最新トレンドと予測から読み解く!リアルZ世代が分析する“Z世代が動く”ポイントとは

現代の若者トレンドの軸となっているZ世代。今後、ビジネスターゲットの中心となっていくZ世代に向けた、施策やアプローチの重要性はさらに高まっていきます。それらを成功に導くためには、常に移り変わる若者トレンドのキャッチアップと分析が重要ですが、そのスピード感についていくことは至難の業と言っても過言ではありません。

12月15日に渋谷キューズで開催された『Z世代女子が選ぶ 2023年トレンド大賞/2024年トレンド予測 発表&解説会』では、Z世代をターゲットにした企画・マーケティング支援事業を展開する、株式会社seamint.による講演がおこなわれました。本記事では、イベントの様子をご紹介し、2023年のトレンドから見えるZ世代の傾向や、2024年のトレンド予測をもとに、今後、Z世代へのどのようなコミュニケーションが求められるのかについて紐解いていきます。

※本トレンド大賞・予測は、約6万人のZ世代(中高生中心)がフォローしている、seamint.運営のSNSアカウントを用いて、以下2つの調査方法をもとに確定されました。
①定量調査
 調査対象:全国の中・高・大学生/調査期間:2023年11月/有効回答数:2,174人
②定性調査(選定理由や基準の調査のため、座談会も実施)
 調査対象:全国の中・高・大学生/調査期間:2023年10~12月

株式会社seamint. CEO 朝比奈 ひかり
1998年生まれ。高校生からKADOKAWAやHRにて女子高生カメラマンとして活動し、18歳の時にイベンターとして2,500万円の売上を達成。その成功体験をもとに「# 10代マーケター」として活動する。2019年に女子大生マーケティングチームの株式会社ネオレア(現・株式会社seamint.)を創業。2022年より、慶應義塾大学院にてZ世代の研究をおこなっている。
株式会社seamint. 企画・トレンドリサーチ 赤峰 沙枝
2000年生まれ。高校時代に女子高生ライター・MCとして活動し、化粧品会社の企画に参加。Twitter(現・X)で若者文化を発信し、広告代理店インターンで若者の消費行動分析などを経験してきた。seamint.では、プランナーとして、トレンドリサーチやSNSの企画運用などを担当している。
株式会社seamint. インターン生 上村 優菜
2001年生まれ。高校時代は、若者文化を中心とした地方創生をテーマに研究発表に参加。大学は、情報経営イノベーション専門職大学(iU)に1期生として進学した。インターンとして、ウェブマーケティングや新規事業を軸に、計4社で働く。高校時代の海外留学をきっかけに、中高生向けICT教育の新規事業に注力。

Z世代の3つの特徴

会場の様子

2023年トレンド大賞発表の前に、まずZ世代の定義や近年の特徴・消費傾向について、CEO・朝比奈氏より説明されました。Z世代とは、1996~2012年に生まれた人々のことを指し、中高生~20代が該当しますが、このZ世代が長きにわたって注目されている理由は2つあります。ひとつは、世界の人口のうち約32%の人がZ世代であるということ。もうひとつは、年齢層を考えた際に、今後のビジネスターゲットとして欠かせない存在であることです。そのような、注目され続けるZ世代の近年の特徴として、朝比奈氏は「デジタルネイティブ」「SNSでのコミュニケーション」「エモ消費」の3つを挙げました。

特徴① デジタルネイティブ
幼少期からインターネットに触れ、デジタル慣れしているZ世代。新しいデジタルサービスもすぐに普及し、効率的な使い方などが直感的にわかるうえに、リテラシーも高いことが大きな特徴です。実際に、スピーカー・上村氏は小学校の頃からTwitter(現・X)やInstagramを使っていたと話しました。

特徴② SNSでのコミュニケーション
SNSを駆使して、自分の知り合いや他人を問わずコミュニケーションを取り、自分の興味関心に応じて、数多くのコミュニティに所属する傾向があります。そのため、メールアドレス・電話番号・LINEなどで連絡先を交換するのではなく、Instagramのフォロー・フォロワーとなり、まずはSNS上で接点を持つことが増えてきていると朝比奈氏は言いました。

加えて、アプリを介して位置情報の共有をおこなったり、インスタライブやゲーム配信などの配信サービスを積極的に利用したりすることが多いです。時代にあわせて移り変わるSNSやアプリに順応し、自分を知ってもらう場・発信する場として活用することが基本となっています。

特徴③ エモ消費(メリハリ消費)
Z世代の消費行動として、他者からの評価や世間的な価値ではなく、自分が満足したのか・自分にとって価値があるのかという“心の満足度”に重きを置く傾向があります。たとえば、「洋服が好きだからハイブランドのものをよく買うけれど、その分、食事はサイゼリヤや丸亀製麺などのコスパがよいものを食べる」という考え方。自分の好きなものには惜しまずお金をかける一方で、節約する部分は徹底的にお金を使わないというように、人によってメリハリのついた消費行動(メリハリ消費)が多々見受けられると朝比奈氏は説明しました。

2023年のZ世代を動かしたトレンドとは?

