4月25日に開催された『PR GENIC MEETING#3 ~PRの定義が変わった時代に、改めて考えたいパブリックリレーションズの可能性~』では、そもそもPRとは何かという解説や、世の中の情報流通構造がどのように変化したのかなどのPR業界の変遷に加え、刷新された「PR」と「マーケティング」の定義について深堀り。広報・PR・宣伝・マーケティング・経営者の方々に向けて、明日から使える「PR発想術」をお伝えしました。本記事では、セミナーの様子をサマリーレポートとしてお届けします。
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CONTENTS
はじめに、株式会社マテリアルのBusiness Producerで、PR協会教育委員も勤める右田が、本セミナーの肝である「PR」とはそもそもどのようなものなのかについて解説。PRとは、パブリックリレーションズの略であるとしたうえで、広く伝えていく「広報」と、広く聴く「広聴」の意味も兼ね備えていると言います。そして、「PRを一言で表すと何か?」と問いを掲げ、それは「共感」であると述べました。たとえば、会議の中で「PR思考やPR視点を持って考えていこう」などというフレーズを耳にしたことはないでしょうか。これは、「共感を生むためにはどうしたらいいか考えていこう」という意味に捉えると理解しやすいと言います。
この「共感を生む考え方」について、右田は以下の図のように「自分の周りにいる人の関係」に置き換えて説明。自分の周りにいる「親」「子ども」「友人」「仕事仲間」などとコミュニケーションを取る際に、相手の想いや考えを汲み取って接したり、伝え方を変えたりするだけで、良好な関係を築くことができるはずだと述べました。
次に、PRにおいて重要な「メディアや生活者が情報を取得する方法」が、年々変化しているというテーマについて解説されました。下の図は、少し前の時代における、企業が発信した際の情報の流れ方です。
上の図は、現代の一般的な情報流通構造です。これまでの「オフライン」による発信に加えて、「オンライン」での発信手段が台頭し、主に4つの流通パターンが挙げられるようになりました。
1つ目は「広告」。不特定多数の方の目に留まるオフラインの広告に対して、オンラインの広告は受け手の興味関心に合わせてターゲティング配信されており、より効果的だということができます。2つ目は「自社サイト」です。近年、オウンドメディアを持つ企業やブランドが増えており、企業が届けたい情報を発信する手段のひとつとして確立しています。3つ目は「リリース」。オンライン上のリリースは、マイナビなどのニュースプラットフォームに取り上げられ、その記事に注目が集まると、Yahoo!やGoogleなどのポータルサイトへ二次転載されたり、まとめサイトへ三次転載されたりします。さらに、それらのプラットフォームやサイトには、SNSアカウントもあるため、そこから情報が派生していくことも考えられます。さいごに、4つ目の「公式SNS」からの発信と合わせて、生活者に情報が届いていく構造、これが現代の情報の流れ方です。
右田はそこに加えて、「生活者一人ひとりが情報発信者である」ことについても言及。近年、耳にする「1億総メディア時代」がこのような構造で成り立っていると説明しました。
そして、尾上も情報流通構造の変化について、「つい最近まで一方向のやり取りであった」と解説。これまでは、メディアから発信される情報を受け取ると、そこでコミュニケーションが終了してしまうような関係性でしたが、誰もが情報発信をできる今の時代では、「情報の受信者は同時に発信者である」ことを意識した情報発信が求められると述べました。
続いて、本セミナーのもうひとつのテーマである、「マーケティングと広報の定義の変化」について、日本広報学会から、2023年6月に発表されたPRの定義(上の図参照)を読み上げたうえで、右田は「PRが“経営機能のひとつである”と初めて定義づけられたこと」がポイントだと言いました。経営というと、人材・財務・マーケティングの三本柱を思い浮かべることが多いと思いますが、この定義により、PRもその軸に入っていくことが期待されます。さらに、2024年1月に日本マーケティング協会によって刷新された、マーケティングの定義についても触れ、「顧客や社会と共に価値を創造する」点がポイントだと加えました。
そして、PRの「経営機能のひとつ」という側面は、マーケティングでは当たり前の考え方であり、マーケティングの「ともに価値を創造する」ことは、PRでも当たり前に意識すべき考え方であると解説。つまり、情報流通の仕組みが変化した時代背景とともに、PRとマーケティングが寄り添い合い、重なり始めているのではないかと加えました。その後の講義では、双方が携わった事例を紹介し、施策やプロジェクトに対して、PR発想をどのように組み込んでいけばよいのか解説され、イベントは幕を閉じました。
今回、情報流通に関する時代の変遷や、PRとマーケティングの定義が刷新されたことを受け、改めて「PRとは何か?」について探ってきました。常に、時代の流れを読み、適切なコミュニケーションをおこなうことが求められるPR活動。その根本となるPRそのものについて正しい理解を深め、認識を揃えた上で、さまざまなアプローチを考えていくことが重要になるのではないでしょうか。
1997年生まれの道産子。2020年に横浜国立大学を卒業し、株式会社マテリアルに新卒入社。新設のメディアリレーションチームに配属され、約1年間メディアの知識全般を深める。2021年6月より、『PR GENIC』の2代目編集長としてメディア運営を引き継ぎ、記事の執筆や編集業務に従事。新米編集長として、日々奮闘中。