戦略PRとは?【後編】|商品と生活者が手を握るための思考プロセス

情報の洪水と言われるこの時代に、生活者を振り向かせるために欠かせない「戦略PR」。前編『戦略PRとは?【前編】|生活者を振り向かせる情報発信のポイント』では、戦略PRの考え方について解説しましたが、後編となる本記事では、戦略PRを実践する際に必要な思考プロセスについて解説します。

戦略PR設計を行う上での思考ステップ

商品と社会が手を握るためには、パブリシティの獲得(=メディア露出)だけでは限界があります。オーガニックなメディア露出のみに頼ると、ターゲットに対して継続的に情報を届けることが難しいため、一気通貫した統合コミュニケーションを設計しなければなりません。ここでは一気通貫した統合コミュニケーションを設計するための、戦略PRに欠かせない思考ステップを紹介していきます。

この思考ステップは、大きく以下の4つに分けられます。

図1:戦略PRにおける思考ステップ

ステップ1:共通のテーマを導く3要素を整理
ステップ2:共通のテーマの策定
ステップ3:ストーリーの組み立て
ステップ4:プランに落とし込み

それぞれ説明していきます。

ステップ1:共通のテーマを導く3要素を整理

前編でも説明した「商材/サービスが持つ価値」「世の中の関心ごと」「狙いたいターゲットの関心ごと」の3要素を整理することから始まります。

ステップ2:共通のテーマの策定

図2:ステップ2共通のテーマ設定

ステップ1で整理した3要素から成り立つ、「共通のテーマ」を策定します。

この時、“世の中的に意義のあるテーマ”にすることがポイントです。そのテーマが解決されることで、生活者の意識や行動に変化/影響を与えるものであればあるほど、世の中的に意義のあるテーマであるといえます。

ステップ3:ストーリーの組み立て

ステップ2で策定したテーマを、世の中に広めていくためのストーリーを組み立てます。設定したテーマが世の中で話題となり、生活者間でどのような会話が生まれることが望ましいのか、目指すゴールを明確にした上で、そこに辿り着くまでのストーリーを描きます。

その際に、これまで話題になった類似事例を研究することも非常に重要です。例えば、「その事例の情報はどのメディアを起点に拡散されたか」を分析することで、アプローチすべきメディアが具体的に浮かび上がってきます。

図3:情報が世の中に広まっていく流れ

ステップ4:プランに落とし込み

ステップ3で描いた理想のストーリーを、より具体的なプランに落とし込むステップになります。

  • いつ/どのような時期に
  • どのメディア/ライターから
  • どのような切り口で

情報発信することが最適であるか、設定したゴールまでのプランを描きます。

このプランニングにこだわることが、商品と社会が手を握るために重要になってきます。生活者の反応を予測しながら緻密なストーリーとプランを設計することで、予測と実際の反応のギャップが生まれた際に改善すべきポイントが明確になるため、より理想のゴールに導きやすくなります。

戦略PRを行うためのコミュニケーションプラン

これまで説明してきた思考ステップで、テーマの設定から目指すゴールまでのストーリーを描けた後は、実際に情報を生活者に届けるためのコミュニケーションプランを組み立てていきます。

商品と社会が手を握るための一気通貫した統合コミュニケーションは、下の図で示すように「情報クリエイティブ」と「表現クリエイティブ」の2要素で構成されています。それでは、「情報クリエイティブ」と「表現クリエイティブ」の構成要素について具体的に見ていきましょう。

図4:情報クリエイティブと表現クリエイティブの構成要素

情報クリエイティブ

  • Publicity
    どのような情報を、どのメディアを通じて発信していくべきか
  • Fact
    どのような事実(世の中的に意味のあるもの)を作り出すべきか
  • SNS
    SNS上でどのような内容を投稿させるべきか
  • KOL
    誰から(有識者/専門家など)の評価を得るべきか
  • Influencer
    誰を起点として情報を広めてもらうべきか

表現クリエイティブ

  • Graphic
    どのような絵にするべきか
  • Copy
    どのような言葉/表現で伝えるべきか
  • Movie
    どのような映像で表現するべきか
  • Casting
    誰が商材/サービスにおけるブランドを背負うべきか
  • SP(Sales Promotion)
    どのような購買導線を作るべきか

これらに加えて、情報クリエイティブと表現クリエイティブどちらにも共通する要素であるContentsが最も重要であり、企画のコアとなります。

  • Contents
    何を伝えるために、どのようなアイデアを実施し、表現するべきか

このContentsを構成の中心に置き、各要素を穴埋めしていきましょう。その際、必ずしも全要素を穴埋めする必要はありません。自分たちができる現実的な範囲内で、統合コミュニケーションを図るために必要な項目をピックアップし、各要素を組み合わせていきましょう。

まずは思考のトレーニングから

何か戦略を考える際に、具体的に何をするかという企画の部分を先に考えてしまう人は非常に多いです。しかし、企画に入る前に「生活者がどんな状況になることがベストか」というゴールの部分を具体的に定め、そのゴールに辿り着くまでのプランを緻密に設計することによって、戦略的なPR活動を行うことが可能となります。

戦略PRを設計することはそう簡単なことではありませんが、今回紹介した思考のステップで、日々の事例研究や普段の業務を考えていくことで、自然と戦略PRの思考法が身についていきます。この思考力を身に着けて戦略PRを実践することで、ふだんのPR活動よりもさらに大きな効果が期待できるでしょう。

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