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また、これらを踏まえ、PR業務において意識すべきなのは、「倫理的な観点」と「誤解を与えないこと」です。まず、「倫理的な観点」においては、虚偽の情報を発信することや、競合他社を非難するような内容を発信することが問題となる場合があります。特に、政治的な言葉や表現、人種・民族・宗教・性別などの差別的な言葉や表現、暴力的・性的な表現などにおいて注意が必要です。
加えて、報道発表や広報活動において、受け手の捉え方によっては、情報が誤解されることがあります。これにより、企業イメージが損なわれることも。情報を発信する際には、どのように解釈される可能性があるかを考慮し、「誤解を与えないこと」を意識する必要があります。
一方で、予期せぬ形で炎上が起こってしまう可能性もあります。特に、SNS上での炎上事例においては、アルゴリズムが鍵となって拡散・連鎖していくケースも少なくありません。
◆1:拡散の加速
SNSのアルゴリズムは、ユーザーの興味や過去の行動履歴に基づいてコンテンツを推薦しています。そのため、ユーザーが炎上内容に関与するほど、同様の内容がさらに多くのユーザーに推薦されることになります。
◆2:エコーチェンバーの形成
同じ意見や価値観を持つユーザー同士が、アルゴリズムによって結び付けられています。この「エコーチェンバー現象」により、特定の批判や意見が強化され、多様な視点が排除されてしまうことになります。
◆3:感情的な反応の強化
ソーシャルメディアのアルゴリズムは、感情的な反応を引き出すコンテンツを優先的に表示する傾向があります。批判や怒りなどの感情的な反応を促す投稿は、より多くのエンゲージメントを生み出しやすいため、アルゴリズムによってさらに広められていくことになります。
◆4:速報性と反応の即時性
アルゴリズムによって、最新の話題やトレンドが優先されるため、批判や炎上内容が非常に迅速に広まる環境が作り出されます。これにより、企業や個人が適切に対応する前に問題が大規模化する事態に陥りやすくなります。
実際に炎上が起きたら?まずおこなうべき3つの対応
このように、特にSNS上においては、炎上は広がりやすいもの。もし炎上してしまった場合、どのように対応すればよいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。まず確認すべきこととして、大きく3つの対応が挙げられます。
◆対応1:炎上規模を把握する
批判の数はどれくらいか、またそれが増え続けているのかを確認します。まとめサイトやマスメディアにまで飛び火しているか否かも、炎上規模を把握する判断基準となります。
◆対応2:投稿の内容を分析する
一連の投稿のなかには、批判ではなく、応援や擁護といった内容が含まれている可能性もあります。批判投稿が目に留まりがちですが、一度全体を俯瞰してみることも大切です。また、その際には、誰が発言しているのかも確認するようにしましょう。フォロワー数の多いインフルエンサーなどにも注意して、投稿の影響力を観察してみてください。
◆対応3:炎上参加者のアカウント情報を確認する
いわゆる「捨てアカウント」や攻撃目的のアカウントが多いというケースも考えられます。批判の内容を確認する際に、アカウント自体の確認もしっかりとおこないましょう。
例に挙げたとおり、企業としてどのような対応をすべきかは、炎上の内容によって異なります。すぐに謝罪文を出すことが適切な対応ではない場合もあるため、炎上をしっかり見極められる基準を把握しておくことが大切です。
現代の危機管理広報において重要な炎上について講義した後は、「リスクとクライシス 緊急記者会見の実践」をおこないました。ここでは、企業の不祥事が発覚した際などにおこなう「謝罪会見」について、記者の特性などを踏まえながら、どのように進行していくべきなのかを説明しました。
まず、不祥事を起こした企業の謝罪会見に参加するのは、社会部の記者です。会見内では、さまざまな角度から多くの質問を受けることが想定されますが、実直かつ丁寧な状況説明をおこない「憶測記事」を避けることが重要です。その際には、企業としての誠実さを示すために、積極的に情報を開示する姿勢をみせつつ、取り扱う情報は以下の3種に分けることを推奨します。
1.積極的に開示する情報
2.質問を受けたら開示する情報(関連する資料)
3.決して開示しない情報とその「理由」
この際、情報を隠している姿勢を見せないことが大切です。記者に隠匿情報があると認識されてしまった場合、先述した「憶測記事」を書かれてしまう可能性があります。そのような記事は、事実と無関係であっても、さらなる火種となる危険性があるのです。そのため、会見内の受け答えでは、「答えられない」「ノーコメント」といった言葉遣いは避け、今答えられないのであれば「いつまでに答える」ということを明示する必要があります。
情報を整理し、いよいよ謝罪会見本番となった際に気になるのが、立ち振る舞いや言葉遣い。具体的に、どのような点に留意するべきでしょうか。
◆謝罪会見時の留意点
・概要説明については、冒頭2分程度で代表からおこなう
・可能な限り原稿は読まずに、自分の言葉で話す。資料等に目を落とす場合にも、句読点のタイミングで顔をあげる
・「ありがとう」というワードを使わない
・座ったまま頭を下げることはNG。必ず立礼する
・質問を受ける際には、記者に視線を向け傾聴の姿勢を示す
・予想外の質問でも落ち着いた表情を保つ。常に写真を撮られている意識をもつ
◆謝罪やお詫びを言う際に使ってはいけないフレーズ
・誤解を招いた:「誤解」は、伝え方が下手で、誤った受け取られ方をした場合にのみ使用する
・結果としてこのような:責任回避の意味に聞こえてしまう。「自分たちに原因はなく」「できる限りのことはしている」といったネガティブな意味に捉えられる可能性がある
・ご批判は甘んじて受け入れます:「不本意な思いだが受け止めています」と聞こえてしまう。素直に「真摯に受け止めています」と伝える
これらは一部に過ぎず、自社が置かれている状況や会見の内容で対応の仕方は変わってきます。また、突発的に会見をおこなわなければならない事態を想定し、日頃から備えておくことが大切です。
最終日となる3日目には、模擬記者会見を実施。記者会見を開くべき具体事例を課題として出し、状況の整理からどのように会見を開くのか、台本や想定Q&Aの用意など、実際の現場を想定した形でおこないました。今回の『PR CAMP』では、座学のみならず実践的な課題を取り入れたことで、参加学生は危機的状況における情報発信の難しさと重要性を実感していました。特に、模擬記者会見では、伝えたいメッセージと報道される内容が必ずしも一致しないことに苦労したとの声を多く聞いています。
このように、現役PRパーソンからの講義に加え、よりリアルで実践的な課題に取り組むことのできる『PR CAMP』。今後も、年2回を目途に開催予定です。学生の皆さまのご参加をお待ちしております。
1997年生まれの道産子。2020年に横浜国立大学を卒業し、株式会社マテリアルに新卒入社。新設のメディアリレーションチームに配属され、約1年間メディアの知識全般を深める。2021年6月より、『PR GENIC』の2代目編集長としてメディア運営を引き継ぎ、記事の執筆や編集業務に従事。新米編集長として、日々奮闘中。