社会の不満を笑いに変える!『笑うメディア クレイジー』編集長に訊く、生活者とメディアの新しい関係性|メディアのホンネ#3

生活者を取り巻く情報の流通構造は、年々変化しています。それと同時に、読者が好むコンテンツも変化し続けていますが、生活者のリアクションをダイレクトに受け取っているウェブメディアでは、その変化をどのように捉えているのでしょうか?今回は、連載企画『メディアのホンネ』第3弾として、月間5,000万PVを誇る人気メディア『笑うメディア クレイジー』編集長・柴田英征さんに突撃インタビューしてきました!

現代人が肩の力を抜いて読める”暇つぶし”メディア

今の時代だからこそ”暇つぶし”が大切

記者会見風です。

-はじめに、クレイジーについて教えてください。
クレイジーは、一言で言うと”さらっと読める暇つぶし”を提供するメディアです。”暇つぶし”と聞くと、一見ポジティブなイメージは持たれないかもしれませんが、ストレスを感じる今の時代だからこそ、ネガティブなことを忘れて肩の力を抜ける”暇つぶし”の時間を、読者の方々に提供したいと思っています。クレイジーが提供する”暇つぶし”を通じて、一人でも多くの読者がポジティブな感情を受け取り、肩の力を抜いてリラックスできるように。そんなことを願いながら、メディアを運営しています。

ー読者にどんなシーンで読まれることを想定していますか?
電車の中や、ランチを食べるとき。朝、昼、夜の寝る前…とか、そういう隙間時間を想定して、コンテンツを制作しています。特に寝る前の時間は、アクセス数が増える傾向にあります。

”バズ”と”女性”の関係

正直もっと変わった方を想像していました。

ーメディア立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?
立ち上げ当初の5年前が”ソーシャルメディア隆盛期”だったということもあって、クレイジーは”バズ系コンテンツ”をつくるところから始まりました。そのため、以前まではソーシャルメディアからの流入がメインで、中でも特にFacebookの投稿から記事を読んでくださる方が多かったです。しかし最近では、「クレイジー」と検索して記事を見に来てくださる方や、お気に入り登録してくださる方、またアプリで記事を読んでくださる方など、ソーシャルメディア以外からの流入も増えて、ファンが定着してきています。

ターゲットは老若男女問いませんが、現在6割の読者が女性です。メディアの立ち上げ当初からすでに女性の読者が多かったですね。女性の方がソーシャルメディア上でよりアクティブだからなのかなぁと勝手に思っています。

ーおもしろ系メディアは男性のファンが多いイメージでした。
女性ファンが多いのは、社会の問題を笑いに変えるコンテンツが多いためかもしれません。”社会に対するちょっとした不満やストレス”をネタにしたものがバズりやすいことはよく知られていると思います。例えば、会社に対する不満や育児に対するストレスなど、社会に潜む矛盾や疑問を笑いに変えるようなコンテンツは拡散されやすいので、クレイジーでもよく取り上げています。

クレイジーの読者に男性より女性が多い理由に関してですが、2019年になったとはいえ、家庭・会社を問わず、まだ女性のほうが社会的な抑圧感を得ることが多いのではないかと思っています。クレイジーの”モヤモヤを笑いに変えるコンテンツ”に、多くの女性が共感してくれている結果が、性別比率に現れているのかもしれません。

読者が好むコンテンツのトレンドとは?

2019年上半期クレイジーで最も読まれた記事

「旦那が散らかしたもの」をひたすら晒すインスタに超笑った(2019/07/27公開)

ー2019年も半分が終わりましたが、クレイジーで上半期最も読まれたのはどんな記事でしたか?

