PR GENIC オープンカレッジ#1 レポート 『広報PR業務の基本~スキルアップに欠かせない”ゴールイメージ・メソッド”とは?~』

毎月第2・第4木曜日に定期開催されている、広報PR業界に興味のある大学生や第二新卒、また若手広報PRパーソンを対象とした無料スクール『PR GENICオープンカレッジ』。そのうち【初心者編】の固定プログラムでは、広報PR担当者が企業で担う役割から、広報PRスキルを高めるためのトレーニング方法まで、広報PR未経験者~初心者に向けた解説が行われています。本記事では、今月の11月14日に行われた「未経験から目指せる!広報PR業界就職セミナー」のレポートをお届けします。

スピーカー
日本広報学会常任理事/事業委員会所属
公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会教育委員会所属
株式会社マテリアルPRトレーナー
田代順

パブリック・リレーションズの基本と概念

主に企業の裏側で活動するPR業界では、企業秘密を守らなければならない観点から、なかなか”ノウハウ”や”ロジック”が公開されていません。実際に広報やPRを担当されている方の中にも、「教えてくれる人がいない」「やり方がわからない」などの悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

このセミナーでは、企業で広報やPRを担当している方、もしくは広報PR職を目指している方が、明日からでも活用できるようなアイデアやネタを公開していきます。反対に、あまり知識的なことはお話しません。それは皆さんの業種や狙うメディアによって、覚えなければならないことが違うからです。

まずはパブリック・リレーションズの基本的な概念から解説します。

パブリック・リレーションズとは?

パブリック・リレーションズとは、広報の主体となる企業や団体が、メディアなどを通じて社会とコミュニケーションを取り、生活者との信頼関係を築き上げていくための活動、つまり社会との良い関係づくりを意味します。そのため、単純に認知拡大のために積極的に情報発信する「広報活動」や「宣伝活動」とは意味や役割が異なります。PR活動のゴールは、情報をアウトプットすることでなく、情報を正しく伝えることで社会との良好な関係を築くことなので、PRを担う人はみんなそういう意識を持たなければなりません。

しかし、”パブリック・リレーションズ”という言葉は、日本ではまだ間違った使い方をされていることが多く、概念として正しく伝わっていないのが現状です。PRの定義は一般の人からするとわかりにくく、広報や宣伝と同じ意味で使われてしまうことがしばしばあります。そのため、PRの仕事をする際に初めに大事なのは、社内の上層部やクライアントが、まずPRを理解しているのかしていないのかを把握することです。それぞれの理解度を把握して、誤解を招かないためにはどうコミュニケーションすれば良いか?これを考えるところから、PRパーソンの仕事は始まっていると思います。目の前にいる家族に広報やPRの仕事の説明が出来なかったらPRパーソンとして失格です。

広報・PRスキルを鍛える「ゴールイメージ・メソッド」について

PRについて正しく理解したら、次にPRパーソンとしての「スキルを鍛える」必要があります。メディアをどう読み解き、その先にはどんな読者やオーディエンスがいるのか、またそのメディアを通じて情報発信することで、どのような影響力を及ぼす可能性があるのか、これらを常々考えなければなりません。それを意識づける”トレーニング”方法を、本日のセミナーではご紹介します。

ニュースリリースをレベルアップさせて記事掲載ヒット率を高めるためには?

セミナーや教本など、広報PRの知識を「学ぶ」手段はいろいろありますが、そこで身に着けた知識を「鍛える」機会はなかなかありません。記事が掲載されたイメージを思い描けないまま、ニュースリリースの原稿を書いている場合。放映されるイメージを持たないまま、取材クルーへの事前準備を行っている場合。記者の求めている取材要素に向き合わないままで、正しく情報提供が出来ていない場合…。それらはすべて、メディアの向こう側にいる読者やオーディエンスを正しく理解し、記者が求めている情報について理解できていない証拠です。

読者が望む情報とは何なのか?取材する記者はその読者に何を訴えたいのか?この逆算した思考回路を持つことで、「読者価値」のあるニュースを創出することが出来ます。この思考回路は、特別な勉強を行わなくても日々のトレーニングで簡単に見に付けていくことができます。露出された記事を”ゴールイメージ”として捉える、誰もが理解できるシンプルなトレーニング方法です。

ゴールイメージを描くことの重要性

皆さんは、これから会社の情報やサービスの情報を「ニュースリリース」という形で書き、発信していくことになると思います。その際に、ただ企業が伝えたい情報だけを盛り込んでしまってはいけません。そのメディアにどんな読者がいるか、そこのメディアの記者は何を求めているか、つまり情報発信をする側は、読者価値を考えて記者に情報提供をする必要があります。

大切なのは、文章を考えることばかりではなく、常々オーディエンス(情報の受け手)のことを考えることです。「こんな風になったらいいな」「こんな見出しになったらいいな」「自分が撮った画像がこういう風に出たらいいな」と、自分から発信する情報のゴールイメージを考えることがまず重要であり、そこから逆算して、今自分は何を提供したらいいのか、何を準備すればいいのかを考えればいいわけです。

記者が求めているものとは?

