本記事では、マーケティング用語の1つである“戦略PR”について解説します。(読了:約3分)
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戦略PRの定義
戦略PRは、以下のように考えられています。
“商品そのものにフォーカスしたPR活動ではなく、世の中の時流と商品をつなぐテーマを開発してそこから話題喚起し、世論をつくり出す「空気づくり」を行い、その盛り上がりを商品の販売に落とし込む手法のこと。”
※ブルーカレント・ジャパンHPより
2009年1月にブルーカレント・ジャパン代表の本田哲也氏が、書籍「戦略PR ―空気をつくる。世論で売る。」(アスキー・メディアワークス)を発刊したことで、戦略PRが注目されるようになりました。戦略PRの流れを図にすると、以下のようになります。
なぜ戦略PRが注目されているのか
戦略PRが注目されるようになり、従来のメディアへの露出を狙うPRではなく、その前段階として“売れる空気作り”から取り組み、世の中で“話題作り”をするといった、より戦略的なPRを行おうという流れ/トレンドが生まれました。
このトレンドが生まれた背景には、本田氏の本の出版だけでなく、広告PR業界を取り巻く環境の変化が大きく関係しています。
① スマートフォン普及による情報過多
1990年代になるとパソコンが、2000年代になると携帯電話が、そして2010年代になるとスマートフォンが爆発的に普及し、世の中に多くの情報が氾濫し始めた結果、生活者は自分たちに必要な情報のみを取捨選択し、情報を都合よく解釈するようになりました。
情報過多な現代において、企業が自社の売りたい商品の機能性などを一方的に発信しても、生活者には響かず、無視されてしまいます。そのため情報発信する際には、生活者に見てもらい、注目してもらうための工夫が必要となります。
② SNSを通じたクチコミ情報の重要度の高まり
実際、平成28年に発表された「消費生活に関する意識調査―SNSの利用及び消費者教育等に関する調査―」によると、商品の購入やサービスの利用に当たり、SNSのどのような情報がきっかけとなったか調査したところ、「友達がアップやシェアをした情報」と回答した人が27.8%、次いで「お店やメーカーの公式アカウントがアップやシェアをした情報」と回答した人が26.2%、「芸能人や有名人がアップやシェアをした情報」と回答した人が19.9%という結果になりました。
このような背景から、“SNS上でいかに話題になるか”ということが重要視される時代であると言えます。
話題喚起に欠かせない生活者インサイトの汲み取り
この変化を踏まえて大切になるのが、“いかにして生活者(ターゲット)のインサイトを汲み取るか”ということです。インサイトとは、直訳すると「洞察」や「直感」のことですが、人々が感じたり考えたりしている表層的な気持ちではなく、心の奥底にある“行動の核心やツボ”のことを意味します。
インサイトを見出すためには、FacebookやTwitter、InstagramといったSNS上の投稿から、生活者がなぜこの情報をシェアしているのか、いいねを押しているのか、また呟いているのかを考察し、分析する習慣が重要となります。
この生活者のインサイトを捉えることが、戦略PRを行うための第一歩といえるでしょう。SNSを活用して生活者のインサイトを見出す方法は、以下の記事を参考にしてみてください。
『PRやマーケティングで役に立つソーシャルリスニングとは?【前編】|概要と活用シーン』
『PRやマーケティングで役に立つソーシャルリスニングとは?【後編】|具体的な活用方法』
戦略PRで大切なのは「広い視野」を持つこと
戦略PRは、“いかにしてメディア露出を獲得するか”といったことだけを考えるものではありません。生活者の社会に対するリアクションからインサイトを深堀り、同時にマーケット環境の変化を捉え、どう商品と世の中を繋げていくかを戦略的に考えていくことこそが戦略PRの本質であるため、様々な視点から自社のことを俯瞰して見る力が求められます。
この「広い視野」を持ってテーマ設定を行い、実施前から最終ゴールまでのイメージを思い描きながら、全体の戦略設計を行っていきましょう。