企業がキャンペーンを打つタイミングのひとつである“周年記念”。自由に企画ができるからこそ、何をしたらいいのかわからないと悩む方も多いのでは。そんな周年記念企画において話題を呼んでいるのが、株式会社バンダイのオリジナルブランド・ガシャポンの45周年記念プロジェクト「答えはガシャポンだ」です。
2022年2月から、1年かけて毎月1つ以上の企画を展開している同プロジェクトは、SNSを中心に度々話題となり、反響を呼んでいます。今回は、「答えはガシャポンだ」プロジェクトを担当する瀬谷朋子さんに、実施背景から話題を呼んだ企画の裏側についてインタビュー。プロジェクト実施を通して見えた生活者を惹きつけるポイントと、第5次ブームが冷めやらぬガシャポンの魅力について探っていきます。
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話題のガシャポン45周年プロジェクトはどう生まれた?
世の中のムーブメントに合わせた企画で周年プロジェクトへの興味を誘う
―はじめに、ガシャポン45周年プロジェクト「答えはガシャポンだ」の実施背景について教えてください。
1977年にカプセルトイ事業に参入してから45周年を迎えるにあたり、「何か周年イベントをやろう」という大枠はもともと決まっていました。その中で、生活者にとってガシャポンがどう思われているのか、自分たちがどう認識されているのかを振り返ってみるいい機会ではないかという話があがり、今回のプロジェクト「答えはガシャポンだ」の構想が始動。ただ広告やCMを打って終わるのではなく、生活者の日常に沿った形で何かできないかと考え、1年かけてさまざまなプロジェクトを展開することになりました。
―実施にあたり、こだわったポイントはどこにありますか?
毎月1つ以上の企画を1年かけて展開するため、世の中のムーブメントとガシャポンとの接点を探して、“いまこの企画をやる理由”をしっかり作るように意識した点です。たとえば、5月5日の「おもちゃの日」と絡めて、ガシャポン玩具の品質検査に関する裏側を、漫画家さんに依頼してイラストで発信しました。これまで発信していなかったガシャポンに関する情報は、他にもいくつか企画の中で公開したのですが、世の中のネタに合わせることで興味を持ってくださる人が増えたように感じます。このプロジェクトに限った話ではないですが、ムーブメントをしっかり読んで、そこと絡めていくことは大切ですね。
“体験できる広告”を通じて楽しくガシャポンを知ってもらう
―「答えはガシャポンだ」のいちプロジェクトとして、渋谷駅に特別自販機を設置されていましたよね。この取り組みについても詳しく教えてください。
「これの名前は?」と書かれた広告の下にガシャポンを設置し、それを回すと答えである「ガシャポン」と書かれたキーホルダーが出てくるという取り組みです。45周年を「ガシャポンや自分たちを振り返る機会にする」と先述したとおり、ガシャポンの認知度調査から行ったのですが、実は認知度は全国でわずか4%しかありませんでした。45年やっているブランドの認知度としては低いですよね。この結果を受けて、ガシャポンというオリジナルブランドを改めて皆さんに知ってもらう活動として、今回の特別自販機の設置を行いました。
私たちが売っているのは商品だけではありません。どこに設置されているか探しに行くワクワク感や、何が出てくるかわからないドキドキ感、ハンドルを回すと商品が出てくるという販売方法まで、体験の一環として提供しています。そのため、広告の前にガシャポンを設置し、実際にガシャポンを回せるという体験を提供すれば、楽しくガシャポンのことを知ってもらえるのではないかと思ったんです。
―反響も大きかったのではないでしょうか。
2022年3月21日~27日までの1週間、12台を設置したのですが、おかげさまで各日午前中にはすべてなくなるほどの盛況ぶりでした。また、回してくださった方がSNS上で「僕はガチャガチャって呼んでました」「私はもちろんガシャポンって言ってました」「出身地で呼び方が変わるんじゃないか?」というような会話をしてくださり、この取り組み自体がさらに拡散されていきましたね。
さらに、同時期に新聞広告も出稿しました。読売新聞の全国紙に加え、今回の調査で認知度が1位だった千葉県と最下位だった富山県の地方紙にも出稿し、千葉県には1位のお礼を、富山県には「正しく覚えてもらえるように頑張ります」というメッセージをお伝えしました。加えて、都道府県別のガシャポン認知度ランキングを公開したことにより、SNS上でのさらなる発話や、地方テレビ局から取材のお声が多くかかりましたね。やはり、自分のエリアを指定されると、自分ゴトに感じてコメントしたい気持ちが醸成されますし、そういった意味でも成功したプロジェクトのひとつだと捉えています。
第5次ガシャポンブーム、なぜ人気は衰えないのか
ガシャポンブームの変遷とユーザー層拡大のワケ
―昔は、ガシャポン=子どもが遊ぶものというイメージが強かったように思いますが、ここ数年でそのイメージも大きく変化しましたよね。
