メディア掲載への近道は、逆算された思考回路を持つこと。広報PR担当者必見!メディアリレーション・パーフェクトガイド#2

企業(ブランド)がメディアを通じて社会とより良い関係を築いていくためには、メディアへの深い理解と、報道関係者との日頃の付き合い、また広報部門と記者との信頼関係構築が欠かせません。日本中の全メディアを理解しようとすると、どれだけ時間があっても足りませんが、各企業の広報部門が担当する産業分野に限って言えば、それほど多くのメディアがあるわけではないと思います。まずは、担当の産業分野の中でも特に重要視すべきメディアに絞り、そのメディアの編集方針や、対象としている読者層などをしっかりと把握した上で、良好な関係づくりを目指しましょう。

メディアリレーション・パーフェクトガイド第2弾となる本記事では、実際にメディアに情報提供を行う際に心得ておきたい、ニュースリリース作成のポイントや、記事掲載イメージを描き切るゴールイメージ・メソッドについて解説していきます。

実際にメディアに情報提供を行う

記者の目に留まるニュースリリースを作成せよ

記者のもとには、企業から1日に何件もの取材案内やニュースリリースが届きます。編集部によっては、1日に50件以上ものニュースリリースを受け取っている記者もいます。そんな記者が出張でたった2日間でもデスクを空ければ、100件近くのニュースリリースが山積みになり、すべてのものに目を通すだけでも大変な手間と時間がかかってしまいます。

このニュースリリースの数は、連休の前になるとさらに増えます。雑誌編集の場合だと、印刷工場が休みになるGW、夏休み、年末休みの前は、期日を前倒しした編集進行になるため、記者のもとにはいつも以上に大量のニュースリリースが送られてきます。つまり、この時期はニュースのヒット率が低くなるため、話題化させたいニュースを出すのは避けるべきです。

また、ニュースが一目でわかる「読みやすさ」も肝心なポイントです。先述したように、記者にとって毎日すべてのニュースリリースに目を通すことは大変な手間になるため、パッと見ただけで内容に興味を持ってもらえるようにすることが大切です。ニュースリリースの1枚目では、大きく書かれた見出しやタイトルが勝負になります。

製品の特長がわかりやすいイメージ画像、製品を使っている様子、大きさや使い勝手がいいとわかる画像も、イメージを湧きやすくする点で大切です。このひと目で見る・読むといった時間は、実際10秒以内程度と考えられるため、ニュースリリースを作成する際には、記者がほんの数秒で全体像を理解できるように努めなければなりません。

見出し13文字の法則©

ここで洋画の日本語字幕を思い浮かべてみてください。映画字幕の1段の文字数は、13文字以内に収まっています。続いてYahoo!トピックスの見出しを見ると、こちらも13文字以内(句読点含めて13,5文字以内)になっていることがわかります。ここに「13文字の法則」というものが存在しています。

「13文字の法則」とは、プレゼンテーションや記事のタイトルなど、読み手や聞き手に伝えたいことを伝える際に、最適な長さと言われている法則のことです。なぜ10文字でも20文字でもなく”13文字”なのかというと、人間が一目で読むことができる文字数は13文字以内と研究データで実証されているためです。(「京都大学大学院の研究」云々は[エネルギー科学研究科エネルギー社会・環境科学専攻 下田宏氏の「マンマシンシステム工学視覚系指標の計測と分析(1)- 眼球運動-」(PDF)]より引用)

また、Yahoo!トピックスに並ぶ見出しがすべて「13文字」以内になっていることから、今の世の中で起こっている社会事象は、すべて13文字で言い表せられることがわかります。13文字にまとめられた見出しは、記事内容の社会事象が、端的にわかりやすく伝わるように、編集者やライターによって考えに考え抜かれたものなのです。

ニュースリリースの送り方にも一工夫を

この13文字の法則は、ニュースリリースのタイトル付けにも応用できます。

1日何枚ものニュースリリースに目を通している記者は、リリース原稿の1枚目を一目見て、タイトルからニュースの争点や情報価値を読み取ります。そのためニュースリリースを作成する際には、ニュースの最も重要なポイントや製品名、またキーワードなどが一目で伝わるように、見出しを工夫しなければなりません。つまり企業の広報担当にも、新聞社の整理部並みの見出し考案の技量が求められるのです。

