ユーザーの約70%がZ世代!クレカ『Nudge』のZ世代の行動変容を促すサービス設計とは

〇〇Payや交通系電子マネーなど、さまざまな種類のキャッシュレス決済が浸透するなか、いまもなお日本国内で最も利用されているのが「クレジットカード」です。クレジットカードは銀行系や交通系、信販系などが一般的でしたが、2021年9月に発行が開始された『Nudge(以下、ナッジ)』は、デジタルネイティブ世代に向けた次世代型クレジットカードとして注目を集めています。

今回は、ナッジカードを発行するナッジ株式会社創業者/代表取締役 の沖田貴史さんにインタビューを実施。Z世代をターゲットにした理由や、“推し活カード”というコンセプトで訴求している背景、描いている「未来の金融体験」などについてお話を伺いました。

“推し活カード”で話題のクレカ『ナッジ』とは?

クレカ利用率の低い若年層に着目。1,500万人規模の市場に挑む

はじめに、ナッジカードの誕生背景について教えてください。

ナッジは、「ひとりひとりのアクションで、未来の金融体験を創る」というミッションを掲げ、日本発のチャレンジャーバンクとして2020年に創業しました。我々が事業を通して挑戦しているのは、「日本のキャッシュレス普及率を上げる」ことです。
※銀行免許を取得してテクノロジーを活用したサービスの提供を行う事業者

図のように、諸外国と比較しても、日本のキャッシュレス化は遅れています。コロナ禍では、QRコード決済やタッチ決済といった、キャッシュレス決済を導入する店舗も増えましたが、それでもこの状況は依然として変わっていません。しかし、諸外国でこれだけキャッシュレス決済が普及しているということは、日本のキャッシュレス化がさらに浸透する「オポチュニティ」があるのではないかと考えたのです。

日本におけるキャッシュレス決済利用額の約80%を占めるのは、クレジットカードです。その利用率を年代別に見てみると、特に10代〜20代といった若年層の利用率が低くなっています。つまり、「若年層がクレジットカードをメインの決済手段として利用する機会」を増やすことができれば、ユーザーにとってもメリットになりますし、社会全体にも大きなインパクトを与えることができると考えたのです。

加えて、日本には18歳から29歳までの人口が全体で1,500万人以上いるという市場規模の大きさにも注目しました。このマーケットにアプローチできれば、新たな市場を切り拓いていける。そのようなビジネスの将来性を感じ、2021年9月にナッジカードをリリースしました。

差別化のキーワードは「ポイント以外で勝負する、次世代型提携カード」

ナッジカードのデザイン(一部)


ークレジットカードといえば、ハイステータスなものからポイ活系のものなど、すでにレッドオーシャン化している業界ですが、ナッジカードはどのように差別化を図ってきたのでしょうか?

まず考えたのは、「金銭的なインセンティブ以外の選択肢があってもいいのではないか」ということでした。たとえば、現在のクレジットカード業界は、大手を中心に独自の経済圏を構築することで、ユーザーにポイントを還元し、カードの利用促進につなげています。このような業界特性もあり、新たにクレジットカードを作ろうとした際には、「自分にとって利便性が高く、かつポイント還元率のいいクレジットカード」が選ばれやすくなっています。しかし、その選択肢は多く、マーケットが混みあっている状態です。

スタートアップであるナッジとしては、「ポイント競争」では勝負できないと考えていました。それでは、ポイント以外の要素でナッジが選ばれるためにはどうすればよいのか。着目したのは、Z世代の2人に1人が経験者だと言われる「推し活」でした。近年、あらゆるジャンルで推し活がおこなわれていますが、「好きなアーティストや芸能人、コンテンツを応援したい」という想いは大きな熱量を持っています。その熱量をナッジカードの仕組みに取り入れることができれば、供給が集中している「ポイント競争」をせずとも、ナッジが選ばれる理由になり得るのではと考えたのです。

加えて、ナッジカードは1枚からでも発行できる「次世代型提携カード」であることも、大手カード会社との差別化になっています。

「提携カード」とは、ホテルや航空会社、小売店などと企業が提携をして発行するクレジットカードのこと。ICチップの普及等により、カード発行のコストが高いなどの問題から、大手クレジットカード会社は独自に発行するプロパーカードをメインで扱うようになってきているため、競争率が下がってきているモデルなんです。そこに加えて、独自のシステムを開発したことにより、通常、ある程度のロット数を確保できなければ発行できないところを1枚から作成できる仕組みを構築しています。

