「PRアワードグランプリ2018」受賞作品から見る今の時代のPR

先日11月15日、日本パブリックリレーションズ協会主催「PRアワードグランプリ2018」の結果が発表されました。企業や団体の優れたPR活動を顕彰するPRアワードグランプリの開催は、今年で19回目となります。各受賞作品の評価ポイントから、年々変動するPRのトレンドと、今の時代で必要とされているPRの在り方を考察していきます。

共働き妻の家事負担の原因を顕在化した【名もなき家事 】に妻の共感相次ぐ

62作品のエントリーがあった2018年度PRアワードグランプリで、見事グランプリを受賞したのは、大和ハウス工業の『「名もなき家事」撲滅へ 大和ハウス「家事シェアハウス」』

本施策は、家事を分担するのではなく家族みんなでシェアすることで、妻の家事の負担を軽減できる工夫を取り入れた住空間「家事シェアハウス」を設計・販売し、家事の概念を再定義したものです。

受賞のポイント

この「家事シェアハウス」が多くの夫婦の共感を呼んだ要因は、共働き世帯が増加し、家庭で夫婦の家事分担が浸透しているにもかかわらず、妻の家事負担が減っていないという「妻のリアルな声」を汲み取った点にあると考えられます。

調査結果から夫婦間で家事に対する意識のズレが生じていることを明らかにした上で、トイレットペーパーの交換やシャンプーの詰め替えなど、夫だけでなく本人でさえも気付かない間に負担になっていた家事の数々を、“名もなき家事”と名付けて顕在化したことにより、社会に対する課題喚起を行っただけでなく、住宅メーカーとしての知見を活かした解決策を提示した点で高く評価されました。

<グランプリ>

■「名もなき家事」撲滅へ
事業主体:大和ハウス工業(株)
エントリー会社:(株)電通 / (株)電通パブリックリレーションズ
応募部門:ソーシャル・コミュニケーション部門
サイトURL:https://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/kajishare/

ゴールドには採用動画と企画展がランクイン

続いてゴールドに選ばれたのは、パソナの『社長、新卒採用に挑んでみた。』と、講談社の『MOVE生きものになれる展』の2作品です。

社長が新卒面接に登場、応募者数に大きな影響を与えた斬新な採用動画

『社長、新卒採用に挑んでみた。』は、面接に関する様々な情報が溢れ返り、学生が何を信じてどう対策をすれば良いかわからなくなっているという課題に対して、パソナキャリアの社長自らが新卒採用の面接に挑戦し、面接官からの様々な質問に受け答えする様子を紹介する採用動画です。

ここ最近企業のPR動画が増えていますが、この動画では、就活生の悩みが顕著に現れる面接の場で、パソナキャリアという大手人材会社のブランドを生かし、社長と社員が登場して実際に面接のHOW TOを伝えることで、就活生にとって信頼・納得のできるコンテンツに仕上げることに成功しています。また、企業風土や事業内容までわかりやすく伝わる内容になっており、採用応募者の興味関心に寄与した点も、評価ポイントのひとつと考えられます。

子どもも大人もダンゴムシやペンギンに「なれる!」好奇心を掻き立てるエデュテインメントの最前線

続いて『MOVE生きものになれる展』は、講談社から発売されている大ヒットシリーズ「動く図鑑MOVE」を題材とした、現実の生きものに扮しながら、自分の身体で生きものの生態を体感することができる企画展です。

「驚きと感動」を提供しながら学びの世界へと誘うMOVEのポリシーに基づいて、「ごっこ遊びがしたい」子どもと、「子どもの創造性や興味関心を広げたい」親の両者のインサイトを突いた施策になっています。また、自分の身体全体を使って実際に生きものに“なってみる”ことを体感することで、非日常的な驚きや好奇心を掻き立てるエンターテイメント性に加え、生物多様性や他者理解を促進する教育性も兼ね揃えた点が評価できます。当施策は国内の人気だけでなく、世界各地からも巡回展の依頼が寄せられるほどの反響を得ました。

<ゴールド>

■社長も最初は就活生!『社長、新卒採用に挑んでみた。』
事業主体:(株)パソナ パソナキャリアカンパニー
エントリー会社:(株)電通
応募部門:コーポレート・コミュニケーション部門
サイトURL:http://www.pasonacareer.biz/recruit/specialsite/

■よむ図鑑から“なれる図鑑”へ。『MOVE生きものになれる展』
事業主体:(株)講談社
エントリー会社:(株)電通
応募部門:マーケティング・コミュニケーション部門
サイトURL:http://zukan-move.kodansha.co.jp/nareru/

