PRと宣伝・広告・広報の違いを徹底解説!歴史や「#PR」から考える“本来のPR”とは

※この記事は2024年4月4日に更新いたしました。

あなたは「PR」と聞いて何を思い浮かべますか?日本において、「PR=宣伝/広告」というイメージを持っている人はとても多いですが、PRの本来の意味はもっと幅広く、またもっと身近なものなのです。本記事では、PRの概念と歴史から、混同されやすい宣伝・広告・広報との違い、そしてSNSを中心に浸透している「#PR」という課題までわかりやすく説明。本来の「PR」と、それを正しく理解・実施することに対するメリットなどについて解説していきます。

PRの起源と概念

PRの起源は20世紀初頭までさかのぼります。真のPRを理解するためにも、まずはPRの歴史から簡単に紐解いていきましょう。

PRの略歴

PR(Public Relations)は、20世紀初めにアメリカで誕生し、企業や政治指導者が公衆(Public)の理解や信頼を得るために発達したものと言われています。PRが産声を上げた時代、それは企業が生活者の利益を無視して資本を集中させ、暴力的に富を築いていた時代でした。そんな時代に、企業と生活者の間にできた大きな溝を埋め、関係性を修復する手段として現れたのが、PRです。

の後PRは、世界大恐慌が起こった1929年に、アメリカ国家を統治するものとして重要な役割を果たし、公民権運動が活発化した終戦後の1960年代には、政府や企業からの「一方的な説得コミュニケーション」から、企業や政府と生活者をつなぐ「双方向ミュニケーション」へと変化。このようにして、PRは徐々に社会への大きな影響力を持つものとして成長していきました。

そして、近年ではマーケティングの側面でもPRが重視されています。かつての日本は、マス広告を中心とし、多くの人に“知らせる”ことが目的だった「一方通行の時代」。そこから、情報が溢れ、価値観が多様化するとともに、誰もが情報発信者になり得る「1億総メディアの時代」へと変遷してきました。このような時代背景に伴い、多くの人から“リアクションを得る”ことが目的となったマーケティングコミュニケーションにおいても、トライブ※1を意識した「本質的なPRを組み込むことによる効果」が期待されているのです。
※1:トライブに関する記事はコチラ

PRは双方向のコミュニケーション

さて、PRは直訳すると「公衆との関係」になりますが、先述したようにPRの概念は時代とともに変化しています。今のアメリカ社会において、PRは「双方向のコミュニケーション」として定着し、政治や企業にとって、非常に重要な役割を担うようになりました。

しかし日本では、PRという言葉が一昔前の概念のまま使われているように感じる場面がしばしばあります。本来ならば、企業と生活者が双方向のコミュニケーションをとるための、すべての活動を「PR活動」と指すべきですが、生活者にとってPRは「宣伝活動」であり、企業の広報担当者にとってPRは「あらゆるメディアに情報を取り上げてもらうための活動」と認識されています。これらも決して間違いではありませんが、真のPRとはもっと広義的で、もっと身近に存在するべき言葉なのです。

このようにPRの概念は、その曖昧さがゆえに、「宣伝」「広告」「広報」などの類似語と混同されやすくなっています。これら類似語との違いを理解することで、PRへの理解を深めていきましょう。

PRと宣伝・広告・広報との違い

「宣伝」と「PR」の違い

冒頭でも述べたように、「PR=宣伝/広告」と思っている人は非常に多いです。しかしこれは大きな間違いであり、両者は根本的に異なる概念になります。

まず宣伝は、「宣伝する側が自ら意図する方向へ、多数の人を導くコミュニケーション」と定義されています。さらに宣伝は、英語で「プロパガンダ」と訳され、欧米では特定の主義や思想を政治的に宣伝するという意味合いが強くなっています。

一方、PRは「客観的な事実を中立的に伝えるコミュニケーション」と定義されています。つまり、宣伝する側の意図を押し付けて誘導する宣伝と、情報提供のみをおこなって内容の判断は受け手にゆだねるPRは、その意義に大きな隔たりがあります。

