メディアと読み解く注目のサステナビリティトピックス|堀部 祐太朗

日々、サステナビリティな情報に触れているメディアやフリーライターの方々へインタビューを行う連載『メディアと読み解くサステナビリティトピックス』。第9回目は、『AMP』編集長の堀部祐太朗さんにお話を伺いました。

『AMP』編集長 堀部 祐太朗
IT企業においてウェブサイトの制作・運営、メディア運営、ファンマーケティング、SaaSサービスのディレクションなどのディレクター職を経て、電通PRコンサルティングへ入社。ビジネスウェブメディア『AMP』の編集長として、サステナビリティページの開発など、メディアの成長に従事。
株式会社マテリアル ブランドプロデューサー/Eagleメンバー 山口 健太
大学卒業後に新卒でマテリアルに入社。通信キャリアやお菓子メーカーなど幅広いクライアントに従事、プロデューサーとして、発表会や調査PRなど様々な施策のプロデュース業務を遂行。国内外幅広いリレーションを活かし、2020オリンピックマスコットネーム発表会を担当。​2022年9月からブランドプロデュース2局のシニアマネージャーに従事。また、マテリアルのサステナビリティプロジェクト・Eagleのメンバーとしても活動を行う。趣味はサッカー。

堀部さんの取材・執筆時のポイント
①「自分への影響力」を読者が具体的にイメージできるか
『AMP』は、Z・ミレニアル世代向けのビジネスインスピレーションメディアです。トレンドに敏感で周囲に影響力を持つ「アーリーアダプター層」をターゲットに、インスピレーションのきっかけ作りや、役立つような情報をお届けしています。特に、サステナブル文脈で重視しているのは、“読者と密接に関係するテーマを選定する”こと。記事を通してユーザー自身の行動を起こすきっかけになりたいと考えているので、「読者が自分への影響力を具体的にイメージできるか」をメディアとして意識しています。多様性をめぐる議論が活発になっているいま、田村淳さん小原ブラスさんへの取材記事は、特に反響が大きかったですね。ただ、読者にとってインスピレーションが湧く情報かどうかは、私たちメディアの視点からだけでは判断できません。最近は業界や業種の境界線を超えて、さまざまなところでサステナビリティへの取り組みが広がっているので、規模やジャンルを絞り込みすぎず、テーマにはある程度の幅をもたせるようにしています。その中で、今年の5月からサステナブルな商品やアイテムに限らず、サービスや取り組みなど、日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「SustainaBook(サステナブック)」をスタートさせました。ここでは、明日から始められる、真似できるサステナブルな取り組みをお届けしています。

②先進性を兼ね備えたテーマを日本に合わせた形で発信
影響力にあわせて、『AMP』では「数年後のスタンダードをいち早く発信する」ことも大事にしています。たとえば、今年の1月に配信した『和歌山県に「揚げないコロッケ」自販機が登場』はまさに流行を先取りした記事です。そのユニークさや意外性もさることながら、“自販機ビジネス”というワードがプレスリリースサイトの検索上位に表示されはじめたことから、トレンド予測を立てました。それ以外にも、タイパを重視し倍速機能を活用した視聴方法が近年話題になっていますが、動画視聴が生活の中心になる中で、AMPでは4・5年ほど前から同事象に着目していました。こういった若年層の動画視聴スタイル1つであっても、マーケティング業界に大きな影響を及ぼす可能性があるので、ビジネス情報だけでなく若年層の嗜好にも注視しています。また、先進性でいうと、サステナビリティは日本よりも海外の方がはるかに進んでいます。EUでは、プラスチックの規制が法律として整備されており、リサイクルされないプラスチック製包装材を使った商品には罰金が課せられるほどです。このような、たとえ日本にとってはまだ馴染みのない情報であっても、海外でトレンドとなっているものは素早くキャッチすること。そして、その情報を今の日本で発信する際には、どのような伝え方がベストなのかを議論することを意識しています。一歩先のサステナブルな価値観が海外から日本へ浸透しはじめたとき、抵抗感を抱かないように今の段階から発信していくことが『AMP』の大きな役割でもあると考えています。

堀部さん注目のサステナビリティトピックス
サステナブルの先「リジェネラティブ」
リジェネラティブは、直訳すると「再生する」という意味です。サステナブルは、環境を今以上に悪化させず「持続させること」を重視しているのに対し、リジェネラティブは「より良い状態をつくること」。サステナブルの一歩先のキーワードとして、世界ではスタンダードになりつつあります。これからは日本でもEUのように国として規制改革を進めて、リジェネラティブな考えを後押していくのがとても重要だと思います。

堀部さんの気になった企業の取り組み
『AMP』でも紹介させていただいた、代替プラスチックの開発を進めている、イギリスのスタートアップ企業『Notpla』に注目しています。海藻を原料に代替プラスチックを生成し、水自体をパッケージングするなど、日本でも話題になった“食べられる水”『Ooho』を開発した企業です。『Ooho』は、ロンドンマラソンにも採用されており、水分補給用のペットボトル消費量を減らすことにも貢献しています。汎用性や耐久性も非常に高いので、調味料パッケージやコーヒーバックなど、これからどのように活用されていくのか楽しみです。また、水という点では、『Social Innovation Japan』が運営する給水アプリ『mymizu』にも注目しています。マイボトルの持参を支援するため、カフェや公共施設など無料の給水スポットを検索できるアプリです。削減できたペットボトルの本数や節約できた金額もアプリ内で記録することができるので、自分のサステナブルな行動を可視化するという点もいいですよね。ただ、脱プラスチックに向けて、消費者がマイバッグ持参などをどれだけ徹底していても、そもそも生産者が生産方法を改め持続可能な工夫をしなければ意味がありませんしね。最近では、きのこの菌糸や微生物を活用して代替プラスチックを開発する動きも増えてきているので、今後の開発者側の取り組みに期待しています。

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