社会のデジタル化に潜むリスクとは?“ガラス張りの時代”における対策・マネジメント法を徹底解説!

2020年からのコロナ禍で、DXの推進やオンラインシフトの波が押し寄せ、社会全体のデジタル化がより一層のこと進展しています。このような状況の中、近年多くの企業から関心を集め、対策に追われているのが「デジタルリスク」です。企業が保有する機密情報の漏洩や、SNSへの不適切な投稿で生じる炎上、風評被害など、レピュテーションの低下やブランド価値の毀損、ひいては会社の存続まで脅かす影響を与えるのが、デジタルリスクの怖さになっています。

そんななか、デジタルリスク対策支援を手がけ、これまで延べ1,000社以上の企業にさまざまなソリューションを提供しているのが株式会社エルテスです。デジタルリスクと常に向き合い続けなければならないこれからの時代、具体的にどのような心構えを持ち、対応策を用意しておけばいいのでしょうか。株式会社エルテス マーケティング・広報責任者の奥村高大さんに話を聞きました。

時代とともに多様化するデジタルリスクとは

マーケティング・広報責任者 奥村 高大さん


ーはじめに、
デジタルリスクとは具体的にどういったもののことを指すのか教えてください。

当社がデジタルリスクと捉えているのは、“デジタル化によって生じる新しいリスク”。もう少し掘り下げると、サイバー攻撃のようなテクノロジーの視点ではなく、人の行動変化などによって生じる社会学的な視点のリスクです。エルテスでは、「デジタルリスクと戦い続ける」というコーポレートスローガンを掲げ、デジタルリスクの無い豊かな社会を目指しています。その考えのもと、デジタルリスク事業では主に2つの軸で活動しています。

1つ目は、当社の祖業ともいえるソーシャルリスク。なかでも、企業が提供するサービスやブランドに対し、ネガティブな評判が広まり、風評被害によって企業に対する信頼の失墜や収益の悪化などの原因になってしまう恐れがあるのがレピュテーションリスクとなります。

また、「SNS・ウェブ上のリスク対策やモニタリング」もソーシャルリスクに分類されます。当社では、TwitterなどのSNSをはじめ、掲示板やコミュニティサイトなどの監視を行い、炎上リスクに備えた対応を行っています。最近では、動画コンテンツの監視にも対応するなど、リスクを検知するための運用体制を常にブラッシュアップし、高度化するデジタルリスクと向き合い続けています。

2つ目は、インターナルリスクです。弊社では、企業におけるログを収集することで、営業秘密情報の持ち出しやハラスメントの早期発見に貢献するサービスを提供しています。企業のイメージ低下や信頼を揺るがす事態を招くインシデントは、社内の内部告発によって、SNSに突然もたらされることも少なくありません。社内トラブルの内容がSNSに漏れる前に検知し、対応を行うことが、レピュテーション対策においても重要という考えから、開発を行ったサービスです。

自社のパーセプションを正しく理解しアクションと紐づける

SNSは“諸刃の剣”。炎上分析や徹底したルール作りを

ー企業がデジタルリスク管理に着手する際には、どういった活動から始め、どのようなフローで運営していくべきでしょうか。

炎上は、SNSでの不適切投稿、パワハラやモラハラといったコンプライアンス違反、社会規範や倫理観を逸脱した従業員の言動など、いろんな要素で引き起こります。まずは、どういうプロセスでSNS上の炎上が発生しているのかをキャッチアップし、「なぜ炎上が起きたのか」や「どのような対策が必要なのか」を把握することが大切になります。

SNSは、情報発信ツールとして便利な側面がある一方、不適切な投稿をしてしまえば、瞬く間にネガティブなイメージが拡散されますよね。“諸刃の剣”という認識を忘れることなく、炎上リスクを理解する研修や、SNSアカウントにおける運用ルールの策定が大切です。

また、自社におけるパーセプションを正しく理解し、企業としての適切な振る舞いができているかも重要なポイント。もし、企業姿勢と異なるようなアクションを起こした場合、そこに生じた差分がリスクになりうるからです。社会や生活者から、自社はどのように見られているのか。どんな立ち振る舞いが求められているかを洗い出して、社員教育や経営陣への助言、情報発信に際しての方針決めを行っていくといいでしょう。

これらに加え、管理職のSNSリテラシー向上も重要になってきます。炎上発生時のエスカレーションフローを策定し、運用していく際に、管理職の意思決定は必要不可欠なわけですが、管理職がSNSの拡散力や影響の大きさを知らないと、行動を起こさず握ったままになってしまい、さらなる炎上につながってしまう可能性もあります。アルバイトやパート・新卒社員・一般社員・管理職など、あらゆる立場に合わせて炎上対策の研修を実施し、炎上リスクを常に配慮するマインドを社内全体へ浸透させていくことが肝になります。

キャスティングは、起用背景からストーリー立てて発信する

ーエルテスでは、リスクモニタリングサービスの展開として、「タレントリスク調査」などもされています。実際に、タレントやインフルエンサーの起用を検討する際には、どのような情報を注視すればいいのでしょうか?

