広報も売上を作る時代。企業の舵を取り、変化をいとわないI-neの組織作りとは

日々、評価されるコンテンツが変化している現代で、メディアや生活者へのアプローチに悩んでいる広報担当者の方も多いのではないでしょうか。

7月8日(木)に、オンラインセミナー『業界第3位まで登りつめたBOTANIST流「事業成長コミット型広報」~評価されるプロダクト広報の在り方とは?~』が開催され、株式会社I-ne (以下 I-ne)でブランドプロモーション部 広報課課長を務める山田新氏と、MCとして株式会社CONNECTED MATERIAL ストラテジープランナーの宮越雅裕が登壇しました。本記事では、セミナーでお話しいただいた、I-neが実践する機動性のある広報活動と、ブランド・ステークホルダーごとの広報戦略についてレポートします。

〈スピーカー〉
株式会社I-ne ブランドプロモーション部 広報課課長 
山田 新氏
外資系ラグジュアリーブランドPR、東証一部上場企業広報を経て、2020年5月にボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST」や、美容家電ブランド「SALONIA」をはじめ数々のブランドを運営する株式会社I-neに入社。ブランドPR及び 2020年9月東証マザーズ上場に伴いコーポレートPR強化に尽力。

〈MC〉
株式会社CONNECTED MATERIAL ストラテジープランナー/カスタマーサクセス
宮越 雅裕
「リクナビ」や「タウンワーク」などのリクルート系求人広告営業、カフェプロモーションの企画制作会社でのシニアAEを経て、株式会社マテリアル入社。化粧品、日用品メーカーのPRディレクションを経て、プランナーチームにジョイン。その後株式会社コネクテッドマテリアルへ出向し、CLOUD PRESS ROOMのストラテジープランニング|カスタマーサクセスを担当し、今に至る。

流動性のある広報体制で売り上げにコミットする

宮越:はじめに、I-neさんの広報体制について教えてください。

山田:I-neの広報課は、販売本部内にあるブランドプロモーション部に所属しており、横並びで宣伝広告を担うAD プランニング課が併設されています。ひとつのブランドプロモーションにおいて、広報が訴求しきれない部分を広告がカバーし、広告では難しいマスメディアなどへのアプローチを広報がカバーするという体制をベースとしています。

宮越:広報課がマーケティングや経営機関の部署に入っていないことは珍しいですね。もともと、このような組織体系だったのでしょうか。

山田:広報課が立ち上がったタイミングでは、ブランディング部門の所属でした。広報の立ち位置は企業のフェーズにおいて変化するとよく言われていますが、I-neの場合はそれがブランドプロモーション部への移転だったんです。現在は、PLを持たない非営利な広報という組織が、販売本部に置かれている意味を考え、「会社の売り上げにコミットする」という目標に向かって活動しています。ただ、会社の成長によって、さらに変化していく可能性は十分にあると思いますし、機動性の高い広報はフェーズごとにコミットすることが求められていると感じます。

宮越:なるほど、企業の状況に合わせて顔色やスタンスも変化していくんですね。I-neさんでは多数のプロダクトブランドをお持ちですが、そのブランドごとにも何か変化はあるのでしょうか。

山田:まず、あらゆる活動の根底に、企業理念の「Chain of Happiness」という考えを紐づけています。そのため、「この商品を通じて、お客様に届けられる幸せはなんだろう」という思考を各ブランドごとで行い、それぞれに適した戦略を設計していますね。

また、各ブランドの成長ステージに即した、最適な戦略立案と目標設定を半期ベースで見直しています。例えば、主力ブランドの『BOTANIST』や『SALONIA』は、ある程度の認知が獲得できている段階なので、ブランドの世界観や想いを知っていただき、そこに共感していただくことを目標として活動しています。一方で、新規ブランドの『DROAS』などは、まだまだ認知を得られていないフェーズなので、数字を意識したKPIの設定を行っています。また、『CHILL OUT』というリラクゼーションドリンクのブランドも持っているのですが、私たち広報メンバーに飲料のPR経験者がいないこともあり、飲料PRに精通した代理店のお力も借りながら活動しています。このような形で、ブランドの成長フェーズごとに最適な解を常に模索していますね。

宮越:本セミナーのテーマでもある、「事業成長コミット型広報」のポイントになる部分ですね。

山田:そうですね。ブランドが増えるほど大変にはなるのですが、各ブランドに合わせたゴール設定が必要になってくると思います。ここを怠ってしまうと、目的とするパーセプションチェンジを獲得することが難しくなりますし、場合によっては「ゴールは露出をすること」というように、手段が目的化してしまう恐れもあります。そうならないためにも、ブランドごとのゴール設定やKPIを細かく定めることは怠らないように意識しています。

I-ne流ブランド広報戦略とは?

