9割が知らない“正しいPR”。啓発の一歩となる『What is PR?』展が期間限定開催

「PR」をテーマにした企画展示『What is PR?~PRって何だろう?身近な活動から社会を変えるチカラまで』が、アドミュージアム東京にて開催中。すでに、広報担当者から一般の生活者まで、多数の方が来場しており、PRについて馴染みのない人にも、正しい理解や新たな気付きを得る内容として評価されています。今回は、本展示の企画・運営に携わる、電通PRコンサルティング チーフ・コンサルタントの中川郁代さん、同社のシニア・コンサルタント 藤井京子さんに、本展を開催した目的と見どころについて伺いました。

株式会社電通PRコンサルティング 統合コミュニケーション局 PR業務推進部 チーフ・コンサルタント 中川 郁代
官公庁・企業におけるPRイベントの企画立案・実施運営に長く従事。育休復職後は、管理部門で社員の働き方やナレッジシェアなど、自社の業務効率化を推進するほか、企業理念の開発業務にも携わる。現在は、社内外のブランディングのサポートや企画実施もおこなう。共著書に『企業ミュージアムへようこそ』(時事通信)『PR4.0への提言』(宣伝会議)がある。 日本パブリックリレーションズ協会 認定PRプランナー。
株式会社電通PRコンサルティング コーポレートコミュニケーション戦略室 広報・シェアリング部 シニア・コンサルタント 藤井 京子
電通PRコンサルティングのPRを担当。2015年に国際PR協会のゴールデンワールドアワードを受賞。共著書に、英文書籍『Communicating : A Guide to PR in Japan』(Wiley)、『成功17事例で学ぶ 自治体PR戦略』『企業ミュージアムへようこそ(上下)』(時事通信社)などがある。日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。

9割以上が“正しいPR”を知らない現状

カタチのないPRを7つの観点から考察する

ー『What is PR?』展は、どのような企画展示なのでしょうか。

中川What is PR?』展は、PRについての理解を深めることを目的とした企画展示です。日本におけるPRは、広告・プロモーションなどと誤解されることが多いのが現状。そのため、サブタイトルの「PRって何だろう?身近な活動から社会を変えるチカラまで」にもあるとおり、展示を通じて、来訪者にPRをもっと身近に感じてもらい、正しく理解していただくことを目指しています。

ーどういった経緯で、今回の企画展が開催されることになったのですか。

中川:きっかけは、『ウェブ電通報』でおこなっていた連載コラム「PR資産としての企業ミュージアムのこれから」で、アドミュージアム東京に取材をしたことです。取材時に、担当者から「今後は東京だけでなく、大阪やニューヨークなどいろいろな場所にアドミュージアムを広げていければ」というお話を伺いました。その延長で、「日本にもPRミュージアムがあっていいのでは?」と雑談が盛り上がったんですね。それをきっかけに、本展が実現することになりました。

ー日本におけるPRとして、抱えている課題や感じることについて教えてください。

中川:「PR=宣伝」という誤解が根付いていることは、長年課題として感じていました。「PR」という言葉自体は広く知られていますが、PRが「Public Relations」の略称であることを知らない人は多いです。2024年9月に弊社が実施した、PRの認知度に関するウェブアンケートでも、PRの正式名称を「知らない」および「誤認している」人が、9割以上という結果になりました。また、そのうちの多くが、PRを「プロモーション」や「宣伝」など広告の一部だと誤解していたのです。

加えて、クライアントの中には、メディア露出数をKPIに設定するなど、効果測定を重要視される企業も多く、本来のPRの価値について理解されていないと感じることもありました。「双方向のコミュニケーションや関係を構築するPRについて、正しく理解してもらいたい」という想いも、本展の実現を後押ししてくれました。

PRは私たちの日常生活や社会と密接に関わるもの

左から、中川郁代さん / 藤井京子さん


PRは、さまざまな概念や手法があるため、正しい理解を促すことも大変だと感じます。

中川:PRは、広告などと違って分かりやすい形がありません。そのため、本展では「そもそもPRとは何か」「広告とどう違うのか」など、PRについて7つの観点から考察し、定義やこれまでの歴史を知ることで、PRについての理解を深められる構成にしました。

また、会場のアドミュージアム東京は商業施設内にあるため、広報やPRの専門家だけでなく、ショッピングに訪れる一般のお客さんも多く来館されます。その点に注目し、ふらっと立ち寄った方も、PRに携わる業界の方も、立場・目的・鑑賞時間などに応じて知識を深められる構成を意識しました。