最近では、東京オリンピックで起きた関係者の辞任騒動が大きな話題となりました。過去の不適切な言動が原因となり、いわゆる“キャンセルカルチャー”の意見が露呈することで、一連の辞任劇が生じたわけですが、タレントやインフルエンサーのキャスティング時には、SNSの言動・噂・ネットの論調などをチェックすることも、リスクマネジメントの手段です。たとえば、競合商品を頻繁に紹介・愛用していないかなども、把握しておくとよいですね。

加えて、当然のことながら、企業イメージやブランドの世界観に合った人を起用し、PR文脈に沿ったストーリーを立てて発信していくことも大切です。少し前に、ある化粧品会社さんのキャスティングが炎上へとつながった事例がありましたが、「なぜ自社のブランドでそのキャスティングを行ったのか?」をしっかりと説明できていれば、もしかすると大きな炎上にはならなかったかもしれません。先述したように、自社のパーセプションを見極めて、“このキャスティングに至った理由”まで含めて発信することが大切ではないでしょうか。

デジタルリスクに立ち向かう企業が抑えるべき勘所

誰が何を対応するのか明確にし、中立的な見解で情報発信をする

ー炎上が起きてしまった場合の対策において、どのような取り組み・意識付けが必要でしょうか?

炎上対応でよく見受けられるのは、「炎上発生時の責任所在が不明で、対応が遅れる」ということ。企業によって、人事や労務、危機管理広報など、さまざまな職務を担う従業員が対応すると思いますが、いざ炎上が発生した際のフローで、「誰が、何をやる」というのが明確化されていないと、対処が遅れ、炎上の被害が広がってしまいます。

昨今、SNS上をにぎわす炎上は、ほんの数時間が命取りとなり、場合によっては取り返しのつかない被害に発展する場合があります。謝罪文を書いたとしても、状況を理解していない人が対応することで、一貫性に欠けてしまい、二次炎上に繋がることも。そうならないためにも、炎上リスク発生時のエスカレーションフローや対応マニュアルを整備し、責任の所在を明確にすることを心がけましょう。

合わせて留意したいのが「炎上の事案に対し、企業としてどんな情報発信をすべきなのか」という判断です。炎上を起こした当事者である企業側は、自社を守ろうとする気持ちが強くなりがちですが、SNS上ではどういう批判がなされているのかをまず把握する。そして、それに対する企業の声明を出す、もしくは、出さないといった判断を行います。声明を出す場合には、自社の擁護に走りすぎず、中立的な見解を持って発表することがポイントになります。

ネットは多様な価値観があり、とりわけSNSでは、さまざまな意見が可視化されるため、企業としてどんな発信をすべきか迷うこともあるでしょう。そんな時は、特定の批判に注視するのではなく、俯瞰して論調を捉え、ネガティブとポジティブの両方の論点を一つひとつ整理していき、コーポレートサイトに載せるのか、SNSで発信するのかなどの意思決定をします。たとえば、ネットニュースに炎上の事案が拾われたり、炎上系のインフルエンサーに取り上げられたりした場合に、炎上リスク発生時の危機対応フローに沿って対応を始めるなど、ある程度の指標を設けておくと、初動を早めることにつながります。

情報が“ガラス張りの時代”に求められるリスク管理のインナーコミュニケーションとは

ー社内にリスク管理の重要性を浸透させるためには、どういったインナーコミュニケーションが重要になってくるのでしょうか。

インナーコミュニケーションで重要な点は、「具体的にどのようなことでSNSが炎上するのか」を従業員に落とし込み、理解を深めることです。会社には、アルバイトや業務委託・新卒・役職者など、さまざまな立場のもとで働く従業員がいます。こうした立場ごとに、炎上の事例を共有することが重要になってきます。

一度ネットにネガティブなことが晒されてしまうと、完全に削除できないデジタルタトゥーの弊害や、炎上を起こしたことで企業やブランドに傷をつけてしまうことに繋がります。「交通ルールを守る」ことと同レベルで、SNSの扱い方・会社の看板を背負って働くことの重要性を説明し、理解してもらうことが鍵になります。

また、プロモーションや広告の炎上は想像できると思いますが、プライベートの裏アカウントの存在がバレてしまい、会社名の特定がされることもよくあるケースです。SNSが当たり前となった今は“ガラス張りの時代”ともいえるわけで、いつどこで何がトリガーとなって、炎上リスクになるかわかりません。炎上対策の研修などを通じて、リスクリテラシーの向上を図るとともに、ちょっとしたことが「炎上の火種」になってしまうことを肝に銘じて、行動するように伝えていくことが求められるでしょう。

ーさいごに、デジタルリスクに立ち向かう企業の皆さまへメッセージをお願いいたします。

デジタル化の進展とともに、業務の効率化や省力化というメリットを享受したことで、業務フローにも変化が起きています。ですが、その裏にこそ落とし穴があるわけで、どの企業にもデジタルリスクは存在しています。企業として、炎上対策やレピュテーションリスク対策を行う上で、SNSの運用ポリシーやリスクリテラシーの教育がより一層、重要味を帯びてくると思うので、当社としても、常に変化し続けるデジタルリスクに対して、適切なソリューションを開発し、企業を支援していきたいです。

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