6,000万ユーザー超のTimeTree。カレンダービジネスが現代人にウケる理由と企業活用の効果に迫る

2015年3月にサービスを開始した『TimeTree』は、単なるカレンダーとしての機能にとどまらず、予定の共有を通じて人々のコミュニケーションを豊かにするカレンダーシェアアプリです。「プライベート×共有」でオンリーワンのポジションを確立したことにより、国内外問わずユーザーが増え続け、現在は6,000万人を突破。そのうち、海外ユーザーの割合は5割を超えるなど、グローバルでもシェアを伸ばしています。

今回は、株式会社TimeTree 代表取締役社長CEOの深川 泰斗さんに、国ごとに適切なサービス提供や訴求をおこないユーザー増加を図った背景や、「予定」を起点にさまざまなコミュニケーションを生み出すTimeTreeの今後の可能性について伺いました。

予定を中心とした“情報共有コミュニケーション”アプリとして独自性を追求

はじめに、TimeTreeのサービス概要について教えてください。

TimeTreeは、共有とコミュニケーションを前提にしたカレンダーサービスです。複数人での予定共有や、目的に応じたカレンダー作成ができ、最近では、予定にリアクションをつけるステッカー機能もリリース。コミュニケーションを促進するカレンダーアプリとして進化を遂げています。

TimeTree開発のきっかけは、「予定」は周りの人との関わり合いで決まっていくことが多いのに、「予定管理ツールは1人用が当たり前」という現状に不便さを感じていたこと。「約束」には相手がいますし、なかには、家族や友人と相談してからでなければ返事ができない場合もありますよね。そのような「予定管理」を、もっとスムーズにできるサービスがあればとの想いから、TimeTreeが誕生しました。

最近リリースされたステッカー機能


カレンダーアプリは他にも数多く存在しますが、TimeTreeならではの独自性は何ですか?

たとえば、予定を決める際は、LINEやInstagramのほか、海外ではカカオトークやWeChatなどが使われますが、チャットがベースのプラットフォームだと、内容を決めるうちに情報がどんどん流れていってしまいますよね。いわゆる、「フロー型のコミュニケーション」だと、約束の時間や会う場所などの情報をたどるのが面倒になる。そのため、時間軸で整理できる「ストック型のコミュニケーション」を取れるサービスが必要だと考えました。そこから、単なるスケジュール管理ツールに留まらず、予定を中心とした“情報共有のコミュニケーションプラットフォーム”として、独自性を追求してきました。

メインの利用者層について教えてください。

主なユーザーは、20代〜40代の家族が中心で、最近では15歳〜25歳くらいの若年層にも広がっています。学校のクラスやサークル、部活といった集団のスケジュール管理で、TimeTreeがよく使われるようになりました。サービス開始から10年が経った今、リリース時からのユーザーが家庭を持ち、親から子へと受け継がれていくといった形で、自然とユーザーの裾野が広がっているように感じています。

UI/UXに訴求ポイント…国ごとのカスタマイズがユーザー増加のカギ

「カレンダー共有=便利」という認知形成でサービス浸透を図る

おすすめの使い方を紹介するコンテンツ


ー2015
年3月のサービス開始から、どのようにして「TimeTreeの独自性」を浸透させていったのでしょうか?

TimeTreeは、予定を共有したうえでコミュニケーションするのが特徴ですが、サービスを開始した当初は、「予定を共有したくない」という意見が多くありました。そのような意見を受け、TimeTreeの良さや強みを伝えるためにはどうすればよいのかを検討した結果、ポジティブなユーザーの声を地道に拾いながら、「TimeTreeのおすすめの使い方」をコンテンツ化して伝えていくことにしました。

初期段階では、お問い合わせからきたユーザーや、TimeTreeのことをブログで発信しているユーザーなどにコンタクトし、「どのように使っているのか」をヒアリングして、ファクトを収集しました。とにかく実例を蓄積しながら、アプリの中で紹介したり、インストール前のApp Storeで紹介したりと、「カレンダーを共有すれば便利なんだ」という感覚が広がるように工夫を凝らしたのです。

海外ユーザー5割超!ユーザー増の要因とは?