ー一般生活者の大半が、PRの意味や目的についての理解が不十分とのことですが、こうした方にも正しくPRを理解してもらうために、工夫した点について教えてください。

藤井:各テーマで展開する冊子では、図や絵などのビジュアル要素を中心とした、視覚的アプローチを心掛けました。解説の部分でも、できるだけ専門用語を使わず、一般生活者でも分かるような具体例や平易な言葉を用いています。

なかでも、海外から取り寄せた資料の編集には時間をかけており、目を引くようなタイトルや構成を意識しました。デジタルサイネージでは、米国のホフストラ大学やThe Museum of Public Relationsから提供いただいた貴重な資料をまとめて再編集した内容が、約13分の映像として流れる仕組みになっています。

―『What is PR?』展を通じて、来場者にどんな効果が生まれることを期待していますか。

藤井:私と中川は、新卒入社の同期として、長年PR業界で働いてきているため、今回の展示への思い入れもひとしおです。これまでPRを知らなかった方にも、またPRの実務に従事している方にも、本展を通して新たな気付きや発見があることを願っています。特に、一般生活者の方には、PRは「パブリックリレーションズ」という、双方向のコミュニケーションを基盤とした活動であることを理解していただきたいと考えています。PRは、日常生活や社会と密接に関わるものであり、個人や企業・組織間の利害調整の枠を超えて、社会全体の課題解決に貢献できることを少しでも理解いただけたら幸いです。

中川:「9割の人がPRを正しく理解していない」という実態を、PR業界全体があらためて認識し、PRの本質や社会的意義を一緒に伝えていければと思います。 PRが正しく理解されないことは、PRが持つ本来の可能性が知られないままとなり、企業やブランド、社会にとって大きな損失をもたらすことにもなりかねません。  本展をきっかけに、業界内外でPRの価値を伝える取り組みが進み、次世代のPR人材育成や業界内の連携強化につながることを期待しています。

『What is PR?』展の構成と見どころ

そもそもPRって何だろう?
「PR」は「Public Relations」の略称ですが、一般的にはまだまだ認知が低いのが現状です。そもそも、パブリックリレーションズとはどういう意味なのかについて、初心者にも分かりやすく解説しています。

②PRっていつできた言葉?
史実としての記録をもとに、PRの概念を広めた人物、ビジネスとしてPRを普及した人物など、PRを世に広めた人物と手法についてまとめています。

現代のPRの定義
PRSJ(日本パブリックリレーションズ協会)だけでなく、IPRA(国際PR協会)、PRSA(アメリカPR協会)の定義にも触れ、国ごとに解釈が異なるパブリックの対象について解説しています。

広告とはどう違うの?
PRは、広告と混同されがちです。広告が広告主目線で主観的に情報を発信するのに対し、PRではマスメディアなど第三者目線を通じて報道がなされる点が大きな違いです。そのほか、PRと広告の目的や費用、内容など、それぞれの特徴を比較しています。

⑤PRは日常の様々なところにある!?~PRトリビア
「就活がPR活動!?」など、一般生活者にとって身近な題材をテーマに、日常生活におけるPR的活動について、興味を持たせる内容の展示となっています。日々、気付かないうちにPRの視点や考え方に触れていることを体感できます。

古代の洞窟壁画に見るパブリックリレーションズの起源
ニューヨークにあるThe Museum of Public Relationsから、PRに関する資料の提供を受け、古代の洞窟壁画から現代のものまで、PRの軌跡を時代と特徴別にまとめています。普段は目にすることのできない貴重な内容となっているため、本展の見どころの一つです。

⑦PRは世の中を変えるチカラも。
IKEAやNIKEなどの海外ブランドが、PRによって政治や世論を動かした事例を紹介 しています。また、展示の最後には、PR関連書籍を展示することで、PRに興味を持った人がより理解を深めることができるようになっています。


\イベント概要/
■名称:What is PR?~PRって何だろう?身近な活動から社会を変えるチカラまで
■会期:2024年11月8日~12月25日
■開館日:火曜日~土曜日 12:00~18:00
※臨時休館あり。来館する際には、アドミュージアム東京のサイトにて最新情報をご確認ください。
■入場料:無料
■会場:アドミュージアム東京 B1階ライブラリー
東京都港区東新橋 1-8-2 カレッタ汐留
電話 03-6218-2500
■企画:株式会社電通PRコンサルティング
■協力:The Museum of Public Relations(NY)、アドミュージアム東京
■制作:株式会社たきコーポレーション

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