記者に情報提供をする場合、記者が求めているものは一体何であり、それに対してわたしたちは何を準備する必要があるのでしょうか?

たとえば新聞の場合、読者は最新ニュースや生々しいニュースを求めているので、新聞記者も鮮度の高い情報を求めます。次にテレビの場合は、視聴率が上がるような、映像としてインパクトのある情報を求めます。また美容雑誌の場合であれば、今のこの時期に読者にはどんなコスメや使い方を提案したら刺さるか、つまりどのような特集を組めば雑誌が売れるかを考えているため、それに適した最新情報を求めます。

このように、媒体やその種類によっても求めている情報は様々なので、PRパーソンはそれらの違いをきちんと理解した上で、適切なところに適切な情報を伝える必要があるのです。またこの考え方こそが、メディアやその先の読者にとって価値のあるニュースリリースの書き方、ヒットするニュースリリースの書き方につながります。

ゴールイメージメソッドのトレーニング方法

ゴールイメージメソッドには、大きく<パターン①ニュースリリースのレベルアップ><パターン②テレビ取材の誘致から理想的なオンエア獲得><パターン③インタビュー記事の出来栄え>の3パターンがありますが、今回はその中でも<パターン①ニュースリリースのレベルアップ>について解説します。

ここでは日経MJを活用します。会社で日経MJをとっている方、もしくはたまに買う方、是非日経MJは購読してください。

MJとは”マーケティングジャーナル”の意なので、わかりやすく言うと、
・これから流行るものやトレンド
・今ある市場や、新しくできる市場
について、いち早く業界内に知らせてくれる媒体です。IT・エンタメ・日用品など、幅広い業界のこれから先のことについて言及しているため、ヒントが満載なところが魅力のひとつと言えます。そんな日経MJの記事を用いたトレーニング方法をご紹介します。

まずは、日経MJの中で大きく取り上げられている、かつ関心のあるトピックスをひとつ取り上げます。記事を読み込むことで、このブランドや企業はどのような仕掛けを行ってこのメディアに出しているのか、なぜこの日のこの時間にこの情報が出ているのか…。掲載された情報からは、その企業の広報戦略が記事から透けて見えます。

次に、その記事はどのようなニュースリリースをもとに書かれたものなのか、記事を参考に自分なりにリリースを作成してみます。最後に、その記事の元ネタとなっているニュースリリースを、企業のWEBサイトやPR TIMESなどで探します。(すべてがウェブ上で公開されているとは限りません。)元のニュースリリースが見つかったら、元ネタとなっているニュースリリースと記事を比較・分析します。この比較分析を行うことによって、記者がこのリリースのどの部分に注目したのかが、ひと目でわかります。

記事とニュースリリースを見比べていると、元ネタには書かれていない要素を見つけることもあります。この場合はつまり、元ネタのニュースリリースに不足があったということであり、記者からの問い合わせやコメント、インタビューなど、アプローチの形跡が読み取れます。この不足箇所にも、記者が求めている情報や、ニュースリリースに盛り込むべきだった要素が、はっきりと表れています。

また、記事には出てないけど、元ネタにはいろんな情報が出ていたりするパターンもあります。グラフ、研究データ、開発者のコメント、古い商品の比較考査…など、いろんなものが出ていることがありますが、記事には掲載されなかったそれらの情報も、記事掲載をちゃんと担保しているので、あったほうが良い情報なんです。つまり、記者に安心感を与えたのは、そのような裏付けられたデータであるため、決して無駄な情報ではないのです。記者は、このたくさんの情報の中から読者が求める情報だけを鋭く選別することで、優良な記事を作成しています。

ニュースリリースの書き方について

企業や団体から出されるニュースリリースには、下記のような種類があります。

~ニュースリリースのタイプ~

  • 新製品発表 サービス発表
  • 事業開発、人事財務発表
  • 競合向け
  • 業界バイヤー向け
  • 広報サンプル案内
  • 調査リリース
  • イベント告知、取材誘致
  • 共同発表 …ほか