あくまでもバズの瞬発力を通してという意味では、知っている方も多いと思いますが、「旦那が散らかしたもの」をひたすら晒すInstagramアカウントを紹介した記事ですね。(『「旦那が散らかしたもの」をひたすら晒すインスタに超笑った』)この記事はたったの2週間で50万PVに到達し、シェアも2万件を超えました。このInstagramアカウントは、朝の情報番組などでも取り上げられるほど話題になっていましたが、クレイジーの記事に関しては、読者の7割が女性でした。

ーこれも家庭内の不満を笑いに変えたコンテンツですね。
誰もが抱いていたけれど、表に出していなかった不満を、くすっと笑える形で表面化させた結果、これほど話題になったのだと思います。

読者に対して「自分ってこういうことに不満を持っていたんだ」という潜在意識への気づきを与えつつ、同時に「自分と同じことを考えている仲間がいた」と仲間を発見できた喜びを与えることが出来た。つまり、読者に帰属感を感じてもらえたことが、この記事が拡散した一番の理由なのかなと思います。

この記事のほかにも、クレイジーでは『幼女社長』というマンガコンテンツが人気で、120万回以上「いいね」されています。この漫画も、さきほどの「旦那が散らかしたもの」と同様、社会に対するちょっとした問題提起のような内容も隠れていたりするんです。

最近の読者が好むコンテンツの傾向

外苑前にあるお洒落なオフィスです。

ー最近の読者が好むコンテンツの傾向をどう捉えていますか?
クレイジーに限った話ではなく、メディア全般に共通する傾向として、『月曜から夜更かし』のような一般人にフォーカスを当てたコンテンツが人気を呼ぶようになってしばらく経ちますよね。

フォーマットとしては、クイズ形式や診断形式のものなど、インタラクティブに楽しめるコンテンツはエンゲージメントが高い傾向にあります。あと最近では、中国のコンテンツが英語圏でたくさん露出するようになっていますね。コンテンツの存在するプラットフォームが違うことが、情報の拡散に対して想像以上の壁になるので、なかなか日本には入ってきていないと思っています。クレイジーを通して、その壁を崩していければいいなと思っています。

ウェブメディアのこれからはどうなる?

メディアと読者を取り巻く環境の変化

編集長はスプレッドシートがお好きだそう。

ー記事を編集する上で意識していることはありますか?
数年前まではソーシャルメディア隆盛期だったので、Twitterでウケの良いコンテンツ、Facebookでウケの良いコンテンツなど、プラットフォームごとに適したコンテンツを作成する、緩い意味での”分散型”の編集を行っていました。

しかし、プラットフォームごとの最適化ももちろん大切ですが、過度な最適化はメディアを不安定にします。ソーシャルメディアの隆盛が落ち着いてきたことも踏まえて、分散型的な考え方を弱め、クレイジーというメディアにどんなコンテンツがあるべきか考えることを支柱にするような運用に変更しました。

クレイジーってどういうコンテンツがあるべきなのか?を常に考え、クレイジーらしさを最優先した編集を行うようになった結果、コンテンツ制作への妥協もなくなり、ひとつひとつの記事がより読まれるようになったのではないかと思います。ソーシャルメディアや検索エンジンから、クレイジーの記事に辿り着いて終わるのではなく、そこからクレイジーというメディアのファンになってもらうことを、今は重要視しています。

ー生活者にとって、ソーシャルメディア上で読む記事って「ウェブメディアを読んでいる」っていう感覚がまだまだ少ない気がします。ツイートの延長線上でしかないと言うか。
そうなんですよ、ソーシャルメディア含めた全ての接点は、あくまでユーザーに知ってもらう場所でしかないので、そこから地道なユーザー基盤を築いていくこと、そしてクレイジーをクレイジーとして認識してもらうことを今は大切にしています。爆発的な成長要因は、それはそれで必要だと思うんですけどね。

最終的には、検索したい人はGoogleへ、ニュースを読みたい人はYahoo!ニュースなどへ、ネットワーキングしたい人はソーシャルメディアへ、暇つぶしをしたい人はクレイジーへ、みたいな暇つぶしのプラットフォーム的な存在として見られるようになれればいいなと思っています。

メディアが読者に一方的にリーチできる時代は終わった

盗聴器が丸見えです。

ーだからこそ、今は”バズ”よりも”ファン化”を重要視しているんですね。
ソーシャルメディアを通じて、メディアが読者に一方的にリーチできる時代は終わりました。現代は”個人のメディア化”とも言われているように、情報の流通や発信のされ方がもっと柔らかいものになりつつある。個人のメディア化と言いましたが、逆にメディアがそこに合わせていく考え方があってもいいのかなと思っています。ネット上の一個人であり、読者の友達・家族みたいな。

