目指すはケーキをオンラインで購入する新習慣。業界の常識に切り込むCake.jpの挑戦

参入障壁が下がったことで、あらゆる業界の事業者がオンラインの販売チャネルを持つようになった今、ECサイトでの利益競争は激化の一途を辿っています。そんな中、マーケットプレイス型ケーキの総合宅配サイト「Cake.jp(ケーキジェーピー)」は、2017年の立ち上げ以来、わずか4年で国内ケーキ・スイーツ市場最大級のプラットフォームにまで成長しました。

今回は、「ケーキ通販」という新しい概念を業界に根付かせ、短期間でサービスを伸ばしてきた背景について、Cake.jpを運営する株式会社Cake.jpの代表取締役CEO 高橋 優貴さんにお話を伺いました。

「ケーキをネットで買う」という新たな商習慣を定着させる

洋菓子業界の課題に着目し、ケーキ特化型のECサイトをリリース

高橋さんは大学在学中に独学でプログラミングを習得し、Flash広告の受託開発を行う個人事業主としてスタート。そして、2009年には現在の会社の前身となる株式会社FLASH PARKを創業、2012年からギフト商品に特化した通販サイト(Birthday PRESS)を運営してきました。しかし、サービスを展開していく中で、次第に洋菓子業界における生産性の低さや、労働環境の厳しさといった課題に目を向けるようになったと高橋さんは言います。

「立ち上げ当初はネットでスイーツを買うユーザーも、ネットに出店する事業者もまだまだ少なかったので、ギフト領域にビジネスを広げた経緯がありました。しかし、様々な取引先と関わっていくうちに、デコレーションケーキやカップケーキ、ホールケーキなどを扱う洋菓子屋が抱える業界構造に着目するようになったのです。人口減少に伴う売り上げ縮小や、ケーキを作るパティシエの不足、在庫が売れ残る食品ロスなど、あまりの課題の多さに気付き、今まで取り組んできたテクノロジーとクリエイティブの力でケーキ業界の課題解決を図り、もっと市場を盛り上げたいと思うようになりました。」

こうした思いから、ケーキの総合宅配サイトであるCake.jpを2017年1月にリリース。本格的にケーキ通販ビジネスを始めることになりました。

細分化した“生活者がケーキに求めるニーズ”を捉えるサービス展開

2017年当時は、「ケーキをECサイトで買う」という商習慣自体、それほど根付いていない状況でした。それにも関わらず、なぜCake.jpはサービスを急成長させることができたのでしょうか。高橋さんは「洋菓子のジャンルの中でも、競合が少なかった生菓子のケーキに注目し、ユーザーが求める商品を増やしていったことが大きな要因」として、次のように説明します。

「ケーキを買うタイミングは、誕生日やお祝い事のような晴れの日や、母の日や父の日などの記念日が一般的です。一方で、買う場所については、リアルでもオンラインでもあまりこだわっていないということが、ユーザー分析をしてわかってきたんです。また、ライフスタイルの多様化や“インスタ映え”など、生活者がケーキに求めるニーズも細分化している状況がありました。そのため、『ユーザーがどんなケーキを探しているのか』をリサーチし、シーズナルやライフイベント、記念日などのタイミングに合わせて購買喚起できるよう、“ちょっと食べたくなる、プレゼントしたくなる”クリエイティブを展開しました。」

Cake.jpでは、お気に入りの写真やイラストなどをそのままケーキに施せる『オーダーメイドケーキ』や、SNS映えするようなデザイン性の高いケーキも取り扱っています。そのようなユーザー目線の商品が他社との差別化となり、Cake.jpならではの強みへと確立されていきました。

「ケーキ=リアルで売るもの」という固定概念を解きほぐす

他方で、洋菓子業界のアナログな習慣もあり、Cake.jpに出店する加盟店を増やすことには、かなり苦労したと高橋さんは振り返ります。

「現場ありきのビジネスであり、職人気質の強いパティシエの方の固定概念を払拭するのが大変でしたね。ネットでケーキを売ることに対して懐疑的に思う事業者の方が多く、『ECでケーキを売るなんて、リアル店舗は人気がないと言っているようなものだ』という考えから、なかなか出店してもらえないこともありました。そこで、まずは関係値を築くために、サイトの構築支援や活用方法、パソコンのセッティングなどを丁寧に教えたり、ユーザーデータをもとにケーキの新商品開発を一緒に行ったりしました。

ネット上にモノが溢れる現代では、商品の持つストーリーや背景なども消費者に選ばれる大きな要因となります。これを発信する場として相性の良いSNSからの流入を得るため、ECに参入するケーキ店が大幅に増加しました。当社でもSNSを意識したオリジナル商品のヒットがその後の事業拡大の後押しになりましたね。リアル店舗だけでなく、ECでの販路を拡大する流れが広がってきたことを受けて、Cake.jpへの出店を検討する事業者が増え、コロナ禍によってこの動きはさらに加速しています。」

