間風速を上げるには、数多くの広告枠を購入する必要があるため、それなりのコストが必要になります。
また年々種類の増えているネット広告を利用すると、情報を当てたいターゲットに向けてダイレクトに広告を届けることも可能です。ネット広告に特化した広告代理店や、運用代行してくれる企業も数多く存在するため、使いたい広告の種類に合わせて代理店を選ぶのも1つの手です。
PR会社の得意分野:段階的な情報発信
PR会社では、段階的なニュース発表の企画提案が可能です。さきほど比較した家庭用洗剤Aの場合、例えば以下のような流れでニュースを作ることができます。
ニュース発表の企画段階で、①から⑦までの筋書きをあらかじめ仕立てておきます。長期的に企業と社会が良好な関係を築くために、この①から⑦までの流れである「ストーリー設計」がPRでは非常に重要な要素になってきます。
またPRでは第三者を通じて情報が発信されるため、時には商品や使い方について批判的な内容や、競合商品との比較検証なども記事掲載される場合もあります。そんなときには記事の指摘を受け止めて、次の商品の開発やニュース発表に活かすことが大切です。
社会との信頼関係を築くには
「PR」には、企業が長い期間にわたり社会(Public)との良好な関係(relation)を築きあげることという意味があるように、PRは実は広義的な言葉です。社会にどのようなリアクションをして欲しくて、そのリアクションをさせるためには、どのように情報を届けることがふさわしいのか…。その手段がテレビCMであれ、街頭キャンペーンであれ、生活者視点から逆算して施策を考える思考法は「PR発想」そのものであり、このPR発想に基づいた全体のコミュニケーション設計・企画の相談が増えています。
企業(ブランド)と社会との継続的な信頼関係を築いていくには、様々なコミュニケーション施策を打ち立てていく必要があります。今後はケーススタディを交えて、様々なコミュニケーション施策をシリーズ化して解説していきます。
公益社団法人日本PR協会教育委員会メンバー/日本広報学会理事を務めるPRトレーナー。
社会に正しく情報を伝え、理解と信頼を得ることを責務とする広報活動において、どこに「視点」を置くか?PR GENICでは、PRにおいて最も重要なこの「PR視点」を身に付けることに加えて、ニュースとバリューを創出できるような事例やヒントを公開。