推し活人気の『The Label Fruit』はなぜヒットしたのか?選ばれ続ける飲食店は“体験”で決まる!

ウェブサイト上で自由にカスタマイズしたフルーツオレを店舗で受け取れるドリンクスタンドとして、2021年12月15日に原宿にオープンした『The Label Fruit(ラベルフルーツ)』。モバイルオーダーサービスのパイオニアである株式会社Showcase Gig(以下、ショーケース・ギグ)が店舗開発を担当しています。

『The Label Fruit』は、ボトルに貼り付けされるラベルシールを推しの名前にしたり、メンバーカラーのフルーツオレを楽しんだりと、“推し活”への活用でも話題になりました。「オープン前からある程度は推し活のニーズがあることは予想していた」と語るのは、同社会長の新田剛史さん。店内には、撮影スポットが設置されたり、リニューアルで新しいカラーのフルーツオレが追加されたりと、常にユーザーを楽しませるアップデートが繰り返されています。

今回は、モバイルオーダーサービスのパイオニアとして培ってきた知見を活かす店舗づくりや、オープンから1年半弱でリニューアルに踏み切った理由などをはじめ、『The Label Fruit』ヒットの裏側について詳しくお伺いしました。

話題の『The Label Fruit』とは?

はじめに、『The Label Fruit』の販売方法、店舗の仕組みについて簡単に教えてください。

『The Label Fruit』は、モバイルでパーソナルカスタマイズできるフルーツオレを販売している店舗です。フルーツオレの味のほか、ラベルシールの色や背景デザインが選べたり、お好きな文字を印字できたりと、カスタマイズできる領域が非常に広いことが特徴。決済方法や受け取り時間も自由に選択が可能です。ご指定いただいた時間にご来店いただくと、店舗の受け取り棚より、非対面でも受け取れるようになっています。

実際に商品を受け取る様子

また、店内のいたる所に、写真映えする撮影スポットを設置。色とりどりのドリンクと、お客様がお持ちのグッズなどをあわせて、自分だけのとっておきの写真・動画撮影も楽しんでいただいています。

サービス設計にあたりこだわったのは、“フルーツオレのおいしさ”。私たちショーケース・ギグは、モバイルオーダー&ペイサービスの第一人者として、これまでもデジタルを活用した飲食店プロジェクトの運営を何度か経験しており、飲食店は商品としてヒットしない限り成立しないことを痛いほど理解しています。まずは、商品がおいしいこと。そのうえで、お客様にとってどのようなサービスが喜ばれるのかを吟味し、『The Label Fruit』をつくりあげていきました。

推し活人気の『The Label Fruit』ヒットの理由

カスタマイズの幅が推し活ユーザーのツボを押さえる

サービス利用者は、推しのメンバーカラーのボトルを買ったり、ラベルに印字できる名前を推しのものにしたりと、“推し活”という側面でかなり話題になったと思います。特に、ユーザーの方が店内で撮影したフルーツオレと推し活グッズのコラボ写真をSNSでよく拝見しますが、実際の反響のなかで印象的だったエピソードはありますか?

アイドルだけではなく、アニメや歌手、俳優など、ジャンルを問わずさまざまなファンの方が来店されることは非常に興味深いですね。どのファン層にも平等に推し活の機会を提供できている場所は、ほかにあまりないと思います。

あとは、聖地巡礼ツアーのスポットに『The Label Fruit』が組み込まれていることにも驚きました。店舗がある原宿周辺には、ドラマやアニメなどの舞台になった場所や、グッズを販売しているストアなど、いわゆる“聖地”と呼ばれるスポットが集結しているんです。最近は、その聖地をめぐる観光ルートがあったり、メディアで聖地巡礼のスポット一覧が紹介されていたりするのですが、ありがたいことにそこに『The Label Fruit』も選んでいただけているようで。本来であれば、当店は聖地ではないはずなのですが、“カスタマイズして自分で聖地にできる場所”としても魅力を感じていただけていることは嬉しいですね。先述した、「カスタマイズの幅が広い」というサービス設計との相乗効果が生まれていると感じます。このように、聖地巡礼として選んでくださったお客様の期待にもしっかりお応えするために、映えるスポットの追求にも努力を惜しまずにいたいと思っています。

ポイントは体験。アップデートを続け、いつ行っても“どこか新しい店舗”に

現在の商品ラインアップ


—2023
年4月にリニューアルオープンされましたが、この判断はお客様のご要望を踏まえてのことだったとお聞きしました。

そうなんです。お客様から「商品のラインナップを増やしてほしい」とのご要望をいただいていたことが、リニューアルに至ったきっかけの一つとなっています。かねてより「青」「紫」のフルーツオレのご要望が多かったことを受けて、今回のリニューアルでは新たに「アップルライチオレ」と「ブルーベリーオレ」を追加しました。