トレンドを紐解く3つのキーワード

続いて、2023年トレンド大賞の解説にうつりました。スピーカー・赤峰氏はまず、2023年のトレンドにおける3つのキーワードとして「親しみやすさ」「共感」「+αの余白」をピックアップ。『BeReal』※のような飾らない自分を見せるSNSが流行したり、「なぁぜなぁぜ」※のような本音をマイルドに言い換えるネットミームが誕生したりするなど、親しみやすさや共感がトレンドの鍵になっていたと言います。加えて、それらの汎用性が高いだけではなく、自分流にアレンジできたり、フォーマットのなかで個性を見せることができたりという+αの余白が、Z世代のトレンドにおいて重要だと語りました。
※次章にて解説

トレンド大賞一覧と特に注目のトレンドを解説!

そして、2023年トレンド大賞が紹介され、Z世代であるスピーカーのリアルな声とともに、各トレンドの概要と注目ポイントについて解説されました。ここでは、特に注目のトレンドについて紹介します。(各トレンドのより詳細な説明はこちら

1ChatGPT
社会的にも大きな影響を与えた、OpenAIの自然な文章で会話を行うことができる生成AIチャットサービスです。Z世代の中では、特に大学・大学院・専門学校生の利用が多く、卒業論文の作成や就活のエントリーシートの添削などに活用されています。

現在、大学院に通う朝比奈氏は、所属している研究室の教授から「論文を書く際にGPTを活用していきなさい」とアドバイスをもらったと言い、AIをいかに活用していくのかが、Z世代のなかでも注目されていると語りました。また、勉強や仕事以外の場面でも広く活用されている点も評価ポイント。たとえば、体調が悪い際に症状を入力して何科を受診したらよいかを判断するなど、Z世代の日常のなかに急速に浸透し、生活が変わった点が1位の所以だと朝比奈氏は解説しました。

3BeReal
通知が届いてから2分という短い制限時間内に内カメラと外カメラで写真を撮影し、投稿する写真共有SNSです。フィルターや加工機能がなく、素の自分を見せる、通称・“映えない&盛らない”SNSのため、素の自分を見せられる限られた友人間で利用されています。

上村氏は、BeRealがトレンドとなった理由として、①普段自分では写真を撮ろうと思わない瞬間に通知が来るため、何気ない日常を思い出として記録できる ②友人の寝起きなど、特別感のあるものが見られる ③制限時間内に撮るというルーティーンが染みつくなどを挙げました。

5なぁぜなぁぜ
マイクを片手に自分が疑問に思っていることや理不尽なことを「○○が○○なの、なぁぜなぁぜ?」というフォーマットに当てはめ、可愛らしくネタにして発信する動画スタイルのこと。「1限必修なのにまだ家にいるの、なぁぜなぁぜ?」のように、日常会話に落とし込みやすい点が、広く普及したポイントです。現在、大学に通う上村氏は、大学内でもよく耳にすると言い、表現が和らぐ分、少し言いにくいことも伝えやすくなる点が、ネットミームにまで発展した理由のひとつではと解説しました。

9シェイクうどん
丸亀製麺が2023年5月に発売したテイクアウト商品です。(冬期は販売を停止し、来春から再開予定)通常メニューのかけうどんが390円なのに対し、シェイクうどんの明太とろろうどんはトッピングが乗っているにも関わらず同様の390円。メリハリ消費が特徴のZ世代にとっては、このコスパの良さが人気の要因となっています。

実際に、上村氏はシェイクうどんにハマっていたそうで、シェイクうどんが発売されるまで丸亀製麺に行ったことがなかったにも関わらず、販売が停止している冬期には店舗に通うと思うと語りました。また、このように、シェイクうどんをきっかけに、丸亀製麺の良さに気づいた人がたくさんいるのではと朝比奈氏は指摘。シェイクうどんの売上だけではなく、丸亀製麺のブランドイメージや店舗の売上にも影響を与えるような効果があったのではないかと語りました。

2024年、Z世代はどのようなモノ・コトを好むのか?

2024年トレンド予測!押さえておきたい2つのポイントとは?

