日々、サステナビリティな情報に触れているメディアやフリーライターの方々へインタビューを行う連載『メディアと読み解くサステナビリティトピックス』。第12回目は、『Business Insider Japan』編集部の高阪のぞみさんと湯田陽子さんにお話を伺いました。
『Business Insider Japan』共同編集長/ブランドディレクター 高阪 のぞみ 大学卒業後、プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント(現・日本IBM)入社。コンサルタントとして従事したのち、プレジデント社に入社し『プレジデント』など複数誌の編集に携わる。2018年より『Business Insider Japan』に参画し、社会課題解決に取り組むミレニアル・Z世代を表彰するアワード「BEYOND MILLENNIALS(ビヨンド・ミレニアルズ)」、ESG経営に取り組む企業を表彰するアワード「Beyond Sustainability(ビヨンド・サステナビリティ)」などの立ち上げを行う。 |
『Business Insider Japan』編集部 湯田 陽子 都市ガス業界の専門紙、天然ガス専門メディアのデスクを経て、フリーランスの編集・記者として活動。東日本大震災の発生後に仙台に移住し、被災地の教育関係者とともに、長期にわたって教育現場の取材や復興支援活動に携わる。2021年より『Business Insider Japan』に参画。 |
株式会社マテリアル ブランドプロデューサー/Eagleメンバー 黒瀬 和美 2014年に新卒採⽤で株式会社マテリアルに⼊社。⼊社以降、AEとしてナショナルクライアントだけではなく、地⽅の企業や⾃治体案件までジャンルや業種を問わず幅広いクライアントを担当。現代社会が抱えるSDGsの様々な問題に対してZ世代が⾃発的に⾏動できる仕組みを共に作り上げていくプロジェクト『SDGzプロジェクト』と⽴ち上げにも携わる。また、マテリアルのサステナビリティプロジェクト・Eagleのメンバーとしても活動を⾏う。趣味はサウナ。 |
高阪さん/湯田さんの取材・執筆時のポイント
①サステナビリティは“じわじわ読まれる”ロングテールな記事傾向
高阪:『Business Insider』は、全米で4,300万人強のユニークユーザーを有する屈指のビジネスニュースサイトです。ミレニアル世代を主要読者として想定し、現在、英国・ドイツ・オーストラリア・インドなど、世界10か国以上で展開しています。2017年に日本版をローンチし、現在はミレニアル世代を「年齢だけでなく、マインドエイジで変化を前向きにとらえている人」と再定義し、⽇々ニュースを配信しています。サステナビリティに関しては、2020年終わり頃に菅元首相から表明された「脱炭素宣言」をきっかけによく読まれるようになりました。「脱炭素宣言」を受けて、これまで意識の高い層しか注目していなかったジャンルから、「ビジネスパーソンとして知っておかないといけないビジネス教養」に格上げされた印象を持っています。
湯田:サステナビリティの記事は、傾向として「じわじわ読まれる記事」が多い印象です。刺さる人には刺さる内容の会見やリリースでも、残念ながら、日本ではまだ世間的な注目度が低いので、記事を出した直後の反響が鈍いことも少なくありません。ただ、その後、いつの間にかPVが積み上がり、ロングテールで読まれる記事になる傾向があります。
②情報を取捨選択する3つのポイント
高阪:編集部全体として気にしているポイントは、①技術的な目新しさ ②業界や他業種に波及力があるか ③時事性の3点です。まず、①技術的な目新しさについては、普段から色々なリリースをいただきますが、オリジナリティに欠け、他でも実施されているような活動の場合は見送ってしまうことが多いです。基本的には、編集部内のサイエンスやテックをバックグラウンドにもつ目利きとともに情報を選択しています。次に、②業界や他業種に波及力があるかについては、大企業の影響力はもちろん、たとえばユーグレナさんの、約款をすべてサステナビリティに揃えた活動などには注目しています。さいごに、ウェブメディアなので、やはり ③時事性は大切にしています。今年の例でいうと、「生物多様性」などの昨年は取り上げなかった情報も、今社会で関心が高まっているテーマについては積極的に取り上げます。
湯田:大手企業をはじめとして、サステナビリティに関する情報発信が「旗印」でなく、「情報・数値の見える化」へ進んできていることを実感しています。リリースの情報だけでなく、実際に自分が取材をしてサステナブルな世の中にしたいという意思を持って自分の言葉で語っている人や、その業界の影響力がある、目利きとなる人々の情報発信にも注目して、リリースにプラスaで情報を得ています。
高阪さん/湯田さん注目のサステナビリティトピックス
「B Corp認証」
高阪:今年は、日本における「B Corp元年」だと言ってもいいくらい取得が増えてきています。『Business Insider Japan』としては、ここ数年注目してきたテーマなので、「Business Insider Japan=B Corp」と想起してもらえるくらい取材したいと思っています。
湯田:「B Corp認証」は、今年義務付けられた「非財務情報の開示」とも密接に繋がっているものだと思います。パタゴニアやダノン、オールバーズをはじめ、8,000社近い企業が取得していて、日本の大手企業も取得に向けた動きがはじまっているという話も聞いています。認証には、環境だけでなく、従業員の働き方・地域コミュニティとの関係・持続可能なビジネスの回し方など、企業を総合的かつ民主的に「良い会社」にしていこうという取り組みが必要になります。「B Corp認証」の事務局をしているアメリカのNPO法人・B Lab(Bラボ)についても、「これからの社会の一員としての企業のあり方」を重要なテーマに掲げて運営・認証し、さらにそれを進化させようとしているという意味で注目しています。
『Business Insider Japan』の気になった企業の取り組み
パナソニック コネクト「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)への取り組み」
パナソニック コネクトでは、10月を社内DE&I月間「コネクト DE&I Month2023」と銘打ち、ワーキングペアレンツ支援や障がいのある人への配慮、LGBTQ+など、計80もの情報発信・ワークショップを開催しています。DE&I月間の中間地点となる18日に実施された「パナソニック コネクト DE&Iフォーラム」には私たちも出席し、取材をしました。(取材記事はコチラ)
また、10月10日に発信された「人種や性別に起因する顔認証の精度差を軽減する新技術の開発」に関するリリースは、編集部内でも話題になりました。画像認識技術の「技術面」のすごさだけを押すのではなく、それが「社会」にどんなインパクトを与えるのかという文脈づくりをして、技術と社会へのインパクトにブリッジをかけている点が素晴らしかったです。人々の関心ごとが半径5mになっているので、いかに身の回りのことに結びつけて情報発信をするかは、企業だけでなく、メディアも重要になっています。今回のリリースは、ビジネスパーソンが「自分の仕事でも無意識のバイアスで人を傷つけていないか」などを気にする意識が育ってきている社会の潮流ともマッチしていました。
\高阪さん/湯田さんの執筆記事・担当コンテンツはこちら(一部)/
・特集「サーキュラーエコノミー やさしさがめぐる経済」(高阪さん)
・良い会社認証「B Corp」取得までの道のり、循環型社会を目指す「ファーメンステーション」に聞く(高阪さん)
・湯田さんの執筆記事一覧
マテリアルグループ株式会社 Eagleリーダー
2017年4月マテリアルに入社。プロデューサーとして日用品メーカー・ホテル・大手外食チェーン・スタートアップなど多種多様なブランドを50社以上支援。2021年9月からマテリアルグループのCD本部マーケティンググループに移り、コーポレートブランディングとサステナビリティプロジェクト・Eagleのリーダーを務めている。