肝は、Z世代のインサイトを捉えた「ユーザー体験」と「サービス設計」

ユーザーの約70%がZ世代

ー現在のユーザーの割合はどのようになっているのでしょうか。

現状、ナッジカードのユーザーは約7割がZ世代の方で、そのうちの25%を10代が占めています。Z世代へのアプローチとしては、InstagramやTikTokなどのSNS広告のほか、Z世代に人気のあるインフルエンサーを起用したプロモーション施策を展開しました。結果、ナッジカードのメインターゲット層にうまくリーチできていると感じています。

ー広告やプロモーション施策では、どのようなコミュニケーションをおこなったのでしょうか。

「推しを応援できるクレジットカード」と若年層マーケティングは別でおこなっており、広告・プロモーションについては、上述の若年層を対象としたSNS施策に取り組んでいます。

放映されたCM(一部)


事例として、2023年8月に「自分の好きなものを選べる」というZ世代のインサイトに着目したCMを制作し、TVerで放映しました。
その結果、CM放映後には、学生部を対象とする18歳から24歳の新規申込者数が120%増加し、過去最多の申込者数になりました。また、当時初めてプロモーションを強化した関西地域では、その増加率は300%を上回りました。

あとは、「審査に通りにくい」「口座引き落としされる金額がわかりにくい」など、今まで若者層がクレジットカードに抱いてきた不安や怖さを解消するUI/UXも意識しています。専用のアプリから3分で申し込めるほか、AIを用いた独自審査でスムーズな発行を可能にし、決済金額や返済金額もアプリ上でリアルタイムに確認できるような“スマホ連動に最適化したユーザー体験”を目指したんです。

「質の意識」と「特典の拡充」で、メインで使い続けてもらえるカードに

沖田 貴史さん


ー“ユーザー体験”という側面でいうと、ナッジカードのクラブ(提携先)の種類も大きなポイントですよね。種類が増えれば増えるほど、選ぶのが楽しみになりますし、結果的に新規ユーザーの獲得にもつながると思います。提携先はさらに増やしていく見込みなのでしょうか?

その点については、「質の意識」と「特典の拡充」の2つの軸で考えています。「ユーザーがカードを作りたくなるようなクラブを開拓していく」ことを重視していく予定ですね。特に、アイドルやミュージシャン、芸能人、VTberといったエンタメ領域に関しては、ユーザー数の伸長の初速が早い傾向にあるため、そのようなジャンルのクラブを意識的に開拓していきたいです。

ユーザー数の拡大でいうと、テストマーケティングの場を設けるために、大学生・専門学生のためのナッジカード『学生部』の運営に注力しています。他の提携モデルなどとは異なり、我々の直営クラブとして運営していくとこで得られる気づきや知見、ユーザーからのフィードバックがあると思うんです。そのなかから、他のクラブに横展開できるものがあれば、そのナレッジを共有していくような仕組みも作っています。

「作りやすく、使いやすい。」「クレジットカードの決済で、推しの応援につながる。」このように、ユーザーを主語にすることで、ずっとメインカードとして使い続けてもらうことを目指しています。

あらゆるファンコミュニティ×金融で創造する「未来の金融体験」

ーさいごに今後の展望について教えてください。

私たちが目指す「未来の金融体験」とは、金融サービスの使いにくさなどのマイナス面を解消していくだけではなく、楽しくてつい自然と使ってみたくなるもの。“金融サービスだと意識せず使っていたら、気づけばキャッシュレスが当たり前になっていた”という状態を作るのが望ましい形だと思っています。これは、「ポイ活」などにも言えることで、そのサービス自体がエンタメになっていることで、ユーザーは金融サービスだと意識せずに、楽しい気持ちで利用できるんです。また、アーティストやスポーツ選手、芸能人といった「人」へのフォーカス以外に、地方創生などといった文脈でもユースケースを広げていきたいと考えています。

近年では、NFTなどのWeb3技術も注目されていますが、ブロックチェーンと相性がいいクラブについては、NFTを活用した取り組みを実施してみるなど、トライアンドエラーを繰り返しながら、未来の金融体験を見出していけるように尽力したいと考えています。加えて、既存のクラブにおいてもユーザーが入りたくなるような特典やユーティリティを拡充していき、ナッジカードのメリットをさらに増やしていきたいです。

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