「広告」と「PR」の違い

近は、広告にもさまざまな種類が存在し、より生活者と距離の近いものになってきているため、これもまた概念が混同されることが多いです。しかし広告とPRにも、明確な違いがあります。

まず広告は、「広告主が自らの商品やサービスを利用してもらうための、一方向性の情報発信」であるのに対し、PRは「両者の理解を主眼とした双方向のコミュニケーション」です。広告は、商品を売るために広告主(=企業)にとって都合の良い表現を使うことができますが、PRの場合、情報発信者・情報を伝えるメディア・情報を受け取る生活者という三者の仲立ちをしながら、情報をフェアに扱わなければなりません。そのため広告では、時には過激な表現や誇張表現が使われることがありますが、PRは真実に基づいた、誤認を生まない適切な表現のみが使われます。

「広報」と「PR」の違い

報とは、メディアに情報を提供する活動のことを指します。新商品情報やイベント情報をメディアに提供して取り上げてもらう際や、政府や行政機関が記者クラブに向けて情報発信をおこなう際に使われる言葉です。

情報を中立的に扱う点においてはPRと同じですが、広報は発信者の情報をメディアに伝えるだけの一方向性の情報発信なので、これもまた双方向のコミュニケーションをおこなうPRとは異なります。

新・景品表示法と「#PR」がもたらすPRの矮小化

このように、宣伝・広告・広報と混同されやすい「PR」ですが、その誤認を加速しているもののひとつに、SNS投稿でよくみかける「#PR」という表記があります。

2023年10月1日、景品表示法の告示による指定によって、ステルスマーケティング(以下、ステマ)が景品表示法違反となりました。ステマとは「広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すこと」。この改定を機に、特に注目されているのがSNS投稿です。投稿が広告である場合には、それが誰にでも伝わるような内容が求められます。そのための表記として、消費者庁のガイドライン※2で推奨されているもののなかに、「#PR」があります。さらに、他の例として推奨されているのは「#広告」「#AD」「#プロモーション」と、いかに「#PR=宣伝/広告」として浸透しているのかがよくわかります。

すでに、世間に広く浸透してしまっているため、「生活者との意思疎通を図るための共通言語」として「#PR」を推奨することも理解できますが、このレギュレーション自体が、本来のPRというものを矮小化してしまっていることに、悔しさを覚える人も一定数いるのではないでしょうか。

※2 参考:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

広義のPRを理解した上でPR活動を

ここまで解説してきたように、日本のPR活動は、まだまだ双方向コミュニケーションとして浸透していません。プレスリリースなどによる情報提供は、本来のPR活動の一部にすぎず、また、「#PR」のような表記が一般的に使われていることから、宣伝や広告のようなイメージが紐づいてしまっています。

しかしながら、本来のPRを正しく理解し適切に実践することは、企業のみならず生活者にとっても多くのメリットをもたらします。たとえば、企業にとっては、良好なPRを通じて社会における信頼性が高まり、顧客や株主とのより強い信頼関係を築くことにつながります。また、IR広報などの観点からは、悪い評判や危機管理に対しても適切な対応ができ、レピュテーショナル・ダメージ(評判の損害)を最小限に抑えることができます。

一方、生活者にとっては、情報の透明性があがることで、信頼できる情報を得やすくなり、製品やサービスに対する意思決定がよりしやすくなります。PRは、相互の理解を促進し、社会全体のコミュニケーションと信頼の構築に貢献するものなのです。

生活者と広域なコミュニケーションを図り、企業と生活者が手を握ることができれば、そのPR活動には成果があったと言えます。企業の広報担当者に任命された人や、PR会社で働く人、またこれからPRの勉強をしていく人は、この点をしっかりと理解した上で、PR活動における戦略を考えていくことが大切です。

次の記事『広報PR活動の基礎|広報担当者の心構え』では、実際に広報PR担当に任命された時に知っておくべき知識や、心構えについて解説します。

※本記事は、朝日新聞出版社『PR GENIC-資産価値を高めるPRとは-(著:東義和)』を参考に執筆しております。

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