なぜ企業の“広報PR部門”は予算が少ないのか?広報業務に関する独自調査レポート【2020年版】

広報PR業務の課題の根本を探る

企業によって抱える悩みは様々ですが、それぞれの課題にアプローチするためには、その根本にある要因を探る必要があるかもしれません。ここでは、“予算が少ない”などの「社内体制」に課題がある場合と、“メディア露出が少ない”などの「対外的なコミュニケーション」に課題がある場合、それぞれの解決策例をご紹介します。

社内体制に課題があるなら

①広報活動の目的(=目的)を明確化する

先述したように、社内で広報業務の重要度が理解されず、予算の確保が難しい場合は、まず広報活動の目的を整理してみる必要があるかもしれません。下の図は、広報業務に限らずすべてのプロジェクトにおいて活用できる“思考の順序”です。

広報業務の優先度が低く見られている場合、初めの「目的(目指す状態のゴール)」と「全体の戦略方針」を思考しないまま、目先の業務に取り組んでしまっている可能性が高いと考えられます。メディア露出を獲得するための活動は、ここで言う「HOW(具体的に何をするか)」のひとつでしかなく、決して「目的」ではありません。まずは、「何のために広報活動を行うのか」という企業ごとに異なる目的と、広報活動によって成し遂げたい目標を明確にすること。次に、それらを達成するにはどのようなアプローチが必要になるのかを考え、その上で具体的なアクションプランに落とし込んでいかなければならないのです。

この目的=目指す状態ゴールが明確になることによって、Q6で約70%の人が回答した「質のいいメディア露出」にもコミットしやすくなります。なぜなら、目指す状態ゴールに到達するためには、“どのようなメディア露出が必要か”を、逆算して考えられるようになるためです。やみくもに露出を狙うのではなく、いかにして意味のある露出を獲得するか。ゴールから逆算しながら、目的に沿った手段やメッセージ、また必要であれば媒体を選択し、戦略的に情報を設計していくことが大切です。

予算の少なさや、社内での理解度の低さに頭を抱えている方は、広報活動を行う目的を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

②経営視点も絡めた目的を設定する

上記では「広報活動の目的(=目的)を明確化する」と紹介しましたが、そもそもどのような目的やゴールを設定するべきかがわからないという方もいるかもしれません。この目標設定は、担当業務が「企業広報」であるか、「商品広報」であるかによっても異なってきますが、特に前者においては、経営的な視点も絡めた目的を設定できるかが重要なカギとなります。

“企業とあらゆるステークホルダーとの良好な関係構築”を指すパブリックリレーションズは、「経営」や「組織作り」そのものに大きく関わる概念です。そのため広報担当者としては、経営陣とのコミュニケーションを重ねることで、発信すべき“企業の根幹”を汲み取る必要があります。それらの根幹を組み込み、PRが企業にもたらすことのできる利益=目的を明確化することで、経営陣も広報活動の重要性を理解しやすくなります。

日本の企業では、PR視点を取り入れた経営を行っている経営者はまだ少数派であることが現状です。しかし、経営陣がPRの重要性について理解してないのであれば、広報担当者は理解してもらえるまで粘り強くコミュニケーションしなければなりません。経営陣がPRの重要性を理解して初めて、社内での地位向上や、予算獲得に一歩近づくことができるでしょう。

 

③同時に社内コミュニケーションも強化する

広報は対外的な活動ばかりが注目されやすいですが、インターナルコミュニケーションも重要な業務のひとつです。社内体制の強さは、そのまま外に滲み出ていくもの。従業員一人ひとりが納得感をもって仕事できているか、会社や経営への共感値が高いか、そういった社内の情緒的な価値が、対外的なメッセージ発信を強めて広報活動を後押ししてくれます。そのため、企業広報やコーポレートブランディングで注目を集めているような企業ほど、このような社内コミュニケーションが活発に行われているのです。

例えば、メディアに提供出来るネタがなくて困っている際に、社内コネクションが確立されていれば、今現場で最もミッション/ビジョン/バリューが体現されている案件や、熱量が高く勢いにのっている社員など、社内のホットな情報をスピーディーに吸い上げることが出来ます。最近では、トヨタ自動車のテレビCM「トヨタイムズ」がまさにその好例であり、これまでとは違って、商品ではなくそこで働く人の想いが紹介されている動画は、トヨタの企業好意度アップに大きく貢献し、CM好感度ランキングでも上位に浮上しました。(参考:https://www.netdenjd.com/articles/-/233402

また、「全員経営」という言葉があるように、今勢いがあるとされるベンチャー企業やスタートアップ企業では、企業のビジョンを社員全員で創り上げたり、会社が伝えたいメッセージについて社内で意識統一を行ったりするなど、“全員広報意識”が芽生えるような取り組みが行われています。一見専門分野外の話のようですが、強い組織を作り、それを外に発信していくのも、広報の仕事のひとつなのです。