読者に身近に感じてもらうための工夫として、編集部のみなさんには”家族や友達っぽい言語”や、顔文字や絵文字を積極的に使ってもらっています。絵文字や顔文字を使うと、発信者の印象や読者のエンゲージメントが上がるという研究結果まで出ているんですよ。メディアという読者とは違う立場から発信するというよりも、家族や友達のように親近感を持ってもらえるようなコンテンツの制作を編集部のみなさんにはしていただいています。

編集長が思う日本社会に影響を与えたメディア

かなりマーケター思考な編集長。

ー他で意識しているメディアはありますか?
あくまでもビジネス的な話ではなくて、編集的な話をすると、日本の社会を変えた感があるなと思うのは、『BuzzFeed』です。彼らは、アメリカ発のメディアだけあって、社会的なマイノリティなどの問題にフォーカスを当てたコンテンツのつくり方が上手だなと思います。

数年前までは、こういう社会的な問題は、メディアにも国民にもセンシティブなトピックとして扱われていなかったし、社会からの興味は今よりも薄かったような気がします。メディアとしては、そんな状況で問題提起的にコンテンツを作っても、数字を取ることができなかったのかもしれません。そんな理由から、メディアもこれらの話題についてほとんど取り上げていなかったのかなと思います。

でも『BuzzFeed』は、そういったコンテンツを、信念をもって発信し続け、それらが読まれるような環境を創り上げました。その結果、他のメディアからも問題を提起するようなコンテンツが増え、個人間でそういう話をすることもより自然になってきたんじゃないかなと思います。それを世界的な規模でやっているのは、すごいことなんじゃないかなと思います。

ークレイジーにも取り入れたいと思う部分はありますか?
社会に孕む問題を表面化する能力は、見習うべき点だと思います。ただ、それをどうアウトプットするかは、メディアごとで違って然りだと思います。

笑うメディア クレイジーの挑戦

メディアへは”情報”だけでなく”コンテンツ作りの場”を提供する

やりたいことは?と尋ねると「旅がしたい」と回答。

ーふだんネタ探しはどこで行っているんですか?
ソーシャルメディアがメインですね。現在編集部が10名近くいて、各々が仕入れたネタをスプレッドシートで管理しています。

ー毎日たくさんのリリースが届いていると思いますが、そこからの記事化はありますか?
現状、プレスリリースからの記事化は、送られてくるリリースのほんの1%程度です。”最新”っていうだけではあんまり記事にする理由にならなくて、大切なのは”話題性があるか”どうかです。

あと言うなれば、クレイジーっぽいコンテンツ作りの場を提供していただけるPRパーソンや広報担当者とは仕事がしやすいのかなとは思います。オリジナリティを出せる取材環境があるとライターの方々も記事を書きやすいんじゃないかと思うので。キャラバンでもらった商品を使って、ライターの方々がボケるようなコンテンツも作ったりしますよ。

ー今後どんなコンテンツを作りたいですか?
新しいコンテンツのフォーマットを創れたらいいなと思います。ソーシャルメディア上でメディアが成長した時期には、リスト形式のコンテンツやインタラクティブなコンテンツ、動画などが登場しましたが、それ以降新しいものは特に出ていないかと思います。まだ考え中なので具体的なアイデアはありませんが、次に流行するフォーマットを僕らが作れたらいいですね。あとはテレビ番組とかもやれたら面白そうだな〜なんて思っています。

突撃インタビューを終えて

初期からクレイジーに携わっていたという柴田さん。クレイジーと言えば、立ち上げからわずか1カ月で月間900万PVに到達したことで有名ですが、その後も継続的に支持され続けている背景には、メディアや生活者を取り巻く社会の動向を常に分析し、その時代に合わせたコンテンツ制作を心掛けようとする、柴田編集長の柔軟な姿勢がありました。

柴田さんのお話にもありましたが、数年前から”個人のメディア化”が進み、一般人コンテンツが人気を集めるようになったことからも、もはや情報の発信元は重視されにくくなりつつあります。しかしそんな時代だからこそ、「クレイジー」という発信元を明示するようなコンテンツが必要であり、なんとなくタイムライン上で目にしてもらうよりも、自ら好んで見た情報として目にしてもらうことが大切なのです。読者に寄り添い続けるクレイジーの進化に、今後も目が離せません。
(取材・文/森奏子 写真/大塚奈々)

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