このように、ニュースリリースは様々なテーマで発表することができますが、ニュースリリースを作成する上で重要なポイントは、全種類共通しています。

ニュースリリース作成時に重要なポイント

ニュースリリースを作成する際には、上記を出来るだけ詳しく書くことが大切です。特にBtoB向けの情報の場合、”How”の部分がいかに充実しているかどうかがとても重要です。

<Howの例>
★How much 金額:価格、売上額、財務関連数値
★How many 数量:販売量、生産量、市場シェア
★How long 期間:いつからいつまで

なおかつ、その業界で求められている情報や、特に読者に伝えたいこと、また競合をけん制するために出したい情報など、ここをどうリライトしていくかが肝です。様々な視点でニュースリリースの内容を考えてみると良いでしょう。

BtoBか?BtoCか?オーディエンスによって情報を書き分ける

その商材や情報が、一般生活者向けなのか、それとも企業の担当者向けなのかによって、言葉選びや打ち出すポイントが異なってきます。例えば【新油性ボールペン「スーパーEZ(イージー)」】の場合、以下のようにBtoCとBtoBによって書き分けることが出来ます。

まず、ボールペンの性能自体はBtoBでもBtoCでも変わりません。BtoC向けのリリースの場合は、「書き始めがかすれない」「宛名書きに最適」という生活者目線で解説してあげると、「新しいボールペンが登場した!」と理解してもらいやすいです。

反対にBtoB向けには、「新しい油性ボールペン登場」「初年度3000万本目標」とすれば、文房具業界全体に関係するニュースになるため、同じ5W1HでもBtoB向けになります。主役は一緒だけど、相手によって情報を書き分ける。このようなテクニックがPRパーソンには求められます。

BtoBコンテンツの掘り出し方

ここではBtoBのニュースのつくり方について、より詳しく解説していきます。BtoB向けの情報で業界内のニュースになりやすいものは、主に以下の8つの要素のどれかに当てはまるものが多いです。

業界内ニュース

  • その産業内でニュース価値はなにか?
  • 読者に伝えたい読者価値はなにか?
  • その市場の動向
  • 市場規模
  • 業界内部への影響
  • 競合との差別化
  • 利用者の生活の利便性
  • 成長性

特にBtoBの記事では、市場の背景と成長性の要素が非常に重要です。この課題をどういう風に解決するのか、また課題が解決されることによって、市場規模がどれだけ広がるのか。こういった情報が、記事化のカギを握ることとなります。

これを踏まえた上で、BtoBのニュースリリースを作成する際には以下の手順で行います。

自分が用意しているニュースリリースが経済面で出たときに、どういう風に記者が書いてくれているか?そういったことを常に想像しましょう。

記者の目に留まる、記者の興味を惹く

記者は毎日30~100近くのリリースを受け取っているため、1枚1枚を丁寧に読む時間は一切ありません。そのため、記者の目に留まるインパクトのあるタイトルが必要であり、何を伝えたいのか一目で理解させる工夫が求められます。

そこで意識したいのが、「タイトル13文字以内の法則」®です。京都大学大学院の研究室結果から、日本人が一瞬で視覚で捉えて理解できるのは、横幅13字までということがわかっており、Yahoo!ニュースのトピックは全て13.5文字以内になっています。洋画の日本語字幕が13文字になっているのも、実はこれのためなんです。だからニュースリリースでは、13文字くらいの見出しを3段つくって、その中に自分の製品やサービスの固有名詞と、その特徴を表すキーワードを入れていけばいいわけです。

最近目にして「良いコピー付けたな」と思ったのは、【31年目にやっと完成しました】というタイトル。どんなに苦労してどんなに失敗したのか、すごく気になって仕方なかったですね。そういうものをタイトルで見せられるかどうか、どのくらいの級数・ポイントでどの位置で見せられるか、これは脱帽したタイトルでした。

さいごに

広報PRの仕事では、「このゴールイメージの構成に必要な情報やモノはなにか?」「描いたゴールイメージに辿り着くにには何が必要か?」と思い巡らせることが非常に重要です。日頃から日経MJの記事をヒントにすることで、この思考回路は簡単に身につきます。たくさんの記事と元ネタのニュースリリースを見比べて、良い例と悪い例を見比べることができる思考回路を鍛えてください。

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