新聞・雑誌の編集部やテレビの制作部には、毎日数百枚にのぼる大量のプレスリリースが届きます。FAXに積みあがるプレスリリースを、毎日編集部員が「要るリリース」と「要らないリリース」に仕分けますが、仕分け作業に割く時間は1日わずか。1枚のプレスリリースにかける時間はほんの数秒であり、何時間もかけて作ったプレスリリースが、たった数秒で「要らない」と仕分けられ、あっけなく捨てられていきます。
単に「媒体にそぐわない情報」という理由で読まれない場合もありますが、中には、内容にまとまりがなく何が言いたいのかわからない、文章が下手、専門用語が多すぎる‥‥など、読みづらさが災いして「とりあえず要らなそう」と判断されてしまい、捨てられるものも多いです。このような「書き方」による機会損失を防ぐことで、メディア掲載のヒット率は大きく変わる可能性があります。
この記事では、そんなプレスリリースを書く時に使える「文章の書き方」を解説していきます。
CONTENTS
文章を書くのが“上手い人”と“下手な人”の違い
“文章を書くのに自信がない人”がよく言うのが、「昔から国語は苦手」「話すのは得意だけど、文章は自信がない」「もともとセンスがない」。しかし、生まれつき“上手い文章を書ける才能”を持っている人はいません。
“上手い”と言われる文章には2種類ある
そもそも、“上手い文章”に定義はなく、正解もありませんが、“上手い”と言われる文章には2つの種類があります。1つは「端的で読みやすい文章」、2つ目は「クリエイティブで感情を動かす文章」です。小説や詩などではなく、正確な情報を公の場に提供するプレスリリースにおいては、1つ目の「端的で読みやすい文章」が求められます。
“読みやすい文章”であるかどうかは、読み手の客観的な視点から判断されます。そのため、文章を書く際は読み手を気遣いながら書くことが大切です。
プレスリリースで活きる“読みやすい文章”の書き方
ここからは、今すぐマネできる「読みやすい文章の書き方」と、日ごろから文章能力を鍛えるための「インプットとトレーニング方法」をご紹介します。
最初にタイトルをつける
タイトルは、読み手に最も伝えたいことを端的に表した文章です。最初にタイトルをつけ、タイトルを意識しながら次の文章を書いてください。
タイトルを最初につけてから文章を書くことで、リリース全体がタイトル(最も伝えたいこと)を意識した内容になり、文章全体に統一感がでます。タイトルをつけずに思いついたことから書いていくと、内容が散漫になり、最後にタイトルをつける際にも何が最も伝えたいことだったのかわからなくなることがあります。
構成案(プロット)をつくる
構成案(プロット)とは、文章の骨組みであり設計図です。プレスリリースに何の情報を入れたいかを考え、それらを並べて骨組みを作り、その骨組みに加えたい要素を肉付けしていきます。
例えば新商品リリースを書くと想定します。新商品の特色、値段、発売時期などの詳細を入れたい。写真も入れたい。どうしてこの商品を出すことになったかを伝えたい。開発担当者の想いも入れたい。他社製品との違いも伝えたい。商品を使う場面も教えたい。‥‥など、商品をとりまくあらゆる情報が浮かんでくるはずです。それらの情報を、一番読み手に伝わりやすい順序を考えながら並べてみます。組み立てる順序については、こちら『【保存版&テンプレート付き】プレスリリースの構成と組み立て方』を参考にしてみてください。
構成案は箇条書きで構いません。私はワードやメモ用紙に、このような形でつくります。
構成案を作ることは、書き手にとって情報を整理する良い機会になります。また、情報を並べてみて初めて足りない情報に気づくこともあります。いきなりプレスリリースを書き始めている人は、いちど構成案作成から取り組んでみてください。
横文字・不要な漢字を減らして端的な表現にする
例えば「クラウドソーシング(業務委託)」、「スキーム(事業計画)」など、カタカナ語を多用する会社は多いです。しかし、読み手にとっては、知らないカタカナ語が頻出することは大きなストレスになります。 “この単語を知っている人向けに書いています”というような、読み手を突き放す印象も与えます。
また、「有難う御座います」のように無駄に漢字を多用するのもNGです。漢字=丁寧というイメージがあるかもしれませんが、読み手にとってはただ読みにくいだけです。
声に出して読んでみる
プレスリリースが出来上がったら、声に出して読んでみてください。文章が長すぎると読みづらかったり、「てにをは」など文法の間違えに気づいたり、同じ話を何度もしているなどのミスに気づきます。できればリリースを書き終わってから1日寝かせ、頭を一度リセットしてから読んでみましょう。時間がない場合は、ほかの人に一度読んでもらって読みにくい部分を指摘してもらうのも良いです。客観的な視点でプレスリリースを作ることを意識して、読み手に寄り添った文章を心がけることが大切です
“読みやすいプレスリリース”を作るトレーニング方法
実践的なプレスリリースの書き方を解説しましたが、ここからは日頃から文章作成能力を鍛える方法を解説します。
新聞を読む
新聞は5W1Hが過不足なく書かれ、読みやすい語順で並べられています。
(例)甲府地方気象台は22日、富士山の今季の初冠雪を観測したと発表した。平年より22日、昨年より26日遅いという。
語順はWho→When→What→Doの順に並ぶのが基本です。「、」の場所も読みやすさを意識してつけられ、一文が短くまとまっています。『新聞常用漢字表』で規定された平易な漢字のみが使われ、専門的な内容でも一般読者がわかるようにかみ砕いて説明されます。また、新聞記事の文章はよく「逆三角形型」と言われ、まず結論から入り、伝えたいことを説明して、次にそれに付随する内容を伝える順序で文章が組み立てられています。
このように、“誰にでも読みやすく”を意識して作られた新聞は、「良い文章」のお手本となります。毎日新聞を読むことで、自然とこの「読みやすい文章」が頭にインプットされます。
他社のプレスリリースを読んで、良いところと悪いところを知る
記者や編集者は、自社だけでなく他社の新聞や雑誌を読み、「この文章の書き方はいい」と思うものは盗み、「これはわかりにくいな」と思う表現は反面教師にします。同じように、広報・PR担当者の場合は、他社のプレスリリースを読んでみてください。「メディアがなぜそのリリースを選んだのか」を紐解くと、目に留まりやすい言葉選びやレイアウトに気づくかもしれません。反対に、何度読んでも意味がわからないというプレスリリースも、文法が下手、一文が長すぎてまとまりがない…などさまざまな発見があるはずです。
自分で記事を書いてみる
プレスリリースを作ったら、そのプレスリリースが記事として取り上げられた場合を想定して、自分で記事を書いてみてください。記事を書いていくと、今のプレスリリースに足りない情報に気づいたり、報道関係者がどのような視点でプレスリリースを見ているかがわかったりなど、客観的な視点でプレスリリースを読むことができます。
文章が上手いと大きな戦力になれる
良い文章を書くスキルは、プレスリリース作成に限らず様々な場面で役に立ちます。社内報やSNS、提案書などの資料づくり、得意先へのメールや手紙…など、汎用性は高いです。
しかし、ライティングスキルは特別な経験がなくても鍛えられるにも関わらず、良い文章を書ける人はそう多くいません。地道でコツコツとした勉強は必要になりますが、良い文章が書けると社内で大きな戦力になれる可能性があります。ぜひプレスリリースの書き方に悩んでいる方は、実践してみてください。
雑誌記者、編集者を経てマテリアル入社。前職の経験から、芸能・エンタメ分野に強い。PRパーソンとして、今後は医療・ヘルスケア分野で活躍できるよう勉強中。