月600万ユーザーの『RoomClip』が語る。今、住まい・暮らしに求められる5つのニーズとは

ライフスタイルが多様化し、暮らしへのこだわりや想いも生活者ごとに異なる中、大きな転換期ともなったコロナ禍で、衣食住を見直す生活者も増えているのではないでしょうか。そんな、衣食住のひとつである住生活の領域に特化し、 2012年5月にサービスを開始した『RoomClip(ルームクリップ)』は、住まいと暮らしの実例写真が投稿される日本最大級のソーシャルプラットフォームです。『RoomClip』の特徴である、ユーザーが自身のライフスタイルを投稿する「写真」や「行動ログ」は、生活者トレンドを紐解く非常に有用なデータとなり、企業のマーケティング戦略を練る際にも生かすことができます。

今回は、ルームクリップ株式会社RoomClip住文化研究所の水上淳史さんに、『RoomClip』が日本最大級の住生活特化型ソーシャルプラットフォームに成長できた理由や、コロナ禍で生まれた5つのユーザーニーズなどについて話を聞きました。

『RoomClip』成長の3つの理由と5つのユーザーニーズ

等身大の生活を共有してもらいユーザーの自分ゴト化を促す

はじめに、『RoomClip』が提供しているサービスの概要について教えてください。

『RoomClip』は、 2012年5月にサービスを開始し、ユーザーが実際に住んでいる部屋のインテリアや暮らしの写真を投稿するSNSとしてスタートしました。ローンチ当初は、ユーザー同士がSNSで繋がれるようなプロダクト体験を育み、徐々に投稿した写真をもとにメディア機能を持たせたり、企業が暮らしに関心の高いユーザー向けにモニターキャンペーンを打ったりと、サービスの成長に合わせて機能を拡大してきました。

現在では、『RoomClip』における月間のMAU(特定の月に1回以上利用があったユーザーの数)は約600万人を誇り、家具や家電、雑貨などの累計投稿写真枚数は500万枚を超える、日本最大級の住生活特化型ソーシャルプラットフォームとして、多くのユーザーにご利用いただいている状況です。また、『RoomClip』のLINEメディアアカウントは239万人、インスタグラムのフォロワー数は65万人と、各SNSに関しても順調にフォロワー数が増えています。

まさに、「住まいと暮らしの実例写真を見るなら『RoomClip』」というイメージの確立に成功されたと思いますが、日本最大級の住生活特化型ソーシャルプラットフォームとして成長できた要因はどこにあるのでしょうか?

主に、3つの理由が挙げられます。まず1つは、「住まいや暮らしの飾らない実例写真が共有されていること」です。『RoomClip』をリリースした当時、インテリアの情報は雑誌から収集するのが主な方法でした。しかし、そのような専門誌に掲載されるものは、おしゃれすぎて参考にしにくいという欠点があったんです。対して『RoomClip』は、ユーザーのリアルで等身大な写真が掲載されています。インテリアの情報を探している生活者が自分ゴト化できたことが、多くのユーザーに受け入れられたポイントのひとつですね。

次に、「サービスのローンチとスマートフォンとSNSが普及してきたタイミングが重なったこと」が挙げられます。スマートフォンのカメラを使って家のインテリアを気軽に撮影し、『RoomClip』に投稿する。このような土壌が自然と整っていったんです。

こうした社会的背景に加え、もうひとつの理由として「インテリアにこだわる人同士の情報交換ニーズを満たせたこと」があります。たとえば、友人と会った際などに「その洋服はどこで買ったの?」と気軽に聞ける一方、インテリアについてはプライベートな空間ということもあり、興味を持っている人同士でも情報交換をする機会が少なかったのです。そのような状況の中、『RoomClip』が、住まいにお金や時間をかけ、インテリアにこだわりを持っている人の受け皿となり、同じ趣味嗜好を持つユーザー同士を繋げることで、知的好奇心を満たすプロダクトとして認知されていきました。mixiのインテリアコミュニティに属していた人やインテリアブロガーの方々が、『RoomClip』にユーザー登録をしてくださったことで界隈に広まっていき、インテリアにこだわるユーザーが集まるようになりました。

コロナ禍で生まれた住まい・暮らしに対する5つのユーザーニーズ

衛生志向の高まり
コロナの予防やウイルス除去の観点など、住まいに関する衛生意識が高まったことで、玄関にマスクの保管スペースを作ったり、アルコールスタンドを設置したりと、家の中に新たなスペースを確保する動きが見られました。

在宅ワークの常態化
コロナ禍で急速にオンライン化が進み、テレワークや在宅勤務を行うユーザーが増えました。1回目の緊急事態宣言下では、急遽在宅ワークに切り替えた方も多く、食卓で働くような方も見受けられましたが、徐々に在宅ワーク用のデスクや書斎を用意するような動きも見られるようになりました。また、心地よく作業できるスペース、ちょっと集中したいときに仕事をするスペースなど、モードに応じた働き方が顕著になってきています。さらに、2020年の緊急事態宣言から前後1年間を比べると、「在宅ワーク」という単語の投稿数が85倍、検索数が306倍とかなりの増加傾向を示しました。

「おうち○○」の多様化
外出自粛により、家にいる時間が増えたことで、家の中でのアクティビティを充実させるニーズが顕在化しました。そのなかで生まれたのが「おうち○○」というタグです。「おうちアウトドア」や「おうちカフェ」「おうち居酒屋」など、本来は屋外で満喫するものを、家の中で楽しむために創意工夫を凝らし、おうち時間の充実を図るユーザーが増えました。

