日々、サステナビリティな情報に触れているメディアやフリーライターの方々へインタビューを行う連載『メディアと読み解くサステナビリティトピックス』。第10回目は、『ソーシャルエッグ』代表の下谷航希さんにお話を伺いました。
『ソーシャルエッグ』代表 下谷 航希 大学3年生の頃に、こども食堂のボランティアスタッフを経験したことがきっかけで、社会課題に関心を持つようになる。その後、地方創生やエシカルなど、さまざまな領域に携わるなかで「無理な労働環境等のしわ寄せが、社会課題解決に取り組む人に及んでいる」ことを知る。そこから非営利団体を創設し、社会課題解決に携わる人をサポートするメディア『ソーシャルエッグ』を立ち上げ。「社会課題解決に尽力する人が報われる社会を作る」をコンセプトに掲げ、現在はメディアの運用・渉外担当を担いつつ、外部の学生向けにソーシャルビジネスの講座も行う。 |
マテリアルグループ株式会社 Eagleリーダー 中野さやか 2017年4月マテリアルに入社。プロデューサーとして日用品メーカー・ホテル・大手外食チェーン・スタートアップなど多種多様なブランドを50社以上支援。2021年9月からマテリアルグループのCD本部マーケティング局に移り、コーポレートブランディングとサステナビリティプロジェクトのリーダーを務めている。趣味は植物と料理、ピクニック。【受賞歴】ACC:ブロンズ/CODE AWARD:GOOD EFFECTIVE/PRアワードグランプリ:ブロンズ |
下谷さんの取材・執筆時のポイント
①取材に至る判断軸は“社会課題と本気で向き合っている人”かどうか
『ソーシャルエッグ』は、2023年4月に立ち上げた社会課題解決に携わる人を応援するメディアです。「メディアという“手段”で、社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決する」ことを活動理念に掲げ、社会起業家や社会課題解決に本気で取り組む人たちにフォーカスしてきました。どんなテーマを取り扱うかは、すべてこの活動理念に基づいて判断しており、ジャンル起点ではないことがポイントのひとつです。取材対象者についても、事前にホームページやSNSを拝見し、事業にかける想いや立ち上げの背景などバックグラウンドにも着目。社会課題と本気で向き合う人を選定できるようにしています。
②取材先と読者、双方に学びを提供する
メディアの取材歴や私個人の経歴から、『ソーシャルエッグ』における社会課題解決事業についての知見は、まわりにも引けを取らないと思っています。活動理念の通り、取材をするだけでなく「社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決する」ために、たとえば、取材先の方が抱える課題に対して、私たちの知識を持ってアプローチしたり、他社様の事業例をいくつかご紹介したりもしています。
ただ、メディアとして、読者に対して新たな気づきを提供することも必要不可欠です。『ソーシャルエッグ』の読者は、エシカルやサステナブルに興味関心の強い人が多いため、いわゆる“一般論”からは一歩踏み込んだ取り組みや情報発信もしています。特に、布田尚大さんへインタビューした「ソーシャルM&Aで社会起業家の夢を促進する!」は、「社会課題解決とM&Aって両立できるものなんだ」などと読者から多くの驚きの声が届きました。
下谷さん注目のサステナビリティトピックス
アップサイクル
最近は、アップサイクルに取り組む企業が増えています。「廃棄食材や海洋プラスチックを活用して新たな商品をつくりだす」などですね。アップサイクル自体が社会課題の解決に直結していますし、原材料費がかからないので、ソーシャルビジネスとしては取り組みやすいジャンルなのだと思います。技術革新が急速に進んでいるので、今までは捨てるしか方法がなかったものが新しい食品に生まれ変わるなど、アップサイクルできる対象もこれから一気に広がるはずです。今後のアップサイクルの研究には非常に期待しています。
下谷さんの気になった企業の取り組み
営利企業、営利団体が売り上げの一部を非営利団体へ寄付する取り組みが気になっています。特に注目しているのは、フードロス削減を目指すショッピングサイトを運営するKuradashiさん。自社が社会貢献活動を行うために設立したクラダシ基金では、寄付先をユーザー自身が選択できるようになっているんです。「ユーザーが自ら選ぶ」仕組みを通じて、社会課題に興味を持ってもらえるようにしているのは、いい取り組みだと思います。
世の中にある社会課題は、すべてが営利で解決できるものではないんですよね。例えば、こども食堂などの活動を、営利側で取り入ることが難しい。こういった領域に介入していけるのが非営利団体の強みであり、役割なので、そこにしっかり寄付することが、社会問題すべてにアプローチしていくことにもつながると考えています。
フリーライター。採用広報のコンテンツ制作や取材・インタビュー、トラベルクリエイターとして旅行コラムの執筆などを行う。「アジアを旅しながら暮らす」をテーマにブログも運営している。