メディアと読み解く注目のサステナビリティトピックス|泉谷 由梨子

日々、サステナビリティな情報に触れているメディアやフリーライターの方々へインタビューを行う連載『メディアと読み解くサステナビリティトピックス』。第6回目は、『ハフポスト日本版』編集長の泉谷由梨子さんにお話を伺いました。

『ハフポスト日本版』編集長 泉谷 由梨子
大学卒業後、毎日新聞に就職し、記者として8年活動。毎日新聞を退社後、家族都合でシンガポールに転勤し、現地で日本人向けビジネス誌の編集として2年、NGOの職員として広報活動などにも従事。日本に帰国後、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン(現・BuzzFeed Japan)にエディターとして入社し、2021年から『ハフポスト日本版』の編集長に就任。
株式会社マテリアル Eagleリーダー 中野 さやか
2017年4月マテリアルに入社。プロデューサーとして日用品メーカー・ホテル・大手外食チェーン・スタートアップなど多種多様なブランドを50社以上支援。2021年9月からマテリアルグループのCD本部マーケティンググループに移り、コーポレートブランディングとサステナビリティプロジェクト・Eagleのリーダーを務めている。【受賞歴】ACC:ブロンズ/CODE AWARD:GOOD EFFECTIVE/PRアワードグランプリ:ブロンズ

泉谷さんの取材・執筆時のポイント
時代に合わせてアップデートを続ける読者の、役に立つようなメディアでありたい
『ハフポスト日本版』は「時代の流れに合わせて常にアップデートを続け、その時々で読者が理解を深めたいであろう情報を届ける」という方針を大切にしているメディアです。読者の男女比は均等で、企業の意思決定層がおよそ4割を占めると同時に、Z世代の方々も約25%いるなど、年齢層はかなり広い。共通するのは、「社会課題をキャッチアップしたい」「今までとは違う角度で物事を捉えられるようになるため、脳内をアップデートしたい」というような思いを持っている方が多いという点でしょうか。実際に、読者調査のコメントにも「令和の時代に自分をアップデートするために読んでいる」という声があり、私たちが大切にしている方針が伝わっているように感じますし、これからもその期待に応えられるメディアでありたいと思います。

②根源にあるのは「私自身も、常に新しい情報を取り入れたい」という探究心
日々、新しいものを読者に届けたいと思っているので、リリースを見る際は、「私自身が知らなかったこと・新しい単語・面白いこと」が書いてあると目に止まりやすいです。同じテーマを取り上げるにしても、新しい見せ方や違った角度から話を広げられそうなものを選んでいます。

最近面白いなと思うのは、プラントベースフードが面白いダジャレのような仕掛けで発表会を開いたり、サステナビリティ観点で変更された容器にカワイイ仕掛けがあったりする企画や商品です。不自然ではない範囲でのクスッと笑える仕掛けや、メディア側も勉強しなくてはと思わされる情報は、「もっと知りたい」「取材したい」と感じることが多いですね。

泉谷さん注目のサステナビリティトピックス
「サステナブル=我慢するもの」というイメージからの脱却。カギは“新しいエンタメへの昇華”
最近注目しているのは、モノを修理しながら長く使う「リペア」のジャンルですね。特に、渋谷・原宿エリアにショップを構える6つのアパレルブランドが合同で行っていたリペア体験イベントは、素敵な取り組みだなと感じました。企業同士が競争するのではなく、抱える課題に共通点の多い業界内で手を取り合うことで、新しい体験を生み出し、町の活気を取り戻すことにも繋がる。このような、社会をよりよくするために共創し、エンタメに昇華させていくような動きにもアンテナを張っていますね。

サステナビリティにおいて、エンタメの要素の大切さを認識できたのは、過去に開催した「食×サステナビリティ」をテーマとした生活者向けのイベント。「サステナブル=我慢」というイメージが強く、なかなか続かない、意識が高く比較的余裕のある人が取り組むものだと思っているという方が多くいらっしゃると思います。その課題を解決するためには、新しいエンタメとして楽しみながら参加できる仕掛け、つまり、捨てられる予定だった食材をおいしく生まれ変わらせるアップサイクル食品や、プラントベースの料理、規格外野菜や地産地消の食材を使ったフードの提供など、サードウェイを目指した取り組みが必要なのではないかと考えたのです。結果、イベント参加者の方からは、「サステナビリティへのイメージが変わりました」というようなお声もいただくことができました。

泉谷さんの気になった企業の取り組み
マルハニチロの社員さんが、息子の自由研究を通して「日本の水産業の危機に世間は関心があるのだ」と初めて気づき、大手企業の一般社員でありながら、社内外へ個人で発信するようになったというお話です。はじめは、水産業の方が法律・規制改革の必要性を訴えるという観点で批判されることが多かったそうなのですが、活動を続けていくうちにSDGsの14番「海の豊かさを守ろう」を達成するための活動として共感され、風向きが変わっていきました。

このお話を聞いて、一人の地道な発信が、自分の周りだけではなく、会社、水産業、ひいては世の中を変えることもあるのだと実感しました。社会を変えるのは私たち一人ひとりであって、意思を持って行動していくことが社会課題の解決に繋がっていくと思っています。こうした活動をされる方が増えることを期待していますし、メディアとして、これからも注目していきたいです。


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