左:青 アップルライチオレ 右:紫 ブルーベリーオレ

商品の追加にあわせて、店内レイアウト/装飾も変更。物販スペースや新たな撮影スポットの追加、フルーツタルト店とのコラボレーションなども企画しました。コンテンツの消費スピードが速まり続けるなか、中途半端なことをしていると飲食店は生き残れないでしょう。『The Label Fruit』には、お客様のご要望があるにもかかわらず、それに対応しないという考えはありません。ユーザーであるお客様のリアルな声にきちんと耳を傾け、店舗として今何をすべきかを常に考えて柔軟にアップデートしています。

今回のリニューアルで新たに追加されたメリーゴーランド ※イメージ


今回のリニューアルでは、店内にプロジェクションマッピング「フルーツシャワー/メリーゴーランド」も登場しました。“体験”という面はかなり意識されているのでしょうか。

意識していますね。特に、店舗がある原宿エリアは、エンターテイメントやアミューズメントを求めておでかけに来られる方が多いので、そこに応えられるお店でなければ続かないという感覚があります。安くてお腹を満たすためだけのお店か、高単価だけれどそれだけの価値を生み出すお店か。お腹を満たすとか喉を潤す目的だけであれば、自販機やコンビニなどで対応できるいま、飲食店は二極化していくと思っていて。高単価でも選ばれるお店の「価値」は「体験」にあると考えているので、「いつ行っても少し新しい」と感じてもらえるような、場として楽しい体験づくりを意識していますね。『The Label Fruit』は、すでに大きなリニューアルは完了しているのですが…実は、今もお客様が気がつかないところでマイナーアップデートを続けています!

オープンから1年半弱でリニューアルできた、このスピードの秘訣は何ですか?

ショーケース・ギグは、創業してから今日まで、企業の課題と時代の消費者が求めるものをマッチングさせ、常に一歩先のサービスを生み出してきました。ITを活用した、未来の「次世代の消費体験・店舗体験」の実現を目指しているからこそ、スピード感は非常に速いと思います。飲食店にとって、同じことをやり続けるというのは“衰退”を意味する。ショーケース・ギグには、これまでの飲食店プロジェクトの知見があるので、「上手くいかなければやめる、上手くいけば広げる」の考えをもって、新しいことに柔軟に挑戦しています。私たちはシステムの提供もさせていただいているので、ほかがやらないことをあえて私たちがスピーディーに実験する。そして、そこで習得したノウハウを店舗様に還元できればと思っています。

ショーケース・ギグが考える、これからの店舗づくりの勘所

世の中はアフターコロナをむかえますが、これからどのようなお店づくりが求められるとお考えですか?

まずは、お客様から選ばれるために、店舗としての努力を惜しまないこと。商品の価格は上がり続け、デリバリーやテイクアウトなど、飲食を楽しむ手段が多様化しているなかで、「本当に価値があるもの」を提供できなければ、飲食店として選ばれません。『The Label Fruit』のフルーツオレは、1本あたり約1,000円と決して安い値段ではありませんが、その分、私たちは品質を重視する。そして、これからも店舗に投資を続けて、付加価値型で高品質なサービスを提供することを強く意識していきます。

そして、インバウンド需要の本格的な回復に伴い、海外のユーザー様にも価値をきちんと届けていくことも必須です。『The Label Fruit』は、コロナ禍でオープンしたため、これまでは当時のニーズを踏まえて完全無人販売を行ってきました。しかし、アフターコロナに移行していく今、必ずしもその方法が正しいとは考えていません。特に、原宿は海外の人気スポットにも選ばれている場所なので、店舗は有人・無人どちらにも対応しながら、海外の方にも『The Label Fruit』の価値を正しく提供できる店舗になる必要があると思っています。

さいごに、『The Label Fruit』を展開するショーケース・ギグの、今後の展望をお聞かせください。

推し活やインバウンドなどを含めて“消費のカタチ”は非常に幅広いので、ショーケース・ギグが持つDXやテクノロジーの知見を活かしながら、新たな体験や消費を創り出していきたいです。その面に関しては、実はすでにプロジェクトが実行に追いつかないほどたくさんある状態で…。たとえば、ほかの店舗では、一部自販機での販売を取り入れるなど、次世代消費をつくりだすための動きを続けています。

『The Label Fruit』に関しては、リニューアルで新作も追加されたので、やっと5年後まで続くお店になったのではないかと。これは、飲食店として品質に妥協せず、プロジェクトマッピングやデジタルサイネージなどを用いた新しい体験・消費を考えてきたからこそです。テクノロジーの可能性を引き出して、いかに次世代へ向けた体験・消費を創出できるか。これからも、一過性で終わらない事業を展開していきたいと思います。

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