宮越:ここからは、I-neさんが持つプロダクトブランドについて、より具体的なお話をお伺いできればと思います。まず、先ほどご紹介いただいた『BOTANIST』と『DROAS』ですが、同じヘアケアブランドとしてメディアにアプローチしやすいなどの利点はあるのでしょうか。

山田:ひとつの企画で1社から2ブランドの枠をいただけることは中々ないため、どうしても認知度の高い『BOTANIST』をご指名いただくことが多いです。そのため、新商品紹介の場合は『DROAS』、季節ものの企画であればシーズナルな商品展開も行っている『BOTANIST』という打ち出し方をして、どちらにも露出の機会が創出できるように調整しています。

また、I-neではメディアさんごとに担当者を付けており、それぞれのニーズをとらえた提案が行えるように、日々のインプットは欠かせないです。

宮越:メディアのニーズをとらえることはとても重要ですよね。新ブランドである『DROAS』は、他にどのような施策を打ち出したのでしょうか。

山田:認知がまだまだ低いブランドのため、拡散力が期待できるインフルエンサーのアサインを行いました。昨年の話になりますが、堀北真希さんの妹のNANAMIさんを起用し、個別取材イベントを実施しまして、元記事が約50件、全体で約100件ほどの露出を獲得できました。

宮越:すごいですね。『BOTANIST』ではKOLを起用しているイメージがなかったので、少し意外でした。

山田:ブランドのビジョンによって施策を立てていますが、実は、『BOTANIST』も2015年のローンチ当初には、インスタグラマーの方々にご協力いただいて、認知の拡大を図った施策を行っていました。やはり、ブランドの走り出しは、とにかく多くの方に知っていただく事が重要で、‟生活者の目に入る”ためにもインフルエンサーさんの力をお借りするというのはひとつ有効な策ではないでしょうか。

宮越:ブランドのフェーズごとに合わせた施策を意識されていたんですね。それでは、現在の『BOTANIST』は、どのような施策を打ち出しているのでしょうか。

山田:現在は、ヘアケアブランドとしての認知から、サスティナブルブランドとしての認知も得る広報施策に重点を置いています。「植物と共に生きる」というブランドミッションのもと、植林活動や、コロナ禍で発生したフラワーロスを再利用するSave the flowersキャンペーンの実施、バイオマス容器への切り替えなど、環境問題、社会課題に対応した活動の情報発信と、情報開発を強化しています。

このような取り組みを行うことで、『BOTANIST』に興味を持ってくださる方が増える度に、社会課題への認識も高まり、社会へのよりよい影響が生み出せるのではないかと考えています。

宮越:社会への影響も鑑みた活動をされているんですね。先ほど少しご説明いただいた『CHILL OUT』はいかがでしょうか。

山田:『CHILL OUT』は「この世からストレスをなくす」というビジョンのもと、「いつ飲んでもらうのが良くて、どんな時にブランドが一番輝けるのか」というオケージョンの開発に取り組んでいるところです。そのため、狙ったオケージョンでの露出がしっかりとれるかというところが、一番意識しているポイントになります。

宮越:闇雲に露出を狙わないというのは、改めて意識すべき部分かもしれませんね。

マスメディア露出のための地道な露出設計

宮越:ここからはテレビオンエアの獲得について、お伺いできればと思います。早速ですが、I-neさんではテレビをはじめとするマスメディアへ、どのような点を意識してアプローチを行っていたのでしょうか。

山田:意識しているポイントは2つあります。1つ目は、テレビ局のプロデューサーさんやリサーチャーさんなどが、情報収集を行う際に「取り上げたい」と思うような情報を、幅広いメディアさんに“置かせていただく”こと。そして2つ目は、SNSでのUGCと話題化の創出をすることです。

最初の頃はプロモートシートを作成し、直接テレビ局へアプローチしていたのですが、成果には結び付きませんでした。そこで、どのように情報収集を行っているのかを率直にメディアさんにお伺いし、情報の流通網のようなものを整理しました。そこから逆算して、リサーチの際にI-neの情報にたどり着いてもらえるような露出設計を練ったんです。つまり、いきなりテレビを狙うのではなく、メディアさんが情報収集されるであろう、新聞や業界紙などの1次メディアにしっかり露出されるようなアプローチを行いました。さらに、拡散を意識して、『Yahoo!』などの2次メディアへの転載も意識して、立体的な露出設計を行いましたね。

宮越:それらのメディアに取り上げてもらうために行っていた工夫などはありますか?