もうひとつ、ひと目で記者の興味をひくために工夫できるのは、ニュースリリースを送付するメールの件名です。「Press release」 、「NEWS release」、「INFORMATION」といった定型で送る場合が多いですが、ここはニュースのタイトルや製品名など、ニュースリリースの内容が伝わる件名を入力した方が目に留まりやすくなります。さらにタイトルによっては、1文字目に■や★のマークを入れると強調して見えますね。いろいろと試してみるのが良いでしょう。

「ゴールイメージ・メソッド」の極意

ニュースリリース作成時から掲載イメージを描く

ニュースリリースを作成する際に担当者が陥ってしまいがちなのが、伝えたいことだけを詰め込んでしまうこと。企業の伝えたいことだけが詰め込まれたニュースは、メディアにとっても生活者にとっても何の価値もありません。

そこで意識すべきポイントは、ニュースリリース作成時から、そのニュースがメディアで掲載された時のイメージまで描き切ることです。ニュースリリースを書く際には、「こんな記事になったらいいな。」、テレビのインタビュー取材を受ける際には「こんな画が撮れるといいな、こんなインタビュー動画になったらいいな。」、雑誌の取材を受けてる際には「こういう文脈で製品やサービスが紹介されて、画像がこのくらいの大きさで掲載されたらいいな。」…などと思い浮かべてみてください。このゴールイメージを明確に把握しておくことで、付ける見出しや話す言葉、また提供する広報素材、カメラの前の立ち位置、身に着けるもの、スーツやシャツの色味、背景に映るもの…など、すべて的確に選定できるようになります。

このようにメディアに掲載された後のことまでを考え、逆算してニュース作成を行うことを、私は「ゴールイメージ・メソッド」と呼んでいます。「ゴールイメージ・メソッド」に従って企画を考えたりニュースリリースを作成したりすることで、最終ゴールに向かって今何をすべきか判断できるようになります。ゴールを把握して準備万端に整えておけば、カメラの前の緊張感も和らぎ、記者との共同作業である取材もスムーズに進行します。

ゴールイメージ・メソッドのトレーニング方法

このゴールイメージ・メソッドは、トレーニングで鍛えることもできます。教材は『日経MJ』をご用意ください。日経MJは、週に3回発刊されています。ページ面ごとに産業情報が掲載されているので、まずは自分の好きな、もしくは得意な産業面を選びましょう。そこで取り上げられているニュースは、取材した記者にとっても気になるニュースだったと考えられます。

続いて、紙面で紹介されていた企業のサイトやプレスリリース配信サイトをチェックし、元ネタになったニュースリリースが格納されていないか調べます。もし見つかった場合は、そのニュースリリースと掲載記事を読み比べてみてください。この読み比べによって、記者がニュースリリースのどの部分に注目したかが、一目瞭然になります。また同時に、どの部分には全く興味を示さなかったかもわかります。

ニュースリリースでの見出しの付け方、キーワード、製品の特長の表し方、本文、事業の背景、競合との差別化、イメージ画像の位置と大きさ、ビフォーアフター比較、専門用語の注釈、広報素材のダウンロード手順、動画の格納、関係者のコメント、比較のグラフ、実証データ参照データの引用…など、記事のもとになったニュースリリースには、記者が記事にしたいと思わせる要素がいっぱいありませんか?ニュースリリースの全体構成も、見やすくレイアウトされていませんか?掲載実績のあるニュースリリースには、学べるポイントがたくさんあると思います。

新聞の掲載記事を見ながら、企業の広報戦略まで透けて見えるようになったら、あなたは一人前のPRパーソンと言えるでしょう。

「逆算」の視点で良好なメディアリレーション構築を

これまで説明してきたように、ニュースリリース原稿を作成する際には、常に記事掲載のゴールイメージを思い描きましょう。ニュースリリースの情報をもとにメディアに掲載されるときは、自分が集めた情報や、広報素材が加工されて、そのまま掲載記事になります。だからこそ、自分が書いている原稿が企業の独善的な内容になっていないか、また記者やその先の読者にとって価値のある情報になっているかどうかを常に考え、なおかつ掲載された後のイメージまでも明確に把握しておくことが大切です。

この逆算された視点を持つことで、ニュースリリースの精度は格段にアップし、メディアに掲載されるヒット率も高まります。


『メディアリレーション・パーフェクトガイド#2』は以上になります。ニュースリリースのタイトルの重要性やゴールイメージ・メソッドについて、少しでも理解を深めていただけたでしょうか?次回公開予定の『メディアリレーション・パーフェクトガイド#3』 もどうぞお楽しみに。

また本記事の内容は資料としてダウンロードできるようになっておりますので、お手元の勉強材料としてぜひご活用ください。

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