急成長を支えたユーザー起点の商品供給

偶発的な購買を誘う商品ラインナップ

ユーザーのニーズに沿ったケーキを提供し、加盟店を増やして商品ラインナップを充実させたことで、着実に認知度を広めてきたCake.jpですが、さらにこだわっているのは「自分たちが欲しいケーキを作る」ことだそうです。おしゃれで可愛らしい見た目だけではなく、美味しさにもユーザーニーズを満たすための創意工夫を凝らしています。

「例えば、『バースデーケーキ 通販』という検索から流入してくるユーザーのボリュームが一定であることから、いずれ上限が来るだろうと考えています。そのため、新たなユーザー層へアプローチするには、別の訴求軸を作る必要がありました。そこで、ネットでたまたま見かけて思わず購入する、『セレンディピティ消費(偶発的消費)』を生み出せるような商品ラインナップを揃えることを、ここ1~2年は意識してきました。さらに、トレンドを掴むため、TikTokやInstagramといったSNSでの検索や、加盟店舗のパティシエやシェフからの一次情報を参考に、人気のある素材や味をリサーチして、商品へと反映していきました。理想は『Cake.jpにしかないケーキを作ること』ですが、まだ難しいので『他社よりもちょっといいもの』を目標に、商品ラインナップやカテゴリーを拡げています。」

人気パティシエや芸能人とのコラボ商品で話題化に繋げる

そんなCake.jpですが、コロナ禍においても昨年対比2倍の伸張をしており、現在ではユーザー数が70万人を超えるサービス規模となっています。また、加盟店舗数は1,000店舗以上、商品ラインナップも5,000種類を超えるなど、大きなマーケットへと着実に歩みを進めています。

コロナ禍でも好調を維持している理由は、「主力のケーキのほか、新しいスイーツの販売を展開し、巣ごもり需要に応えてきたことや、リアルからオンラインへ販路を広げる事業者が増えたことが追い風になっているため」と⾼橋さんは話します。

「コロナ禍でおうち時間が増え、オンライン上でのギフト需要やプチ贅沢需要が広がりを見せていた中、有名洋菓子店の商品や人気パティシエ監修のコラボ商品を展開したことが、ユーザー数の増加に繋がったと思います。また、話題を喚起するために後藤真希さんやGACKTさんといった芸能人とのコラボケーキも販売しました。特にGACKTさんとのコラボケーキは、根強いファンの方に購入していただき、かなりの売上になりましたね。ユーザーを飽きさせず、『Cake.jpには常にワクワクするようなケーキやスイーツがある』と感じてもらえるようなサービス体験を作れるように心がけています。」

恒久的な業界課題に立ち向かう「Cake.jp」の成長戦略

スイーツD2C事業や食品ロス削減に向けたアウトレット販売にも着手

Cake.jpは今年5月に第三者割当増資による総額7.7億円の資金調達を実施し、さらなる事業の飛躍に向けて続々と新規事業もリリースしています。人気実力派のパティシエやシェフとハイクオリティなスイーツを開発・販売するスイーツD2C事業「Cake.jp Program」や、洋菓子業界の食品ロス削減に向けた「Cake.jp OUTLET」など、次なるフェーズへの布石を打つ背景にはどのような考えがあるのでしょうか。

「まず、『Cake.jp Program』は、もともとコロナ前にも構想はあったものの、企画監修をしてくれるシェフの方がなかなか見つからない状況でした。それがコロナ禍を機に、前向きに検討してもらえるようになり、今回のスイーツD2C事業立ち上げに至りました。第一弾は製菓コンクールで受賞歴を多数持つ、人気パティシエールの向井聡美さんに監修いただいたムースを販売しています。目標として、毎月もしくは隔月にスイーツD2Cの商品が出せればと考えています。

一方、『Cake.jp OUTLET』は、洋菓子業界の恒久的な課題である食品ロスをゼロにしたいという想いから立ち上げました。ちょっとした型崩れやサイズの不揃い、期限の短い商品など、『品質や味には問題なく、まだ食べられるスイーツ』を捨てるのではなく、アウトレットとしてECで取り扱い、少しでもユーザーのもとへ届けられるような仕組みを整えていければと思います。」

プラットフォーマーとして洋菓子業界全体を盛り上げたい

これからも、ますますの事業成長が期待されるCake.jp。最後に今後の展望について高橋さんへ伺いました。

「私が考えるCake.jpの戦略はとてもシンプルなものです。①自分たちが誰かにあげたいと本気で思えるスイーツを販売すること②Cake.jpにしかないスイーツを増やすこと③「世界をハッピーに!」というビジョンをもとに楽しむことの3つを軸に活動しています。これからもユーザーの求めるケーキやスイーツがたくさん並ぶ、唯一無二のケーキ専門ECサイトへと進化させていきたいですし、洋菓子店向けにソフトウェアを提供し、生産管理や売上管理といった経営のサポートができるような仕組みも整えていけたらと考えています。

そして、将来的にはCake.jpというプラットフォームを生かして、パティシエの独立支援も行っていきたいですね。まだまだ洋菓子業界に還元できることはたくさんあるので、Cake.jpが業界を盛り上げられるように牽引していきたいと思います。」

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