続いて、2024年のトレンド予測10選の解説にうつりました。赤峰氏はまず、2024年トレンド予測における2つのトピック「推し活」「SNS」を紹介。Z世代に向けて施策・アプローチをおこなう際に、押さえておきたいポイントと、各トピックにある2つの特徴について解説しました。

推し活
特徴① 既存の推し
もともとテレビで人気だったタレントやアイドルなどが、SNSで上手くブランディングをおこない、違うステージで成功する例です。また、SNSで人気のインフルエンサーがテレビに出演し、人気になるような逆のパターンも当てはまります。

特徴② 新しい推し
これまで無名だった人が、SNSの特性と合致し人気になるなど、いわゆる「バズ」を起点にファンを獲得する例などが当てはまります。

SNS
特徴① SNS上のコンテンツ
Z世代にとって慣れ親しんだSNS上では、新しい形式の、これまでに見たことがないようなコンテンツが常に求められています。

特徴② SNSに掲載するモノ
自分でつくったものをSNSにあげてバズるのではなく、それに触れた人がSNSに掲載してくれるようなものをつくる流れがベースになっています。また、掲載されやすいものとしては、2次元の世界観をリアルで体感できるようなコンテンツなどが挙げられます。

朝比奈氏は、このような複数のトレンド軸が生まれる理由について、さまざまなコト・モノが普及し“圧倒的なカリスマ”と言える存在がいなくなったことを指摘。それぞれに、憧れる存在や支持をしたいコト・モノがあるため、みんなでひとつのものに熱中することがなくなっていると補足しました。

トレンド予測10選と特に意識したいトレンドを解説!

そして、2024年トレンド予測10選が紹介され、こちらもZ世代であるスピーカーのリアルな声とともに、各トレンド予測の概要と注目ポイントについて解説されました。ここでは、先述したトレンド予測のポイントである「推し活」「SNS」に、特に関連しているトレンドについて紹介します。(各トレンドのより詳細な説明はこちら

推し活-既存の推し:鈴木愛理
元『ハロー!プロジェクト』のメンバーで、現在はソロアーティストや女優として活動している鈴木愛理さん。テレビ朝日のYouTube『アニソン神曲カバーでしょdeショー!!』や、自身が主演するドラマの主題歌がTikTokで話題となっています。SNS上で人気となったことにより、アイドル時代のファンに加えて、新たなファン層の獲得にもつながっているそうです。

推し活-新しい推し:FRUIT ZIPPER
ASOBISYSTEM所属の7人組アイドルグループ。「わたしの一番かわいいところ」などの楽曲がTikTokで度々話題になり、来年には日本武道館でのワンマンライブが決まるなど注目を集めています。

いま人気の理由として、「従来のアイドルライブとは異なるコンテンツ」「女性のファンが多いこと」などが挙げられると上村氏は言います。アイドルのライブと聞くと、コール&レスポンスを中心としたものを想像しますが、FRUIT ZIPPERのライブでは、ファンと一緒にTikTokで人気の楽曲を踊るなど、従来のアイドルライブとは異なる内容が特徴。その結果、これまでのアイドル像とイメージが変わり、女性のファンも多くついているのではと解説しました。

③SNS:没入型体験
リアリティのあふれる映像や音響でつくられた空間に入り込み、その世界に浸る体験(没入型体験)のこと。近年、没入型体験ができるコンテンツや施設が増加傾向にあり、体験している様子がSNSに掲載され、Z世代のなかで話題になり、さらなる集客につながるという循環が生まれています。ディズニーランドのソアリンチームラボなどを筆頭に、絵画の世界に入り込めるイマーシブミュージアムや、としまえん跡地にできたTHE MAKING OF Harry Potterなど、そのコンテンツや施設はZ世代を中心に度々話題を呼んでいます。2024年には、チームラボの移転やイマーシブ・フォート東京のオープンが控えており、注目すべきジャンルとなっているそうです。

まとめ:Z世代の3つの特徴を捉え、トレンドと絡められるポイントを探る

Z世代の3名がスピーカーとなり、リアルな声とともにトレンドについて触れてきた本イベント。Z世代に向けた施策やアプローチをおこなう際には、①デジタルネイティブであること ②SNS上でのコミュニケーションがベースとなっていること ③エモ消費(メリハリ消費)が消費行動の基本であることを意識したコミュニケーションが求められることが分かりました。たとえば、SNSでのコミュニケーションが当たり前であるZ世代に、『BeReal』のような目新しく斬新なSNSが注目されるように、「Z世代の特徴とうまく絡められるポイントがあるか」は常に念頭におくべきと言えるでしょう。

2024年、Z世代のトレンドは「推し活」「SNS」の2つが軸になっていくと予想されています。たとえば、「推し活」軸では、既存の推し・新しい推しの特徴を押さえてキャスティング候補を検討する。「SNS」軸では、自分たちの投稿を話題にすることを目指すのではなく、SNSに取り上げられるためにはどのようなコンテンツが必要なのかを検討する。このように、日々変わっていくトレンドも2つの軸を参考に、「自社が入り込める部分はどこか」を探ることが大切ではないでしょうか。

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