 

対外的なコミュニケーションに課題があるなら

①メディアの要望を聞いてみる

企業の広報活動は一方的な情報発信に陥りがちですが、メディアが今求めているネタや、紹介したい情報はどのようなものなのかを、一度ヒアリングしてみるのもひとつの手です。このような情報を聞き出すには、プレスリリースを発信する時だけでなく、普段から継続的に記者や編集者と連絡を取り合い、信頼関係を構築する必要があります。そのため、時には自社以外の最新情報や耳寄り情報を紹介するなど、常に掲載の依頼をするばかりではなくギブ&テイクの意識を持つことが大切です。

②粘り強く情報発信を行う

一度プレスリリースを配信しただけでは、誰もその情報を拾ってはくれません。自社がどのような企業で、どのようなミッション/ビジョン/バリューのもとで商品やサービスの提供を行っているのか、それらがメディアや生活者に伝わるまで、根気強く発信し続ける必要があります。同じメッセージを、手段や切り口を変えながら発信し続けることで、相手の理解度向上や様々な種類のメディア露出に繋がり、生活者にポジティブな印象を与える効果が期待できます。

また、特殊な製品や新しいテクノロジーを扱う場合は、記者や編集者にきちんと理解してもらう必要があるため、定期的にメディア勉強会などを開催してみるのも良いかもしれません。広報活動に特効薬はないため、根気強くコミュニケーションを積み重ねていくことが大切です。

③社会のライフテンションに沿って、生活者視点の情報発信をする

1-3で述べたように、コロナウイルスによって業務の結果に影響が出たと感じつつも、改善の必要性が見い出せていない広報PR担当者は多いようです。「今までのやり方が通じなくなった」「コロナウイルス関連の情報に負けてしまった」など様々な原因があると考えられますが、今必要とされているのは、この変化を受けて”広報姿勢”をどう切り替えるかではないでしょうか。

広報PR担当者は、企業視点の情報発信を行うのではなく、常に社会のライフテンションやターゲット、メディアのインサイトを汲み取りながら、生活者視点のストーリー設計を行わなければなりません。ここでは、コロナ禍でのコミュニケーション活動に成功し、SNS上で話題となった事例をひとつご紹介します。

無水調理器具を販売する「バーミキュラ」は、コロナウイルスによる外出自粛を受け、「バーミキュラのおうちごはん応援プロジェクト」を実施しました。プロジェクトに際し、バーミキュラ公式Twitterは#おうちごはんのお悩みポストというハッシュタグと共に、日々の料理の悩みを募集。1000件以上集まった投稿の中で、旦那さんの料理に関する悩みが多数寄せられたため、この「旦那メシ投稿キャンペーン」を開始しました。

「外食が難しいコロナ禍だからこそ、料理の楽しさを知ってほしい」という願いで行われたこのキャンペーンは、商品やサービスを新たに開発したわけではありません。「手料理と、生きよう」をブランドスローガンに掲げるバーミキュラが、消費者の“今”のインサイトを見極め、自分たちだからこそできるメッセージを発信したことによって、このように話題化したのです。

コロナの影響によってメディア露出が難しくなったと感じる方は、「コロナだからメディア露出が難しくなった」という単純な理由ではなく、自社の現在の取り組みや発信したいメッセージが、今の社会情勢や消費者のニーズに合わせて設計されているかどうか、今一度見直してみてはいかがでしょうか。 コロナ禍で企業が取り組んだ事例について、もっと詳しく知りたい方は『新型コロナウイルスに立ち向かう企業の取り組み11選』『新型コロナウイルスに立ち向かい、新たな生活様式を支える企業の取り組み9選』も併せてお読みください。

 

広報PR活動に対する悩みをお寄せください

さいごに、PR GENICでは『PR相談室』を設けています。1人で職務を担うことが多い広報PR担当者にとって、気軽に相談できる場所や相手が少ないことも、現状課題のひとつかもしれません。そんな悩みの種をひとつひとつPR GENICが吸い上げることで、”読者と一緒に業界の未来を創るメディア”を実現したいと考えております。

投稿する内容は、PRやコミュニケーション活動に関するものであれば何でも構いません。いただいたご相談については、記事コンテンツやセミナー、勉強会などを通じて回答していく所存です。(場合によっては、PRトレーナーより個別でのアドバイスも差し上げます。)みなさまの投稿をお待ちしております。

投稿フォームはこちら⇒https://pr-genic.com/prconsultationcounter

 

※調査レポートは下記にてご覧いただけます。アンケートにご協力いただいた企業のみなさま、誠にありがとうございました。

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