山田:上期は、世の中の関心ごとと結びつけながら「完売!」「売上好調!」などのワードを使ったリリース配信を行って、トレンド系の情報を扱うメディアへの露出を狙っていきました。また、UGCを増やして、「SNSで話題」という事実を組み込むことで、メディアさんが”今取り上げるべき理由”の後押しになる工夫もしていました。

宮越:現在、テレビは後追いメディアとも言われていますが、SNSでの話題化やウェブメディアから着実に露出を狙っていくという部分は、みなさんも真似できそうなところですね。

「Chain of Happiness」をすべての人に

宮越:広報はかなり地味な努力の積み重ねが大切になってきますよね。これまでお話しいただいた活動は、広報だけではまかないきれない部分もあると思うのですが、社内ではどのような連携を取られているのでしょうか。

山田:まずは、「いつまでにこのブランドがどうあるべきなのか」というすり合わせを、役員やブランドマネージャーなどと行っています。例えば、認知がない状態でメディアさんに大きく取り上げていただくというのはレアケースなので、目標から逆算してこのフェーズはこういった施策が必要、というのをロジックを持って社内広報することを心がけています。あとは、広報あるあるかもしれませんが、社内から「広報=メディアさんからいただいた案件をさばいているだけ」と思われないように、活動内容を透明化し訴求する努力も、メンバーのモチベーションを落とさないために、大切なことなのではないかと思います。

宮越:そのような懸念もあるんですね。社内でのポジショニングも重要そうです。

山田:おっしゃる通りです。経営層と近いポジションに立つことも大切なのですが、社員との距離感も重視しています。広報は社内外にアクセスしやすい部署なので、それを活かして「ブランドや各部門の事業・業務をブーストする機能」だということをまず認識してもらう。そのために、各部門の課題をヒアリング・分析して広報による解決策を提示したり、中立的立場という強みを活かして社外から得た情報を社員へインプットする、というようなことを行っています。

また、経営理念の「Chain of Happiness」を広報が関わる各ステークホルダーに体現できているかを協議するようにしているのですが、そのステークホルダーのひとつである社内に対して、どういった広報施策を打てばその部署の課題が解決され、メンバーがHappyになれるのか、ということも考えています。そうすることで、課題解決に向かうコミュニケーションの道中に、広報にしかとれない露出の価値を理解してもらえますし、社内からのサポートを得られやすい状態になることが多いです。例えば、メディアさんからの急な依頼に即対応できる社内関係を構築を持っていれば、続いて、メディアさんのChain of Happinessに繋げていけます。

宮越:各ステークホルダーに対しての価値は何だろう?と分解しながら考えられているんですね。やはり、周りの人を巻き込み、シナジーを起こすことは、ブランド成長に欠かせないですね。

山田:そうですね、例えば、みんなで「こうした世界を実現しよう!」とか「そのために売上目標達成しよう」という目線が合ったうえでの団結力は、ブランドの成長の原動力になっていると思います。『BOTANIST』がここまでこれたのは、広告がよかった、広報が頑張った、という単体ではなく、ブランドチームとして一体感を持ち、全員が一つのビジョンに向かって進んでこれたからではないでしょうか。

宮越:なるほど。この辺りは、冒頭でお話しいただいたADプランニング課の併設に繋がってきそうですね。最後に山田さんにとって、広報とはどんな部署でしょうか。

山田:I-neに関して申し上げると「非営利組織ながら売上にコミットする方法はないか?」ということを諦めないメンバーで構成されており、KPIへのコミットと既存の方法や慣習にとらわれすぎずにチャレンジをし続ける部署ですね。その部分をご評価いただき、2021年の上期にチームで社内のMVPをいただきました。メンバー一人ひとりが会社・ブランドのファンでありながらも、冷静かつ俯瞰的な視点とChain of Happinessの視点から、「各ステークホルダーにとっての最適は何か」に向き合っている姿は、個人的に一番素敵だなと感じています。

宮越:本日は素敵なお話、ありがとうございました。

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