シルバーでは他アワードでも高評価の6作品が受賞

シルバーでは、今年ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSでグランプリを獲得した、群馬県高崎市の施策『絶やすな!絶品高崎グルメ「絶メシリスト」』と、広告電通賞でブランド部門最優秀賞を獲得した、フレーベル館の『0点ミュージアム』のほか、2017年グッドデザイン賞を受賞した『求人米あととりむすこ』など、他のアワードでも高い評価を得ている計6作品が受賞しました。

<シルバー>

■絶やすな!絶品高崎グルメ「絶メシリスト」
事業主体:高崎市
エントリー会社:(株)博報堂ケトル / (株)博報堂
応募部門:コーポレート・コミュニケーション部門
サイトURL:https://zetsumeshi-takasaki.jp/

■0点ミュージアム
事業主体:(株)フレーベル館
エントリー会社:(株)電通
応募部門:コーポレート・コミュニケーション部門
サイトURL:https://www.froebel-kan.co.jp/answer2018/

■求人米あととりむすこ
事業主体:黒保根おいしいお米をつくる会
エントリー会社:(株)電通
応募部門:マーケティング・コミュニケーション部門
サイトURL:http://www.atotorimusuko.com/

■「インバスケア」カテゴリー顕在化を起点にした、ブランド活性化シナリオ戦略
事業主体:資生堂ジャパン(株)
エントリー会社:(株)博報堂
応募部門:マーケティング・コミュニケーション部門

■答えのない道徳の問題 どう解く?
事業主体:(株)ポプラ社
エントリー会社:(株)TBWA HAKUHODO / (株)博報堂
応募部門:ソーシャル・コミュニケーション部門
サイトURL:https://www.poplar.co.jp/pr/doutoku/

■「でかける人を、ほほえむ人へ。」 グループビジョン実現に向けた2.3万人を巻き込む組織風土改革
事業主体:(株)西武ホールディングス
エントリー会社:(株)ソフィア
応募部門:インターナル・コミュニケーション部門

ブロンズにはバラエティに富んだ6作品がランクイン

ブロンズには、シルバー同様6作品がランクイン。移住促進を図った『「うちの街には何もない」とは言わせない! 暮らしの定点観測を集合知化、移住促進の新しい情報発信』や、地球の気候変動をテーマにした『未来レストラン いぶき』など、バラエティに富んだ6作品が受賞しました。

<ブロンズ>

■「うちの街には何もない」とは言わせない! 暮らしの定点観測を集合知化、移住促進の新しい情報発信
事業主体:兵庫県豊岡市
エントリー会社:(株)オズマピーアール
応募部門:コーポレート・コミュニケーション部門
サイトURL:https://tonderu-local.com/

■おもいでケータイ再起動 コミュニケーション
事業主体:KDDI(株)
エントリー会社:KDDI(株)
応募部門:マーケティング・コミュニケーション部門
サイトURL:https://www.au.com/all-for-you/omoidekeitai/

■レモンサワーフェスティバル ~レモンサワーブーム醸成による甲類焼酎の新需要創造~
事業主体:宝酒造(株)
エントリー会社:(株)博報堂
応募部門:マーケティング・コミュニケーション部門
サイトURL:http://lemonsourfes.jp/

■広辞苑第七版「辞書の復権」プロジェクト
事業主体:(株)岩波書店
エントリー会社:(株)電通パブリックリレーションズ
応募部門:マーケティング・コミュニケーション部門

■未来レストランいぶき
事業主体:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
エントリー会社:(株)アサツー ディ・ケイ
応募部門:ソーシャル・コミュニケーション部門
サイトURL:http://care-for-earth.jp/future-restaurant/

■# PUPPY NEW YEAR
事業主体:NPO法人 犬と猫のためのライフボート
エントリー会社:(株)東急エージェンシー
応募部門:ソーシャル・コミュニケーション部門
サイトURL:http://puppynewyear.jp/

今の時代のPRに求められているのは【潜在課題】に対するアプローチ

日本のコミュニケーション技術の質的向上と、パブリックリレーションズに対する一層の理解促進を目的としているPRアワード。本アワードが目的としている「コミュニケーション技術の質的向上」とは、PRはただ企業と生活者のコミュニケーションを活性化させるだけでなく、社会に顕在もしくは潜在している課題を再喚起し、さらに解決策まで提示することが出来る、社会にとって存在価値の高いものであるべきだというメッセージを受け取ることが出来ます。

PRの社会的価値の向上と発展を目指した結果として、今年のPRアワードグランプリ受賞作品は、まだ課題として取り上げられていなかった社会の潜在課題に対して、企業の特徴や強みを活かしたアイデアで解決を図ったものが多く見受けられました。

欲しいものは何でも手に入る時代だからこそ、生活者が必要としているものを提供するだけでなく、顕在化していない生活者のインサイトを掴み、新たな需要やニーズを喚起することで、生活者及び社会を豊かにすることが、現代のPRにおいて求められている最大の役目かもしれません。

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