そうですね。ここ1~2年でグループ会社のバンダイナムコアミューズメントと協業し、ガシャポン専門店をさまざまな場所に出店しています。今までよりも、大人の方の“日常的に行動する範囲”の中にガシャポンが設置されていると思います。ガシャポンが好きでわざわざ回しに行くというよりも、日常生活の中で見かけて、ついお店に立ち寄り回してしまうという方が多いです。そのような日常的な接点が増えることで、子どもが遊ぶものというよりも、みんなが楽しめるものに変わってきたと感じます。
また、誰がガシャポン専門店に来ても楽しめるように、たとえば植物の種やお酒のミニチュアなど、逆に子どもは回さないような大人向けのラインナップも続々と増やしています。どの年代・性別でも楽しめるように、さまざまな商品が1か所にたくさん集まっているかつ、日常生活の動線の中に溶け込んでいるので、より幅広い方に遊んでいただけています。
―いまが第5次ブームということですが、過去4回のブームとの違いなどはあるのでしょうか。
ブームの内容に違いがあるというよりは、徐々にカプセルトイを楽しめる年代・性別が拡張されてきたという感じですね。
1977年にガシャポンが誕生し、最初の第1次ブームが訪れたのは『キンケシ』が登場したタイミングです。1983年に発売開始した『キンケシ』は、当時、駄菓子屋さんの前に置いてあったガシャポンで、小学生の男の子を中心に人気でした。その頃は、小学生の男の子がガシャポンのメインターゲットで、実際にその層の方に多く購入いただいていました。
次の第2次ブームは、1994年の「ハイグレード(HG)シリーズ」の登場です。高品質なフルカラーのカプセルトイだったことから、大人も購入するようになり、一気に市場が広がりました。2000年代になると、ゲームの音やアニメキャラクターのボイスが入った「サウンドロップシリーズ」が登場。ゲーム好き・アニメ好きの方も取り込めたのが第3次ブームです。
続く第4次ブームでは、「妖怪ウォッチシリーズ」や「セーラームーンシリーズ」など、可愛いもの好きのターゲットに向けて『ブリリアントカプセル』の展開を開始、一気に客層が広まりました。そして、2022年の第5次ブームでは、商品のラインナップの進化に加え、先述した通りカプセルトイ専門店が増加しました。わざわざ遠くにいかなくても、デパートでの買い物ついでに家族でちょっと寄るなどの行動が見られ、年齢・性別関係なく楽しめるようになっていきました。
―新製品の導入や、新形態での展開を行ったタイミングが、結果的にブーム生成に繋がったといった感じでしょうか。
そうですね。それに加えて近年は、買って終わりではなく、SNSで体験したことをシェアしている方が多いですよね。こういった情報を共有する流れは、第4次ブームまでなかったですね。
“身近さ”を軸に、カプセルにとらわれない挑戦を
―なぜ、ガシャポンはここまで人気だとお考えですか?
店舗が増えたことに加え、ネット上でもガシャポンを回すことができる“身近さ”は、ひとつポイントになっているのではと思います。ガシャポンを回すこと自体がワクワクする体験なわけですが、それを身近にいつでも楽しめる環境を作り出せたことは大きいですね。あとは、SNS上や友人とのコミュニケーションツールのひとつにもなっている点です。それが結果的に拡散につながり、新たな購買者を生むという良い循環ができています。
―ガシャポンなどの長く人気が続く商材は、“懐かしさ”を感じて思わず購入してしまう方も一定数いますよね。その層に対してアプローチをする方向性もあったと思うのですが、今回のお話を聞いていると、常に新しい層を巻き込みながら、チャレンジングに活動されている印象を受けました。
ありがとうございます。商品開発のメンバーは、「カプセルから何が出てきたらおもしろいか」「ここから何が出てくると意外か」というように、何か新しいことはできないか?という発想で常に新商品を考えています。たとえば、『1/25スケール電柱』という、パーツを組み立てて電柱をつくるガシャポンがあるのですが、こういった商品をオモ写(オモチャの写真)を撮る際の背景として使用している方もいらっしゃいます。商品の用途は無限大なので、どういった場面で使えるのか?という探求心はずっと持ち合わせています。
―ありがとうございます。さいごに、今後の展望について教えてください。
カプセルトイというカテゴリーではありつつも、カプセルにとらわれずに挑戦していきたい想いがあります。サイズ感だったり、商品の形状だったり、タッチパネルでガシャポンができるようになったり…。「カプセルトイだから中身はこれくらいのサイズのおもちゃだよね」と想像通りのものを提供するのではなく、これまでは展開できなかった商品などにも積極的にチャレンジしたいですね。
また、昨年には、8月8日をガシャポン記念日として制定できたので、毎年この日には純粋に楽しいと思っていただけるようなイベントや企画ができたらいいなと考えています。ぜひご期待ください。
1997年生まれの道産子。2020年に横浜国立大学を卒業し、株式会社マテリアルに新卒入社。新設のメディアリレーションチームに配属され、約1年間メディアの知識全般を深める。2021年6月より、『PR GENIC』の2代目編集長としてメディア運営を引き継ぎ、記事の執筆や編集業務に従事。新米編集長として、日々奮闘中。