代表取締役社長 CEO 深川さん


グローバルでもかなりの認知を獲得されています。

TimeTreeは、最初から日本語・英語・韓国語に対応した形でリリースしています。私の予感として、予定調整で煩わしさを感じているのは、世界共通の悩みだと思っていたからです。転機になったのは、家族ユーザーが増え出し、App Storeの評価も上がってきたタイミングで「App Store Best of 2015」に選ばれたことでした。これが契機となり、海外を含めたユーザー数が急激に増えていきました。

現在は、海外ユーザーが5割以上を占めています。先述した、「予定管理の難しさ」という人類共通の悩みを解決するサービスであることに加え、開発的な視点でも、各国に適切なUI/UXを提供している点が大きな要因ですね。直近でも、海外のユーザー数は増え続けていますが、海外向けのマーケティングなどはほとんどやっていません。日本と同様に、「現地に住んでいる人がTimeTreeを便利に使っている」という認知を広げる必要があるため、社内のユーザーリレーションチームが、担当国に合わせた訴求コンテンツを作って展開しています。

企業が無料でイベント情報を発信できる機能も。「予定」を起点としたTimeTreeの挑戦

新たなチャネルとしての期待が高まる『公開カレンダー』

そのような、国内外でのサービス成長を経て、2024年にはカレンダー形式でイベント情報を発信できる『公開カレンダー』をリリースされました。

公開カレンダーは、カレンダー形式でイベントの情報発信ができるプラットフォームです。世の中には常に多くのイベント情報が溢れているため、SNSによる告知だと流れてしまいますし、予定情報を見るために都度サイトを見にいくのはかなり面倒だと感じられる方が多いと思います。そこで、イベント情報をカレンダーに集約することで、ユーザーが自分の興味に合った情報を一元的かつ網羅的に得られることから、この課題感を解決できるのではないかと思い、公開カレンダーの開発に至りました。

公開カレンダーにはさまざまなものがありますが、中でも「情報系」と「推し活系」の2つは多くのカレンダーが存在します。たとえば「情報系」は、TBSが公開カレンダーを使って「バレーボール ネーションズリーグ」の試合日程や各選手が番組に出演する日、誕生日などを共有することで、ファンとのリレーションを築く取り組みをされていました。また、TVerでは、民放各局が放送する連続ドラマの初回配信開始スケジュールがわかる「TVerカレンダー」を提供しています。そして、直近では、楽天・Amazon・Qoo10といった、EC企業による公開カレンダーの事例も増えてきています。

ECカレンダーをフォローしているユーザーにアンケート調査をおこなったところ、8割くらいの人が「カレンダーでセール日を知った」と答え、さらには「セール日に商品を購入した」と回答した人は5〜6割に上るなど、コンバージョン率の向上が見られたという成果も出ています。このように、カレンダーをきっかけにイベント・キャンペーンの認知や、商品購入の促進につながる新たなチャネルとして注目されています。

続いて「推し活系」は、アイドルを中心に使用実績が増えています。TimeTreeの公開カレンダーを見にいけば、推しのアイドルの予定が一目でわかるようになっていて、ライブ活動や配信日程、チケットの当落日、グッズ販売日など、ファンの方がスケジュールを把握するのに役立つツールとして浸透してきているのです。今のところ、600〜700組くらいのアイドルグループに利用いただいていますね。

たとえば、特徴的な活用として、「大阪ライブ予定」「重大発表」などといった、抽象度の高い予定を追加し、ファンの期待感を醸成するようなものがあります。そうすると、情報が解禁されるまでに、ファンとアイドル、あるいはファン同士のコミュニケーションが広がるきっかけになるため、イベントのさらなる盛り上がりが期待できます。

1億ユーザー突破と現代人が抱える“時間貧困”の解決を目指して

さいごに、TimeTreeの今後の展望についてお聞かせください。

「誰かと過ごした全ての時間が、その人の人生を豊かにする。」こうした想いでTimeTreeを開発してきましたが、この度10周年を機にミッション・ビジョン・バリューを刷新しました。人々が日々の暮らしをより豊かに充実したものにし、未来に楽しみや期待が膨らむ予定を増やしていくために重要なことは何か。それは、ともに生きる誰かを想い、ちょっと良い未来へと「誘う人」の背中を押すことだと考えたのです。

現在、全世界で6,000万ユーザーを超えていますが、今後は1億ユーザーを目指してサービスを成長させていきたいです。それほどの規模感になれば、マーケティングプラットフォームとして機能するので、広告によるマネタイズも加速させていきたいですね。

また、世の中的に「タイパ」という言葉が流行っていますが、これは情報技術が発展し便利になっている反面、人々がどんどん忙しくなっていることの表れだと思うんです。人間の時間は今も昔も限られているのに、やるべきことは増えていく。こうした“時間貧困”を、TimeTreeで解決していけるような仕組みも生み出していきたいです。

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