家での食ニーズの変化
テイクアウトやデリバリーの利用、食材のストック買いという食にまつわる新たな習慣が生まれました。また、調理にかける手間を省いたり時間を短縮したりするニーズも高まったことから、省力化・時短につながるレシピや冷凍食品などに注目が集まるようになっています。

収納・備蓄マインド
収納や身の回りの整理整頓は、以前から注目度の高いトピックでしたが、コロナの影響で収納スペースを見直す意識が高まりました。また、食材のストックを収納するスペースを新たに作り、買い置きをするような動きも見られました。食品や飲料を中心にストック買いする家庭も増え、備蓄に対する意識の変容が生まれました。

このような、住まいやライフスタイルなどの必要不可欠な要素や、コロナ禍で多様化したユーザーニーズを踏まえ、RoomClipに蓄積される定量・定性のデータを最大限活かせるような取り組みを行っていきたいですね。

初投稿のハードルを下げ、モチベーションが続く「仕掛け」を用意する

さまざまなサービス提供やトレンド分析を経て、インテリア好きなユーザーが集まってきた中、プロダクト体験としてどのようにUGC(ユーザー生成コンテンツ)を促したのでしょうか。

始めたばかりのユーザーが、初投稿の際にできるだけ多くの人に閲覧され、リアクションをもらいやすいように独自のアルゴリズムを作っています。1番最初の投稿でリアクションがもらえなければ、モチベーションが下がってしまいますし、非アクティブになってしまう可能性もあるため、初投稿であっても多くのユーザーの目に触れるような工夫を凝らしているんです。

また、年間に100本くらいの投稿イベントを開催しています。毎回、季節の行事やインテリアスタイルなどの異なるテーマを決め、ユーザーの投稿を促す施策も行っています。お題を定めることで、ユーザーも投稿しやすくなりますし、興味のあるテーマから、自分のお手本となる実例写真も探しやすくなります。加えて、投稿イベントはただ投稿して終わりではなく、賞に選ばれたユーザーに『RoomClip』の特製ステッカーやサービス内で使用できるポイントをプレゼントしています。こうすることで、ユーザーの投稿するきっかけやモチベーションにもつながっていると考えているんですね。

開催イベントの例


なるほど。「インテリア」や「お部屋の写真」という大きなカテゴリーだと、一度家の中の写真を投稿すると次の投稿に迷ってしまいそうですが、イベントを開催することでさまざまなテーマに沿って自然と投稿したくなる気持ちを醸成しているわけですね。

あとは「ちょっとした成功体験」を提供できるように意識していますね。たとえば、『RoomClip mag(ルームクリップ マグ)』というオウンドメディアの記事を作成する時に、ユーザーの投稿した写真を使用するんですが、その際に該当のユーザーに「あなたの写真が使われました」という通知が自動的に飛ぶようになっています。これは、マスメディアの取材で写真が使われる場合も同様です。このような「自分の投稿した写真が、誰かの参考になっている、役に立っている」というような成功体験が、サービスを続けるモチベーションになっていると考えています。

「ソーシャルメディア」から「ソーシャルコマース」への進化を目指す

さまざまな事業展開を経て、2021年3月にソーシャルコマース『RoomClipショッピング』をリリースされました。このサービスのグロース戦略は、どのように描いているのでしょうか。

これまでのサービスの変遷を辿ると、まず、サービスを開始した2012年から2015年までは『RoomClip』のコミュニティを形成することに注力し、純度の高いユーザーが集い、良質なUGCコンテンツが生まれるよう、サービスの磨き込みを行ってきました。次いで、2015年から2020年までは企業向けにモニターキャンペーンなどの広告メニューを提供し、いわゆるマーケティングソリューションとして『RoomClip』を活用いただけるように、プロダクト体験のブラッシュアップを繰り返してきました。

そして、2021年に『RoomClipショッピング』でショッピング機能をリリースしたことにより、ユーザーが投稿した写真に写っているアイテムを買えるようになりました。これまでのように、実例写真を自分のインテリアの参考にするだけでなく、気に入ったユーザーのインテリアアイテムを、『RoomClip』内で購入できるようになったのです。その結果、ユーザーの利便性が高まり、新たにソーシャルコマースとしてサービスを成長させる土台が整ったと思っています。

また、今後の成長戦略については、まず、コマースとして一定の規模を作ることにフォーカスします。そのため、投稿を促進するポイント施策を行ったり、ユーザー同士が商品の魅力をシェアし合える仕組みを強化したりといったことを考えています。その他、D2C ROOM LABOで独自性の高い商品を増やしたりしていくことで、多様化するユーザーのニーズに応えるプラットフォームに成長させていきます。その後は、リフォームやリノベーションなど、単なるECの枠を超えた展開を検討している段階です。

それでは最後に、今後の展望についてお聞かせください。

現在、『RoomClip』の主なキャッシュポイントは、マーケティングソリューションの広告とEコマースの手数料です。今後、『RoomClip』のプラットフォームを「ソーシャルメディア」から「ソーシャルコマース」へと進化させ、弊社のビジョンである「人と人、人と企業が繋がる住生活の新しい産業と文化を築く」を体現できるようなプロダクトを目指したいと思います。

また、直近では『D2C ROOM LABO(ディーツーシー・ルーム・ラボ)』を立ち上げ、住生活領域の事業者と連携することで、流通から商品開発までのD2C構築支援を行っていきます。こうした事業を通して、誰もが住生活を自分の力で変えていけるような世界を作れるよう、尽力していきたいと思います。

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